コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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今度はエリア24です。とにかく、色々詰め込みすぎた結果……R2はドンパチよりも謀略がメインになっています。


BERSERK-15『エリア24』

『方舟の船団』のテロで逃げ出したE.U.政府は支持を失いながらも、防戦を続けていた。だが、只でさえ士気の低い軍で本腰を入れて攻めてきた本国を相手に抵抗しきれるはずもなく、徐々に押されていき、既にスペインが失陥してエリア24として成立。そのエリア24が問題であった。

 

外交の人質だが、政治や経済の論文を発表した美水の頭脳に着目したライルは彼女の意見を伺うために、軍で公開されるエリア24の映像を見せた。

 

「っ…中華連邦でも外交ルートで入っていましたけど、ここまでやるなんて。」

 

美水が記録映像を見て口元をおおう。映像には廃墟と化したスペインの街並み、蜂の巣にされた子供の死体まで映されていた。あの後、拡張して『大グリンダ騎士団』となった『グリンダ騎士団』の殺戮は本国すら問題視している。

 

「これではテロ鎮圧の部隊ではなく『グリンダ騎士団』そのものがテロ組織ですよ。」

 

確かに、これでは軍隊の皮を被ったテロリストである。これがエリア11だったら『黒の騎士団』の支持に回るイレヴンがいるのも無理ない、とライルは考えてしまった。

 

「普通の感性を持つ人間なら逆らおうとは思わないが……これではな。」

 

これでは逆効果だ。大人しくていたところで殺されるという恐怖の方が先に出てしまう。

 

まさか、反政府活動を煽って軍拡路線を正当化?いや、考えにくい。

 

『紅巾党の乱』の後、素性のしれない男を筆頭騎士にしただけでなく今のような虐殺に走ったマリーベルは暴走が止まらない。側近のヨハン・シュバルツァーでさえ盲目的に従っている。そうした暴走に着いていけなくなり、ソキア・シェルパは除隊して行方不明、オペレーターのエリシア・マルコーアも本職のアイドルに戻ってしまっていた。

 

おかしい…何かがある。オルドリンを探そうともしないこととも何か関係が?

 

「美水…君は最初の挨拶以外では会わない方が良い。」

 

「殿下……」

 

今のマリーベルは何をしでかすか分からない。とてもではないが、信用できない。だがもう一人…ライルが最も嫌う第五皇子ルーカスもエリア24に来る。

 

ポーカーで言えば、ジョーカーが二枚ある状態じゃないか。

 

ジョーカーが二枚もあるポーカーはルールが成り立たない。そんな状況で勝負なんかしたら、勝てるわけがない。

 

 

 

エリア24に到着したライル軍を出迎えたのは、『大グリンダ騎士団』のグロースターだ。どの機体もブレイズルミナスを搭載した試作型の追加装備やザッテルバッフェで武装しており、必要とあらばこちらを殺すと言わんばかりだ。

 

「お待ちしておりました、ライルお兄様。」

 

「…久しぶりだね、マリー。」

 

握手を交わし、マリーベルが後ろを見る。

 

「そちらは?」

 

「連絡した、中華連邦の張 高山将軍の御息女…張 美水嬢。大宦官の命で、私の軍に出向してくださっている。」

 

「張 美水です……お会いできて光栄です、マリーベル皇女殿下。」

 

「……こちらこそ。しかしお兄様、何故そのハーフを今も騎士に?」

 

レイを睨みつけるが、ライルもまた睨みかえす。

 

「彼女は昨年の私の部下達のように、反旗を翻したわけではない。私の不興を買うようなこともしていないのだから、問題はないだろう?それとも、ハーフで生まれたこと自体が反逆罪だとでも言うつもりか?一体いつそんな法律ができたんだ?」

 

無論、そんな法律はブリタニアにだってない。だが、今のマリーベルならそれくらいは言いそうなので、牽制をした。

 

「失礼いたしました。」

 

