頂いた感想への返信はまばらですが、これからも継続して行なっていきます。下手に返そうとするとボロを出す質なので、返せる数は多くないと思いますがご容赦ください。
デラーズフリートが潜んでいると思われる暗礁宙域に対し、艦長は再度艦隊を差し向けることにした。民間の船舶も立ち入りを禁じていたが、その取り締まりは一層厳しいものになっている。
しかし肝心の内部捜索は半ば諦め、距離を置いて攻撃だけを行っていた。艦長がこの判断を下した理由はただ一つ、厄介なものがばら撒かれていたからだ。それについて彼が考えようとしたところで、副官から報告が来る。
「ア・バオア・クーから入電です。再編にあたって倉庫に入っていた各種物資及び、艦艇・MSの一部が要塞内に搬入されたと」
「人員は?」
「こちらへの異動を強く希望した一部の部隊が、航路のパトロール強化のための追加人員…という名目で着任しています」
「あるなら最初から出せばいいものを、こうも危機が迫ってからしか動かんというのも困るな。なんにせよ、助かったことは事実だが」
頼れる相手は、頼れる内に頼っておくのが肝要だ。艦長は各種品目に加えて『私的な物資』を運ぶことを条件に、情や恩だけでは動かない人々の力も借りることになった。
清濁合わせて…というのも、彼は嫌っているわけではない。極力弱みを見せぬため、そして軍が艦長へ押しつけたイメージを保つために控えているだけだ。
「しかし決まってからは早いな、またあの方に礼を言うことになりそうだ」
「後は強奪されたという試作機がどう動くか、ですが…」
「待つしかないが、ここ以外に残党軍が潜める場所は多くない。残党軍への圧力を強めつつ、準備を進めるぞ」
今回の支援を引き出すにあたって用意した『最悪の場合に備えた、必要最低限の戦力で可能な対コロニー落とし防衛策』は、根回しの結果どうにかこうにか承認された。そして承認された以上、やり遂げなければならない。
本格的な殲滅作戦の前に敵勢力の更なる漸減を行いつつ、内部への調査を行う気でいたが、状況は悪い方向へ一気に進んでいる。
「だが鹵獲した機体からの映像以外に、証拠を押さえられなかったのが痛いな。こうも大量の機雷をばら撒くとは、奴ら正気か?」
「工兵が不活性化した機雷を調査した結果が届きました。何かしらの信号を受けると自爆する構造で、邪魔な物は選んで排除できる可能性があります」
「…待て、何処で解体した?今ここで作業をしているのか?」
「工兵部隊所属の小型船でやったようです、今のところ吹っ飛んでいないので大丈夫かと」
「クソ度胸だな。帰ったら人数分のビールでぶん殴ってやれ、瓶のだぞ」
「伝えておきます」
こちらが動けば向こうも動くのは当然のこと、即応艦隊並びにア・バオア・クー駐留艦隊は、機雷の散布を行う残党軍の艦艇と散発的な戦闘を繰り返していた。こちらの被害は少ないものの、敵も戦力を温存するためか打って出ては来ない。完全な膠着状態が続いていた。
「熱を探知し、レーザーで距離を測るタイプのようです、MSや艦船から剥ぎ取ったセンサーを無理矢理取り付けたもので、強度や信頼性は低いかと。ですが炸薬量は多く、MSや艦船が近付けば大惨事になりますよ」
「厄介な手だな。遠距離からの攻撃しか出来んとは、なんとも歯痒い」
機雷は明らかに有り合わせのもので作られていることが丸わかりだが、爆発するのは確かだ。一定数のダミーが混ぜられているのも確認したが、だからといってMS部隊を突っ込ませるほど馬鹿ではない。
遠距離からの砲撃で数を減らしつつ接近する筈が、機雷以外にもビーム砲を構えたMSが潜んでいるとなれば迂闊に動けない。恐らく船舶の残骸から回収した砲塔を転用しているのだろう、その工作能力だけは褒めてやりたいなと艦長は悪態を吐いた。
「デブリの間からビームによる狙撃、MS部隊が被害を受けています!」
