コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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今回は雛が頑張ります。


BERSERK-23『川村雛』

ブリーフィングでは、『ユーロ・ブリタニア』の列車砲を用いた超長距離砲撃を主眼に置いた戦術を発表、戦略目標はベラルーシ正規軍の残存勢力の一掃とそれによるポーランドへの侵攻ルート確保だ。

 

より正確には、ポーランドの正規軍をこちらに釘付けにしてしまうことだ。フランスとの間にいるドイツの正規軍も戦力を分散させざるを得なくなる。

 

「えげつないわね……エリア24の方にはウチの軍がいる。そっちに戦力割けばポーランドとドイツががら空き。でもそっちに向けば、首都のあるフランスが。」

 

「寄り合い所帯に等しい連合国家でも、複数の国家を相手にするのはできるだけ避けたいからな。」

 

更に言えば、『ミカエル騎士団』の事件による混乱で列車砲を何基かE.U.に奪われたという。

 

「あたしに列車砲の的になれっての?」

 

「君の機体にはウァテスシステムも搭載されていると聞く。」

 

ウァテスシステム……ガウェインで搭載されたドルイドシステムから開発した演算システム、『グリンダ騎士団』で運用された成果を持ってローレンスに搭載、長距離砲撃の目になっている。

 

「つまり、あたしにその列車砲を撃て?無茶言わないでよ。500㎞狙える列車砲をKMFで撃てるわけないでしょ。」

 

「そんな理不尽は言わない。」

 

「じゃ、何?的になれって?」

 

「半分は正解だ。」

 

シルヴィオは説明する。ローレンスの巨大な火力を持って敵を引きつけ、通常戦闘の的になってもらう。あわよくば、列車砲を引きつけるとのことだ。だが、その根本は艦とローレンスの防御力で敵の火力を引きつけ、こちらの列車砲で相手の列車砲を牽制、あわよくば破壊すること。そして、最大の目的はサザーランドアイ、艦、そしてローレンスのウァテスシステムで敵の弾道計算及び列車砲の移動範囲の測定をを行うことだ。

 

「結局、肝はあたしなんじゃない。」

 

シルヴィオが苦笑する。

 

「それだけ、買っているんだ。半分くらいは応えてもらいたい。」

 

「はいはい、雇い主の顔を立ててあげますから。」

 

『皇族に対して、なんという不敬な』と誰かがささやくが、雛は

 

「あたしの国を占領して、家族を殺した挙げ句に顔をこんなふうにした国の皇子様にどうして心から忠誠を誓えるの?あんた達ならできる?」

 

「なるほど……現地にいたわけじゃないし、シルやお母様が骨を折ってくれたあたしじゃ絶対に理解してあげたくても、無理でしょうね。」

 

「そ、まあウェルナーとあの雇い主があたしにとってはブリタニアの偉い人の例外。」

 

同国人の木宮がある程度、雛の言い分を肯定した。そんなこと、考えたこともないしそんなことが起こらないという固定観念が根付いたブリタニア人では絶対に通じないことだ。

 

「現地人の意見として、心に留める。そのくらいにしろ。」

 

シルヴィオも窘め、雛もうなずいた。

 

 

 

シルヴィオ軍が動く情報を聞いたE.U.軍は迎撃態勢を整えていた。その中でドイツの外人部隊が編入されており、最前線を任されている。

 

「既に何度も迎撃に成功しているとはいえ、相手は精鋭だ。貴官らに期待する。」

 

司令官自身はそのつもりだろう。実際のところ、ブリタニア軍との戦闘経験は外人部隊が圧倒的に上だ。

 

「頑張って、俺達のために戦ってくれよ?」

 

「手柄は俺達のものだけどな。」

 

下品な笑い方をする将兵達の声さえ、もう彼らの耳には入っていなかった。本当に分かっていない。既にE.U.が沈没寸前であるということが。

 

致命的な穴がいくつも開いて、急ピッチで直そうとしたスマイラス一派は壊滅。四十人委員会さえ、その穴から目を背けている。乗り換える船があるとすれば、敵しかいないということさえ理解できていないのだ。

 

現場の将兵達には要人の子息たちがいる。大方、どこかの貴族との結婚でつなぐか、あるいは親達がどうにかしてくれると安心しきっているのだろう。

 