レイでさえこれだ。有紗や長野なら、言いがかりで殺しに来ることも平然とやりかねない。

 

そこへ、このエリア24の文官がやってきた。

 

「総督、本日の式典ですが…」

 

「必要ありません。」

 

マリーベルはその一言で去っていった。何やら悪い予感がする…

 

「お兄様、わたくしの代理として今回のパーティーへの出席をお願いできませんか?」

 

「唐突だな。ついたばかりで、しかも今日だというではないか。」

 

……礼装はいくらかストックがあるが、それでも無理がある。

 

「私は総督としてテロ鎮圧の対策を練る必要があるのです。お兄様方はそちらをお願いします。これは総督の要請です。」

 

そう、来るか。遠征軍のライルでは断り切れない。

 

「分かった……」

 

 

 

あまりに急だったため、ライルは普段の礼装に儀礼用のマントを羽織って出席した。とはいえ、軍服それ自体が正装に等しいライルがそれで出席することには何ら問題はなかった。そしてもう二人……ルーカス・ズ・ブリタニアと騎士のフィリア・ホーリングが来ていた。

 

「お久しぶりですわね、ライル殿下。」

 

「ああ……」

 

この女、ジュリアが死んだあとライルの騎士候補として名乗り出ていた。祖父の代で男爵位を得た娘だが才能はあり、士官学校も上位の成績で卒業。実戦でも戦果を挙げていた。だが、とにかくジュリアを選ぶ以前から色目を使ってくるのでライルは辟易していた。そこへさらに、男爵家の娘というブランドを振りかざしてジュリアや他の平民出身のライルの部下達を公然と侮辱する態度が目に余って彼女を騎士候補から外した。この判断は当時のゲイリー達からも高く評価されており、あんなのを親衛隊の隊長に任せたら隊員達をわざと殺しかねないと評されていたほどだ。

 

母は珍しくあの女を高評価していたが、それはおそらく貴族である分ジュリアよりマシ。更に言えば、ライルから見れば悪い貴族主義の性格が好ましく映ったのだろう。大方、『歴史の浅い男爵家でありながら、貴族の在り方を心得ている』というところだろう。だが、ライルに言わせればあれではいくら優秀でもそのうちにぼろが出て、せっかく男爵位を手に入れた祖父の苦労も水の泡になってしまう。

 

祖父はともかく、父親の尊大な態度は並々ならぬ苦労をしたからかもしれないが、それに胡坐をかいて家の存続ができなければ本末転倒も良いところだ。

 

ルーカスの方が継承権はライルよりは確かに上だが……度の過ぎる上昇志向と自惚れの強いこの女の事、実はシュナイゼルあたりに売り込んで失敗したのではないか?

 

「私のような選ばれた血統ではなく、イレヴンまみれを騎士に選任せざるを得ないなんて…相当運が悪いのでは?」

 

「……さあ、少なくとも現場では頼りになるから問題にはならないよ。」

 

この女よりレイの方がずっと頼りになる。それは本当の事だった。

 

「ライル、お前の女共だがあれほどのものはお前には荷が重いだろう?」

 

ルーカスだ……母親同士がとにかく犬猿の仲だが、ライルはそれを抜きにしてもこの男は大嫌いだった。ライルと仲が良かった二人を苛めていたこともあるし、何より今は世界が自分を中心に回っていると言わんばかりの態度に、自分だけいれば国はどうとでもなるというような発想。

 

正に『パンがなければケーキを食べればいい』という手合いだ。とにかく、ライルと会えばいがみ合いだ。

 

「出会いがしらになんです?」

 

「俺がもらってやると言っている。兄の心遣いに感謝しろ。」

 

要は有紗達をよこせ、ということか。

 

「ご冗談を……イレヴンやハーフですよ?高貴な伯爵家の母を持つ兄上には相応しくありませんよ。」

 

