コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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長々とお待たせして、遂に池田とクラリスです。


BERSERK-28『再会と出会い』

秀作と雛が戻ってしばらくした後、ライルはアンドラからフランスへと攻め込んだ。警戒がエリア24との国境線に集中していただけあり、こちらの軍備は手薄だった。力押しで押し切れるところまで来ており、戦闘の規模はそれほど大きくない。

 

「殿下、必要以上に攻め込む必要はありません。エリア24から直接攻め込んでくるという心理的な効果でも我々の進軍は意味があります。」

 

フェリクスの意見は分かる。だが、もし本当にエリア24から来たら……そうなれば今のマリーベルの事だから、絨毯爆撃でもやって市民も皆殺しにしかねない。それをさせないためにも、こちらに介入させない口実を得なければならなかった。

 

しかし、現実的に無闇に攻め込んで孤立しては元も子もない。そこに、こちらの思考を現実に戻す報告が上がる。

 

「敵襲!先行部隊が敵の攻撃を受けています!」

 

「敵の規模は!?」

 

〈KMF、後方の控えを含めればおおよそ一個連隊規模!!〉

 

一個連隊規模、かなりの規模だ。しかも不意打ちでとはいえ、次々と撃破している。

 

低く見積もっても『ハンニバルの亡霊』と同等か?

 

「映像が入ります!」

 

優衣と涼子がパネルを操作し、モニターに敵の映像が映る。

 

「な、何あれ?フロートユニットを装備してる?」

 

優衣の指摘する通り、長剣を持ったKMFが一機中央にいる。残りの四機は量産タイプであるが、フォルムはどちらかといえばブリタニア寄りだ。ブリタニアから亡命した技術者が協力したのか?

 

そして、フォルムを見た涼子がつぶやく。

 

「ランスロットに似ているわね……」

 

そういえば、キャメロットのコンピューターにハッキングされたという事件があった。もしや、それか?

 

国内の反乱が鎮圧され、既に『ラウンズ』の機体はいくつかロールアウトされている。その最終段階の油断をついて開発途中のデータがいくつか奪われたという事件があった。あれはその成果だろう……

 

「私も出る。」

 

 

 

クラリス・ドゥ・ピエルスはロールアウトした機体ローランの性能に舌を巻いた。ランスロット、より正確には枢木スザクの躍進をよく思わない貴族主導でその妨害工作としてランスロット及びヴィンセントの開発プラン、それに連動した『ラウンズ』専用機の開発計画の奪取計画。

 

よくもまあ、花形のランスロットのデータを取れたものだ。しかも、枢木スザク一人への嫌がらせで。

 

「全く、あの馬鹿オヤジ。これを造る計画の立案と承認でも大した戦果なのに。」

 

失点の穴埋めとしては、悪くない。だが、あいつはまだ不満だ。大体、元はと言えばあの時逃げた自分の責任だ。

こちらの考えを見透かしたようにフィリップが問う。

 

〈馬鹿オヤジの尻拭いをやらされて大変か?〉

 

「分かってて聞かないでよ。」

 

そしてもう一機、インドで開発中の試作型がいた。青いボディに大型の刀を持った機体。フランスの外人部隊に編入され、何度か会った日本軍人だ。

 

「池田少佐、そちらはどうですか?」

 

〈問題ありません、ピエルス中佐。良い機体です、この蒼天は。〉

 

蒼天……確か、日本の言葉で青い空を指す言葉の一つだったはず。日本軍人が乗るうえでぴったりのネーミングだ。

 

〈出鼻をくじいてやりましたが、誘いに乗ってくるといいですな。〉

 

今回の作戦の司令官はフランスの中将で、父と比べれば有能だ。いや、比較対象が低すぎて参考にならないか?

少なくとも、出鼻をくじくという発想自体は間違っていない。第八皇子軍でさえ進軍を止められるほどの相手がまだいると思わせて、時間を稼ぐのが戦略目的だ。そうすれば、相手に時間を与えるが、こちらも他の国の増援を待つことができる。

 

と、敵の航空艦からKMFが追加で発進した。第八皇子ライルのヴィンセントだ。

 

「こっちが強いカードで来たから、最強のカードで対抗するしかないって考えたのね。」

 

〈間違ってはいません。動揺した将兵達の士気を取り戻す効果もあります。〉

 

池田の分析にクラリスはうなずく。確かに、主君が自ら出撃したとあっては尻込みできない。そこは『ユーロ・ブリタニア』でも同じだろう。

 

