エリスは元皇妃達と共にブリタニアと各国の国交回復の調整を行っていた。まず、ルルーシュが直接統治していた日本と会談が行われる。その代表はナナリーだ。
今、ナナリーが殺されるようなことになれば世界は再び戦争の時代に逆戻り。
エリスはそれとなく、ルルーシュの真意を察していたからこそナナリーに着いた。何より、『黒の騎士団』もブリタニアも既に力の殆どを使い切ってしまった。
戦争に向けるだけの力は残っていない。今ここで戦争をやるのは自滅以外の何物でもないのだ。
「はあ、全く我が弟妹ながら二人共無茶をする。」
ナナリーに至ってはルルーシュの実妹というマイナスが強い。だが、エリア11の総督だった頃の政治も日本人にも損がないように計らっており、支持はある。
ライルの方はブリタニア側の少数派であり、扱いに困っていたが皇帝二人分の暴虐の被害に遭った事実をエリスが強調して、牢屋行きは回避。これまでの暴挙の慰謝料などを政府からふんだくり、兆単位にまでその財産が膨れ上がった。
個人の資産だけならば当時の大貴族に迫る。それを元手にライルは今後設立される福祉機関の施設に利用者がいなくなったハウエルズ子爵家の貸別荘を提供する話を祖父母と協議しており、その相談も受けている。
皇妃や部下からは一年は軍から遠ざけて休ませたいという意見もあり、当分は予備役扱い。何より、表に出たら反ブリタニア勢力や超合集国との和平派を刺激しやすいという意見もあったためにそれが通った。
「それにしても……」
初めて顔を合わせたライルの皇妃達……ウチ何人かが凄まじい勢いだった。秘書の木藤優衣だ。
「新婚旅行してないのに、離婚は嫌だ」と駄々をこねてきた。政略でも結婚は結婚だし、相手は元々意中の男だったという。内縁でも関係を継続したいとライルも言っており、ルルーシュが死ぬ前に嫁いだ三人も相当に惚れ込んでいる様子だった。
「女って、時折怖いね。」
と、ミリアムが手をつねった。
「私達も怖いんですか?」
「怒るとね……大体、君達だって私と別れるのを拒んだくせに。」
そう、予定だった者も含めエリスと別れるのを拒んだのだ。クラリッサなど新体制におけるKMFの運用方法などに意欲的だ。
「まあ、リスクの観点でも君達がいた方が私も楽だから。」
幸い、こちらも財産は充分に残った。万が一のために皇妃達に残すことも可能だ。
「さて……今夜は誰にしようかな?」
思い切って、全員いただくとするか?
隣に来ていたミレイユが顔を赤くし、問いかける。
「ま、また?」
秀作はクレヴィング家の屋敷に戻っていた。クレヴィング家は元々軍人として生計を立てていた事もあり、領地はさほど大きくはない。経営破綻しなかった数少ない貴族で、今は破綻しかけている貴族達の相談役を行うようになった。
その中で、秀作は軍を除隊して本国の高校に編入した。まだ元ナンバーズというくくりもあるが、秀作は意に介さない。
「なあ…」
「ん?」
そこそこ交流の出来たクラスメイトに声をかけられた。
「お前、どうしてエリア11…じゃなくて、日本の軍人の子供なのにこっちなんだ?」
「……ジジイが軍人だから日本軍人をやれ?」
「そ、そうじゃなくて…」
「………ジジイのブランドに縋る奴らに復讐するのにブリタニアの方が良かった。今のブリタニアで言えば、帝国再興を主張する貴族に使われるのも、ブリタニアとの協調を拒む保守派の日本に使われるのも嫌だ。」
「随分と具体的なたとえだな…それならわかりやすいけど。」
幸也はセルフィーと一緒に家族の名前だけが記された共同墓地を訪れていた。
「何を話したの?」
「母さんと姉さんの仇を討ったこと……それと、当分こっちには戻らない。」
「スペインに来るの?」
「戦災地への慰問ダンスを中心に活動を決めているんだろう?」
あの後、ガルデニアオーナーに三人は各地域への慰問ダンスを申し入れた。自分達も部分的ながら、加担したせめてもの償いだ。
「少しは格好をつけたいよ…好きな人には。」
「……つまり、ライル殿下は将来のお義兄さんになる訳か。」
ヴァルは軍を退役し、スペインでのダンサーの活動に復帰していた。三人一組での活動より、それぞれ自分のダンスで活動したいと思ったからだ。
「じゃあ、まず地元の復興と慰問のダンスか。」
「ああ、日程は組んである。」
ソロのダンスは初めてでは無いが、ここまで本格的なのはヴァルも初めてだ。ミスは出来ない。
ノエルは租界の墓地で家族の墓に花を添えた後、待ち合わせの人と合流した。
「貴女も両親のお墓参り?」
「ええ……もう『黒の騎士団』には戻れませんから。」
あの後、ラルフは既に除隊届けを出して勝手に付いてきていた事が判明した。副司令達も一応受理はしており、もはやラルフは一般人だ。
「会おうとは思わないの?」
「どの面下げて会えば良いんです?僕だって意地は通したいです。」
「…顔に似合わず、男の子ね。」