「ふん、あれほどの上玉はお前に釣り合わないと言っている。高貴な血筋から生まれた俺に相応しい。お前のような田舎貴族の皇子では不釣り合いだ。」

 

ああいえば、こういう。あの母親も同じだ……

 

「残念ながら、私は彼女たちを真剣に気に入っていまして。手放す気はありません。」

 

「この兄に逆らうのか?」

 

「いくら兄でも、譲れませんね。それに私的な事情を除外しても、彼女達は我が軍にとっても貴重な人材。やすやすと手放せません。」

 

パーティーの場で今にも戦争をやりかねない空気を漂わせる皇族達にスペインの要人達もブリタニア貴族達もたじろいだ。

 

「お二人の仲の悪さは聞き及んでいたが、これほどとは。」

 

更に、護衛として同行していたレイにフィリアが突っかかる。

 

「噂の混ざりものさん……ドレスは用意できなかったのかしら?ああ、島国の家畜に合うドレスなんかなかったものね。」

 

「……その島国の家畜に取り入ろうとした相手を取られたのは誰かしら?」

 

「ぐ…この、イレヴンまみれの分際で男爵家の娘を愚弄するの!?」

 

「すぐに爵位や人種を自慢する…」

 

正論や軍隊の現実論を駆使するライルとレイに対してルーカスとフィリアは特権思想しか出てこない。旗色はライル側に傾いていた。

 

だが、このままいけば決闘にでもなりかねない。誰かが止めねば、と双方の要人たちがタイミングを計ろうとしていた時……

 

 

 

一部の来客たちがどよめいた。ライル達も口論を止め、その方向を見ると……年輩の男にエスコートされた銀髪の美しい女性が入ってきた。後ろからは銀髪の少年と少女が入ってくる。おそらく姉弟だろう。となれば、先頭は父親か?

 

西洋人らしく白い肌にやや灰色がかかった飾ったセミロングの銀髪、ワインレッドの瞳に優衣とクリスタル以上に豊満な胸と細い腰、正に絶世の美女だ。後ろにいる同じ髪と色の少年は髪をまとめているが、男性ゆえの美貌はもしかしたら四、五年後には今のシュナイゼルを超えるかもしれない。それほどの美貌で貴族令嬢が既に顔を赤くして見とれている。さらにもう一人……三人の中では一番年下であろう少女はスレンダーながら胸や腰はバランスよく、最初の女性が柔らかな雰囲気なら、彼女はやや釣り目な雰囲気で強気な印象を持たせる。

 

「ガルデニアオーナー、いらっしゃっていたのですか。」

 

「ええ、政庁から招待状が届きまして。」

 

早速年輩の男が取り囲まれ、三人も貴族達に言い寄られる。

 

「あなたのような美しい方を伴侶とできるのは男として幸せですな。」

 

「あ、あの!母にご紹介したいのですが。」

 

「姉君もお美しいですが、貴女も負けておりませんな。」

 

凄い人気だ……確かに、三人とも稀代の芸術家が作った彫刻か何かと言わんばかりの美しさだ。ライルも、自分の容姿は良い方だとは思っているがアレに勝てる気はしなかった。

 

ルーカスも早速動いた。

 

「第五皇子ルーカス・ズ・ブリタニアです…」

 

「エレーナ・ガルデニアです。」

 

「ほう、貴女が…本国でも貴女のファンは多いですよ。どうです、妹と共に本国へ赴いては?私なら色々と便宜を図れますが。」

 

嘘だ…どう考えても彼女の身体が目当てだ。あれにルーカスが食いつかないわけがない。

 

「ご冗談を…私達にはE.U.加盟国の慰問だって大きすぎるステージなのですから。本国などは。」

 

何とかかわそうとするが、ルーカスはしつこい。

 

「謙遜を……それだけの容姿なら、世界だってとれるでしょうに。」

 

ライルはため息をつき、近くのスペインの要人に問う。

 

「彼女達は?どうやらスペイン系の要人に見えますが。」

 

