コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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嵐のような暴言と出立直前の様子です。


BERSERK-11『出立』

川村雛はデビーの付き添いで『黒の騎士団』に面会した。

 

「ハロー。…川村雛中尉、第八皇子様旗下の名誉ブリタニア人よ?」

 

「裏切り者が何の用だ?」

 

日本軍人の女、千葉が睨んできた。

 

「恨み言…ていうか繰り言のために。そこの奇跡なんて便利な単語を使うペテン師に。」

 

藤堂鏡志朗をにらみつけた。

 

「中佐がペテン師だと?」

 

同じ『四聖剣』の太った男…千波が睨んでくる。

 

「そうよ?だって、そのクソオヤジ『厳島の奇跡』以外勝ってないじゃない。本当に奇跡を起こせるなら、なんで『ブラック・リベリオン』で負けたの?」

 

「それは…」

 

「ゼロの作戦指揮がまずかったとでも言う訳か。ああ、なるほど。今度はゼロに責任転嫁か。」

 

全く、このゴミ共は本当に全く進歩してない。

 

「あたしらみたいに今日一日食いつなぐのも大変な人間に、やれ『日本人の誇り』だ『大和魂』だ…挙げ句に『首相の息子』や『将軍の孫』に独立をやれなんて抜かす…他力本願で自分勝手じゃなきゃ何?ブリタニアの貴族様がおっしゃるように愚鈍なイレヴンどもが!!」

 

「裏切り者のくせに、何をほざきやがる!!」

 

「ほら、それしか言わない!その『裏切り者』のこの顔が魂や誇りで元に戻るっての?」

 

髪を払い、火傷を見せつける。デビーと雛の護衛…という見張りが僅かに眉を動かす。

 

「あたしはあの頃、熱くて痛くて……自分が生きるために何でもやった!ゲットーに北日本軍人殺して武器奪い、子供殺して火を奪い、金を奪った!お前らのスポンサーがそっちを見向きもしなかったからだよ!」

 

NACがもっとゲットーに予算を回せば自分だってマシな生活が送れたはずなのに。

 

「なのに…大方あのじいさん達が生きている内に日本が独立するのをみたいとか考えてたんでしょうね。年寄りの我が儘に付き合わされてこっちは迷惑なのよ!」

 

「桐原さん達は…」

 

「ブリタニアから日本を取り戻そうとする自分達を支援した?知るか!!あのジジイ共がグラスゴー買う金があれば、ゲットーの赤ん坊百人分のミルクが何週間分買えたのかしら?ああ、下水の水をミルクに買えて飲めってのね。石をパンにしろって言われたように。」

 

本当に、こいつらの論理はパンがなければケーキを食べれば良い。そのものだ。『腹が減っては戦は出来ぬ』と言う自国のことわざ知らないのか?

 

「…き、君のその火傷はどうなんだ?ブリタニア軍の爆撃だろう?」

 

「ええ、ブリタニアのせいでこうなったけど……だから何?これが魂や誇りで治るの?ねえ、火炎放射器か何か持ってきて、こいつら何匹か燃やさせて。実践してもらうから。」

 

「雛、やめろ。」

 

デビーが窘め…雛は軽く睨む。

 

「じゃあさ…今すぐお得意の奇跡で元に戻せよ。クソやろう。」

 

藤堂を睨み、雛は目一杯の憎悪と嘲笑をぶつける。

 

「どうしたの?やりなさいよ……やれっつってんだよ!あんたは『奇跡の藤堂』だろうが!!」

 

全員が雛の怒気に圧倒され、藤堂がゆっくりと口を開く。

 

「………すまぬ。私の奇跡は、君の顔や家族を…先日会った子の眼や両親を元に戻してあげることも、我ら日本軍人の汚点で母と姉を奪われた少年をもう一度家族に会わせてあげることもできない。」

 

「つまり、自分がペテン師だって認めるのね?」

 

「そう、解釈していい。」

 