「ったく、俺達一般兵はいつもあいつらの身代わりだ。イレヴンや他のナンバーズがいれば少しは楽ができるってのに。」

 

「つうか、いっそあの枢木スザクや第八皇子の部下に寝返った方が出世できるぜ。」

 

一般兵も辟易して寝返ることさえ考えている。

 

「よう、ゼラート。いっそのこと俺らも寝返るか?」

 

ギリシャ軍のニコロス・ディアルゴスが冗談とも本気とも取れない態度で聞く。

 

「さあな……俺はブリタニア貴族でも『血の紋章事件』を起こした反逆者の息子。受け入れたと見せかけ、処刑が関の山さ。」

 

「シャレにならねえな。」

 

一般兵達の考えは安易ではあるが、このままいけば正規軍それも要人の親族だけ助かるためにあらゆる責任を押し付けられるのも容易に想像がつく。

 

「『前門の虎、後門の狼』か。」

 

「中佐…」

 

イロナ・メルク―シンが幼児のように裾を引っ張っていた。ゼラートは微笑し、安心させるように頭をなでる。

 

「心配なのはわかる…だから、お前はまず生き残ることに集中しろ。」

 

「はい!」

 

イロナが少し声を高くして、出て行った。

 

「お前パパ?」

 

「違う。」

 

ニコロスのボンクラ息子共とは違う下品な笑い方をゼラートはいつものように軽くあしらい、配備された新型機へ向かった。インドから送られた試作機で、ドイツの正規軍上層部がゼラートによこした機体だ。ゼラートを高く評価してか、それとも面倒だから押し付けようとしたのか……七割は前者だと思いつつも、パイロットとしては良い機体を使えるのはうれしい。グロースターではもう着いていけなくなってきているのだから、渡りに船でもあった。

 

シュテルンと名付けられたその機体は月下タイプの後継機種、暁のカスタム機でエリア24に送られたアマネセールと同じブリタニアの武器をテストする機体だ。既に何度か乗っているが、グロースターを遥かに凌ぐポテンシャルで、もし『ユーロ・ブリタニア』が主権を握っていた時期に同等の機体が何機かあれば、少しは楽だっただろう。

シュテルンより数段スペックは劣るが、暁の一般機に手を加えたデメルングも何機かゼラートに回されている。

 

「あとは、これで生き残れるように打てる手を打つぞ。」

 

「あいよ。」

 

 

 

「あたしのことをほんとに買ってくれてるのね。」

 

ローレンスは母艦の上で待機、ウァテスシステムとサザーランドアイを接続して、これまでにない索敵範囲を実現していた。元々電子戦に特化したガウェインでもここまで行かないのでは?と思える範囲だ。少なくとも、100㎞先までは…

 

「こりゃ、近い内にフロートで飛ぶ強行偵察型なんてのも造るかもね。それと連携すれば、この子の火力もより活かせるってものだ。最小の犠牲で基地にぶっ放せる。」

 

ライルならばサマセットをベースにした強行偵察機の開発なんて本当にやらせそうだ。そう考えながら、出撃するほかのKMFを見る。

 

ランスロットをベースにしたシルヴィオ専用機のディナダン……ジヴォン家が『ナイトオブワン』専用機として開発したギャラハッドと同じガウェインの派生型のゲライント。そちらは木宮が搭乗する機体だ。

 

「あのオカマ、見た目によらずごついのに乗るのね。」

 

〈無駄口叩かないで、もうすぐ戦闘開始よ。〉

 

ミルカが不機嫌そうな様子になる。

 

「あんた、もしかしてあのオカマに妬いてるの?」

 

〈な、なんでわかるのよ!?〉

 

「あら、やっぱ?つうか、お后様候補が男に妬いてどうするのよ?」

 

ミルカの顔が真っ赤に染まった。どうやら、相当惚れこんでいるようだ。彼とは少し話したが、武術バカと揶揄する噂があるように己を鍛えることに余念がない。騎士家系の母の教えを忠実に守り、皇帝に即位したら自ら『ナイトオブワン』になる気でいるだけある。

 

確かに立派だわ……あたしにとってはちょっと時代錯誤な気がするけど。

 

