コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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グダグダダラダラ長くして申し訳ございません。

ようやく、E.U.戦線です。


BERSERK-18『ユーロピア戦線』

エリア24から補給を受けて、ようやくライル軍は当初の目的であるフランス攻略に着手できるようになった。スペインとフランスの国境のピレネー山脈は一部がマリーベルに破壊されても、まだ抵抗を続けているE.U.軍が駐屯している。

 

流石に総本山のパリがあるとなれば、相手も粘り続けている。

 

フランスと国境をまたぐピレネー山脈の自然公園……ライルとしてはこれ以上ここを傷つけたくないところだ。

 

幸いなことに、フランス側に敵は陣取っている。山の上を陣取るのが基本だが、この山は標高が3000mで、気温も低い。KMFで上ることは不可能だが、籠城にも向いていない。それゆえ、山を下りて離れた場所に布陣していた。

 

だが、こちらにはアドバンテージがある。フロートユニットの実用化だ。向こうは航空戦力もあるが、それでもKMFに比べれば制圧力で劣る。

 

そこをどう攻めるかが問題だ。

 

 

 

イタリア州軍アデルモ・バルディーニ将軍が指揮する部隊がブリタニア本国の軍隊と交戦していた。フロートユニットの実用化がまだ途上段階にあるブリタニア軍は地上戦闘が主だが、それでもブリタニア軍は苦戦を強いられていた。将軍が自ら指揮を執るというある種のプレッシャーが兵士達の士気を高めているし、何よりバルディーニの息のかかった部隊であることが大きかった。

 

同時に……

 

「よし、みんな!ベッドで美人に本物の武勇伝聞かせるために、生きて帰って来いよ!!」

 

〈大佐、女の私は?そっちの気はないんですよ?〉

 

「いい男捕まえて、気を引け。」

 

大佐と呼ばれたそのイレヴンともブリタニア人とも思しき女のやり取りに陸上艦のブリッジでは笑い声が響いた。

 

海藤隆一旧日本軍大佐……『ブラック・リベリオン』前にE.U.に亡命した軍人で、親日派の政治家経由でイタリアの外人部隊に所属している。風貌から指揮の低い将兵達でさえ能力を疑問視したが、実際に執らせれば的確で何度もブリタニアを撃退して、E.U.軍の信頼も勝ち得た。『方舟の船団』の事件でも逃げようとした正規軍や政治家たちの逮捕に尽力しており、イタリアに限ればある程度の綱紀の粛正に貢献していた。

 

その実績で、今はバルディーニの分隊指揮を任されており、今ではイタリア正規軍でさえも彼の指揮に入ることを希望する将兵がいる。

 

「それじゃあ、行ってきますよ。」

 

側近の土田一騎がブリッジを出ていく。

 

海棠の指揮する前線部隊は平原地帯で戦っていた。森や山と違い、隠れる場所は少ない。だからこそ、海棠は悪目立ちする歩兵と装甲車を別動隊にした。

 

「いいな、KMFの足を壊したら、そいつは無視しろ!転べば、それでいい。」

 

KMFの装甲は強固だが、それでも戦車の砲撃や対戦車用のロケット砲の直撃には耐えられない。海棠はそこを突いた。数だけは揃えられるので、とにかく数で足を撃たせた。三台以上のジープや装甲車から対戦車用の砲撃で足を破壊されれば、サザーランドも倒れる。そのサザーランドに後ろから別の機体が衝突して倒れ足が止まる。或いは救助しようとしたKMFの足も破壊する。とにかくそれを延々と繰り返す我慢比べに等しかった。

 

「とにかく、蚊のように刺して逃げまくれよ!?」

 

だが、海棠の手はそれだけではない。転倒したKMFを迂回して通ってくるKMF隊がパンツァー・フンメルに距離を近づけたタイミングで……

 

「大佐、そろそろかと。」

 

「だな…よし、ワイヤーを張れ!!」

 

地中からパンツァー・フンメルのハーケンに使われるワイヤーが隠れていたグラスゴーによってピンと張られた。一本ではなく、五本以上が纏められていた。足を取られたサザーランドが転倒し、後ろのサザーランドも転倒。更に後方にも何本も同じものがあり、先頭だけでなく、後続部隊が転倒していく。

 

そして、その隙を逃さずに戦車隊が一斉砲撃でKMFを撃破する。一機撃破すれば、巻き添えで次々と誘爆していく。最前線の一角のみだが、それでも攻撃を遅らせることが出来る。

 

〈司令、足払いをかけられています!〉

 

前線部隊の報告でブリタニア軍の司令官はG-1でコンソールを叩く。ここで戦果を挙げれば、皇族の方々の覚えも良くなるチャンスだというのに!