ヴェルドとコローレは生活のために『黒の騎士団』として活動を続けていた。デビーもまた、同じだ。
「ったく、俺ら三人の大将絡みの腐れ縁も続くよな。」
「あの皇子様に関わったのが我々の運の尽きだ。」
「まあ、今日は飲み明かそう。ビールでね。」
そう言って、デビーはビールの瓶を開けてそれを注いだ。
「たまに飲むが、良いね。これはこれで。」
デビーは舌鼓を打ちながら、グラスを飲み干す。
優衣と涼子は日本に戻り、復学していた。便宜上、涼子は特例で卒業して既に大学に進む準備に入っている。優衣も進級が内定している。また、軍の予備役扱いにもして貰っている
「いつまでふてくされてるのよ。」
「だって…」
あの後、ライルは皇妃達全員と別れることにした。しかし、新参の三人も含めて全員が猛反対して、当局も持て余していた。
結局、内縁という形式での夫婦関係を継続する形で折り合いをつけることになったが、本人達はそれでも不満だ。事実上の別居になってしまったのだ。
「ブリタニア皇妃だって離宮だったんだから、別居は同じでしょ?」
「分かってるけど…新婚旅行。」
「それはさせてくれるんだから、良いでしょ。順番待ちよ。」
新婚旅行さえまともに出来なかったという、全員の我が儘には手を焼いていたが、幸いなことに有紗達七人には僅か、といっても一般人から見れば十分な皇妃としての金が支給されていた上についこの前までは皇族付き、更にシェール達の不正で支払われた賠償もあったので資金は潤っていた。何せ日本の円で億単位だ。学費については後見人の不正を盾に皇コンツェルンから巻き上げられることとなっているし、両親の遺産も戻っている。財産の管理は良二と長野の連名で頼んでいるので大丈夫だ。
そして、新婚旅行などはあくまで夫婦間の問題で軍や政府が口を挟むことではないので、向こうもこれ以上文句は言わなかった。
「一番は有紗に譲るけど…かち合ったら面白くないもの。」
「全く、我が妹ながら拘るわね。」
エレーナはスペインでダンス教室の不定期コーチをしていた。後進を今のうちに育てたい、という考えもあってのことだし、あの事件の賠償金を当てにするわけにも行かない。
「先生。」
「はい、何かしら?」
「先生って、ブリタニア皇子様と結婚してるって聞いたけど本当?」
生徒の質問にエレーナは僅かに引きつった。
「え、ええ……」
「じゃあ先生お妃様?偉い人?」
「お妃様、ではあるけど偉くないわね……偉いのは旦那様だから。」
「どうして?」
「先生は偉くないの?」
小さな子供達の質問攻めに遭いながら、エレーナはなんとか対応を続けていた。
情報部のグレイブ・ガロファーノはゲイリーと協議を交わし、そこには長野とコーネリアも加わっていた。ライル軍の元にいる名誉ブリタニア人の多くは生活のために『黒の騎士団』編入を希望したのだ。
「貴官は元々日本軍人だ……何も引き続きブリタニア軍人としての出向で無くとも、今ならば融通も利く。日本軍からの派遣でも良いのだぞ。」
「制度が変わろうとも、私は首尾を一貫します。一家の主であることも、騎士であることも。」
それを聞き、コーネリアは苦笑した。
「全く、前のブリタニアであればお前は騎士の良い模範だっただろうに。」
「ギルフォード卿とて、総督のお側を離れません。それと同じでは?」
「…一本取られたな。」
ゲイリーはそう苦笑し、水を飲む。
「そういえば、妻と娘がクレヴィング将軍に会いたいと言っておりました。次の休暇で会っていただけますか?」
「……なら、秀作も連れてくるが良いか?」
「ええ、突然変異種との触れ合いは情操教育に良いでしょう。」
良二は予備役という形で実家に戻り、まず両親を断罪した。ブリタニア内部での地位に今度は超合集国内部で地位を得ようと画策していた。そのために、なんと会社の金を長きにわたって横領していたのだ。
財閥の会長といえど、横領は罪だ。会社内部の問題として、牢屋に送ることはなくなった。だが、証拠を突きつけられて両親は観念し、会長の権限を良二に奪われた。
「牢屋に入れるようなことはしない。ただし、お前達は田舎の別宅で侘しく暮らせ。」
そうして、良二は武石財閥の事実上の責任者に収まった。両親が作っていたコネ自体は残っていたし、ライルの部下だった過去も活かして日本に残ったブリタニア企業及び協力企業と共に国内のインフラ整備にまず動いた。そして、E.U.で隔離収容された武石財閥の社員達の復帰と生活保障も、二ヶ月弱でもライルの皇妃だったクラリスを経由してE.U.政府に圧力をかけてもらっている。
これ自体はルルーシュの世界制覇から良二が考えていたことだ。世界に文句を言われる筋合いのない事だし、これは両親が勝手にやったこと。ルルーシュのせいではない。
何より……
「ウチの社員達が隔離されたのを、騎士だったからスザクのせいなんて言わないよな?あんた達。」