こっちだったら、絶対に指揮官は後ろでふんぞり返って危なくなったらすぐ逃げるのに。

 

考える間に空戦部隊のヘリがヴィンセントを囲もうとするが、後ろからハドロン砲が撃たれた。『ナイトオブシックス』専用機モルドレッドのバリエーション機。確か、あちらのはローレンスという名前で、艦砲に引けを取らない射程距離だ。今回はそれを牽制用の砲台として後方に回しているようだ。あれがいる以上、下手に近づけない。仮に近づけてもどれだけやられるかわかったものではない。

 

更に、『日本解放戦線』の雷光や『ユーロ・ブリタニア』のカンタベリーも使っているという。よく見れば、鋼骸やパンツァー・フンメルの武器を改造した武器を持ったサザーランドもいる。使えそうな武器は使い、見どころのありそうな人材は積極的に登用する。

 

「ちょっと、会ってみたいわね。」

 

 

 

ライルはモニターに映った二機を見つけた。あの二機が指揮官機であることはほぼ間違いない。しかも、見た限りだと『ラウンズ』専用機に匹敵する性能でパイロットも同レベル。全く、最悪だ。が、同時に手合わせしてみたいというパイロットとしての性もライルを刺激していた。

 

「長剣を持った指揮官機は私がやる!秀作はあの月下タイプを頼む!レイと長野は各隊を率いて進軍!クリスタルは航空戦力、雛は後方支援だ!」

 

現状、抑えられそうなのはこのメンバーだ。長野とレイもぶつければ勝てるかもしれないが、万が一やられたら指揮系統が混乱してしまう。なら、リスクを可能な限り抑えるしかない。

 

ヴィンセントのランスを突き出すと、相手も剣で受け止める。ランスはグロースターの時よりも更にパワーを上げている。しかし、剣のパワーは互角……いや、相手の方が勝っている。

 

剣のパワーで押し切られる前に距離を置いて、再度突っ込む。今度はランスを突き出すのではなく、なぎ払おうとする。これが入ればKMFが持ちこたえても、中にいる人間がもたない。

 

しかし、相手がそれを読んでランスを剣で横一文字に切り咲いた。なんて威力だ……盗用された技術にMVSもあったのかもしれないが、それでも凄まじい。E.U.の軍需産業の技術力も侮れないではないか。

 

MVSを抜いてランスモードにして構えるが、思わず通信を開いた。

 

「神聖ブリタニア帝国第八皇子ライル・フェ・ブリタニア…貴官の名前を伺いたい。」

 

といっても、相手は騎士や侍ではない。そんな律義に返してくる相手はよほどの馬鹿か、礼儀を重んじるタイプだろう。しかし…

 

〈フランス州軍ストラスブール基地所属、KMF第一大隊のクラリス・ドゥ・ピエルス中佐。〉

 

驚いた…こちらに合わせてくれるとは。そう思い、MVSを振るうが相手も無駄のない動きでそれを受け止める。だが、待てよ?

 

「ピエルスというと、もしや『方舟の船団』の事件で逃げ出した?」

 

〈痛いところ突くわね。そうよ、悪いけど馬鹿オヤジの尻拭いに付き合ってもらうわ!〉

 

剣を振るうが、その長さがKMFの全高とまではいかないが4m近くある。その分、間合いは広いが大振りになる。生身でもKMFでもそれは同じ、再度距離をとってライフルを撃つが相手も左腕のシールドを展開する。

 

「ブレイズルミナスまで……どうして、それだけの機体を造れる技術者と企業を優遇しないんだか!」

 

再度MVSを振るうが、やはり機体も武器もパワーは相手が上だ。正面からぶつかって、勝てる相手ではない。と、指揮官機の後ろから量産機が撃ってきた。まだ分からないが、グロースターより上と考えるべきだろう。

 

〈こっちは任せて!〉

 

指揮官機が部下を離れさせ、再び剣を構える。

 

長剣に沿って相手に近づき、そのままニードルブレイザーを叩きこもうとするところで、腰のパーツが開いた。ハドロン砲だ。

 

ギリギリで相手を蹴飛ばしてその勢いで反転して体勢を立て直し、ハドロン砲は空へ向かって発射された。どうやら収束に収束を重ね、砲撃ではなく弾丸として撃ちだすタイプだ。腕にはランスロットと似通ったハーケンと一体化したシールド。背中に二本のショートソードがあるのを考えれば、ベースに忠実な機動力と近接戦闘を重視した機体だ。元々のパワーがある分、取り回しの悪そうな長剣もさしたるデメリットにならないのだろう。

