コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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シルヴィオと雛メインで行きます。


BERSERK-22『侍皇子』

「ようこそ……あたしは木宮ユウキ。シルから貴方達の出迎えを任されたわ。本格的に会うのは、これが初めてね。」

 

ライル軍の騎士達は目を丸くしていた。それはそうだろう、何せイレヴンが皇族を気安く呼んでいるのだから。

 

「ああ、ライル殿下の親衛隊マルセル・コヴァリョフです。」

 

「よろしく。さあ、どうぞ。」

 

増援の騎士はついてくるが………

 

「あの、まさか噂の『侍皇子』様って…」

 

「そっちの気がある?正解。」

 

「え!?」

 

全員が後ろで立ち止まる。否、一歩下がった。

 

「冗談よ……全くどうしてみんなかわいい冗談が通じないのかしら?」

 

「どこがよ…」

 

川村雛が毒づいた。

 

「まあ、酷い。そんなんじゃ、ウェルナー殿下に嫌われちゃうわよ?」

 

「なんであの子が出てくるのよ!?」

 

やはり、ウェルナーとは個人的な付き合いがあるようだ。おそらく無自覚で彼女は……

 

「貴女、ウチでも品性のない連中が噂してるのよ?ライル殿下が駄目ならウェルナー殿下って。」

 

「っ、こんな火傷女が女の武器使えるわけないでしょ?」

 

顔の右側を見せた。度々見せていることから、その噂は消えているが今度は……

 

「そうね、でもひどい奴はそれを治療してほしくて殿下経由でトゥーリア様に近づいたなんて噂するの。」

 

「………そいつら同じ目に遭わせても良い?」

 

「やめときなさい。性格ブスな貴族様のひがみだから。」

 

「あんたは?」

 

「貴様、いい加減にしろ!木宮卿は戦前から殿下とご友誼があるのだ!殿下の母君が本国の市民権まで保証してくださったのだぞ!」

 

同行する兵士が雛に詰め寄るが、木宮は制止する。

 

「そうじゃなかったら、あたし達の事イレヴンだっていうんじゃないの?そういうのでコロコロ態度を変えるタイプは絶対にシルに嫌われるわ。」

 

付き合いが長いからこそそれが分かる。エリア11成立後、180度とまではいわないが他の使用人達との関係が気まずくなったことがある。それをシルヴィオと彼の母が叱責したこともあった。

 

「だから、あたしはシルに忠誠を誓っているしあの子のことを弟だと思っているの。」

 

「そうなの……」

 

「さあ、無駄話が過ぎたわ。行きましょう。」

 

 

 

シルヴィオ軍の相手をしている軍隊では………

 

「おい、聞いたか?あの侍もどきの増援が第八皇子のイレヴンだってよ。」

 

「なんだ、そりゃ?イレヴンの戦国時代でもやろうってのか?」

 

全く、緊張感のない会話をしていた。既に何度も撃退に成功しているという気のゆるみが、元々士気以前に軍人という自覚さえ希薄な軍の楽観論をさらに悪化させていた。

 

「で、どんななんだ?」

 

「ああ、噂じゃ火傷した女らしいぜ。少し前の情報で画像を見たが、良い女なのに勿体ないぜ。」

 

「んだよ、捕まえて楽しむこともできねえのかよ。」

 

「しかも、ロシアの正規軍から寝返った負け犬もいるんだってよ!!」

 

「そりゃあいい、なおさら楽だぜ!!」

 

イレヴンの剣術や侍の礼装を模した軍服を着る侍の真似をした皇子ごとき、革命政府の敵ではない。そんな風潮が蔓延していた。それが自分達の足をすくわれることも気付かずに。

 

 

 

マルセルはすぐにグロースターの調整を行っていた。だが、監視の兵士が二人ほどいた。当然と言えば、当然だろう。何せ『四大騎士団』だったとはいえ元々はE.U.の軍人だったのだから。信頼するライルが凄いのだ。

 

「革命政府のスパイかもしれない私の見張りなんかでいいんですか?」

 