「と、藤堂さん!!」

 

団員の何人かは藤堂が自分の非を認めたのが信じられないようだ。

 

「ねえ、開けて。やっぱこいつら何匹かこの場で処刑する。」

 

「無理を言うな。」

 

「駄目なの?どうせ、遅いか早いかの違いでしょ?」

 

だが、デビーが強く窘める。

 

「仮にも軍人なら分かるだろう。正式な手続きを踏んだのではなく、私刑だ。余計にライル殿下の立場を悪くする。」

 

「…それ、言われるとちょっとね。あの坊ちゃんはこいつらの一億倍まともで立派だし。良いわ、雇い主のために我慢する。」

 

とはいうものの、このペテン師の顔に一発蹴りを入れてやりたいのも事実だ。

 

「せめて、蹴りを入れるのはだめ?」

 

「そ、それも駄目です。」

 

見張りにまで窘められ、雛は藤堂を睨む。

 

「運がよかったわね、ゴミ共。ああ、そうだ。処刑するんだったら、このオヤジは念入りにやって。KMFや装甲車で死体を潰して、心臓も脳も壊すの。でもしなきゃ、イレヴンはこいつの奇跡に縋って、化け出て来るなんて言い出すから。」

 

「極端ですし、貴女のそんな無茶な注文も通りません。」

 

「意外とブリタニアも融通聞かないのね。」

 

付き添ったもう一人の士官が額に手を当てた。

 

「君が無茶苦茶を言うんだ。殿下の元にいたせいか、言いたい気持ちは少し分かる。」

 

まあ、良いだろう。こいつらの中には涙を浮かべて震えている奴もいる。全く、無様だ。嗤えるだけ嗤ってやろう。

 

「じゃあね、一日でも早く処刑されて。ゼロがいないと何も出来ないゴミ共!」

 

 

 

思いもよらぬ事態がいくつも発生し、先延ばしになった行政特区日本の事件の犠牲者の慰霊碑への訪問がようやくかなった。神根島は天領である以上は皇族でも早々立ち入れないので、すでに諦めた。

 

ライルはキャンドルホルダーを用意しており、中島京子の弟の名を書いていた。

 

「お姉さんの代わりに私が送る…どうか、天国にお姉さんを連れて行ってあげてくれ。」

 

そして、正式にライル軍への入隊が決まった優衣と涼子もそれぞれ父と母のキャンドルホルダーを用意していた。

 

「日本でも似たような風習があると聞いたが……」

 

「灯篭ですね。見たことはないけど、亡くなった人の名前を書いて川や海に流すんです。」

 

涼子の答えにライルは再び問う。

 

「東洋に伝わる川を魂が渡る、という考えから来たのかな?」

 

「多分、そんなイメージでしょうね。」

 

随分と遠回りをしたが、何とか中島との約束は果たせた。

 

「……君達には悪いが、あの子は本気で日本人のことを考えて特区を考案したと私は信じているんだ。」

 

そう、あのシュナイゼルでさえも彼女があんな暴挙に出るなどと思っていないのだ。だが、状況がそれを否定している。ライルやコーネリア…スザクがいくら違うと考えても事実は揺るがない。

 

その場にいなかったとはいえ、両親を失った二人の前で言うべきことではない。でも、言わずにはいられなかった。優衣が顔を伏せ、涼子が睨む。

 

「だったら、どうしてあんなことに?」

 

「突飛というか、荒唐無稽というか…ゼロが何かした。そう考えてしまう。」

 

ただ、あの場でゼロが危機的状況に立たされたのは事実。打開するためには、特区への参加を表明して組織の方向転換と、それによる関係改善。普通ならばそうだ……だが、もしライルが考えているように薬や暗示を使ったとすれば?

