革命政府はブリタニアの侵攻に対抗するべく、新たな部隊を創設した。首都圏防衛を最大任務としたKMF中心の機甲部隊……『ロンスヴォー特別機甲連隊』。
連隊、と銘打ってはいるが実際の規模は師団クラスだ。ロシアをはじめ、ブリタニアに降伏した国の正規軍の残存勢力に未だ存続する国の正規軍及び外人部隊の最精鋭を選りすぐった精鋭部隊。
「この連隊そのものがパリを難攻不落の要塞都市とします。市民の皆さん、どうぞご安心ください。」
政府の高官が演説を行うが、市民は以前ほどそれを受け入れない。それもそのはず。既に『方舟の船団』の事件で我先にと逃げ出した政治家の言うことなど信用するわけがない。まだ信用するのは、よほどの能天気か状況を理解していないかのどちらかだ。
実際のところ、この期に及んでもまだ軍上層部は人気取りの方が大事でその将兵達は上層部の子女で構成されている。外人部隊と正規軍にも確かに本物の精鋭がおり、『ユーロ・ブリタニア』の『四大騎士団』及び本国の皇族や『ナイトオブラウンズ』の部隊との交戦経験があり、生き延びた部隊もいる。
だが、現実としてのこの連隊の存在はやはり上流階級のブランドづくりが主目的。KMF部隊の総隊長には父の逃亡を阻止したクラリス・ドゥ・ピエルスが大佐への昇進に伴って着任した。革命に協力した貴族の末裔という家柄に加え、絶世の美女と呼ぶにふさわしい美貌と並のモデルなど全く相手にならない豊満なプロポーションで何度か軍への取材にも応じており、あのレイラ・ブライスガウに引けを取らない知名度だ。
父のピエルス将軍は『方舟の船団』の事件で真っ先に逃亡しようとしたという汚点があり、クラリスはその娘。本来ならばマイナスにしかならない要素だが彼女は勤務する基地の司令官が真っ先に逃げだした状況で基地に留まって事態の収拾に尽力、更にパリを逃げ出そうとした父と母を逮捕した功績がある。
だが、あろうことかその父が娘を総隊長に着くように働きかけた。『娘のおかげで眼が覚めた父親』を演じたいからだ。
「あのクソ親父……こんな状況でそんな看板造って何の意味があるってのよ!!」
軍の広報が終わった後、父の魂胆を見抜いていたクラリスは自室で何本目か分からない缶ビールを飲んでいた。とても淑女とは思えない振る舞いで、将兵達が見れば幻滅するだろう。
「それ、今日だけで何度目だ……」
共に配属されたフィリップ・ポテがビニール袋に空き缶を詰めて、今飲んでいる缶を取り上げる。
「ちょっと…まだ半分くらい残ってるのに。」
「駄目だ、いい加減にしろ。」
クラリスは「けち」と毒づいて、横になる。
「だって…明後日には『ロンスヴォー』創設の祝賀会よ。出たくない。」
あんなの毎度のパターン……そして、この愚痴も毎度のパターンだ。
「出ないと駄目だろう、お前は部隊の広告塔なんだぞ?」
親友の言うことが正しいのは分かっている。だが……
「ハリボテの広告塔よ?また、お偉いさんの息子が群がるだけじゃない。ウチのブランドと私の身体に。」
恨めしいくらいに大きく育ち、しかも軍人としての鍛錬でさらに磨かれた巨大な胸を自分の手でわざとらしく持ち上げる。
「大体、バルディーニ将軍がいるんだから私いなくてもいいでしょ?」
「パーティーには華が必要。それとも、このままお飾りでいたいのか?」
またも現実論でクラリスを言い負かす。
「分かったわよ……出るわよ、出ればいいんでしょ?」
「分かればよろしい。朝にホットミルクでも用意してやるから、もう寝ろ。」
「一緒に寝て…って言ったら?」
普通の男なら大喜びで食いつきそうな誘いだ。しかし、フィリップは
「やだね。手を出したらそれこそ本物の人生の墓場まっしぐらだ。お前のようなはねっ帰りのお守りを一生やるなんざごめんだ。」
人生の墓場…だが。
「それ、表現がこっちでは違うわよ。」
「日本人の場合はそう思わないだろう……それに、宝石とドレスで着飾っても中身がブクブクに太っているなら同じだ。」
「言い得て妙ね………」
浅海は『ロンスヴォー特別機甲連隊』にオランダ軍から編入の形を取り、デルクが指揮する部隊の指揮下で引き続き働く。それに伴い、浅海にはE.U.の市民権が与えられたがとても素直に喜べるものではなかった。
「名誉ブリタニア人になれた人はそれ自体を喜ぶべきなんだろうけど。」
