ダモクレスを巡る戦いから二ヶ月後………日本のトウキョウ租界では反抗したナナリーとシュナイゼル、そして『黒の騎士団』の主要メンバーを処刑するパレードが行われていた。特にナナリーとシュナイゼルには中央で晒し者にされており、市民のルルーシュへの反感はピークに達していた。ナナリーに至っては、足が不自由なのにもかかわらず足かせで繋がれている始末だ。
自身に協力した兄達の身内を人質にとり、同母妹でさえあのような哀れな姿にするルルーシュがもはや人とは思えないとさげすむ声が殆ど。
しかし、報道はルルーシュをたたえるような内容だけをやらされている。
「藤堂さん…!」
「カレン…」
レイや良二は歯ぎしりさえしていた。せめて、処刑前に会わせて欲しいと掛け合ってみたが認められなかった。これ以上食い下がれば、人質を殺すとまで言われてしまった。
このままいけば、優衣達も処刑されるのではないか?という恐怖がライルの中で根付きつつあった。
ルルーシュ、何が君をここまで変えてしまったんだ?マリアンヌ様が殺されてから?日本侵攻で見捨てられたから?
仮にそうだとしても、そのためにシュナイゼルはともかくナナリーまで殺そうとするなんて!
肉親の情など、人間らしい感情などもうないのか?
二つの事件で根付いたのは、全てへの復讐だけか?全てを支配して、復讐しようというのか?
が、そう思ってライルは自分も人のことを言えないと気づいた。
私も、復讐のために戦っていたじゃないか。同じ穴の狢だ…!
もし復讐なら、その年季は九年にも及ぶ。たかが二年程度のライルとは大違いだ。秀作の復讐などは十年にも及ぶし、明確な相手がいないだけ尚根深いのだ。
「殿下、パレードが止まりました。」
何?
確かにパレードが止まった。パレードの行く先に人影が見え、カメラが拡大されると…
「ゼロ?」
そんな、馬鹿な!?ルルーシュがゼロのはずなのに何故!
ライルの当惑をよそにゼロは走り出し、KMFの銃撃を躱す。
あの動き…どこかで?
「スザク!?」
良二が声を上げ、ライルは悟った。そうだ、あの動き。ランスロットの戦闘記録で何度か見たランスロットの動きによく似ている。ダモクレスで死んだと思われたが、生きていた!?だが、何故ゼロに!?
いや、待てよ?まさか!
この状況でゼロが『悪逆皇帝』ルルーシュを討てば…ゼロはブリタニアをも救った英雄になり、ブリタニアのゼロへの感情も180°変わる。
「ルルーシュ!」
ライルは立ち上がり、叫んだ。
ルルーシュが剣で貫かれ、ナナリーの元へ転げ落ちた。何かを察したのか、ナナリーはルルーシュの亡骸に縋り、泣きじゃくった。
ライルもまた、力なく玉座に座り込んだ。
「ライル様?」
最初から、こうするつもりだったんだ……世界中の敵になって、スザクが扮するゼロに自分を殺させてゼロを象徴とした新しい秩序を作る。壮大な茶番だ……もしかしたら、ライルの冷遇もこの土台作りだったのかもしれない。
まもなく、ダモクレスを警備していたマリーベルがオルドリンに討たれたというニュースも飛び込んできた。
まさか、マリーもルルーシュの共犯者?