 

「理屈は分かるけど……でも、証拠がないんでしょう?」

 

「ああ、分かっている。だが……それでも。」

 

 

 

優衣はライルの言いたいことが分かった。

 

ライルはユーフェミアと仲が良かった。それはあの顔を見ればわかる。部下のブリタニア人や名誉ブリタニア人の話によれば、ライルは特区が成功したらそれをモデルケースにエリア政策の改善案を本国に持ち込むつもりだったという。政治は疎いが、それで自分の発言権強化、エリア制度の修正や緩和政策による外国との関係修繕や治安の安定を狙ったのだと思う。

 

軍人とはいえ、政治面での方針はあの事件までのユーフェミアよりのライルにとっては良かったのだろう。なのに、あれだ。

 

あの事件が原因で、ライルも同類という疑惑が浮上して優衣でさえ実際に会うまではその可能性も疑っていたのだ。

 

「すまない……さあ、トウキョウに戻ろう。出立の準備をしておかないと。」

 

「イエス・ユア・ハイネス。で、良いんですよね?」

 

「ああ。」

 

着いていくが、車に乗ったところで優衣はライルの腕にしがみついた。

 

 

 

「何?」

 

「好きな人に甘えたいの。」

 

「あのな…」

 

だが、優衣はしがみついて豊満な胸で右腕を挟む。

 

「ねえ、メイドの有紗って子……もうライル様とすることしたんですか?」

 

ライルの顔が引きつった。どうやら、本当らしい。

 

「むぅ……私もライル様としたい!」

 

「あんた、いきなり何考えてるのよ!?しかも慰霊碑の前で!!」

 

「だって、一目ぼれは本当だもん!変なオヤジにされるより、良いじゃない。公私ともに支えますわってやつよ!それに新参ならガンガン攻めないと!!」

 

どことなく、ジュリアに似てはいるがやはり別人だな。少し無謀なようでもあるがこういう正直なタイプは好ましい。だが…

 

「私の地位が目当てなら、即座に追い出すぞ?」

 

だが、優衣が不機嫌な顔になる。

 

「何それ?皇子様だから一目ぼれしたって言うんですか?一目ぼれした相手がたまたま皇子様だっただけよ!!ついでに玉の輿だけど!!」

 

なんという馬鹿正直さ……しかし、自分の地位がついでとは。

 

「大体、こんないい男ここで逃したら次はないわよ!!」

 

「分かった、わかった。」

 

二人ともアルバイトに近い経験があったとはいえ、その才能は高い。士官学校の教材をいくつか持ってきたが、それをクリアしており、現地徴用の軍人でやっていく分には十分な学力もある。語学はブリタニア語と日本語のみだが、それは今後だろう。ブリタニア語が話せるだけ、十分だ。

 

優衣はデスクワークが得意で、スケジュールの管理や書類の整理も皇コンツェルンで手伝っていたという。涼子は機械工学が得意なだけあり、既にグラスゴーの解析をやってのけている。現在はサザーランドとグロースター、わずかだがランスロットとヴィンセントにも踏み込ませ、鹵獲した『黒の騎士団』の月下も見せている。

 

「さて、五日後には出立だ。学校の方には私と知り合いの日本政府官僚から伝えるから、君達は日用品を買いそろえるんだ。」

 

「はい。」

 

 

 

有紗はヴェルドとコローレに付き添われてハラジュクに来ていた。

 

「おい、ブリタニア人がなんでいるんだ?」

 

「いや、あの女…もしかして。」

 

流石に目立つが…今のゲットーでは名誉ブリタニア人であることがばれればどうなるかわかったものではない。だからこそ、ある種軍人という抑止力のヴェルドとコローレが来ている。

 

「ここでいいのか?」

 

「ええ……」

 

街は前に来た時より、心なしか荒れていた。やはり『ブラック・リベリオン』の名残が大きかったのだろうか。

 

「お邪魔します。」

 

「はい……有紗か?」

 

福原だ。心なしか、少し疲れているようだ。

 

「福原さん、お久しぶりです。」

 

「よく帰ってきたな…で、そちらは?」

 

