コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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サブタイトル通りです。


BERSERK-29『復活の魔人』

アンドラにいる間にもライルは租界部分とゲットー部分の在り方を現地政府と議論していた。できるだけ相手にも有利な条件を出し、政府首脳部にはそのままゲットー方面の代表として、可能な限り現地のインフラもゲットー用に確保する形で整理を進めている。

 

国土と人的被害を抑えようとしたのが結果として、相手の反発を小さくする結果となった。あとは正式にアンドラを統治する総督を選ぶ段階だ。

 

一旦、母艦に戻って書類を整理していると優衣が入ってきた。

 

「ライル様、向こうは納得してるんですか?」

 

「表面上、かな。」

 

実際は面従腹背だろう。それが普通だ……とはいえ、それを承知で防波堤になろうという政治家や軍人だっている。こちらだってその程度は想定する。そのはずなんだが……

 

「私は味方の政治家達が不安だ。」

 

「え?」

 

「皇帝陛下の御名において世界を統治して、平和な世界を……武力侵攻の決まり文句だな。実際、E.U.と中華連邦は体制が限界にきている。」

 

 

 

実際に中華連邦のスラムを見た優衣はその言い分がなんとなくわかった。E.U.は既にフランスが陥落の危機に瀕しているのに、いまだに在住イレヴンを隔離しているし、中華連邦はこの前見てきたとおりだ。

 

「でも……それでも………ゲットーのイレヴンの言い分としては、民間人の生活がよくなるどころか悪くなってるんじゃ…」

 

言ってまずいと思った。これは皇帝批判ではないか?

 

「そう、だがブリタニア人共は父の不平等に酔っている。不平等だから、ブリタニア人は全てにおいてナンバーズより上。そう思い込んでいる………そこにある落とし穴が分かっていない。」

 

「落とし穴?」

 

「部下達や他の貴族にも口が酸っぱくなるほど言ったことだが、ブリタニア人が全てにおいて勝っているなら、同じ職務に着いている君と涼子よりブリタニア人は全員上のはずだ。だが、長野だけ見てもどうだ?素人意見で良いから言ってみてくれ。」

 

いきなり言われても…だが。

 

「えぇと、少なくともコーネリア総督は分からないけど、条件次第で実戦経験がない階級だけの指揮官なら長野隊長が勝てると思います。」

 

「そう、敗戦国の軍人に負けるわけがない。そんな根拠のない優越主義にどっぷりと浸かっているのが問題なんだ。」

 

「……ナンバーズの努力や才能を認めないどころか、人種に胡坐をかいて努力しない?」

 

「ああ、私も人間は平等ではないという考えだけは認めている。だが、ブリタニア人が全てにおいて上だと父は一言も言っていない。」

 

そういえば、あくまで「ブリタニアだけが進化している」とあのクロヴィスの葬儀で言っていたが、確かに『ブリタニア人が』とは言っていない。

 

「私は私なりのやり方でそれを実践しているし、必要な要素であるとも思う。ナンバーズが競争に参加するな、とも言っていない。」

 

拡大解釈……いや、確かにその通りだ。皇帝の演説の落とし穴を突いている。

 

「実際、私の部下達は並の連中では勝てないくらいに鍛えられていると確信している。そして、ハーフのレイを騎士にして純血ナンバーズの君や有紗を起用している。これはどう思う?」

 

「あ、不平等。」

 

「そう、それが不満なら彼らは皇帝陛下への叛意を持つ。それを突きつけてやったら、どんな顔をするのだろうね?」

 

ライルが何やら、いたずら…いや、凶悪な笑みを浮かべた。怖かったが、女としての衝動をそそられる色気を感じた。

 

「ライル様。」

 

優衣はライルの膝の上に乗って、豊かな胸で顔を埋めた。

 

「なに?」

 

「やっぱり、好き……ねえ、有紗もクリスタルもご無沙汰なら、私はダメ?ライル様に初めてあげたいの。」

 