「何が言いたい?」

 

「『ブラック・リベリオン』を興したイレヴンがいるってことです。」

 

「案ずるな…あの女には他に見張りが着いている。」

 

「そうですか……でも、彼女は九十番台でも皇族のお気に入りですから。狼藉働くと怖いですよ?」

 

見張りの兵士がそれにやや強く出た。

 

「我々は女に狼藉を働かない。たとえ敵兵やナンバーズであってもな。お前たち革命政府や『ユーロ・ブリタニア』が蔑視する輩と一緒にするな。」

 

言うことだけは立派だ。だが、果たしてどうだか。

 

「口ではどうとでも言えますね。ロシア軍時代、皇帝陛下が仰るからなどと言う本国軍に恋人の目の前で暴行された女を保護したことがありました。」

 

「…それは、皇帝陛下のお言葉を私欲のために利用する恥さらしだ。」

 

「そういうことにしましょう。」

 

 

 

羽田美恵はライルから送られた増援の女…川村雛と会っていた。

 

「『ユーロ・ブリタニア』の大貴族軍にイレヴンの女がいるって聞いたけど、あんたが。」

 

「羽田美恵……こちらのアーネスト・N・シェーリン様の部下よ。」

 

「部下、ね。愛人じゃなくて?」

 

「……そっちも否定しないわ。何せこの身体だから…13で売られかけたの、親に。」

 

美恵は昨年よりも更に大きく育った胸を両腕でわざとらしく持ち上げてアピールする。

 

「最低ね、そいつら。ちなみにいくら?」

 

「…お金じゃなくてリフレイン。それの代金が私。」

 

雛の顔が引きつった。

 

「何、それ?現実逃避のために娘を売ったの?」

 

「そうよ。逃げ出して、アンダーグラウンドに落ちのびて捕まって…モスクワ失陥時にロシア政府が私を貢ぎ物に差し出した。で、その相手がこの人だったの。」

 

「……また、ハードな人生ね。売り込んだの?」

 

「ええ、自国の行いが原因なんだからってね。大体、遅かれ早かれ貴族様相手にそういうことさせられるし、それなら最初くらい若くていい男が良いでしょ?」

 

雛は両手を挙げて、首を振る。

 

「…火傷のせいでそういう相手がいないけど、女としてその感情は分かる。で、そのまま安い同情や責任感で保護者になってくれたってところ?」

 

「……安い同情や責任感なのは自覚している。だが、請われるままに美恵を抱いたのは私だ。彼女は、我らが導くユーロピア市民でもある以上は請われた責任だ。」

 

これまで黙っていたアーネストがそれを応え、雛がため息をつく。

 

「ナンバーズとしての意見……あんたらが導かなくたって、あたしらの国は何とかやってたわ。国を潰して、その跡を指して文化のない蛮族呼ばわり……そういうのをなんていうか知ってる?自作自演っての。」

 

「貴様、イレヴンの分際で!」

 

シルヴィオ軍の兵士が憤慨するが、美恵が制止する。

 

「あんたは収容所に送られたことがないから、そんなこと言えるのよ。昨日までの隣人を奴隷にする国より、自分達が導く市民ってまともに扱ってくれる方になびくのが悪い?」

 

 

 

雛はそれを否定しなかった。そして、羽田美恵と自分達の間には大きな隔たりがあった。そう、自分達エリア11出身者は現地が占領されて奴隷にされた。だが、彼女は違う。同じブリタニアの敵であるはずのE.U.に裏切られ、挙句に今も政治家の保身のために市民権を餌に戦わされている。

 

「……あんたとあたしじゃ、見てきたものが違うのね。まあ、ダメなイレヴンや元ユーロピア市民より極一部でもブリタニアの方がマシってのは同意見ね。ウチの坊ちゃんも、あたしらを掃いて捨てるナンバーズじゃなくて、貴重な人材扱いだし。」

 

「そう…そういえば、貴女も本国の病弱な皇子様と仲良くしてるんだし、うまくいけばお后様じゃない?」

 

「って、なんであの子?」

 

「噂になってるもの、酷ければその火傷を皇妃様の実家が経営する病院で治してもらうために近づいたって。」

 

木宮の時と同じことを聞いて、本気で雛は怒りをかみしめた。この顔と背中の治療のためにウェルナーに近づいた?