「ああ、お姫様の護衛。」

 

「なるほど……どうです?まずいコーヒーならごちそうできますが。」

 

コローレがそれに頷いた。

 

「では、お言葉に甘えます。」

 

いつものようなやや汚れたカフェでコーヒーが出された。有紗が買ってきたコーヒーや茶菓子は出されていない。

 

「また随分と持ってきたな。」

 

「はい……あの、やっぱりここの人達も何人か?」

 

「ああ…気をつけろ。お前はネットで話題になってる。第八皇子様のお気に入りだって。」

 

有紗を知っている人達の視線には敵意がある。ブリタニア皇族の元へいるというのが理由だ。身体で皇族に取り入った、と思われているのだ。

 

「行政特区の事件…なんで、あんなことになったんだろうな。」

 

ヴェルドとコローレも少し顔を伏せる。

 

「意味ないことだけど、この子の皇子様は白よ?」

 

「まあ、そうだと思うけどね。」

 

「ライル様は無実よ……本国の事件だって。」

 

「分かってる。部下の反乱だろう?けど、ゲットーの大部分は奴さんがナンバーズの部下を殺した表面しか見てない。」

 

コーヒーを飲んで、有紗は黙るしかなかった。

 

「それじゃあ、そろそろ。」

 

「ああ、外縁まで付き添うよ。」

 

福原が付き添ってくれて、彼らは無事に租界へ戻った。

 

「それじゃあ、福原さん。気を付けて。」

 

「お前もな…無理はするなよ?」

 

恩人と会い、あの時の心が少し晴れた。が…もし、ライルに夜の相手を求められたら……

 

「私達から言っておこうか?」

 

「いえ…その……私から、ちゃんと言いますから。」

 

「そっか…まあ、大将の方もしばらく言い出さないだろうぜ。あの優衣ちゃんが代役買って出そうだけど。」

 

それはそれで…やや不安だが。

 

この後、三人はガラの悪い警官に絡まれて有紗の身体を狙われたが、ヴェルドとコローレが軍のIDを提示して撃退した。それでもしつこいのがいて、実力行使せざるを得なかった。応援が駆け付けたが、上司にIDを提示して照合させた結果……正当防衛が認められた。周囲の民間人も証言をした結果だ。

 

「ったく、実際に体験してみると分かる。大将がブリタニア人を信用しないわけだぜ。」

 

「ここまでなったら、綱紀の粛正は至難の業だね。」

 

 

 

長野は官舎を出る際に、妻子から着替えと日本の保存食を受け取っていた。

 

「それじゃあ、これ。ウチの自家製の味噌と梅干。」

 

「すまないな、わざわざ。」

 

「地元の味が恋しくならない措置よ、気にしないで。その代わり、本国のお土産買ってきてね?」

 

「わかった……もう少し昇進すれば、租界の良いレストランに融通が利くかもしれない。」

 

「別に租界のじゃなくても良いわよ…協力企業の店でもね。」

 

 

 

「川村のように恨み言の百や二百、言わなくてよかったのか?」

 

「桁が一つ足りないし、どうせなら処刑したかった。」

 

秀作がさらりと言い放つ。流石に物心ついた頃から換算しても十年以上積み重なった祖国への憎悪は簡単に消えないようだ。

 

「セラとの事で俺が色目を使ったとか、セラが俺を誘惑したなんて言えば頭の中をぶちまけるが。あんたやライルが俺を洗脳したでも、同じだ。」

 

少し、変わったか?以前は「俺になる」、『将軍の孫じゃない俺になる』ということに執着していたが……

 

「せめて、お前の憎悪は両親の同類や祖父の勇名に縋るイレヴンだけにしておけ。」

 

「無理だね……突然変異種共を除外するのが手一杯だ。」

 

突然変異種とは有紗達の事だろう。あの少人数でさえ信用してもこれだ。日本の、いや…畑方源流の息子夫婦は名前だけなら聞いているがどういう人間だったのだ?