「はい…只今ルーカス殿下が声をかけているのがエレーナ・ガルデニア。スペイン時代のバイラオーラ…つまり、フラメンコのダンサーです。」

 

フラメンコ……聞いたことがある。スペイン独自のダンスだ…となれば

 

「では、あちらの二人も?」

 

「弟のヴァレンティン・ガルデニアと妹のセルフィー・ガルデニアです。二人もダンサーで、エリア24がスペインだったころは国内でトップクラスの人気を誇り、E.U.軍の慰問にも赴いていたとか。」

 

それほどの大物……となれば、父親もかなりの資産家なのだろう。流石にマリーベルもそうした人物を無碍に扱うことはしないか。

 

 

 

エレーナ・ガルデニアは第五皇子のアプローチに辟易していた。どうにかして、丁重に断ろうとするがしつこい上にさっきから自分の胸や腰、尻ばかりだ。自分の発育しすぎた身体は自覚しているが、ここまで見られるとうんざりする。殴ってやりたいが、そんなことしたら暴君としておそれられるこの男の事。どうなるか目に見えている。

 

逃げられずにいた時、一人の男が目に留まった。一つか二つ、年下に見える白髪と思われそうな灰色の髪の少年だ。自分にはさほど興味がないように見える、或いは芸能に疎いから知らないのだろうか?

 

「ルーカス殿下、申し訳ございませんが少しお話ししたい方がいらっしゃったので。」

 

「この私を差し置いて?」

 

まただ……いったい、この男はどういう教育を受けたんだ。まるで自分が目をつけたものは全部自分のものだと言わんばかり。E.U.政府や軍上層のボンクラ息子共がもっとひどくなったようなタイプだ。あいつらにも身体を狙われ、危ないことも何度かあった。

 

「ええ、機会があれば後ほど。」

 

エレーナは半ば強引に退散し、灰色の髪の少年に声をかけた。

 

「失礼いたします。」

 

「あ、先程の…」

 

「ブリタニア貴族の方でしょうか?」

 

「いえ…正確には皇族です。第八皇子ライル・フェ・ブリタニアです。」

 

第八皇子ライル……噂では聞いている。イレヴン、旧日本人のハーフを騎士にした…ナンバーズ出身者を取り立てていると…一方で最近になり女好きになったなど悪い噂もある。

 

「エレーナ・ガルデニアです……スペイン時代はダンサーをしておりました。」

 

「先程、お聞きしました。フラメンコのダンサーだと。」

 

「ご存じなかったのですね?本国と『ユーロ・ブリタニア』の要人の方にも私達を存じている方もいらっしゃったのに。」

 

ライルは苦笑する。

 

「芸術に疎いもので…亡くなった第三皇子ならお父上と気が合ったかもしれませんね。」

 

不思議と、彼とは話が弾む。エレーナは少し踏み込んでみた。

 

「殿下はどうなのですか?」

 

「私は御覧の通り、軍人ですからね。あなた方のことも先程、知ったばかりです。」

 

芸能には疎い…少なくとも、それは嘘ではなさそうだ。

 

「あ…殿下は何かご趣味は?」

 

「趣味?……趣味、といえるかどうかは分かりませんが…隠居したら祖父母の農場で野菜や果物を育てたいですね。今はそんな余裕がないですから。」

 

野菜や果物の栽培…皇族にしては、随分と質素な夢だ。世界を取るくらい言っても良いはずなのに。今まで会ってきたどんな資産家ともまるで違う。

 

「殿下…少し、バルコニーに出ませんか?」

 

自分で言って、驚いた。今まで、誘われたことはあっても誘ったことはなかった。

 

「……ええ、私も少し喧騒に酔ってしまったようです。」

 

 

 

ヴァレンティン・ガルデニア…ヴァルは少し、意外だった。姉があそこまで男と話が弾んで、しかもバルコニーに出ていくとは。

 

三人は今こそ売れっ子のダンサーだが、かつてはストリートチルドレンだった。物心ついた時にはすでに三人だけでスペインのスラムにいた。知っていたのはファーストネームだけ……自分達が本当にスペイン人であるかさえ曖昧だ。

 

今もストリートだったら、街の景観を損なうとかの口実で殺されていたかもしれない。

 

 

 

セルフィー・ガルデニアは貴族達の相手に疲れる中、姉が一人の男とバルコニーへ出るのが見えた。

 

姉さん……自分から男を誘ったの?