 

「馬鹿も休み休み言ってほしいわ……それなら、宰相様に鞍替えするわよ。あっちの方が融通利きそうじゃない。」

 

「普通ならそう考えるわね。」

 

そして、二人は互いにけん制しあうような会話をしばし続けていった。

 

 

 

シルヴィオの親衛隊、『十勇士』と呼ばれるエースパイロット達の二人、イレネー・ミュレーズとエリア・ボルジェーゼは食堂でコーヒーを飲んでいた。イレネーは名門貴族の跡取り、エリアは孤児と真逆の生まれ。性格もイレネーは真面目な優等生、エリアは大雑把な性格ながら生まれ故か出自を問わず年少に優しい。そんな対照的な二人だが出自を問わないシルヴィオの方針と当人たちの気質、年齢の近さもあってか『十勇士』では木宮を除けばシルヴィオから特に目をかけられていた。

 

「会ったか?増援の二人。」

 

「ええ、川村雛はエリアに近いですね。」

 

エリアは少しため息をついた。

 

「はあ……戦争で親が死んじまった、か。弟達の孤児院の資金稼ぐために、他の国の子供を孤児にしてる俺、死んだら絶対に地獄行きだな。」

 

「それをいえば、騎士家系の私もですよ。所詮は人の命を奪うことを生業にしている。なればこそ、奪わずに済む命があるに越したことはない。」

 

「優等生らしい答えだね……お前、あっちの方が合うんじゃない?」

 

だが、イレネーが首を横に振る。

 

「シルヴィオ殿下は私を見出してくださった。なら、私はそのシルヴィオ殿下に剣を捧げる。そういう君こそ、負い目があるのならあちらに着かないんですか?」

 

「着いたって、あの子らの親が戻ってくるわけじゃない。俺が頭下げたってどうにもならないだろう……」

 

そう、ブリタニアが世界制覇をして平和に導く。というイデオロギーよりもエリアにとっては孤児院の運営資金の方が大事だ。そこまでは責任を持てない。だが、恨まれるくらいは甘んじて受けなければならないだろう。

 

 

 

翌日、ライル軍からの増援部隊がシルヴィオに呼ばれた。

 

「シルヴィオ・ロ・ブリタニア……イレヴンかぶれの皇子とでも言えばいいか?」

 

自分でそう言われている自覚はあるようだ。実際、陣羽織や袴に似た礼装を着ている。木宮の国への本人なりのリスペクトだろうが………

 

「形から入るタイプ、とでも思うか?」

 

「って、エスパー?」

 

「そんなわけないだろう……さて、早速だが我が軍の状況を説明しよう。」

 

ブリーフィングルームでモニターに敵の展開図が映される。

 

「ベラルーシ、ポーランド方面の残存軍が再集結していること……情報部からそれらが一大反攻作戦を企て、ようやく実行の目処が立ったとの情報がある。」

 

『方舟の船団』の事件と少数派のクーデター、『白ロシア戦線』の遅れをここで取り返すつもりなのは明白だ。

 

「敵も流石にこの作戦には真摯で取り組むだろう……こちらの西部戦線は『ユーロ・ブリタニア』の戦力低下で維持がやっと。攻め返す好機でもある。」

 

 

 

E.U.はベラルーシの残存軍、ドイツやポーランドの正規軍などが東部戦線を巻き返す作戦を展開していた。

 

「参謀本部はこの作戦で巻き返しを図るつもりなのだろう。」

 

旗艦ではフランスだけでなく、ドイツやポーランドの将官もモニターの作戦図を見る。イレヴンや外人部隊を中央、両翼には各国の正規軍、そして後方には旗艦を始めとした部隊が控え、『ユーロ・ブリタニア』から接収した列車砲もある。