とはいえ、貴族制度がある以上は皇帝自身が最強の騎士というアピールも軍事面では間違ってはいないだろう。それに、『奇跡』なんてものに縋るバカ共の国よりは分かりやすいし、彼に影響されてか部下達も自分を鍛える者を見る目はナンバーズでも公正だ。

 

「ほんと、ブリタニアの方がましだわ。」

 

 

 

E.U.は『ユーロ・ブリタニア』の混乱に付け込んだおかげで列車砲をいくつか確保し、それによって東部戦線を踏みとどまらせていた。しかし、それも無理が生じてきていた。

 

相手も同じものを持っている以上は相討ちが起こりうるし、元々がブリタニアのものである以上その脅威度は熟知している。既にいくつかの列車砲が相討ち、もしくは工作員の手で修復不可能の状態に陥っていた。それらを責任転嫁する形で取り繕っていたが、もう限界が来ていた。

 

自分達が列車砲を奪取するのならば、相手も奪還或いは破壊を目論む。そのような警告があったのに、前線でさえそれらに耳を貸さなかった結果だ。

 

「上の連中は何もわかっていない。虎の子の列車砲で辛うじて踏みとどまっていた前線が後退するのだぞ。」

 

前線のボンクラ息子共に至っては、まだ残っているから大丈夫。と考えているが、実際は違う。もうたった二基しか残っていないのだ。もし、『グリンダ騎士団』が中華連邦で列車砲を撃破した超長距離砲撃型のKMFがあればその結果は自ずと想像がつく。

 

上の連中はそれを想像しても、現場単位で見る目がないのだ。現場の惨状を、数字と文字でしか見ていない。数字と文字の次元でないというのに……戦争でいつも割を食うのは現場の将兵と民間人だ。

 

「ヴァントレーン中佐、頼むぞ……負けるにしても、最小の負けにしたい。」

 

〈なら、司令も手を尽くしてくださいよ?〉

 

「無論だ。」

 

 

 

戦闘はE.U.の先制攻撃で始まった。列車砲の砲撃を時間差で行い、一発しかないように見せかけていた。しかも、位置まで移動させるという念入りの手段だ。

 

列車砲の砲撃で地上部隊が損害を受けるが、それでもまだブリタニア軍の攻勢が強い。確かに列車砲は強力だが、最大の弱点である弾の装填。しかも数が少ないためにKMFの進軍スピードに追い付かない。

 

「良い指揮官だ……少ない列車砲の数をより少なく見せる手を打っている。」

 

枢木スザクに討たれたバルクライ将軍を始め、間違いなく有能な人材はE.U.にいる。だが、そういう人材ほど早死にする。不平等とは、残酷なものだ。

 

「こちらも将兵の犠牲は減らしたいのでな。川村、列車砲の動きは?」

 

〈分析結果がもう少し。………西北西に300キロほどね。〉

 

「よし、頼むぞ。」

 

〈はいはい。〉

 

ローレンスはベース機のゼットランドよりも長距離砲撃にカスタマイズされているだけあり、しかもドッキングに頼らない仕様で射程距離はオリジナルより上。そして、索敵距離は元々広い上に今度はサザーランドアイと接続した新規の索敵システムもある。

 

「ったく、500キロなんて馬鹿げた距離撃てる大砲相手に無茶やらせるんだから。」

 

エナジーの配分をシールドに優先して回し、防御を固める。

 

「ま、やれば少し給料上がってくれるかもしれないし。あんたらも悪く思わないでね。」

 

なにより、あたしもまだ死にたくないから。

 

 

 

列車砲を警備していた将兵は緩み切っていた。一発撃つたびに二門の列車砲を交互に移動させ、装填して発射する。単純な仕事。

 

最前線の連中が後は勝手にやって死んでくれるだけ。そして、自分達が列車砲で手柄を取る。

 

その先に待つ美酒と美女……それを思い浮かべていた時。

 

「ほ、砲弾が撃墜されました!?」

 

「あぁ?300キロ以上離れたここからの砲弾を迎撃できるわけねえだろう?」

 

「し、しかし現に迎撃されまし」

 

言い終えるより先に巨大な爆発が起こり、吹き飛ばされた。

 

「っつ、なに、が?」

 

列車砲が跡形もなく破壊され、目の前には数秒前まで雑談していた同僚だったものが転がっていた。

 

「ひ、ひぃぃぃ!!!」

 

「に、逃げろ!!」

 

「次が来るぞ!!」

 

なんで、こうなったんだ?楽な仕事じゃなかったのかよ!?