「今大きな損害を被るわけにはいかないというのに、奴らめ…」
打ち込んだミサイルやビームによって、大量のデブリは奥へ奥へと押し込まれている。それによって配置されていたであろう砲台や罠は次々と破壊されているが、肝心のMSは少なく、艦船に至っては数隻しか確認できない。
鹵獲機から得た映像には、もっと多くの戦力が映っていたというのに。まさか人知れずここから離れたのではないか、そんな疑惑が浮かび始める始末だ。
「暗礁宙域に入ろうとしていたムサイ級一隻と第六臨時警備艦隊が接敵、戦闘が開始されました!」
「掃海を担当中の艦艇はそのまま作業を続行、即応艦隊で援護に回るぞ」
「了解です」
なりふり構わず戦力を集めているのか、海賊行為を行っていたと思わしき旧ジオン軍の艦艇が暗礁宙域の周囲に集結しつつあるらしい。
戦争が集結して早三年、それだけの間潜伏するためには物資が必要だが、その全てをコロニーの残骸や商船からの略奪で賄えていたのだろうかと艦長は首をかしげる。やはり何かしらの協力相手がいそうなものだが、自分の権限ではそこまで洗うことは出来なかった。
だが戦後急速に勢力を伸ばそうとする巨大企業アナハイムを、よく思わない人々は多い。今回のスパイ騒ぎを報告すると、彼らは嬉々としてあの企業を掘り返す勢いで探り始めた。後は任せても大丈夫だろう。
「第六と言うと、例のゲルググ部隊か」
「ザンジバル級一隻とムサイ級四隻の艦隊です、何かあってもそう簡単には抜かれません」
今までは商船の護衛に割いていたエフェメラ艦長率いる元ジオン兵部隊だが、今回の事態に対し機雷封鎖中の護衛として参加することになっていた。観艦式を前にこれ以上の増援が見込めないと判断したための措置だが、それは功を奏したと言っていいだろう。
「通信は途切れたか?」
「ミノフスキー粒子が散布されたようですが、レーザー通信は健在です」
「エフェメラ艦長のことだ、掻き回されることはないだろうが…流石だな」
白いゲルググが塗装すら疎かなザクⅡに武器を構えたかと思うと、光る粒子の砲弾を連続して放つ。今やマシンガンで武装するジム達にとって垂涎の品、専用のビームライフルだ。肩に大きくペイントされた機体番号から、アレに乗っている人間が誰かはすぐにわかった。
「艦長自らMSで出陣とは、咎めないので?」
「それを言うなら私も同じだろう。それにジオン流で成果を出せるなら何も言う気は無い。模擬戦も範囲を拡大し、ゆくゆくはアグレッサーとして練度向上にも一役買ってもらうつもりだ」
「なるほど、確かに適任ですが…戦わされる部隊が可哀想になる腕前ですよ」
残党軍のMSが爆散するが、白いゲルググに損害はない。一機が被弾したものの、盾で受けてそのまま距離を詰めては果敢に攻める。海兵隊のやり方か、それとも我流か、『MS同士の戦闘などお行儀よくやるものでもない』とでも言いたげな戦いぶりだった。
「先行してMS部隊を出す、サジタリウスとジェミニは?」
「補給中のサジタリウス小隊と、ジェミニの第二小隊が出せるそうです」
「ナガトの第一加速が終わったら順次発艦、第六臨時パトロール艦隊への援護に当たれ。彼らの機体と装備はジオン系のものだ、誤射には十分注意せよ」
マゼラン級ナガトはMSの運用能力を持たない旧式艦であり、即応艦隊の多忙さもあり改修は後回しにされている。そのためMS部隊は随伴しているコロンブス級輸送艦を改造して母艦としており、中隊一つと小隊一つを運用できるのはそのためだ。
「サジタリウスが先行して出ました、続いてジェミニが出ます」
補給艦隊時代からの付き合いであるジムスナイパーⅡは小隊規模、つまり三機を有するまでになり、予備機も含めるとそれなりの数だ。戦後の戦力再編に際して集められ、ベテラン達がその射撃技術を振るってくれる。
「光学で敵艦は見えるか」