「……もう少し取り繕えないのか?」

 

「そういうの苦手。それに女は度胸。ガンガン押しまくる。おしとやかに見せても失敗するなら剛速球勝負よ。」

 

「君、恋愛は超攻撃型なんだね。」

 

が、優衣はもっと強くライルを抱きしめて、胸で顔を埋める。

 

「あの状況で惚れるな、が無理。」

 

手放し、両手で顔を包む。近くで見ると、やはりとても綺麗だ。これならお嬢様達が夢中になるのも分かるし、有紗やクリスタルほどの美女が惚れるのもうなずける。

 

「前にも言ったと思うけど……ほんとにホントの大まじめですよ。愛人も秘書も全力投球だから。」

 

「……私は君の国と親を奪ったブリタニアの皇子なのに?」

 

「じゃあ、有紗とレイは?あの二人だって同じじゃない……どれもライル様が直接やったわけじゃないでしょ。」

 

ライルは詰まった。

 

「変なところで気を遣わないで……好きな人にそういう気を遣われたら、押し倒せないわよ。」

 

そのまま、ライルに顔を近づけ、ライルも目を閉じて応えようとしたとき……

 

〈殿下、ブリッジの方へお願いします。〉

 

涼子からだ。

 

「…お姉ちゃんのけち。狙ったんじゃないわよね。」

 

せっかくのムードがぶち壊しだ。ならばせめて……

 

「これだけでも。」

 

額にキスをして、優衣はライルの膝から降りた。

 

ライルはやや呆然としていたが、すぐに持ち直して立ち上がる。

 

 

 

「どうしたんだ?」

 

ライルの問いにフェリクスが応える。

 

「殿下、エリア11の方から電波ジャックが。」

 

電波ジャック?それもエリア11から?

 

どういうことだ……『黒の騎士団』残党による犯行声明か?

 

〈私はゼロ。〉

 

「な!?」

 

「ば、馬鹿な!?」

 

モニターに映ったのは世界中の誰もが知っている漆黒の仮面。ゼロだ……

 

ゲイリーがライルに続いて同じことを言う。そして長野や有紗、レイも…

 

「処刑されたのでは?」

 

「どうして……生きていた?」

 

「まさか、影武者?」

 

影武者……考えてみれば、ゼロの最大の特徴の一つは素性が不明であること。処刑が発表されたにもかかわらず、素性は発表されなかった。

 

 

 

〈日本人よ、私は帰ってきた!〉

 

シルヴィオは緑茶の入った湯呑を持ったまま、考える。

 

「影武者以外に可能性があるとすれば……」

 

「処刑されたゼロとは別の誰かが称号を受け継いだ、とも考えられるわね。」

 

木宮の分析にミルカが何か思い至る。

 

「あ、本物か偽物か判断できない……」

 

 

 

「正体不明の仮面の英雄………名前を語るだけならメリットはそれよね。」

 

クレアの言う通り、確かに名前を語るだけならそうだ。誰でもできる。

 

「でも、もし前と同じくらいの人間だったら?」

 

セラフィナの問いにエルシリアはうなる。

 

「厄介極まりない相手ね…カラレスじゃあ勝負にならないわ。」

 

 

 

〈聞け、ブリタニアよ!刮目せよ、力を持つすべての者達よ!私は悲しい。〉

 

〈戦争と差別、振りかざされる強者の悪。間違ったまま垂れ流される悲劇と喜劇。〉

 

ゼロは静かに、今も続いているブリタニアの侵攻を指して世界の趨勢を非難する。

 

〈世界は何一つ変わっていない………だから、私は復活せねばならなかった!〉

 

まるで、自分が先程まで死んでいたかのような口ぶり………ホテルジャックでの結成時の演説にどことなく似ている。いや、真似か?