だとしたら、二人ともなんという馬鹿なんだ!?そして、それに気づけなかった自分はそれ以上の大馬鹿者だ。
自分自身の命と未来を犠牲にして、世界を選ぶなんて。こんな究極の自己犠牲を……
エリスは本国を任されていたが、実際のところはルルーシュの部下が監視に着いていた。一部の貴族からは賛同したのに不当だと考える声もあった。
その状況下で…これか。
「まさか、ルルーシュ…」
エリスは漠然とだが、ルルーシュがこれを狙っていたのでは?という疑問を抱いた。
この状況下でのルルーシュの死とゼロの再三の登場。二度目の奇跡の復活を遂げたゼロがルルーシュ皇帝を討つ。アレが誰なのかは分からないが、候補としては枢木スザクかもしれない。
全て、憶測に過ぎない。だが……現状、最も可能性が高い答えだった。
二週間後、人質にされていた優衣達は戻ってきたものの、ライルは『黒の騎士団』の意向を受けたブリタニア当局の尋問を受けた。その際、ライルはある物を提出した。
「実は、極秘に録音していたルルーシュとの謁見寺の録音です。」
テープを再生すると…
〈ルルーシュ、これはどういうことだ!?〉
〈見ての通りだ、ハウエルズ元子爵家及びお前が大切にしている農場の安全を確保している。〉
〈安全、保障?〉
〈お前が私に従う限り、この安全保障は続くぞ?〉
それから、しばらく再生した後…
「実際にハウエルズ家の領地と私が母から継いだ農場に軍が駐屯している記録があります。住民達の証言を取っていただいてもかまいません。」
そのほか、いくつもの証拠をライルは提出した。万が一の場合に備え、部下達の安全を担保するためだ。
「私は処刑も覚悟しています。ですが、どうか部下と兄達は。」
「……わかりました。『黒の騎士団』及びナナリー様とシュナイゼル殿下の指示を仰ぎます。」
一週間後……領民達からの証言もあってライルは領地及び祖父母を人質にされていたという事実が確認でき、『部下達の安全保証を願い出た物の、逆に領民や祖父母を人質に取られて恭順させられた』、という体裁が整えられた。
「随分と都合のいい話だな。」
「ええ、できすぎなくらいです。」
シルヴィオとエルシリアの感想は正にそれだった。
また、シャルル皇帝弑逆容疑も『セント・ガーデンズ』もシャルル皇帝とレイシェフの両名に騙されていた、という形が取られて事実上両者おとがめなし。
超法規的措置が執られることとなった。
だが、その『セント・ガーデンズ』を使った皇帝とレイシェフによってライルは事実無根の罪を着せられ、部下達も殺されたのだ。
帝政の法律に基づいて、『セント・ガーデンズ』との戦闘以後の戦死者はナンバーズも含めてナンバーズも含めて例外的な全て三階級特進……ブリタニア人は勲章を授与された上で平民には騎士の位を与えられ、爵位を持たなかった或いは騎士候だった貴族出身者は男爵位を賜った。
ナンバーズ出身者は勲章こそなかったが、かつてのスザクとは違う…正式なブリタニア騎士候の地位を与えられ、家族にも通常以上の弔慰金を出されることとなった。
そして、ライル自身も父によって冤罪を着せられたという余りに複雑な事情であったが、父が保有していた財産及びヴァリエール家から莫大な慰謝料を受け取り、部下達にも大金が支払われた。
金で解決する問題ではないが、父に冤罪を着せられた上に弟にも脅迫されていたというのは事実なので、これ以上事態を複雑化しないためにブリタニア政府はその方針をとった。
「しかし殿下、よくあんな証拠を入手できましたね。」
「え?何のことだ?」
ゲイリーの問いにライルはきょとんとした。
「なんの、事って…ライル様、私達の無実を証明するために皇帝に領民を人質に取られた証拠と証言を用意してたじゃないですか?」
優衣が困惑して質問しかえす。
「え?…え?私、いつの間にそんなこと?」
「お、おいなんの冗談だ。」
「覚えてないんですか?」
ヴェルドとコローレの問いにライルは首をかしげる。
「あ、当局の人間が来たところまでは覚えているんだが……そもそも、え?一週間?」
どうして、ここ一週間の記憶に穴が開いている?