 

「今度来た連中と顔合わせはしたよな?」

 

「話はしていない。」

 

「祖父の名前とそのつながりを持ち出されて、いきなり殺すことだけはするな?」

 

「分かっている……そんなことしたら、奴らが俺を祭り上げるに決まっている。」

 

一応、自制をしようと努力しているだけ進歩だ。来た頃よりは確実に進歩している。

 

 

 

武石良二は両親から皇族の親衛隊に入ったことについては褒められはしなかった。落ち目のライル軍であったからだ。

 

シュナイゼルの騎士団にはいればよかったと文句を言ってきて、挙げ句に昔の付き合いでスザクの直属に入れてもらえなんて言ってくる。それで出世できれば誰も苦労はしない。

 

「大体、皇族の親衛隊だって充分な出世じゃないか。」

 

しかも、ナンバーズで構成された騎士団………特殊だが充分な出世であることに間違いはない。スザクの考えを追う意味でも。

 

俺自身の出世とそれで社員達を守れる足がかりにする!

 

 

 

哀沢幸也はライル軍士官の立ち会いで、去年ライルが追った日本軍人の組織を見つけた。物資の流通を停滞させる中で、自分の名をアピールするような軍人がいて足が付き、逃げられたという。リーダーは海棠隆一大佐、そして問題が行村鷹一少佐。

 

「見つけた…みつけた!母さんと、姉さんの仇!!」

 

「お、お前の母親と姉を殺した日本軍人とは、そいつだったのか!?」

 

「ああ、そうだ。奴を殺すためだけに生きてきた。奴がやったことをイレヴンに訴えても、俺が名誉ブリタニア人だから良いこと!挙げ句に、母さんと姉さんが父さんを裏切ってブリタニアに内通したから殺した、なんていって正当化したんだ。

 

そんな奴ら、クズだ。あいつの一味だ。幸也はそいつらを皆殺しにした。頭を鈍器が砕き、肯定した子供も殺した。

 

「……ライル殿下を正直、まだ信じられない。だが、奴がE.U.にいるのなら俺は絶対に奴を殺す!そのために、殿下の命令に従う!」

 

「そ、そうか…励めよ。」

 

 

 

ノエル・アーデルハイトは租界で雑誌を何冊か買い、同時に新聞を見つけた。それも買って読んでみると、ライルが事務次官を処刑して闇オークションを検挙したニュースが報じられた。おおよそ、事実が書いてある。だが…

 

「イレヴンを採用するライル殿下の精神面を憂慮する事態、か。」

 

皇族だから取り繕っているが、要はバッシングだ。枢木スザクが駄目ならば、他の名誉ブリタニア人を貶める記事を書くとは。しかも植民地政策に協力している長野五竜まで対象にした記事もあった。報道機関はこんな事をしたら、今も残る協力者を敵に回す、という発想さえできないのか?

 

私の時と同じ……貴族がやるから良いことで、平民がやるから悪いこと。

 

兄を陥れたのがそもそもの原因なのに、もはやそんなこと時の彼方だ。

 

こんな記事、読んでも不愉快なだけだ。ごみ箱に捨てようとした時、人とぶつかった。

 

「ごめんなさい。」

 

「いえ、こちらこそ。」

 

ぶつかったのはブリタニア人の少年…丁度同じくらいだろう。

 

「あれ、貴女の顔……」

 

少年がバッグから雑誌を取り出し、何かと見比べる。

 

「やっぱり。」

 

「何、有名人か何かじゃないわよ?」

 

「いえ、この記事……」

 

少年が雑誌の記事を見せると、そこには。

 

「『故アーデルハイトの娘、第八皇子ライル殿下と情実の疑惑あり』?」

 

何だ、これは。

 

「どういうゴシップよ、これ。」

 

「いえ、どこで聞きつけたのか第八皇子殿下の親衛隊に名誉ブリタニア人や元日本軍人がいるんですけど……その人達は最近バッシングのネタが少ないから、今度は。」

 