 

「敵は負けない戦いに徹しております。このまま攻め続ければ、損害が大きくなるばかりです。」

 

一部だが、戦線の動きが停滞している。しかも、その箇所が集中攻撃を受けて陣形が崩れている上に、戦車とKMFの砲撃で合流もままならない。

 

「ぐ…敵の指揮官にはイレヴンがいるというが!」

 

あの藤堂やゼロでもないイレヴンにこれほどの奴が。ただでさえ、枢木スザクやシン・ヒュウガ・シャイングという怪物がいるのに、そこへ更に第八皇子お抱えのナンバーズにいるイレヴン共も傑物揃いだという。

 

イレヴンごときがここまでやるとは!

 

「……やむを得ん、後退だ。KMFは乗り捨てても構わん。パイロットの収容を最優先にしろ。」

 

イレヴンごときに、と拘れば全滅しかねない。皇女殿下への申し開きは苦労させられるが、それとこれは別だ。

 

「敵の司令官の名は?」

 

「イタリア州軍アデルモ・バルディーニ中将…『ヴェネツィアの鯨』です。」

 

あの、『ユーロ・ブリタニア』の海軍を退けたという大物。通りで……キャリアが上だ。

 

「イレヴンの指揮官は?」

 

「旧日本軍、海藤隆一大佐。第八皇子殿下を相手に逃亡に成功したということです。」

 

これにはさすがに衝撃を受けた。まさか、あの第八皇子殿下の軍隊を相手に逃げ切るのか?

 

ライルは基本的に甘い傾向にあるが、それでも実績は積み重ねている。不本意だが、彼の指揮下のナンバーズ共の能力と実績も認めざるを得ない。

 

「その海棠大佐とやら……逃げることと負けない戦いをさせたらコーネリア殿下でも厳しいかもしれぬな。」

 

 

美水はライルから送られた資料を読んでいた。飛び級で大学を出た頭脳に着目したライルの方針で、今や実質的なオブザーバーだ。今後の中華連邦との友好関係を固める一環にもなるだろう。むろん、微々たるものだが。

 

「流石にパリが目前になれば必死な軍も多いけど……この動きだと。」

 

「政府はパリ脱出を考えている?」

 

「はい……海を隔てたイギリスが一番の候補でしょうね。ロンドンは王朝の中心でもありました。心理的な効果も多少は狙っているかと。」

 

「エディンバラをしないのは、やはり『エディンバラの屈辱』を自分達がしたくないからかな?」

 

「だと思います。」

 

同席していたフェリクスはため息をついた。

 

「政府が健在なら、国家の体制を維持できる。理屈は分かるけど……『方舟の船団』の事件で落ちた信用は回復していないんでしょう?」

 

資料から見た限り、他の国の軍もフランス防衛に参加しているが、それでもやはりフランス任せの傾向がある。

 

「パリが陥落したという共和国連合全体への心理的ショックが政治家達には分かっていないんでしょう。」

 

「この期に及んでも、自国民が死ねば自分達の政治家生命が危ないか。『方舟の船団』ですでに死んだも同然なのに。」

 

あの事件で残留した政治家たちはともかく、逃げた政治家達は酷い言い訳ばかりで暴徒に殺された者もいる。しかも犯人の中にはその時の暴動で死亡した市民の遺族もいたというではないか。

 

「私は民主主義それ自体を悪いとは思わないが……」

 

「中華連邦に近い連邦制なら、と?」

 

「君には悪いが、あれは中枢の中の中枢が腐敗しきっていると私は考えている。……例えばブリタニアならば、ブリタニア本国の権力を4、他の国をエリアではなく属国として合わせて6の権力を持てばどうなる?」

 

美水はある程度想像がついた。

 