 

 

 

「えぇい!最後の一門は!?」

 

「駄目です、連絡が取れません!!」

 

司令官はパネルを殴りつけた。もう、想像がついた。逃げ出したのだ。相手も列車砲を使ってくることは想定していた。だが、KMF同士をつなぎ合わせて索敵距離を強引に伸ばしてそこから弾道を予測して撃墜するなどとは完全に想定外だ。しかも、それによって弾道計算及び列車砲の移動範囲を推測する時間を相手に与えてしまった。おそらく、索敵型と合わせて着弾範囲から逆計算したのだ。元々あちらの兵器………想定はしやすいだろう。

 

「こうなってはやむを得ん!通常戦闘に切り替え、キャノンタイプは今砲撃をしたKMFに攻撃を集中!今度はこちらが狙われるぞ!!」

 

砲撃型が一斉にローレンスに狙いを定め、砲撃する。だが、流石にあのモルドレッドと同タイプなだけあり、守りが硬い。

 

「キャノン隊は砲撃型への攻撃を続行!中のパイロットを消耗させてやれ!」

 

「敵KMF隊が前進を再開しました!」

 

「ヴァントレーン中佐、敵指揮官機はシルヴィオ・ロ・ブリタニアのディナダンだ!そちらと副官のゲライントの対応を貴官らに一任する!」

 

〈了解!〉

 

「航空戦力は敵のフロート部隊に攻撃!近づけるな!!」

 

 

 

敵の対応は早く、シルヴィオ達を分散させてきた。中でもフロートを装備した月下タイプの部隊…隊長機は別格で、ブリタニア軍のKMF隊のフロートユニットだけを破壊していく。後続のKMFは隊長機ほどではないが、高い練度でフロートの装備で一日の長があるブリタニア軍を翻弄する。しかも、撃墜ではなく後退させることで後方の動きを鈍らせている。

 

「ち!器用な連中だ!」

 

隊長機が剣でディナダンに斬りかかり、シルヴィオも出撃時から持っていた長刀で受け止める。

 

〈シルヴィオ・ロ・ブリタニアだな?〉

 

「通信…そうだ。お前は?」

 

〈ゼラート・G・ヴァントレーン……ドイツ外人部隊の中佐。いや、血の紋章事件を引き起こしたゴルドシュミットの末裔の方が良いか?〉

 

『血の紋章事件』…父シャルルが即位して間もない頃に勃発した皇族と貴族の大規模反乱。当時の『ラウンズ』もビスマルクとマリアンヌ以外は全員が離反して処刑され、主要貴族も処刑された。その血縁がE.U.に亡命していたとは。

 

隊長機の剣をはじき、距離を置いたシルヴィオは問う。

 

「復讐か?」

 

〈まさか。ただ、俺が大罪人の末裔だったらどんな反応をするか見たかっただけだよ。〉

 

「なら、私は余りそういうのに拘らないね。不貞腐れているだけだったら、なおのこと興味が湧かなかった。」

 

だが、こいつには少し興味が湧いた。あの事件当時、シルヴィオはまだ幼かったが母がマリアンヌへの高い評価を決定的にしたとは聞いている。

 

〈そうか……では、『血の紋章事件』の当事者の子供同士で遊ぼうか!?俺のKMF、シュテルンという玩具で!〉

 

「受けて立つよ!」

 

ディナダンとシュテルンは両軍のKMFの追随を許さない剣戟で斬り結ぶ。ディナダンの長刀をシュテルンが二本の剣で受け止め、押し返す。そこからの追撃をディナダンが腰のハーケンで牽制し、反撃に転ずるがシュテルンはそれに対して胸に内蔵された機関銃で距離を置く。

 