 

セルフィーが物心ついたころには、兄と姉に守られていた。名前からして、親は自分の力で生きられるような子に、或いは天使の名前からでも名付けたのか、それとも二人が読めるようになった時点で既に名札から文字がとれたのかはわからない。既に三人だけで必死に今日の食べ物を盗んで生きてきた。幼女好みの客に受けがいいのか、姉共々娼館に売られかけたこともあった。

 

そんな中、三人はアンダーグラウンドにも片足を突っ込むことで生きてきた。同じようなチームと潰しあいになった。そうして生きていくため、盗みに入ろうとした屋敷で失敗して捕まった。それが今の父だ。

 

 

 

「父は、私達を逮捕させるより引き取ったんです。社交の点数稼ぎなどもあったかもしれないけど、それ以上に本気で私達の事を考えて。」

 

『こう見えて独身だし、家族もいないからね…寂しいのもある。』

 

それで引き取られたのが五年前……実際、エレーナの方に無理が生じ始めるころだったので足を洗うにはちょうど良かった。最初こそ、エレーナの身体目当てだと疑ってかかったが、父はそれをせず……本気で三人が学校に行けるように計らってくれた。

 

「弟と妹は健在のスペイン学校に通っていて…私も高校はちゃんと出られたんです。」

 

「そうですか……ダンサーとして売り出せたのは今から三年前だと聞きました。」

 

そう、父に恩を返したいと思い父が運営する劇場でダンスを学んだ。ストリート時代に逃げ回ったり、他のグループと小競り合いをしたおかげで身体のこなしには多少の自信があった。

 

その経験と持ち前の美貌もあってか新進気鋭のダンサーとして売り出された。ストリートチルドレンの過去をなじる記事もあったが、そんなものを跳ね返す人気で外交の接待で『ユーロ・ブリタニア』とブリタニア本国の貴族にも注目された。もっとも、中にはエレーナとセルフィーの身体を狙う資産家の男、ヴァル狙いの貴婦人もいたが。

 

「いずれにしても、父には本当に感謝しているんです。そうでなかったら、今頃…」

 

今頃は保護というオブラートに包んで革命政府お抱え、本国か『ユーロ・ブリタニア』の腐敗貴族の娼婦にされていただろう。今でもまともな暮らしができるのは父が劇場のスタッフや子供達のために早い段階で恭順を示したからだ。

 

「だから、多少のことは我慢できるのか……」

 

酔い覚ましにと頼んでいた紅茶が来て、ライルが一口飲む。

 

「…あの、よろしければ劇場へいらっしゃいませんか?今の私達なら一番高い席を用意できますけど。」

 

自分で言った後で、エレーナは驚いた。

 

え、私どうして?こんなこと…

 

有力者達にこんなこと言ったことなんて、一度もない。言ったら最後、ベッドまで連れていかれかねなかったからだ。

 

「…よろしいのですか?」

 

「あ、は……はい。」

 

ライルは微笑して応じる。

 

「それでは、お言葉に甘えますよ。農場の子達に良い土産話ができそうだ。」

 

 

 

ルーカスは居室でフィリアを抱いていた。それだけではなく、エリア24の官僚がルーカスに献上したツーフォーの女と未だ隔離されているイレヴンの女もいる。二人もフィリアに負けじと豊かな身体の女だった。だが、ルーカスは内心では不快だった。

 

何故、俺様ではなくライルだ?俺様は伯爵家の母から生まれた、高貴な血筋。たかが田舎の子爵家の皇妃から生まれたライルよりはるかに優れた血統で、能力も遥かに上。なのになぜ、あれほどの上玉はあんなのを選ぶ?