 

ヴィンセントを超えるパワーに機動力、武器、そしてそれを乗りこなす腕。全く、池田誠治や美奈川浅海以外にこんな逸材が敵にいるとは。

 

指揮官としてはまだ分からないが、パイロットとしては間違いなく優秀だ。先ほどの剣戟でそれは分かる。

 

「思いっきりやらせてもらうよ!?」

 

〈素敵なラブコールをありがとう!!〉

 

二機は激しく斬り結び、援護しようとした友軍のKMFが現れるや否や戦闘を中止してそれぞれの敵機に向かう。

 

「邪魔だ!」

 

「うるさい!」

 

 

 

〈すまない!暫くダンスの相手から解放してもらえない!〉

 

「嘘仰い……まあ、いいわ。みんな、ダンスの邪魔して殺されないために進みましょう!!」

 

お互いに身動き取れない状況だが、これはこれで都合がいい。戦術的にこの状況は放置が良い。最強のカード同士が動けないのなら、他のカードで勝ちに行く。

 

ライル軍においては基本戦術の一つだ。

 

「ほら、お楽しみを邪魔された殿下は怖いわよ!」

 

〈ご自分がご無沙汰な腹いせはごめんですよ!?〉

 

親衛隊の一人が茶々を入れた。しかも図星だ…少しだけ有紗と持ち直したが、有紗さえまだ再開していない。レイとクリスタルもそのおかげで中々だめだ。

 

「あんた、絶対に生きて帰りなさい。あとで殴るから。」

 

ハリファクスをKMFモードに変形させ、後ろの量産機を剣で薙ぎ払う。相手もとっさにハルバードで受け止めたため、撃破はできないがダメージを与えることはできた。そのままフォートレスモードに変形してヘリと戦闘機を翻弄し、後続のサマセットがそれらを撃ち落とす。

 

 

 

リラはローランの量産試作機オリヴィエのコクピットで歯ぎしりする。第八皇子ライル……実力主義とは名ばかりの女好きなんて侮る連中がいたが、全然違う。間違いなく、彼の部下は実力者だ。あのハリファクスという可変機に、今池田と渡り合っているアストラットのパイロット。

 

正真正銘、精鋭揃いだ。本国の事件で縮小されたが、それでも他人任せだったこちらではほとんど勝負にならない。

 

地上部隊は正規軍と名誉騎士団の攻撃で押されている。流石に自国だからとフランスの軍隊は踏みとどまろうとしているし、四十人委員会の本部があるパリに攻め込まれるという意味を理解している外国の部隊も持ちこたえている。だが、それでも質の差は埋められない。

 

 

 

池田誠治は蒼天のコクピットで舌を巻いた。相手の機体、アストラットに乗っているのは畑方秀作……『極東事変』で戦死した畑方源流の孫だ。部下達の中には彼を裏切り者や売国奴、祖父の名誉を貶めているなどと罵るが、池田はそこに干渉しない。今が17歳ならば当時は9歳。そんな幼子に大人が勝手に作った責任を押し付けて、義務を果たさないから裏切りなど勝手にもほどがある。それを真に受けた同世代も同罪だ。

 

大体、そんなものを差し引いても強い。ある意味、ブリタニアの不平等に最も忠実なライルの部下らしくランスロットを乗りこなすだけある。

 

「君は、畑方秀作だな?」

 

〈そういうお前は?〉

 

「日本軍の池田誠治……ホッカイドウで君の主君と一戦交えた負け犬だ。」

 

〈ああ、記録で見たよ。ライルがお前に入れ込んでいた。〉

 

意外だ……取るに足らないテロリストではなく、気にかけていたとは。

 

「なら、君くらいに負けては彼に失礼というものだ!!」

 

〈抜かせ、魔物!!〉

 

アストラットがライフルを撃ち、池田は搭載された輻射障壁で止める。弾が途中で蒸発し、防御に成功した。輻射波動の防御転用はうまくいったようだ。ならば、今度は。

 

制動刀でMVSを押し返し、更に胸に内蔵されたハーケンでアストラットを弾き飛ばす。その隙をついて戦場から離れ、地上部隊へ向かって左腕の輻射波動を展開する。しかし、その方法は違う。

 

「威力を試させてもらうぞ!」

 

輻射波動砲を発射し、地上のKMF部隊が薙ぎ払われた。

 

 

