狼のヒーローアカデミア   作:ベネット

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書いてみました。


入学試験

事の始まりは中国軽慶市

 

"発光する赤子"が産まれたというニュースだった。

 

以降各地で「超常」を持つ人間は増え続け原因も判然としないまま時は流れる。いつしか「超常」は「日常」に。「架空」は「現実」に。

 

そして、世界総人口の8割が何らかの「特異体質」である超人社会となった現在。誰もが憧れる職業があった。

 

『ヒーロー』

 

"超常"に伴い爆発的に増加した犯罪件数。

法の抜本的改正に国がもたつく中、勇気ある人々がコミックさながらにヒーロー活動を始めた。

 

"超常"への警備、悪意からの防衛。

たちまち市民権を得たヒーローは世論に押される形で公的職務に定められる。

 

活躍には富と名声を。国から与えられる公務員。

 

「……」

 

多くの学生が行き交う中、1人の少年がいた。

 

スラリとした長身と銀色の髪。エメラルドの様な翡翠色の瞳。ただ立っているだけの少年は非常に整った顔立ちで少なからず注目を集めていた。

 

「……」

 

はあ、と溜息。

容姿に対する一般的な感覚は世界に「超常」が溢れてからもさして変わっていない。そのため普段から異性に(時には同性に)見られることには慣れている。

今更ジロジロ見られる位で気にするほど初心ではないし、なんなら注目を浴びるのは好きな方でもある。

だから思わず出てしまった溜息は、全く別の理由から。

 

「……雄英高校。ヒーロー養成校最難関。偏差値79。倍率300倍」

 

独り言を呟く少年の横顔に見惚れていた少女が、我に帰ったように早足で歩き出す。

 

『入学試験会場』と書かれた看板の前を通って。

 

「……おなかいたい」

 

高校受験当日。試験会場前で緊張から腹痛発症。

蹲った所を、優しい他受験生達に話しかけられるまで残り30秒ーー

 

 

 

 

「今日は俺のライヴへようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」

 

シーン、と沈黙が落ちる。

 

「こいつはしゔぃーー!!!受験生のリスナー!!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?」

「い、いえー…ぃ」

 

小声で呟いた後、周囲の視線を感じて恥ずかしそうに俯いた少年を尻目に説明は進む。

 

実技試験概要:10分間の模擬市街地演習

プレゼン後はA〜Dまでの指定された会場に向かう。私物持ち込みOK。

演習場には三種の仮想敵が多数配置されていて、行動不能にすると弱い順に1.2.3ポイント貰える。ポイントを稼いで上位の結果を残そう!

ただし他人への攻撃等のアンチヒーローな行為は御法度だ!

 

「質問よろしいでしょうか!?配られた資料には四種の敵が記載されております!誤載であれば日本最高峰である雄英において恥ずべき痴態!我々は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場にいるのです!ーーあとそこの縮毛の君!先ほどからボソボソと……気が散る!物見遊山なら即刻この場から立ち去りたまえ!」

 

優等生っぽい眼鏡男子がオタクっぽい男子に注意した後

 

「オーケーオーケー。受験番号7112君ナイスなお便りサンキューな!!四種目の敵は0P!そいつはいわばお邪魔虫!!各会場に1体!所狭しと暴れ回る『ギミック』よ!」

「ありがとうございます!失礼しました!」

「それでは最後に、俺から受験生の皆に我が校の『校訓』をプレゼントしよう」

 

そう言うと雄英教師……ボイスヒーロー"プレゼント・マイク"は受験生たちに語りかける。

 

「かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った。『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』だと!!」

 

「Plus Ultra!!!それでは皆良い受難を!!」

 

そこからバスに揺られること暫し。

 

「広い」

 

連れて行かれたのは無人のゴーストタウンだった。

 

「ね!広いよね!?学校の敷地内にこんなの何個もあるとか、雄英ヤバいよね!」

「やばい」

 

各々本番に備えて緊張の面持ちの中、楽しそうに会話する受験生もいた。

 

「でももう一回会えて良かった。あの時はありがとね」

「!い、いいっていいって!ほら、ヒーロー志望が具合悪そうな人見過ごせないし!あ、あはは」

 

顔の前でブンブンと手を振っている女子の頬は赤らんでいる。

 

「ううん。本当に助かった……でもだからこそ申し訳ない」

 

対する少年は、言葉通り申し訳なさそうな顔をしている。

 

「……?どういうこと?」

 

その顔に見惚れていた少女に浮かぶ疑問符。

 

「私の個性ってこういうのに向いてるから……君のポイント取っちゃうかも」

「ーーっぷ、あははは!なにそれ!そんなの気にしてたの!?」

 

少しズレている心配をする少年だが、その根底にあるのは優しさだった。

 

(何十人も同時に受ける試験で、1人が取れるポイントなんてたかだ知れてーー)

 

「ハイスタート!」

 

「……ん?」

「……え?」

 

「どうしたあ!?実戦じゃカウントダウンなんざねえんだよ!!走れ走れえ!?賽は投げられてんぞ!!?」

 

「「「ーーうおおお!?」」」

 

身体の準備はしていても、心の準備はしていなかった受験生達が一斉に市街地に向けて走っていく。

 

「は、はやく行かないと!えーと」

 

目の前の男の子に呼びかけようとして、まだ名前を聞いていないことに気がつく。

 

「……また後でね」

「ああ、もう!」

 

(記念受験だったのかなーーでも私は違う。頑張らないと!)