 

しかも、中華連邦の将軍の娘はあれに引けを取らない美女だ。それさえも、ライルに預けられている。成り上がりの平民らしいが、伯爵家の縁戚より田舎貴族を好むとは。

 

まあ、いい。どこかで奴を排除すればいい。その後で、あの女共もいただくとしよう。

 

まずは、目の前の女共をたっぷりと味わうことにするか。

 

フィリアは経験が豊富だが、ルーカスの前には無力だ。ツーフォーとイレヴンの女もルーカスに抱かれ続けた結果、最初に拒んでいたのが嘘のように従順になっていった。

 

 

 

ライルはパーティーで会った女性、エレーナ・ガルデニアには不思議と好感を抱いた。弟と妹と会う機会はなかったが、取り付けた公演の後で会う約束をしている。その時にでも、二人とも会ってみよう。

 

パーティーに出席していたヴェルドが肘でライルを小突く。

 

「大将、あの姉ちゃんすげえ胸だったな。」

 

「言うと思った……まあ、確かに優衣やクリスタルより上だったね。」

 

「おまけにえれえ美人だ。あら、ルーカス殿下から守る意味でも大将がもらっちまいな。」

 

何故、そうなる?と言いたいが、確かにあれはルーカスが逃がすとは思えない。マリーベルと共謀でもしかねない。知り合った以上は不快極まりない展開だ。

 

「先手を打った方が良いだろう。」

 

ライルは今回のパーティーを主催した文官に連絡を取った。

 

 

 

マリーベルは金髪の若い男の胸に顔を預けていた。

 

あの日以来、オルドリンの後任として騎士とした彼とはこうして身体を重ねている。

 

「それで、あの兄たちのどちらに着くんだ?」

 

「どちらにも着かないけど……」

 

ライルの方が目下、問題だ。本国の事件でもなお名誉ブリタニア人達を処刑しなかったうえに、方針それ自体は変えていない。テロリストを招こうとしているのだ。

 

このエリア24のツーフォーをスペイン人などと呼んでいる以上、間違いなくテロリストの内通者だ。違ったとしても、あの男にこれ以上好き勝手をさせるわけにはいかない。

 

仮にライルが内通していなくても、彼の軍事力は侮れないし、本国の中小貴族、植民エリア住民の信頼は根強い。昨年の事件だって、名誉ブリタニア人制度そのものの廃止に行き着かなかったのはそうした観点と暴動の過激化を防ぐためだった。

 

分かっていない……全て処刑すれば済む話だ。

 

だというのに、シュナイゼルさえいまだにライルに肩入れしている。恭順させるのなら、強大な力を持てばすむ話ではないか。大体、あのメイドや騎士は死ぬのが大好きなイレヴンだ。なのに、日本人と呼んで全ての日本人はそうではないと世迷言を言う。

 

兄は完全に毒されている。と、マリーベルは信じて疑っていない。どちらにしてもライルが一番邪魔だ。下手をすれば、この足場を奪われかねないほどだ。

 

「ライアー…その時は、お願い。」

 

「ああ、俺は君の剣だからな。」

 

ライアーと呼ばれた…オルドリンと同じ顔の男の唇に吸い付き、男もそれに答えた。その男の顔は、行方不明になったオルドリン・ジヴォンと同じであった。

 




エリア24は中華連邦を出て、ブリタニア領土を迂回したと思ってください。流石にまたエリア11をまたぐのは手間ですから。

スペインのダンサー、三人は掲示板時代のキャラクターで当時はスペインから来たというだけの設定でした。長男ヴァレンティン、通称ヴァルは掲示板時代と少し名前を変え、愛称だけ維持することにしました。

正直、オズでスペインが舞台になるとは思っていませんでした。

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