 

ゲイリーは青い機体の砲撃に驚愕した。

 

「遠距離で輻射波動を!?」

 

『ブラック・リベリオン』の頃はまだ実用化されていなかった。だが、インドに逃れたラクシャータ・チャウラ―の手で輻射波動は砲撃に転用された。ハドロン砲に相当する武器を反ブリタニア勢力も獲得したということだ。

 

「だが、全軍怯むな!一機が砲撃できるようになったところでたかが知れている!!」

 

あれだけの威力だ。紅蓮弐式の時よりエネルギー効率や球数は増えているだろうが、一機だけならばそう連発はできない。

 

「待ってください!侵攻部隊の前と後ろが分断されています!」

 

「何!?」

 

パネルを見直すと、先程の砲撃は前と後ろを僅かに分断していた。しかもそのわずかな隙間をついて、戦車隊が攻撃をしてきた。しかも、長野とレイは前にいる。

 

 

 

「ピエルス中佐と池田少佐が敵のエースを食い止めている間に我々は前衛部隊を叩け!両翼に展開した戦車隊は分断された後続を撃て!陸上艦とキャノン隊は敵航空艦に砲撃!」

 

この作戦は池田が立案したものだ。イレヴンごときの作戦と内心で侮っていたが、成功した。ならばこの機は逃さない。

 

あの新型のKMFありきの作戦だが、うまくいったのは事実。あわよくば、第八皇子を討ち取ってくれる。

 

「残った航空戦力は飛行部隊を動けなくしろ!地上と空の連携を分断する!!」

 

航空部隊は間違いなく、分断された地上部隊の援護に回る。ならばそれをさせない。

 

 

 

砲撃で前衛と後衛が分断され、そのわずかな隙間を埋めさせないために前衛部隊が攻撃を受け続ける。このままでは全滅は必至だ。

 

レイと長野は流石に踏みとどまっている。いや、二人は撃墜されない程度の攻撃で釘づけにされている。

 

「くそ!雛、攻撃できるか!?」

 

ライルの問いに雛が舌打ちする。

 

〈無茶言ってくれるわね!まあ、何とかやるからみんなもうちょっと頑張って!!〉

 

〈艦隊を前進させろ!!KMFの上に着くんだ!!〉

 

ゲイリーの判断をライルは一瞬疑った。だが、他に手がないことも分かった。KMFと航空艦なら、パワーは航空艦の方が上だ。その分、シールドの出力も高い。

 

〈エナジーをシールドに優先的に回せ!上と下の防御に集中!〉

 

艦隊がシールドを展開して前進し、KMF部隊の上に覆いかぶさる。母艦が前に出れば、相手は当然それを狙う。

 

〈川村、フルパワーでなくても良い!敵の攻撃を散らせるんだ!スレイター卿と長野は砲撃後に部隊の救出!殿下と秀作、ウィスティリア卿は現状の敵の足止めを!〉

 

〈イエス・マイ・ロード!〉

 

〈巻き込まれないでよ!?〉

 

相手の機体がこちらの意図を察して、今度はライルが相手を止める。

 

「ダンスを投げ出さないでくれるか!?」

 

〈レディをしつこく引き止めるのは紳士にあるまじきことではなくて!?〉

 

 

 

「やってくれたな、魔物!」

 

〈熱くなり過ぎだな!〉

 

「うるさい!」

 

これ以上砲撃をやらせない。それは秀作も分かる。だから、MVSで左腕を集中して狙う。相手もそれを察して、回避と受け身に回った。が、今度はそうはいかない。ハーケンを発射して、相手に突き刺さった。巻き戻しとフロートのブースターで突っ込むが、それを相手が逆に利用した。ひくのではなく、こちらに合わせて突っ込んできた。そのまま頭突きを食らわせあう形になって、二機は大きくはじかれた。だが、今度は秀作に軍配が上がった。そのままライフルを敵に投げつけ、ハーケンでライフルを破壊した。ライフルの爆発で相手がさらに吹き飛ばされ、間髪入れずに左腕にMVSを突き刺した。かに思われたが、輻射波動で止められた。

 

それでも、わずかにこちらが早かったためにアストラットの右腕が爆発し、敵の左腕も損傷した。すくなくとも、もう撃つことはできない。

 

それを確認した直後、ハドロン砲が発射されて航空戦力が撃ち落とされた。間髪入れずにリニアカノンが何発か発射される。万が一にと、後方に待機させたカンタベリーと雷光だ。球数が多い上に、虎の子の輻射波動砲を潰されてしまったE.U.は巻き返されるが、それでもミサイルを撃って航空戦力を援護する。