「既に捉えています、友軍機も射線上に確認していません」
「MS部隊が射線に被る前に撃つ、目標ムサイ級」
マゼラン級が持つ最大の武器は、この火力だ。艦首を真っ直ぐ敵艦へ向け、全ての砲を緑色の巡洋艦へ指向する。残党軍と第六艦隊の船同士は離れており、MS部隊も互いに突出してはいない。撃つのなら今だ、好機を逃す手はない。
「撃て」
MSが放つものよりよほど強力なビームの奔流が放たれ、敵艦を掠める。ミノフスキー粒子の散布下では直撃など夢のまた夢だが、当たらないわけではない。船のすぐ近くに居たMSが巻き込まれたのか、核融合炉の爆発が一つ観測された。
「良い腕だ、そのまま撃て」
敵艦からの反撃はほぼ無い、既に砲は第六へ向けられているからだ。急速に距離を縮めるマゼラン級ナガトが注目を集めた瞬間、一機のゲルググが光信号を飛ばし、ムサイの懐へ飛び込むため加速を始める。
「MSからの通信を受信、『援護に感謝する、これより敵艦に突貫する』……とのことです」
「砲撃中止!」
マゼラン級の砲撃に目を奪われていた敵艦は、接近するゲルググに対応できなかった。エフェメラ艦長が操る海兵隊仕様機は疎らな迎撃を避け、専用のビームライフルを放つ。
最大望遠で見ると、敵艦は無残にも艦橋を撃ち抜かれ、主砲も破壊されて無力化された。周囲のMSも統率を失い、次々と撃墜され始めた。勝負あったと見るべきだろう、出撃したMS達は少しの援護だけで仕事が終わってしまった。
「これは終わりましたね、生存者の回収作業はどうされますか」
「こちらで受け持つ。エフェメラ艦長の部隊は優秀だが、要らぬ諍いは避けたいのでな」
「了解、伝えてお……艦長!」
「どうした?」
「レーザー通信です、アルビオンと名乗っているようですが」
「繋いでくれ、色々と聞きたいことが多いんでな」
アルビオン、STARDUST MEMORYにて主人公が乗っていたペガサス級強襲揚陸艦。連邦軍の内情に振り回されつつも、最後までデラーズフリートの思惑を阻止するために奮闘した船だ。
「こちらア・バオア・クー駐留艦隊所属、マゼラン級ナガト。戦闘中にて、通信の安定性は担保できない」
『こちらアルビオン。状況を教えてくれ、援護は必要か』
「必要ない、気持ちだけ受け取っておく。そちらの用はこの暗礁宙域についてか?」
『その通りだ、地球から逃走中の残党軍を追跡している』
「暗礁宙域へ接近していたムサイ級一隻を拿捕した、調査結果の共有は必要か」
『頼みたいが、そちらは…』
「上層部やら派閥やらは問題ない、こちらも独自に残党軍への対応を行っている。…二号機についてもある程度は聞いております、シナプス艦長殿」
騒ぎを聞きつけてやってきたアルビオンの艦載機たちは、ジムカスタムやジムキャノンⅡで構成されており、数こそ少ないものの、豪華な構成だった。彼らは暗礁宙域でここまで大規模な艦隊が展開していたとは知らなかったようで、少々驚いているようだ。
尚、このムサイ級は腹にコンテナを抱えており、暗礁宙域へ物資を持ち込もうとしていた。船員は詳しい情報を与えられてはいなかったが、彼らの存在がこの奥にまだ残党軍が居るという証拠となるだろう。
この情報を使った艦長は、即応部隊が呼びかけに応えてくれた戦力を率い、観艦式を狙うデラーズフリートの主力艦隊を抑えることを上層部へ認めさせる。だが観艦式には武勲艦であるサラミス級ナガノⅡを始めとした、一年戦争中に第二〇一補給艦隊として編成されていた船を送り、式への協力姿勢は崩さない。
一年戦争で救った戦友達を、星の屑になどさせてなるものか。
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「駄目です、突破を試みたムサイが沈められました」
「やはり包囲は破れんか…物資も底を突くかもしれんというのに」