 

動く様子もなく、軽く手を振っているのを見て試験会場に向かって駆け出した。

 

「本当にごめんね……でも手は抜けないから」

 

遅れを取り戻そうと必死で走る背中をみながら、少年は自身に宿った異能を行使した。

 

「生物相手なら話は早かったけど、そうでないなら直接壊すしかない」

 

灰色の影が泡の様に湧き立つ。

一つ、二つ、三つーー次々と。

 

「行って。生徒は傷つけないで」

 

 ──オオオゥゥゥゥンンンッッ!!

 

鬨の声があがった。

 

 

 

 

 

 

「よっしゃ一番乗り!仮想敵ってのはコイツらだろ!?」

 

身体能力を増幅させる「増強系」に分類される受験生が試験会場を走り回る。

 

「なるべく多く倒さないと!」

 

自身の意思で肉体を変化・強化させる「変形型」の受験生が五感を強化して会場を索敵する。

 

「ハッハァ!!やるならデカブツだよなぁ!?」

 

その姿は千差万別。「異形型」の受験生が生来の能力を発揮して仮想敵を倒そうとする。

 

「「「標的補足!!!ブッ殺ス!!!」」」

 

それに機械で出来た仮想敵が襲いかかる。

 

破砕音。

 

「よっしゃ案外脆い!!」

 

1、と描かれた仮想敵を破壊した受験生を皮切りに次々と戦闘が開始された。

 

 

 

 

「始まったな」

 

そんな試験会場の様子をモニター越しに見る監督者達。

 

「この入試では敵の総数も配置も伝えてない」

「限られた時間と広大な敷地。そこから炙り出される市井の平和を守る為の基礎能力」

「遅れて登場じゃ話にならない、機動力。状況をいち早く把握するための情報力。どんな状況でも冷静に行動する判断力」

 

年々増え続けるヴィランと呼ばれる無法者。

彼らは個性を悪用し社会に混乱を齎す存在だ。それを捕まえ排除するためのーー

 

「そして、純然たる戦闘力」

 

モニター越しに仮想(・・)敵が破壊される。

 

「さあ気張れよヒーロー志望の諸君。もう直ぐサプライズも控えてるがーー更に向こうへ。Plus Ultra!ってやつさ」

 

 

試験に不測の事態が起きない様目を光らせ、感想を溢す。

 

「この会場はあまり派手な個性はいないか」

「ああ……ま、例年通りってとこか」

 

試験会場での学生達の奮闘を見ながら意見交換していた監督者が、ふと隣のモニターに目をやった。

 

「おいおい。まだ出発もしないのかよ」

 

入り口付近から動かない受験生を見て呆れたように溜息を吐きーー

 

「……は?」

 

 

 

 

 

 

 

悲鳴が響いた。

 

「ーーうお!?」

「なんなんだこいつら!」

「恐ッ!?」

 

灰色の影の群れが走る。

影──否、よく見れば、それは狼の姿形をしていた。

その数は、三、四〇ほど。濃いネズミ色の体毛を持つ狼たち。

だが、そのサイズが規格外だった。馬かと見まがうほどの巨躯なのだ。

 

「「「標的補ッ!?」」」

 

グチャっという音が響く。

 

「ひっ」

 

目の前で仮想敵だった金属の身体を、あっさりと食いちぎった狼と目が合ってしまった受験生が思わず息を呑む。

ようやく獲物を見つけた、飢えきった獣。 

そう説明されれば、すぐに納得しただろう。

涎を流している狼の目は、それほどぎらつき、血走っていた。

 

「あ、ああ……」

 

ぺたん、と座り込んだ受験生ーー女子生徒は生暖かい感触が股座に広がるのを感じながら意識が遠くなるのを感じて

 

「……え?」

 

ふいっと、目の前の怪物は目を逸らした。

そして興味を失ったかのように身体の向きを変え、すさまじい速さで会場を疾駆していった。

 

 

 

 

「おいおい」

「どんな個性だ、こりゃ」

 

モニター越しに行われているのは、試練という名の受難ではなくーー蹂躙だった。

 

「なんだよこれ!なんなんだよこれ!?」

 

受験生達が追い縋ろうとするも……怪物達の狩りには追いつけない。

 

一度の接触で仮想敵の脆さ(・・)を学習したのか、巨大な灰色狼の一群が選択したのはただの体当たりだった。

 