ああ、レイ・コウガ・スレイターもしばらくはエリア11でも話題になっていたし、メイドの飯田有紗さえも顔が割れていた。

 

「やっぱり違うみたいですね……多分、太鼓持ちが大貴族達を喜ばせるために書いたんでしょうね。」

 

「随分と貴族に批判的ね…」

 

「僕も、ちょっとそういうのに思うところあるから。極端だけど、ゼロでも誰でも全部壊してくれないかな?って。」

 

本当に極端だ……

 

「ゼロに好意的な意見については……聞かなかったことにしてあげるけど、気を付けてよ?」

 

「ええ、それじゃあ。」

 

随分と穏やかな物腰だが、今一瞬だけ…憎悪があった。そう、ノエルが今も抱いている。貴族や皇族への憎悪だ。

 

 

 

「あの人、本当に軍人だったんだ。」

 

ラルフ・フィオーレは記事の少女ノエル・アーデルハイトと少しだけ話して気になった。彼女は、どうしてブリタニア軍に入ったんだろう?

 

貴族が幅を利かせている以上は平民が出世できる可能性は低い。出世できても、この記事のように不正扱いだ。

 

普通なら不正になることが貴族なら許され、日本人ならすべてが不正扱い。『ラウンズ』になった枢木スザクでさえバッシングする記事が再燃焼したくらいだ。

 

普通の方法ではほぼ不可能だし、ライルのような皇族でさえブリタニア人社会では異端。挙げ句の果てには日本人のメイドやハーフの女騎士が誘惑したから名誉騎士団を始めた、などと言い出す始末。時系列など無視だ。

 

皇族でさえこれなら、僕達平民は不可能だ。なら、テロでもやって根本的にひっくり返さないと駄目なのだ。

 

一度、全部壊れて同じ状態に陥ってしまえばそんな根拠のない優位論に縋る者はすぐに滅びる。だから、ラルフは『黒の騎士団』に加わった。ゼロならば、その可能性があると信じて。

 

ラルフ自身はまだ諦めていない。少なくとも、カレンも何かの理由で再起の可能性があると言っていた。ならば、諦めない。

 

扇さんたちが処刑されないのも、きっと何か意図がある。もしかしたら、そこに付け入る隙が。

 

同じブリタニア人……貴族の利己主義で全てを失った二人は全く正反対の道を選んでいた。

 

五日後……いくつかのアクシデントに見舞われながらもライル軍は中華連邦へ向かった。

 




雛の対面、藤堂の奇跡への一種のアンチテーゼ…もしくは藤堂の奇跡のせいで家族が自爆したと思う人もいるかもしれません。

雛の場合、藤堂がいれば勝てるなら『顔を元に戻すくらいやれ』、『お前やゼロの軌跡で顔が元に戻れば寝返ってやる」と、絶対に出来ないことをいって踏みにじってやるのが目的でした。

そして、ライルにとってはやっと中島京子との約束を果たせました。欺瞞でも、約束は約束ですからね。

そんな姿も優衣と涼子に少なからず影響を与えるでしょう。

ノエルは同じような境遇のラルフと出会いました。幸也とノエルは元々頂きキャラですが、うまく行かせなかったので。幸也は敵役として私が行村を考え、ノエルはどうすれば悩んだ結果…境遇が似て、選んだ手段が逆のラルフと出会いました。次に会うのはかなり先ですが、お互い印象に残っています。

秀作は僅かに心境に変化が生じ、不器用ながら保護者として接するゲイリーや『将軍の孫』を要求しないライル、『復讐でもちゃんとここにいる』と言ってくれたセラの影響が出ています。また、一年近く過ごしたことで今、有紗やレイ、長野は『突然変異種』と呼んで信用しています。祖父の有名でアレをやれ、これをやれといわず、自分に接しているから突然変異種です。

新メンバーも頑張ろうとしています、
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