今度はシュテルンがハーケンを撃ち、ディナダンの腕を捕らえる。そのままハーケンの巻き戻しで引っ張り寄せるが、逆にその巻き戻しを自身の加速に利用した。だが、ゼラートはそれにすぐさま反応して逆に自らも突っ込んだ。虚を突かれたシルヴィオの操作が一瞬だけ鈍り、その隙で膝蹴りを叩きこむ。しかし、シルヴィオも膝蹴りからすぐに反転して頭突きでお返しをする。

 

貴族同士の戦いなどない、まるでただの喧嘩のような戦い方だが熟達したシルヴィオ軍の騎士達と本物の実戦経験を持つE.U.軍のパイロット達は二人が正に別格であることを確信した。同時に下手に加勢をしても邪魔になることも。

 

 

 

「みんな、シルと雛が一番厄介そうな相手を引き付けているうちに攻め込むわよ!!」

 

木宮が一括し、軍は一気に統制を取り戻す。最強のカード同士のぶつかり合いで動けなくなれば、あとはカードの強さで勝負が決まる。

 

〈ねえ、早くして!これはこれでしんどいのよ!!〉

 

ローレンスの雛が催促している。ローレンスは砲撃を受け続けているが、確かにあれはエナジーと人間、どちらが先かわかったものではない。

 

「もうちょっと頑張ってね!」

 

ゲライントが両腕に搭載されたMVSを抜き、フロートユニットのKMF隊を更に叩く。そのうちの一機が、剣で受け止める。

 

 

 

「っ、ガウェインタイプなだけあって、パワーがあるわね。」

 

ウェンディは歯ぎしりする。これだけの高性能機、それもゼロに奪われたマイナスイメージの強い機体を迷わず使うブリタニアの柔軟さが忌々しかった。そして、こちらにはそんなものはかけらもない。

 

敵はパワーで押し切ろうとするが、こちらもそのパワーを利用して引き下がる。

 

「押してもダメなら引いてもダメ!恋愛じゃないんだから!!」

 

 

 

ゼラートはシルヴィオの相手をしながら、前線部隊の指揮を執る。

 

「動ける航空戦力は敵艦に攻撃を仕掛けろ!フロートユニットを壊すだけでも充分だ!!」

 

〈無茶を言わないでください!KMFを躱すので手一杯です!!〉

 

やはり、無理か。こちらも相手が相手で動けない。地上部隊は……

 

 

 

「邪魔だ、革命政府の犬ども!!」

 

マルセルのグロースターが立ちはだかるグラスゴーを両断し、パンツァー・フンメルを串刺しにする。単独ですでに十機は撃破している。

 

〈我々も後れを取るな!〉

 

〈『四大騎士団』に手柄を取られるぞ!!〉

 

正規軍や親衛隊が後に続き、同時に空中では……

 

 

 

航空戦力が何機か撃墜された。後ろの艦上にいたKMFだ……雛はその機体の名前を口にする。

 

「ソティアテス………」

 

アーネスト・N・シェーリンの搭乗する大貴族軍のフラッグシップ予定だった機体だ。携行型のハドロン砲を艦上から撃ち、ヘリと戦闘機を撃墜する。

 

「ったく、砲台役いたのね。」

 

更に、試作型の月下タイプの部隊に一機のヴィンセントタイプがやってきた。来てから何度か見た、『ユーロ・ブリタニア』の要請で開発されたトレウェリだ。MVSを抜いて斬りかかる、かと思えば腕が伸びた。いや、よく見れば腕が不自然な形で繋がっている。紅蓮弐式と同じ展開機能付きの腕で、実際以上の間合いでの近接戦闘を出来るようにしているのだ。

 

意表を突いた斬撃で一機はフロートユニットを破壊され、もう一機は真っ二つになった。

 

〈大丈夫?〉

 

羽田美恵だ……全く、夜を楽しませるのが本業というわけではないようだ。

 

「おかげで助かったわ。ついでに今夜、どう?」

 

〈そっちの気はないの。〉

 

「あら、そう……まあ、ご主人様の前で浮気を迫るものじゃないわね!!」

 

オールレンジボマーを展開し、他の航空戦力を撃墜する。そして、再度ハドロンバズーカを撃つ。しかし……

発射直前で機体が揺れた。勇敢な戦闘ヘリのパイロットがいたようだ。何機かでこちらを攻撃した。しかも、ソティアテスとトレウェリの微妙な距離感を縫って、ソティアテスが砲撃をすればトレウェリが巻き込まれる位置取りだ。