何故、当局の人間が来た一週間だけ記憶に………
「やられた!!」
ライルは肘掛けを殴りつけた。
「どうしたんですか?」
「有紗……最初にルルーシュが即位した時に謁見したのを覚えているか?」
「はい…それ、が…」
「まさか…」
「その時に?」
有紗の答えにレイとリーザの声もこわばる。
「ああ、多分その時にギアスをかけられたんだ。ルルーシュ自身が用意した証拠を提出すること、それを別の人間を使って手に入れたようにと証言する……そんな具合のギアスを。」
「待ってください、もしその通りならば…」
美水の言うとおりだ…
「ルルーシュ、最初から私を被害者にするつもりだったんだ!」
自分一人で全ての罪を背負うために。
「くそ!どうして、こんな方法を!いってくれれば、僕だって悪役になってあげたのに!!」
ライルはこれ以上はいたたまれなくなり、部屋へ戻ろうとしたが……
「…特別寝室にいるから、皇妃全員を呼んでくれ。」
その夜、皇妃にした全員が寝室にやってきた。
「ライル…様?」
有紗が問いかけ、ライルはチラリと見てため息をついた。
「私にとって、ルルーシュは生意気だけど頭の良い弟だった。」
「…仲、良かったんですね?」
「ああ、チェスでは負けっ放し。ポーカーでは食い下がっていた。」
「頭は良さそうですものね。」
レイとクリスタルが相づちを打つ。
「………母君が殺され、ナナリーと一緒に日本へ送られた。見送りにも行った…」
あの場にはコーネリアやユーフェミア、クロヴィスもいた。
「それで、ナナリー総督だけが戻ってきたんですね?」
「ああ…」
優衣の確認にそうとだけ答える。
「でも、あの人は皇帝になった。」
美水に言われるまでもなく、あの通りだ。
「生きていてくれたのは嬉しかった……あれだけのことをしてもだ。」
「兄弟って…そういう物だと思いますよ?」
リーザも一定の理解を示す。しかし…
「でも、僕の中ではどうしてあんな風に?という気持ちも強いんだ、何故だと思う?」
「有紗にも言っていた……ライル様の中では、彼は日本へ行く前に見送った9歳で止まっているんですね?」
そう、エレーナの言うとおりだ。ライルはそれに黙って頷く。
「謁見の時でしか、会えなかったの?」
浅海に問われ、ライルも何も言わずに頷く。
「18歳のルルーシュ…今も皇族だったら、きっとシュナイゼル兄様に負けない政治家か指揮官になっていたよ。総督だってナンバーズ側に損がない政策をやれたかもしれない。」
「……18で皇帝になるくらいだからな。」
鈴維もルルーシュの能力は評価する。
「でも、貴方にとっては違う。9歳のままなのね?」
クラリスが問い、また頷く。
「前も言ったが……僕にとって…あの子はナナリーやユフィと遊んでいた頃で止まっているんだ。認識と理解が追いつかないんだよ…!」
生きていたのは嬉しい。だが、弟は暴君に変わってしまった。何故?母親の死が、捨てられて全てを支配して復讐しようとしたのか?
そう思った矢先……ゼロを利用して世界を支配する魔王になって自ら次の時代の礎になった。
「僕にとっては、手の届かないところで9歳の弟が二回死んだようなものなんだよ!」
両手を握り、ライルは涙を流した。すすり泣くライルを、誰かが抱きしめた。有紗だ…
「私達は、ルルーシュがどんな人かわからないです。世界を滅茶苦茶にした皇帝、という認識しかないです。でも、ライル様にとってあの人がとても大切な弟だったというのはわかりました。」
そこへ、更にレイが歩み寄った。
「呼ばれた時点でわかっているから、言ってください…」
流石に気づくか…
「最低なことをしている、自覚はある。ルーカスの次元に堕ちるのもわかっている…でも、二回も9歳の弟が死んで……頭の中がもう滅茶苦茶なんだ。慰めが欲しいんだ…!」
最低だ…絶対に女にそんなこと要求しまいと決めていたのに、それを破った。軽蔑される。嫌われる。だが…
「良いわよ。」
クラリスが上着を脱いで、歩み寄り唇を重ねる。
「一生に一度くらい、そういうこと言い出してもバチ当たらないわよ。」
「クラ、リス…」
「元より人質同然の皇妃だし…良いわよ?」
真っ先にクラリスが全てをさらけ出した。
「ああ…」
「元々、貴方に献上された身だもの。」
鈴維と浅海も同意した。クラリスが押し倒し、先日堪能した巨大な果実を見せるようにささやく。
「こんなおいしい場面…もうないかもしれないのよ?」
有紗やレイも頷く。全員、OKと言うことだ。こんな時に思ってしまった。
ルーカスや取り巻きの貴族、同じようなことをするブリタニア人の男……テロリストが同国人やブリタニア人の女にするのを見て、男という生き物はけだものだと思っていた。自分も同じだという自己嫌悪に近い感情を抱いたこともある。
だが……女だってけだものではないか?