 

 

 

〈殿下、一時撤退です!〉

 

「ああ、分かっている!全軍、戦闘状態を維持しつつ後退!可能な限り救助!それと、もう一つ!追いつけない者は敵に投降してでも命をつなげろ!」

 

それは事実上、全員を助けられない状況という宣告だ。戦場における残酷な判断の一つ。そんなことは分かっている……指揮官である以上はそういう決断を下すしかないときもある。シュナイゼルやコーネリアにも言われてきた。

 

だからせめて、投降してでも死ぬなと命令した。相手だって正規軍である以上はすぐには殺さないはず……貴族の子息達だっている以上は交渉に使えるし、こちらだって既に数回の戦闘で捕虜を抱え、中には各国の有力者の親族もいた。捕虜交換で救えるチャンスはある。

 

ハリファクスとサマセットが航空戦力の注意を引き付け、雛の砲撃で生じた隙をついてレイも援護に回る。同時に艦を盾にしている間に地上部隊は砲撃を潜り抜けて分断から離脱。全体の9割が離脱に成功した。

 

〈いい判断よ…〉

 

指揮官機のクラリスから賛辞が送られるが

 

「嫌味をありがとう。」

 

〈純粋に褒めてるの……こっちだったら自分達だけ逃げる指揮官の方が多いから。〉

 

「そうか…」

 

と、そこにアストラットが来た。右腕を失っている。

 

「派手にやられたな…」

 

〈お前がやりあったやつだ。〉

 

なに?まさか、それは……

 

青い月下タイプが通信を送ってきた。

 

〈また会ったな、ライル・フェ・ブリタニア…〉

 

「ホッカイドウにいた、池田誠治か?」

 

〈ああ……〉

 

「……また会えてうれしいよ、こんな状況なのにね。」

 

既にお互いの部隊は撤退を開始しており、こちらは地上部隊を削られた。しかし、相手も航空戦力を損ない、地上戦力もかなりやられている。痛み分けというところだろう。いや、こちらは撤退に追いやられた。戦略面では侵攻の足掛かりをつくれなかったこちらの負けか?

 

「………次に会う時は、直接やりたいね。」

 

〈なら、お前も死なないようにしろ。〉

 

そこへ、レイのヴィンセントとハリファクスが合流し、後ろからローレンスがバズーカを構えている。

 

「…行っていいよ。安全保障書代わりに捕虜を連行していい。」

 

〈許可されなくたって、渡す気はないよ。〉

 

それはそうだ。捕虜は人質になる。ライルでもわかることだ。

 

ここでやりあえば取り返せるが、そうなったら余計に被害が大きくなるし、捕虜たちを巻き込む。この部隊を相手にしたら、たとえ勝っても割に合わない。ライルはそう感じていた。

 

二機がこちらを向いたままゆっくりと後退し、随伴したKMFもライフルや剣を構えながら合流する。

 

そして、敵がライルの射程距離を出たところでライル達も相手を見たままゆっくりと後退する。

 

が、ライルの唇は上を向いていた。

 

「池田誠治…また会えるとはね。」

 

エリア11で、あの美奈川浅海も強かったが敵としてのこだわりは池田に傾いていた。KMFで初めて、思い切り戦った相手。思い切り戦って、勝ちたい。

 

そんな衝動が渦巻いていた。

 

 

 

池田は後退しながら、クラリスからの通信に応える。

 

〈エリア11で彼に会っていたの?〉

 

「ええ、ホッカイドウで。国外脱出も視野に入れた勝負で、まあ痛み分けですかな?」

 

あの時、ホッカイドウの蜂起は勢い任せの散発的なものでライルが現地の軍に協力する形で鎮圧、池田達はライルだけでも叩こうとしたが失敗した。

 

一概に勝ち負けを決められるような結果ではなかった、というのが部下達の見解だ。

 

〈私も画像では見ているけど、一度会ってみたいわね。いい男だし。〉

 

「どうやら浮いた話のない貴官の好みは年下のようだな。」

 

軽い冗談を飛ばし、池田は指揮所に連絡を取って着艦の許可を取った。

 

 

 