既に船底に穴が開いた船に乗せてもらったところで特に意味を見出せない。ブリタニアの領土になればE.U.とブリタニアの二重に支配されるのが目に見えている。ブリタニアは引き続き、収容所の日本人をイレヴンとして……そして革命政府側の恭順派はガス抜きとして手放そうとしないだろう。
「少佐、私ってなんのために戦ってるんです?せめてブリタニアと戦うことだけでも、続けようと思ったけど……」
デルクはそれに対し、何も言ってくれない。
「俺は何も言えない……言葉が見つからない。」
そうだろう………この人でさえ、軍で出世して収容所に送られた友人を出そうとしたのにその二人、男は収容所内の諍いで殺され、女は同じ日本人の男や看守に身体を弄ばれ、父親の分からない子を身籠ったのを苦にして自殺してしまった。つまり、目標を見失っているのだ。
「二人が死んだ時点で、俺もアイデンティティを失ったんだ。あるとすれば、原因を作ったブリタニアの兵士を一人でも地獄に道連れにすることだ。」
「それだけ?」
「…………選択を誤ったと思う時がある。いっそ、『ユーロ・ブリタニア』か本国に寝返って直接手を下した革命政府に復讐する道。」
自分の政府に復讐………軍人から逸脱した思考なのが浅海でもわかる。ブリタニアと中華連邦だって、軍の一部がクーデターを起こしたくらいだ。
そんな時に……ライル・フェ・ブリタニアの顔が浮かんだ。エリア24となったスペインでの虐殺、あれはライルも積極的に加担したというが、公式発表によればライルは部下達を人質にされたとのこと。もし事実なら、ライルは本国で疎んじられていることになる。
オランダやフランスがブリタニアの領土になるにしてもライルが総督ならどうなっているのか?イレヴン達の財産凍結の解除と収容所からの解放、それによる財政負担を強いて支配をより強固に勧めるのだろうか?
日本人としては、それは良いと思った。安直な発想に走った報いだし、大好きな平等をオランダ人もイレヴンも共有する。そう、『平等』にブリタニアのナンバーズになるのだ。
いっそ、ブリタニアの領土になってみんな仲良く平等にナンバーズになれば少しは身に染みるのかしら?
ドイツの外人部隊のほとんどは『ロンスヴォー』に回された。ゼラートの部隊もその一つだが………
「ロンスヴォーね…」
確か、フランスの伝説に伝わる騎士達が全滅した戦場の名前。その筆頭部隊は『ヒポグリフ隊』と呼ばれる。ヒポグリフ……その伝説に登場する騎士が乗る空想動物だ。
「どう考えても、『w‐ZERO』とそこの『ワイヴァン隊』の猿真似だよな。」
その『w‐ZERO』とてイレヴンを使っているという理由で前線からぞんざいに扱われていたという。スマイラスのバックアップがなければ、もっと酷かっただろう。
「見せかけの精鋭部隊なんか今更作って………政府も統合本部も本当に何もわかってないんですね。」
ウェンディの言葉にゼラートは頷く。どう考えても、これは秒読み段階に入ったフランス政府の時間稼ぎだ。今頃、ブリタニアとの講和も検討していることだろう。ピエルス将軍など、娘をシュナイゼルと結婚させるなんて言い出しそうだ。
娘の方にはまだ会ったことはないが、絶世の美女で有能な軍人だという。『方舟の船団』の事件では逃げたフランス軍の残存をまとめようと悪戦苦闘し、逃げ出した両親を拘束したという。
少なくとも、軍人として最低限の仕事はするようだ。しかし、上層部の娘ということで彼女の評判は悪い。最新鋭のKMFでライル・フェ・ブリタニアと交戦して生き残ったというが同僚たちはそれを信じず、他の外人部隊の成果を横取りしたと決めつけている。
実際、ゼラート自身も半信半疑だ。仮に本当でも、親があの体たらく。父親のワガママに振り回されていそうだ。せっかく新型を乗りこなせる上にブリタニア屈指のパイロットと渡り合える実力でも、上がまともに活かす気がないのではお飾りと変わらない。
「この考え通りなら、流石に不憫だな。」
クラリスはピエルス将軍の栄光を作るための道具……親としての情愛というよりも自分の栄光のための道具への愛情かもしれない。
道具ありきの愛情……『血の紋章事件』で親と死別したゼラートにとって親の愛情自体が掴めないものだ。それが道具前提というのはどういう気分なのだろう?そして、もし道具の価値さえなくなれば………
もしかしたら、処刑から逃がすための根回しをしたのが愛情?それとも、シャルル皇帝への復讐を託す?