などと………それでも。
「すまない……今夜は、徹底的に甘えさせてくれ。」
その夜、ライルは有紗達十人を徹底的に抱いた。十人を一度に、というのは初めてであったが、自然と力が入った。浅海と鈴維は胸は劣るが、出ているところは出て軍人故の鍛えた身体がとてもよく、有紗やエレーナはその豊満な果実がとても美味でその感触も最高だった。
これだけの美女を全て自分のものにしているという醜い感情さえわくが、今はそれに身を任せても二回も弟が死んだ絶望を、変わり果てた妹が自分の身を投げ出した衝撃を、友になれたであろう男を殺した喪失感を……未だに蝕むフェリクスとセヴィーナが死んだ虚無を埋めようとした。
もはや無我夢中で、かろうじて誰を抱いているか認識しながらその果実や花を、唇を貪り続けた。気がついたときには、全員が息絶え絶えか、気絶していた。
ライルは皇妃達を愛おしげに見つめた。本当に全員を抱いてしまうとは……だが、それほどまでに愛しているという自覚もある。
自分の中の感情がぐちゃぐちゃだ…………
「あぁ、別れるのが惜しいよ。老いて死ぬまで傍にいて欲しい。」
ブリタニアの官僚達はライル達の処遇で議論していた。
「人質にされていた全員が戻ってきたが、本当に最低限の礼節しか守らなかったんだな。」
優衣達の証言でも、ぞんざいに扱われることはなかったが軍の士官室で監視カメラ付きと仮にも自分に付いた皇族及び関係者にするべきで事ではない。
本当に最低限のことしかしていなかった。『生かしてやっている』、というアピールだけが目的のようだ。
シルヴィオとエルシリアも中立であったとはいえ、ライルに付き従う形で協力したのにその扱いはぞんざいで、本国にいた部下の関係者も見張られていたという。
明確な敵対を表明したわけでもない兄弟への扱いもルルーシュの悪辣さを際立たせ、元の領民達からも皇帝向けに嘆願がくるほどだ。
ブリタニア本国側は頭を悩ませたが、ペンドラゴンが消滅したことで主だった官僚や軍幹部はほぼ死亡している現状とあっては、ある程度形を整えて残るライル達は貴重だった。
あくまで、忠誠ではなく国家の官僚として動くのを優先したエリスはライル達の武力も彼らが各エリアに残したパイプも今のブリタニアひいては超合集国との今後に置いて必要と主張した。
「いっそのこと、彼らにも働いて貰ってその見返りとして皇族時代の保有財産などの生活を保障したらどうです?どうせ刑務所に送って刑期が終わった後で働かせるのなら、今から多少形を変えて働かせた方がつまらない手間も費用もかかりません。」
ある意味、現実的な意見だった。コーネリアのように潜伏して犯行の機会をうかがったわけでもないが、人質を取られていたのでは確かに逆らいようがない。ライルはシャルル皇帝弑逆も濡れ衣であったことが判明し、父と弟の両方に陥れられた。ならば、この場で妹と兄に裁かせるよりも各国と国交回復の大使なり名誉ブリタニア人達の受け皿になって貰うなりして働かせるべき。
ライルに近い皇族達も当面は監視をつけるが、それを条件にお咎めなしにする。
エリスの意見は採用され、『ロンスヴォー』も一端原隊復帰という形になった。エリス自身も監視が着くが、本人もそれを了承した。
ただ、エリスにも想定外だったのは人質の皇妃だった三人がライルに本気で心を奪われてしまったこと……『ロンスヴォー』の原隊復帰とライルの夫婦問題は別次元なので、クラリスと浅海は一端そのまま、という形になりクラリスの部下四人と浅海と鈴維の上官達は警護兼監視で残る形になった。
ちょっと、そちら系の要素強い部分があります。
でも、ライルを完璧超人にしたくなかったけどやっぱりこれです。原稿に手を加えたけど、やっぱり下手くそです。
9年のギャップ故に、18歳のルルーシュを理解する前にまた死んでしまったために、ライルにとっては遠くで弟が二回死んだ…という感覚です。
ある意味、ユフィと同じかそれ以上のショックで……半ば理性が飛んでこの時だけの夜の狂戦士状態でした。
そして、現実の政治では分かりませんが皇帝自らが冤罪を着せたのは問題だし、死んだ後なら助かった被害者にあれこれ文句を言われては多分政治的にも文句は言えないと思います。何しろ、国の最高責任者が皇子を明確な理由もなくはめたわけですから
この場合、『セント・ガーデンズ』との戦闘は少なくとも正当防衛が認められるべきだと私は思います。
後で蓬莱島の件を喚き立てても、公文書があるから文句言えないでしょう。
ちなみに掲示板時代は二度目でギアスを認知する、という形でした。そして今回の場合はオルドリンやアキトと同じでギアスをかけられた立場になりました。
本人が言っていたように、自分が脅迫されていたという証拠を提出する命令です。エリスもギアスはかけてませんが、冷遇したのはシュナイゼルには及ばなくても政治能力があるからです。