撤退に成功したライル軍はアンドラとの国境線まで後退していた。フェリクスが事細かに、そして本国で起こった事件の成果が敵側で実を結んでいたことまで報告。この報告の意図はつまり、『コーネリアが不在の今、ライルの軍は『大グリンダ騎士団』に並ぶ形で貴重な戦力。それが撤退せざるを得ないほどの新型KMF部隊がE.U.に出現した』、そう誇張することによって、ライルの面子を必要以上に傷つけないようにしたのだ。

 

そして、実際に効果があった。インド軍のKMFまであった以上、E.U.主戦派は必死であるということ。そして、ライル軍単独ではまたやられるという恐れもある。ナンバーズに手柄を取られまいと本国の連中が出張るか、それとも死んでもらおうとするか。しかし、後者ならばフェリクスにとっては馬鹿としか言いようがない。

 

ライル軍でさえ撤退に追い込まれた相手に、碌な実戦経験がない本国の連中が勝てるわけがない。甘く見て、もっとひどい目に遭うのが落ちだ。

 

家柄自慢しかしないから、理解できないのだろうね。とはいえ……

 

ライルは今回の撤退はシュナイゼルに報告した。幸い、アンドラで反抗の動きはない。最低限の報道規制が行き届いているからだ。

 

「今回の失態と将兵の犠牲の責任は私にあります。どうか、部下達の処分は寛大なお心を…」

 

〈いや、君が撤退を決めるほどの相手だ。勝てるのは『ラウンズ』くらいしかいないだろう。それに、アンドラから攻め込めまれるという警戒を促すことができた。君はまず、犠牲になった将兵達の弔いを丁重に行ってあげなさい。〉

 

「承知しております。」

 

事実上お咎めなし、か。『グリンダ騎士団』もベジャイアで惨敗したが、『サハラの牙』壊滅という一定の成果は挙げている。それと同じということか。確かに、強力なKMF部隊がいるという事前情報があれば、それを作戦に組み込める。

 

この方にとって、殿下は少し扱いにくいが強力な駒ということか。多分、殿下もそこは気付いているだろう。

 

勘の鋭い主君を見て、その表情からは警戒が浮かんでいる。シュナイゼルの意図を測ろうとしているが、無理だろう…レベルが違い過ぎる。

 

〈しばらく、君はアンドラの国境線で待機しているように……そこに君がいるだけで備えになる。君が恐れている、後ろの存在にもね。〉

 

その一言で通信が切られたが、フェリクスはやはりとも思った。

 

見抜かれていた……実際、あの一件以来『グリンダ騎士団』への心象は最悪だ。

 

しかも、アンドラとの国境線から攻め込まれるという防衛戦の判断ミスを誘発する材料とマリーベル殿下の牽制をこちらに体よく押し付けた。

 

既に何度かブリタニア側からも暗殺の刺客が送られたマリーベル。暗殺が無理なら牽制するというシュナイゼルの意図において、政策面でも現在の在り方でもライルは最悪の相性……しかも、本気でぶつかればお互いに只では済まない相手。

 

仮に同士討ちになっても、その時はそれを方便にマリーベルをエリア24に閉じ込められるし、マリーベルの方から撃ったとなればせっかく復帰した皇籍からまた廃嫡される恐れもある。向こうだってそれは想像している。どちらが倒れても、シュナイゼルは懐が痛まない。まるで、悪魔だ。

 

確かに、この方が皇帝になれば殿下の懸念はなくなる。それはおそらく、殿下ご自身も分かっている。

 

だが、それはあくまでシュナイゼルが万全の状態であればこそだ。暗殺どころか事故死でもしたら、それは一気に爆発する。それを恐れるからこそ、ライルは緩和を求めている。シュナイゼルが一定の価値を認めるのもそれだろう。だが、シュナイゼルがそんなことを予期していないとは思えない。

 

何か、とっておきの手でもあるのか?

 

あったとしても、ライルは納得しないような手では?長い付き合いから、フェリクスは直感でそう確信していた。

 

 

 




今回はクラリスとの出会いといきなりKMFでやり合いました。そして、池田とも再会。

二人共内心で嬉しく思ってます。

クラリスの機体、実は掲示板時代つまり十年以上前に考えたKMFで、有り体に言えばスザクへの妨害同然で盗まれたランスロット及び開発途上の『ラウンズ』用KMFのデータから造られています。

名前は言わずと知れたシャルルマーニュ十二勇士最強の騎士です。量産機ないしダウンスペック機がその盟友。武器の名前は明かされてませんが、掲示板時代はそのままでしたがこっちではちょっと変えます。

そして池田の機体は蒼天、ちなみに左手が紅蓮と同じアレ。
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