ゼラートにとっては、どちらも理解が難しかった。
アデルモ・バルディーニは『ロンスヴォー特別機甲連隊』の総司令官に任命された。イタリア政府の覚えも良く、『ユーロ・ブリタニア』と本国のどちらも相手に踏みとどまる手腕を評価された。と、普通は考えるが……
「これは要するに、フランスやドイツの政府が私に死んでほしいということか?」
イタリアの外人部隊が踏みとどまり、グランビル海岸でも枢木スザク相手に何とか生き延びた。だが、フランス正規軍の生き残り達はイレヴン同士で戦わなかったという理由で文句をつけてきた。
「全く、いい歳をしてそんな責任転嫁がまかり通ると思うとは。」
「まかり通っているから、問題なんでしょう。この期に及んでもお偉方のガキ共の兵隊ごっこです。」
部下の容赦ない指摘にバルディーニは帰す言葉もない。
「一応、私も上流階級の生まれなのだがな。」
「将軍は違います。一兵卒から前線で戦ってこられました。」
フォローは入るが、この状況では……
「まあ、ここまで出世したから確かに我を通すには十分な地位ではある。」
借りにも首都防衛ならば、十分な人材が欲しい。バルディーニはイタリアの外人部隊と正規軍で納得できる人材を集めた。その中には海棠隆一大佐もいた。彼は是が非でも必要だった。
しかし………
「イタリア政府め、まさかこいつまで入れるとは。」
政府からの直接の要望で海棠に着いてくる形で共にこちらに来た行村鷹一少佐…海棠と同じ日本軍人だ。が、海棠の部下や子供達は本物の精鋭でも、彼と部下達はただの邪魔者だ。上層部にゲットーや避難民の若い女を献上して後方勤務に回り、『方舟の船団』の事件でも真っ先に逃げだした役立たずどもだ。
そのくせ、美辞麗句だけは上手だからイタリア正規軍の同類共まで寄ってきている。おかげで、始末したくてもできずに後手に回ってしまった。
「こいつらがいるだけで戦力ダウンだ。」
真に恐ろしいのは無能な味方とは、よく言ったものだ。
「あいつら、絶対に今回もパリ本土の防衛とか言い訳をして前線に出ませんよ。」
海棠は土田の言葉にうなずいた。
「ああ、バルディーニ将軍は少なくとも連中は数に入れないでやるだろうな。出たところで、上の連中の力で敵前逃亡も後退に挿げ替える。」
旧日本軍時代からの海棠の部下、そして彼らが保護して育てた子供達も否定しない。それどころか容易に想像できたために舌打ちまでしている。
孤児の一人の橋本裕太が深いため息をついた。
「目に浮かびますね…」
ナカタ・クレシェント・セーラもそれに続いた。
「インドが『黒の騎士団』用に造ってるKMFもいくらかあいつらが受け取るみたい。まともに乗る気なんかないくせに。」
それはそうだ。何しろ、サザーランドだって乗ってもほとんど何もしないのだ。素人を乗せて戦わせた方がまだいいくらいだ。
「とにかく……あいつが何か俺達や他の国の軍にちょっかい出さないように目を光らせるぞ。」
「は!」
池田は部下達と資料を読んでいた。海棠大佐がいるのは嬉しいし、あのクラリス・ドゥ・ピエルスもいる。フランスの正規軍からも真っ当かつ有能な軍人が一人来る。特に、『方舟の船団』の事件で国外脱出を企てたエミリアン・アブラームを処刑したオクタヴィアン・フィオ・マスカール将軍……レイラ・ブライスガウの演説のころは国内平定に奔走していたために目立ってはいないが、堅実な指揮官だ。
何度か会ったが、イレヴンに差別的ではないが好意的でもない。良くも悪くも中立的な思考のタイプだ。だが、それ故にこちらにも一定の便宜を図ってくれているために池田指揮下の外人部隊の信頼も厚い。
「しかし…この行村は。」
聞いた限り、イタリア州軍では評判は最悪でフランスの外人部隊にも届く。日本軍人への風当たりの強さはこいつのせいでは?と思う時がある。
言動を調べた限りでは、英雄願望が非常に強い。それだけならば良いが、それを言い訳にして自分だけ安全な場所に隠れ、しかもそのために民間人誘拐や金品略奪もしている。もはや戦争犯罪者としか言いようがない。