「数の調整は難しいですけど、つまり宗主国のブリタニアの独走を止められるような連合制度になればまだ。とお考えなのですね?」

 

「ああ、少なくともブリタニアだけ潤えばいいという政治はできなくなる。」

 

理想は分かるが、政治体制の設立も困難だ。早々うまくいくとも思えないが……何より

 

「でも、そうするにはブリタニアはやり過ぎたのでは?」

 

「そう思うし、私もそれに加担している。だが……それでいくところまで行くのか?」

 

 

 

そうなれば、その先に待つのは終わりの見えない戦争、世界の破滅だ。あの男、それを理解しているのだろうか?

 

コーネリアとシュナイゼルでさえ、それを想像しているのかどうかライルは信用できなかった。シルヴィオとエルシリアはまだ別だ……特にエルシリアは昔は風当たりが強かったが、ここのところ柔らかくなった。

 

が、それとは別に信頼できるためにライルの考えを打ち明けたが、二人は一定の理解がある。コーネリアは揺らがない統治体制とそれを実践する人材があればやれると考えるが、正論に過ぎない。ブリタニア人だけでやれるわけがないのだ。軍人としての信頼はできても、そちらでの信頼はコーネリアに寄せる自信がなかった。

 

彼女の場合、皇族の責任感やプライドが邪魔しているのだろう。シュナイゼルはシュナイゼルで最近は信用できない。本能的に何かが恐ろしい。

 

他の貴族、保守的な連中などは論外だ。『取るに足らない不安』扱い、『ブリタニアは常に進化する国家』など答えにならないことばかりだ。

 

「どのみち、どこかでブレーキをかけないといけないんだ。ブリタニアの多くはそれを理解していない。」

 

 

 

フェリクスはライルの考えに共感できた。この人は先を見据えているし、その展開を想像するだけの目と頭がある。

 

だが、生まれた時代と周りの考え方との相性が壊滅的に悪い。

 

人間は楽な方法や潤いを覚えて、それに味を占めればそれがなくなるという事態を考えようとしなくなる生き物だ。

 

それが万が一になくなるということがあったり、揺らぐことが起こるということをあり得ないと頭の中から排除する。そして、最後には吸う甘い汁がなくなってしまうことさえ理解しようとしなくなる。この人はそれを忘れないタイプだ。政治の世界ではある意味、警鐘を鳴らす貴重な人材なのに……

 

ブリタニアが本当に転覆するような事態にでもならないとこの人の主張は伝わらないのだろうな。

 

もし、シュナイゼルさえいなくなってライルに頼らざるを得なくなったら?旗印となる新しい皇帝にライルがなって、ブリタニアの体制を見直させるし、E.U.と中華連邦との関係修繕にも力を入れることだろう。

 

『復興の皇帝』ライル・フェ・ブリタニア…か?それはそれでこの人にとっては都合がいいが、ないな。

 

残念だが、シュナイゼルやビスマルクがいる限りそれはないだろう。何より、この人の気質が総督や皇帝に向かないというのがフェリクスの分析だ……一時的な代理執政官はできても半永久的な維持をするのには向いていない。性格的にも祖父の領地を継いだ地方領主、一軍の司令官止まり。逆に言えば、そちらでの才能や人格は問題ないだろう。

 

やれるとすれば、エリア制度に関する権限をライルが多く持って、改善させること。それがフェリクスの考えられる、ライルの最良の未来予想図だった。

 

 

 




久しぶりに出てきた海棠……視覚的な迷彩で隠れていたグラスゴーの部隊が一定間隔でワイヤーをかけ、足払いです。

フロートが実用過程にある段階だからこそ、通じた作戦でしょう。正規軍がまさか、こんなみみっちい手を使うとは思わないでしょうし。

フェリクスのライルへの分析、実は私の設定イメージです。ルルーシュのように冷徹な判断を下すことが出来ない、したくないという致命的な弱点を抱えています。だからこそ、それをやらないようにする面もありますが。

ああいう世界で万が一の警鐘をならす人材って必要だと私は思います。そう考えると、シュナイゼルの場合は『警鐘をならしたって聞かないのならす必要がない状況にしよう』とダモクレスに至った気もします。
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