 

〈強き者が弱き者を虐げ続ける限り、私は抗い続ける。まずは愚かなるカラレス総督に立った今天誅を下した!〉

 

クラリスはエリア11の演説を見て、腕を組む。カラレス公爵の名は聞いている。元々残虐行為が問題視されていたところを、反抗が激化するエリア11の総督として第一皇女が推挙した。

 

暫くは大人しくしていたが、『黒の騎士団』残党のテロを受けて弾圧を開始していた。E.U.でも軍人としての手腕よりもその残虐性は警戒されていた。

 

そのカラレスを殺した………クロヴィスを殺した時と同じような展開ね。

 

 

 

「どう思います、少佐?」

 

西野淳哉の問いに答えず、池田誠治は黙って演説を聞く。

 

〈私は戦う。間違った力を行使するすべての者達と!!〉

 

間違った力を行使、か。つまりブリタニアが力の行使の仕方を間違えている……なら、自分達は正しいというのか?

 

もし、これが日本人の支持を取り付けるための方便であるとすれば、効果は絶大だ。

 

 

 

「この論理の怖いところは、こういう絶対のカリスマが言えば自分達が行使する力は全部いいことになるってことなんだよな。」

 

海棠はゼロの演説を分析する。確証はないが、ゼロ個人の本音もいくらか含まれているだろう。それを巧みに覆い隠す話術……人々を熱狂させる理念。

 

「こりゃ、中身を問わずにこいつ自身の能力は本物かもね。」

 

「中身ではなく、能力…ですか。」

 

橋本の答えに海棠は無言でうなずく。

 

 

 

ゼラートはゼロの復活演説を見ながら、確認をしていた。

 

「全世界に発信されているんだったな?これは。」

 

「はい、エリア11が発信源です。」

 

そんなことは分かり切っている。しかし、『ブラック・リベリオン』で監視が厳しくなったエリア11でそんなことができるのか?いや、待てよ?

 

「ウェンディ、もし最初に合衆国日本の建国宣言をした時、あの時既に政庁陥落の映像を発進するプログラムが仕込まれていて、それがまだ残っていたとしたら?」

 

それこそ、何かの信号で起動するウィルスプログラムの類………それならば或いは。

 

「理屈の上では可能です。よほど情報システムに強い人間が仕込んだのならば…」

 

そう言えば、逃走中の団員の中にブリタニア人のジャーナリストがいた。そいつは元々、メディアに務めていたという。ならば、この手の操作は得意分野だろう。しかし、一年もたった今でもそのプログラムが生きていたとは。

 

「よほどそのジャーナリストが優秀で、団員達への訓練が行き届いていたのだろうな。それとも、ブリタニアの情報局やメディアの連中が間抜けだったか……」

 

もしくは、その両方か。普通に考えれば、この映像をカットできないプログラムも仕込まれていると考えるべきだ。これを考えた奴は相当ゼロに入れ込んでいると見える。

 

 

 

〈故に私はここに合衆国日本の建国を再び宣言する!〉

 

「合衆国日本だと?たわ言を。」

 

E.U.軍の高級士官室のベッドで行村は裸の女達を何人も侍らせていた。映画を見終え、これから楽しもうというところでこれだ。

 

〈この瞬間よりこの部屋が合衆国日本の最初の領土となる!〉

 

「たった一部屋の国家?ふん、やはりただの痴れ者よ。この私こそが日本解放の勇士だ。」

 

「…はい。」

 

「行村様が…日本を、世界をブリタニアから救うお方です。」

 

「そして、私達のご主人様です。」

 

「そうだ、いい子だ…」

 

テレビを消し、行村は女達の身体をむさぼり始めた。

 

 

 

〈人種も主義も宗教も問わない。国民たる証はただ一つ、正義を行うことだ!〉

 

幸也はテーブルを殴りつけた。

 

「正義?また、そうやって耳当たりのいい言葉をかざしやがって!!」

 

ブリタニアの正義が父を殺し、日本の正義が母と姉を殺した。ブリタニア人ならば『戦勝国だから何をしてもいい』、日本人は酷い場合には『日本を取り戻すための犠牲』、挙げ句には『母と姉がブリタニアに内通していた』などと言いだした。

 

どれも、ブリタニアが、日本が正義だからだ。どちらも最低だ。だが、どちらかしか選べないなら力のある方に着く。

 

それが普通だ。文句は言わせない。正義に歯向かうというのなら、お望み通りそうなってやる。正義を騙る者…否、正義こそが俺の敵だ!!