 

「ま、この作戦が成功すれば我々の栄進は確実だ。」

 

「失敗した場合は?」

 

「決まっているだろう…無能なイレヴンや外人共の責任だ。我々は命令を遂行すれば良いだけさ。」

 

まるで分かっていない……ここで失敗すれば地中海とエリア24に囲まれた上に、北部の海岸線も取られればフランスは完全に丸裸……堀を失った城なのだ。

 

 

 

「ったく、めんどくせえな。」

 

「頑張って死んでくれよ、外人部隊さん?」

 

「なんなら、そこの姉ちゃんは俺達の部隊に来るか?」

 

「遠慮するわ。」

 

ウェンディ・ミュラーは言い寄ってくる男達を睨み付け、書類に目を戻す。

 

なんて体たらく……あの連中には想像力という物が最初から無いのでは?と疑いたくなる。いや、確定している。無いのだ………一時でも、純粋な愛国心で軍人になった己の浅はかさを今は恥じるばかりだ。得られた物など、革命自体が間違いであったという教訓、そして夜に肌を合わせる仲の上官、ゼラート・G・ヴァントレーンだけだ。

 

「司令官達は今頃、我々に責任を押しつける算段でもしているだろう。」

 

「でしょうね。」

 

ゼラートはコーヒーを一口のみ、直属の部下であるアサド・ランゲルグに告げると、彼もそれを肯定した。

 

「あいつら、ここが負けたらキャリアどころじゃないっての、分からないんですかね。」

 

「だからここまでやられても、そういう発想しか出来ないんでしょう?」

 

スウェーデンから参加したアレクシア・エストランデルも上官達を斬り捨て、隣で雑誌を読んでいるロシアの避難民出身であるイロナ・メルクーシンも「よね。」と肯定する。

 

「避難民相手に略奪する連中よ?あいつらこそ死ねばいいのに。」

 

「同感だが……任務は任務だ。」

 

が、ゼラートはこの作戦の失敗を確信していた。相手はシルヴィオ・ロ・ブリタニア………『イレヴンかぶれ』などと揶揄されているが、その指揮能力はあの第二皇女コーネリアと、KMFの実力は第八皇子ライルと同等という噂もあるし、彼の親衛隊も精鋭揃い……それに対して、こちらは肝心の主力は見かけだけ……せっかく主戦派がインドのKMFを手に入れたというのに、外人部隊に回した。それを操るのはゼラート達だが、KMF一機が戦局に与える影響などたかが知れている。あのランスロットや現在各地で猛威を振るっている『ナイトオブラウンズ』専用機がおかしい………現場の人間や技術者達ですらそれが理解出来ていない。

 

「中佐、貴官らのKMFが先陣を切るがその詳細を確認したい。」

 

ぬるま湯にどっぷりと浸かった正規軍で数少ないまともな士官がゼラートに陣形の確認をしに来た。

 

「は、今参ります。」

 

 

 

川村雛を交えたブリーフィングを終えた後、シルヴィオはミルカをベッドに招いていた。

 

「あの子、大丈夫なんでしょうか?」

 

「ライルとウェルナーから聞いた限りでは、私を盾にするようなことはしないだろう。そんなことをすれば、自分が処刑されるという展開を見据えている。」

 

彼女はああ見えて、自分が生き残るということにかけてはよく考えている。戦後、孤児となって一人で何でもやって生きてきたその執念の賜物だろう。

 

「それに、今の彼女はウェルナーの元へ帰るという生還する理由があるだろう。」

 

「ウェルナー殿下とそういう仲なのですか?」

 

「……私がそう思うだけだ。」

 

ミルカが何も言わずに豊かな胸をシルヴィオの身体に押し付け、再び唇に吸い付いてきた。

 

 




木宮とシルヴィオの仲、ある意味ではルルーシュとスザクの形の一つだったかもしれませんね。

反ブリタニアは木宮を裏切り一家とか言いそうだけど。
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