「アナハイムとの取引も急に止まりました、何かあったとしか思えませんが」
艦長率いる即応艦隊が残党軍と戦っていることで、少々厄介な問題を抱えた集団が居た。何を隠そう、奪取したガンダム試作二号機を暗礁宙域のさらに奥、デラーズフリートの拠点である『茨の園』へと持ち帰ろうとしている者達だった。
腑抜けた連邦軍の警備体制と、追ってくるのが数隻だけという本腰を入れてこない追撃によって逃げ続けられている彼らだったが、ここに来て目的地が押さえられてしまった。
「…使うべき時が来るまで、この機体の装備には傷を付けられん。連邦にも厄介な奴らが居るようだな」
ムサイの格納庫に鎮座する鹵獲機、連邦軍機にしては大柄でジオンの出と言われた方が納得出来る機体を見て、整備士の一人が言う。他の場所で潜伏するほかない、観艦式の襲撃は困難な物になるだろう。
「得られた情報によりますと、茨の園周辺にて交戦中の艦隊はジオン共和国方面軍、ア・バオア・クーに駐留していた即応艦隊とのことです」
「即応艦隊、海賊狩りをしている連中か」
「艦隊を指揮するのは、第二〇一補給艦隊の長だった者だそうです」
「…あのナガノか?」
「あのナガノです。ソロモンでも、ア・バオア・クーでも沈まず、最後には撤退する部隊から多数の離反者を出すに至った」
実はジオンから見れば、ナガノには目立った戦績がない。ムサイ級を沈めたことはあれど、オデッサから撤退する将兵を血祭りにあげたのは伏せられており、要塞二つの攻略戦でもあくまで支援のための艦隊として動いていたためだ。
「投降も認めず船を沈めて回っているとの噂です、しかも暗礁宙域内へ攻撃を行っているとは…」
「非人道的か?」
「いえ、気に入らないというだけです」
若い整備士は過激派の思想にどっぷりと沈んでいるらしく、中年の整備士はなんだかなと言わんばかりの表情を陰で浮かべる。非人道的か、道理がどうかなど、一年戦争の開始初期に吹っ飛んだではないか。
「だがまあ、油断出来ない相手だぞ」
ナガノに話を戻すが、ジオンからの評価に反し、連邦軍内での評価は高い。この船が行った決死の救出活動により救われた者は多く、捕えられた捕虜から得た情報が役立ったこともある。
与えられた職務以上の勇敢な働きにより様々な勲章を得た彼は、軍が戦場に行ったプロパガンダ以外でも取り上げられて人気を集め、各コロニーからの支持を一定数獲得している。
「海賊狩りで各地のサイドからは頼れる用心棒だ、各地の同志とも連絡は取りにくくなるだろう」
そして戦後になって残党軍が各地に放ったスパイや協力者から、ナガノとその艦長にまつわる話を得られ、再評価がなされたというわけだ。捕虜となって帰還した学徒兵は名簿が公開されており、それを見た残党軍の親族が投降するなど、海賊の減少に一役買ったという。
「(連邦憎しで戦っていた連中の結束にヒビを入れたな、あの艦長は…)」
MSのエースパイロット達は非常に多くの注目と人気を集めるが、その実政治力に関しては低くならざるを得ない。しかし一艦長、今や要塞の管理人ともなれば、持てる影響力は桁違いだ。詳しくは不明だが、連邦軍内のとある派閥へ身を寄せているらしく、融通が利くためか動きも素早い。
宇宙移民の解放者だと自らを称したジオンは負け、勝った連邦軍は懐事情が苦しくとも、表面上は守護者として振舞っている。
この戦い、星の屑作戦で勝っても負けても、デラーズフリートに正義などないのではないか。戦後の復興特需に沸く各地のサイドをみて、暗礁宙域の残骸に閉じ籠る残党軍の士気は揺らいでいた。
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反応があるとなんか、よくない脳内物質が出てる感触があります。
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