 

おかげで砲撃が逸れてしまい、敵の陸上艦を撃破することはできなかった。指揮所としての機能を完全に奪うことはかなわなかった。

 

 

 

「にげろ!!」

 

「あんな距離で撃てる相手に勝てるわけないだろう!!」

 

「なんで、俺達を狙うんだ!!」

 

「死にたくない!死にたくないわ!!」

 

元々やる気のなかった将兵達は我先にとジープやヘリに乗り込んで逃げようとする。

 

〈司令!我々は一時後退します!〉

 

「待て!まだ撤退の指示は出ていない!!」

 

だが、僚艦の小型艦は勝手に後退していく。長距離砲撃をするKMFが指揮所を狙ったという心理的効果だ。大型艦は乗員の救助に追われており、退艦さえままならない。

 

「……ヴァントレーン中佐。今の砲撃で本陣の部隊が逃げ出した。戦線の維持は不可能だ!攻撃しつつ後退せよ!!」

 

〈了解。〉

 

司令官はパネルを叩きつけた。もう、残った列車砲は遠からず奪還されるか破壊される。既に列車砲の護衛部隊からの連絡は完全に途絶えている。あの連中のことだから、我先にと逃げ出したのだろう。

 

そして、それが当たっていたことを後日知り、司令官の報告によって今回の敵前逃亡及び任務放棄をした士官たちは全員銃殺されることとなる。救いがあるとすれば、逃げなかった将兵と指揮官の判断で列車砲が破壊されたことで、再奪取がなくなったことだろう。

 

 

 

敵が剣をはじき返し、距離を置いた。そして、残った航空戦力がチャフを発射する。

 

「全機後退!」

 

フロート装備のKMF隊が後退し、シールドを装備したKMFが煙幕からの攻撃を警戒し、前面でブレイズルミナスを展開する。

 

だが、攻撃はなく敵は緩やかに後退していった。

 

「どうにか勝てたようだな……」

 

列車砲同士の撃ち合いでも勝てたかもしれないが、それはそれでリスクが大きい。ならば、列車砲並みの射程距離を誇るローレンスを使うという手を取った。ウァテスシステムと長距離砲撃の双方を兼ね備えたローレンスとそれを乗りこなす川村雛の存在あってこその勝利だ。

 

「追撃は不要だ。列車砲の砲撃を受けた部隊の救出を最優先に行う。」

 

〈イエス・ユア・ハイネス。〉

 

シルヴィオは交戦していたゼラート・G・ヴァントレーンに強い興味をそそられた。そう、騎士として、一介のパイロットとして思い切り戦いたいという衝動だ。

 

ライルもエリア11で出会った日本軍人に拘っているようだが、こういう気持ちだったのかな?

 

いけない……そんな個人的感情を今は抑えねば。

 

「川村雛、お前のおかげで攻略が進んだ。」

 

〈よしてよ……あたしはでかいのを一発ぶっ放しただけよ?〉

 

「謙遜するな……あの攻撃で味方誤射をしなかった。お前はその機体をよく乗りこなしている証拠だ。昇進できるように掛け合ってみよう。」

 

〈…そういうのなら、お言葉に甘えるわ。〉

 

そして、ライルから送られた元『ガブリエル騎士団』のマルセル・コヴァリョフ、大貴族軍のアーネスト・N・シェーリンと羽田美恵もすさまじい活躍だった。特に雛はこの調子で実績を重ねれば騎士候になれるし、そうなればウェルナーの騎士になることも適うだろう。

 

 

 




前は雛がローレンスで列車砲を破壊してましたが、流石にモルドレッドのタイプだからといってKMFで500㎞狙える列車砲は無理があるでしょうから。

ゼットランドはグレイルとのドッキングで都市から離れた列車砲を破壊してたけど、アレも何㎞か具体的に分からないから。普通なら2、30㎞だと思うけどユーロ・ブリタニアの列車砲を考えると2、300㎞ありそうな気もする。

尚、ゼラートのシュテルンはアマネセールと同じ直参仕様型、デメルングは一般のE.U.仕様型とお考えください。
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