もしかしたら、中佐になったのはこの成果を……
「こんな男を編入させて……イタリアの政府に賄賂でも送ったか?」
「コーネリアもゼロより先にこいつを始末してくれればよかったのに。」
西野の意見はもしかしたら、行村を疎んじる日本軍人の総意かもしれない。池田自身もそう思っている。
「いずれにせよ、ゼロの復活でブリタニアが動揺しているのも事実だ。何かチャンスがあるやもしれぬ。」
「既にエリア11では処刑されかけた藤堂中佐らを救出した。『帝国の先槍』とコーネリアの精鋭相手に………中身はともかく、能力は本物のようだ。」
稲垣の言う通り……仮面の英雄なんて誰でもなれる。要は行動と結果で民衆は着いてくるものだ。
ゼロはそこを熟知している………先代と同一人物であるかは別にして、な。
行村はゲットーから連れ出した日本人の女を三人貪った。貪りに貪り……もう完全に意識を失っている。そして、配属される部隊の看板に満足していた。
「ふふふ……この行村鷹一の勇姿を飾るには及第点だな。」
しかし、忌々しい海棠に『ブラック・リベリオン』直前にこちらへ亡命した池田とやらは目障りだ。同じE.U.の同胞達は多くが彼ら二人になびく。
哀れなものだ。真の勇士が誰であるかをわかっていない。あの美奈川浅海とかいうオランダの外人部隊の女などは重症だ。名誉ブリタニア人を無闇に殺すべきではないなどと戯言を並べる。
日本人の誇りと魂を売り飛ばした恥さらしなど生きる資格もない。だが、あの第八皇子の元にいる女達は別だ。この私の寵愛をもって目を覚ますべきだ。あれほどの上玉はブリタニアの皇子などではなく、この日本の勇士にこそふさわしい。
「そのためにも、まず必要なものを集めねばな。」
そのために、次の標的を探して上層部に献上しよう。英雄には金と武器が不可欠……上層部もそれを分かっているからこそ、この私に計らってくれる。思い起こせば、片瀬も藤堂ではなくこの私を取り立てればあのような自決という無様な末路をたどることもなかっただろう。愚かなことだ。挙げ句に藤堂達にそそのかされ、この私を追放するとは。自業自得だ。
「片瀬……地獄で悔いるがいい。そして歯ぎしりしながら見るがいい。この私が日本を…そのついでにE.U.をブリタニアの魔手から救う姿を。」
いずれは日本に戻り、ブリタニアを追放する。その際にブリタニア人は若い女を残して皆殺し……そして、そうだな。あのエース紅月カレンは汚らわしいハーフだが上玉だ。海棠子飼いのクォーターや第八皇子の混ざりもの騎士と共にこの私の寵愛に賜る栄誉をくれてやろう。
行村はそれが現実になると信じて疑わなかった。そう、それが自然であり世界の法則であると。
オクタヴィアン・フィオ・マスカールは『ロンスヴォー特別機甲連隊』副司令就任を素直に喜べなかった。
アブラームを殺したということは見咎められたものの、そもそもあの男は贈賄や収賄を行い、更に『方舟の船団』の事件で真っ先に逃げだそうとした事実もあったために事実上の不問、それどころか昇進させることで奴の逃亡に対するガス抜きを測った。
「私が昇進して、副司令になったところで意味はないのに。」
「他に人員がいないのでしょう。バルクライ将軍も戦死されましたから。」
只の消去法だな……せめて、あの二人のどちらかが健在ならばだいぶマシなのだろうが。
「しかし……やらねばブリタニア領土だ。」
とはいっても、あの連中のことだから自分達だけ甘い汁を吸う魂胆を考えていそうだ。調査はしておいた方が良いだろう。
エリア11……トウキョウ租界に建設された中華連邦の総領事館は『黒の騎士団』の仮の拠点として運用されていた。
バベルタワーで復活したゼロは総督代行のギルフォードが仕掛けた藤堂達の処刑の罠を潜り抜け、総領事館内部へと逃がすことによってブリタニアが手を出せない状況を作り上げて部下達の救出に成功した。
久保カイトもその一人だ。
「チャンスが巡ってきた……有紗を助けるチャンスが。」