合衆国日本の閣僚達に良二は殺気を込めて言い放った。
「大体、スザクの知り合いで罪だっていうのなら紅月カレンと藤堂鏡志朗はどうなる?スザクと戦ったから正当化されるのか?」
勝手にも限度があるが、経験則からイレヴン共なら言いそうなのだ。
「この際だから、はっきり言う。俺は『スザクの友達』というスタンスを死ぬまで変えないし……俺にとって、貴様らは千年経とうがスザクに『首相の息子』という自分達に都合の良い責任を作って押しつけた、下劣で傲慢で低脳なイレヴンだ。神楽耶と首相にもそう伝えろ。」
クリスタルはフェリクスとセヴィーナ、そしてエクトルの墓に花を添えた。ライルが二人の親族に願い出て、エクトルの隣にしてあげたいと頼んだ。かなり難色を示されたが、有紗達も必死に頭を下げ、それを納得してくれた。
「ブリタニア帝国は終わったわ…これから、もっと色々なことが起こる。だから……ごめんなさい、もうしばらくそっちに行けないから。」
ライルが改革を志したブリタニアは今後、違う形で変わっていく。ライル自身もそれに乗っている。彼なりに、弟のなしたことに思うところがあるのだ。なら、部下としても皇妃としても支えるだけだ。
「ジュリア……どんなに遅くとも六、七十年後にはそっちに行くだろうから、その時には思い切り怒ってね?」
レイはスレイター家の立て直しに協力するべく予備役になった。既にイレヴンのハーフなどという蔑称は意味をなさなくなり、むしろ今まで散々レイを馬鹿にしていた貴族達もいち早く事業の再編に努めたスレイター家に助力を請う。ただし、その窓口は母の裁定でレイになった。
「ご、ご助力いただけるのでしょうか?」
「…ええ、ですが我がスレイター家も事業の再編で以前ほどの財力も権力もありません。そこはご理解いただけますか?」
「む、無論です。」
「では…お取り次ぎいたします。」
今まで散々馬鹿にしていたレイに礼節を持って接しなければならない屈辱とこのままでは家が潰れて、自分達の生活も立ちゆかなくなる危機感に板挟みになっている貴族達の姿はレイに陰惨な優越感を齎した。
私、こんなに性格悪かったのね。
美水は鈴維と共に中華連邦時代に荒廃した地域の復興に力を入れていた。大宦官達が滅びたといっても、まだ当時の荒廃は全く改善されていない。対ブリタニア戦争で最低限の改善だけして先延ばしにしていたのだ。
二人はライルの元にいた件はさしたるお咎めはなかった。それも含めて、合衆国中華を中心とした中華連邦領内の地域の教育や衛生面の改善を中心に行っていた。
張将軍も二人を保護観察するという形で協力している。
「はあ、ある意味本職に戻ったのね。」
「ライルに会えないからって、ぼやかないでください。会えないのは私も一緒なんですから。」
浅海はかつての仲間達がいた場所に花を添えた。
「日本は独立できたわ……みんなが考えていたものとは多分違うけど。」
これから、ブリタニアそれ自体も変わるしE.U.と中華連邦も一つの国家として再編された。三竦みの状態はもう終わった。
「もう、良いのか?」
かつての上官のデルクが待っていた。
「ええ、隊長は?」
「こっちに来る前に花を添えてきた。後は、あいつらへの土産話の調達だ。」
「そうですか。でも、不倫旅行は嫌ですよ?」
「安心しろ、人妻に手を出す甲斐性は無い。お前こそ、新婚旅行の順番待ちに浮かれて仕事をおろそかにするなよ?これは上官命令だ。」
クラリスはフランスに戻っていた。父は相変わらず刑務所で、家の権力の殆どはクラリスに奪われている。獄中からも同じことを企てないように徹底的に監視されていた。
「じゃあ、まずスペインとの国境付近の地域の復興の許可は下りたわけね?」
「ああ、俺達もKMFで物資を運ぶそうだ。」
KMFで物資を運ぶ。確かにKMFは重機では融通が利かない部分に役立つ。何せ実態は巨人なのだから。
「今後はKMFのそうした運用が幅広く認められると良いんだけどね。」
「ブリタニアのMR-1やリーグのKMFみたいな土木作業や災害救助への払い下げか?」
「ええ、警察に使われるナイトポリスみたいに。」
「なら、お前が意見を具申したらどうだ?」
「冗談、馬鹿親父がまた何か言いかねないから直接は無理よ。」
体制が変わったため、ライルの皇妃達は内縁になりました。でも、十人全員ライル一筋。
エリスの皇妃も同じく。
軍を離れたメンバーの多くは復活に出てきたWHAのスタッフ或いは予備役です。
良二は自分の『スザクの友達』というスタンスだけは生涯貫く覚悟です。スザクと親しいから悪なんて無理があるんだから。ただし、良二はイレヴン共はそう言うと偏見を持ってます。察しているから、藤堂達への憎悪も並外れてるでしょう。
良二にとっては『首相の息子』が『ゼロ』になっただけです。公の場ではともかく、私的には終始腐ったイレヴン共です。