だが、それだけで仮想敵は跳ね飛ばされ破壊されていく。

野生の獣以上のパワーとスピードを備えたそれらは、灰色の風となって市街地を駆け抜けていった。

 

「おい資料よこせ!」

「……は、はい!」

 

監督者は興奮した面持ちで、目の前で起きている受験者の『個性』に目を通した。

 

 

 

氏名:傘咲(かさざき) 保与(ほよ)

 

個性:千疋狼(せんびきおおかみ)

 

自身の近くに狼の群れを召喚し使役する。

また自身も特殊な力を持つ狼に変身できる。

 

 

 

「こりゃまた強力な個性だ!」

 

口笛を吹きたい気分だったが、流石に自重した。

 

(機動力、索敵能力、戦闘力を兼ね備えた万能個性!しかもあの数ときた。あそこまで強力なのはプロでも滅多にいない)

 

モニター越しに仮想敵が駆逐(・・)されていく。

 

「ちょっ、待っ」

「私まだポイント全然取れてない!」

「これ誰かの個性だよな!?ふざけんな!」

 

 

「まあ、そうなるわな」

 

ただでさえ、下手な増強系より強力そうな猛獣が数十頭(・・・)。しかもその速度は機動力に特化した個性でもなければ追いつけなさそうなほど速いとくればーー

 

「運が悪かったな諸君。同情はするが……まあ、プロになりたいんだったらいつか経験する」

 

ヒーローは活躍に応じて国から収入を得るーーつまり他のヒーローは商売敵なのだ。

 

「この試験において他の受験者はライバルに他ならない。そしてそれはプロの現場においても同じことだ」

 

倒すべき敵が居なくなり、呆然と立ち尽くす受験生達。

では試験は終わりか?

 

(もう一個あるだろ、ヒーローの仕事)

 

「皆、予定より少し速いがーー」

 

第二段階に突入といこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やり過ぎかな。でも手を抜くのも違うし……ん?」

 

腕を組んで唸っていた少年は、ふと首を傾げた。

 

「あれ、今から動きだすんだ……にしてもやっぱ」

 

デッッッカ!!

 

 

 

「ふざけんな雄英ぃぃーーー!!!」

 

受験生の1人の魂から出た叫び声は、しかし聴いた受験生達から99%は支持をもらえる感想だった。

 

THOOMーーー!!!

 

お邪魔ギミック

会場を所狭し(・・・)と暴れ回るーーと聞いてはいたものの。

 

「下手すりゃ死人が出んぞオイ!!」

 

デカい。ただひたすらデカい。市街地ということでビルの様な建物もあるが、それよりもデカい(・・・・・・・・)

 

動くたびに地響きが、上からは崩れた建物の一部が降ってくる。

 

(やってられっかこんなの!?さっさと逃げーー)

 

「「「標的補足!!!ブッ殺ス!!!」」」

 

「ここで仮想敵かよ!?」

「いや、でもこれチャンスだろ!」

「あの化物共も奥行っていない!」

 

「「「ポイント置いてけ!!!」」」

「「「チョ、コナイデヘンタイ!!!」」」

「「「人聞き悪っ!?」」」

 

仮想敵に搭載された簡易AIに翻弄されつつも、ポイントを稼ぎ始める受験生達。

 

「痛ッ」

 

そんな中、瓦礫を足を取られ転んだ少女。

 

(だめ、まだ全然ポイント取れてない!)

 

先発した受験者達の背中を追いかけた。そうしたら出遅れた自分の後ろ(・・)から、あの怪物達は現れた。

一陣の風の様に私を追い抜かし、速そうな敵も、硬そうな敵も、大きな敵も、あっという間に壊していった。

 

(やっぱりあの個性って……だめ!今はそんなの考えてる時間ない!)

 

「痛……いけど、これくらい!」

 

身体を起こそうとしてーー

 

「危ねえぞーー!!」

「え?」

 

影が差し、見上げた先の降り注いだ瓦礫に自身の未来を幻視した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう大丈夫」

 

最初に感じたのは風だった。

身体が浮き上がったのかと思う程の突風に目を瞑ってーー

 

ポツリ、ポツリ

 

(……雨?だって、あんなに晴れてたのに)

 

身体に当たる冷たい感触に疑問を抱く。

 

「ッ」

 

そして頭上から降ってきていた瓦礫を思い出した彼女が慌てて開いた目に最初に映ったのは、

 

「私が来た!!」

 

聞き覚えのある台詞を言いながら、笑顔を浮かべる少年だった。

 

 

 

 






【挿絵表示】



傘咲(かさざき) 保与(ほよ)(15)

誕生日:12/25
身長:182cm
好きなもの:スポーツ。お喋り。手作り料理

個性:千疋狼(せんびきおおかみ)

"自身の近くに狼の群れを召喚し使役する。
また自身も特殊な力を持つ狼に変身できる。"




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