有紗は今も、あの『洗脳皇子』の側にいるという。きっと身体を弄ばれているに違いない。
「絶対に助ける……そして、目を覚ますんだ。」
そうだ。本気になるはずがない。日本を占領したブリタニアの皇子と恋に落ちるなんてあるはずがない。あんな男より、戦後ハラジュクに移り住んでから一緒にやってきた俺の方が相応しいんだ。
ラルフ・フィオーレは復活した『黒の騎士団』の志願者募集の情報に乗じて、総領事館に入った。追跡の手を逃れた仲間も一緒だ。そして、一番会いたい人を見つけた。
「扇さん!」
思わず思い切り抱き着いてしまった。
「っと、ラルフ!久しぶり……無事だったんだな。」
「はい!!」
「おいおい、パパに久しぶりに会ったからって大袈裟だぞ。」
「玉城さん…そういう言い方は相変わらずですね。収容中に少し改善してほしかったです。」
「うるせえ、余計なお世話だ!!」
ゼロは団員達の救出に成功という成果には納得するが、問題はこの先だ。KMFは紅蓮弐式と何機かの無頼があるのみ。既にキョウトは壊滅……インドに逃れたラクシャータが新型を開発しているというが、海路で輸送してもらうのは得策ではない。ならば……
やはり、中華連邦を手に入れるのが先決だな。
今のままでは戦っても勝ち目はない。ならば、中華連邦のバックアップを得るところから始めねばならない。
合衆国日本も、元はその土台作りだったのだから。
ライルはレイとクリスタルの肌の感触を味わいながら、書類に目を通した。ギルフォードが処刑を餌にゼロをおびき出そうとしたが、『ブラック・リベリオン』と同じ手を使って総領事館内に逃げ込んだとのこと。
「アルフレッドとバートが……」
『グラストンナイツ』の二人が命を落としてしまった。壊滅状態になったとはいえ、コーネリアの親衛隊でダールトンの養子のあの五人は間違いなく、コーネリア軍最強格の騎士。それが二人も………
「ギルフォード卿って、公開処刑とかをするようには見えないけど。」
「ああ、実際にそういう人だよ。」
彼と少しだけ話したレイが疑念を口にし、ライルも肯定する。
「じゃあ…これはゼロをおびき出すための餌に?」
「もう一つ………奇跡はゼロの代名詞だ。それができなければ、名前だけの小物。バベルタワーはまぐれ勝ちで片づけられる。」
クリスタルが豊かな胸で書類を持っていない腕を挟みながら、報告をのぞき込んできた。
「裏目に出てしまったんですね…」
「これでエリア11の反抗はまた大きくなる。『帝国の先槍』を出し抜いたという結果を残したとあってはな。」
もう、エリア11の反抗活動の活発化は止められない。カラレスの弾圧でたまっていた不満が一気に爆発の火を得てしまった。
E.U.の方は首都圏防衛の機甲部隊『ロンスヴォー特別機甲連隊』はこの期に及んでも上流階級のブランド作りが目的の半分以上を占めているが、本物の精鋭もいるとのこと。万が一にでも負ければ、間違いなくE.U.の反転攻勢のきっかけになりかねないし、降伏した国の反抗も始まる。特にエリア24は間違いなく、血の海になる。
「負けられないな……」
「じゃあ、殿下。」
「その英気を養うためにもう一回、して?」
クリスタルとレイが交互に唇に吸い付き、ライルは呆れながらもそれに応じた。
元々掲示板時代に登場したクラリスの部隊を発展させたのがロンスヴォー。
ロンスヴォーとはシャルルマーニュ十二勇士が全滅した場所です。ある意味で陥落寸前のフランスには皮肉の効いた名前でしょう。そして、ヒポグリフは十二勇士きっての美男子で武勇よりも冒険譚のエピソードが多いアストルフォが乗っていました。
そして、この実態。銀河英雄伝説で例えればラグナロック作戦で追い詰められた同盟でしょうね。イゼルローンがなく、アムリッツァをやったわけでもないのに、本当に同盟より酷い。本編でもこれに近かったのかも。
ロンスヴォーの中身は実際に前線で戦っている正規軍と外人部隊は本物の精鋭ですが、六から七割はお偉方のぼんくら息子の役立たず共です。
これをまとめるのはゼロでも無理だと思います。