 

 

 

「仮面の中身は関係ないな……自分から獲物が出てきてくれた。」

 

秀作は舌なめずりをした。中身は関係ない……ゼロという魔物どものボスが蘇った。名前を騙っただけでもその価値は高い。

 

魔物どもが縋るゼロを殺せば、俺はゼロの仇。奴の孫でありながら、日本を裏切った奴らの憎悪の象徴になる。そうだ、奴の呪いを……

 

アフリカでセラフィナに言われた言葉が蘇った。

 

これが、呪い?俺が自分で奴の名前という呪いをかけている?

 

今度は、ゼロの呪い?それに考えてみれば、枢木スザクの二番煎じじゃないか。

 

枢木スザクがゼロを捕らえたという事実は公表されている。素性こそ公表されなかったが、もう覆らない功績だ。

仮にあのゼロを殺すことができても、スザクの二番煎じ止まり。名前を騙っただけの小物だったら、何の意味もなくなってしまう。

 

俺は…どうすれば?

 

 

 

ルーカスは女達を侍らせながら、映像を見ていた。

 

「ふん、誰であろうとゼロを名乗るなら皇族殺しだ。奴を殺せば、俺様が皇帝になったも同然だ。」

 

そうなれば、あの頭だけのシュナイゼルも、子爵家の血筋の分際で国内だけでなく諸外国からも人望があるライルも、お人好しのオデュッセウス、邪魔なシルヴィオとエルシリアも始末できる。

 

そう、世界がこのルーカス・ズ・ブリタニアのものになる。全てはこの俺様のためにあるのだから。

 

 

 

「この映像はどこから流れている?」

 

どこかの部屋であることは間違いない。だが、一体?

 

「待ってください!今確認を…確かにエリア11のトウキョウ租界……え、嘘!?なんで!?」

 

涼子が驚愕し、優衣も確認する。

 

「ちょ、ちょっとなんでここから!?」

 

「どうしたんだ、どこから流れている!」

 

ゲイリーの問いに涼子が上ずった声で答える。

 

「え、エリア11のトウキョウ租界なんですが……中華連邦の総領事館からです!!」

 

「何!?」

 

ライルも驚愕するしかなかった。何故、中華連邦の総領事館から?

 

「中華連邦の総領事館って……え?ゼロを匿ったら。」

 

有紗もその可能性を疑った。そう、ここでゼロを匿うなどということをすれば大宦官が推し進めていたブリタニアとの和平は水の泡になる。いくらE.U.との戦争が継続しているとはいえ、そんなことになればブリタニア側に戦争の大義名分を与えることになる。

 

「総領事館は治外法権ではあるが、何故?」

 

そう、総領事館の敷地は中華連邦の領土と扱われている。いきなり攻め込むことができないとはいえ、あまりにもリスクが高すぎる。

 

事前に話が着いていた?処刑されたのは本当に影武者か何かだったのか?

 

ライルは考えられる可能性を探るが、一つだけ確信していた、

 

間違いなく、この宣言で各エリアの反抗はまた息を吹き返す。世界の混乱はより、深くなっていく。

 

世界が蘇った魔人に困惑する…………そして

 

 

 

「イエス・ユア・マジェスティ。」

 

ブリタニア皇帝シャルルに呼び出された枢木スザクは立ち上がり、宣誓する。

 

「誰にも譲るつもりはありませんよ。ゼロを殺すのは自分です。」

 

 

 




グダグダ、ダラダラ、のろのろやって…ようやくゼロの復活まで来ました。

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