コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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E.U.との決戦で、全部詰め込みました。


BERSERK-36『革命と貴族の決戦』

開始された戦闘は徐々に距離を詰めていった。そして、パンツァー・フンメルの射程距離に近づきつつあった。

 

「殿下、このままいけば射程距離で劣る我々が先制攻撃を受けます。」

 

「ああ…ルーカス、カンタベリーとお前のラモラックで撃て。」

 

〈けっ!分かったよ!〉

 

 

 

ルーカスはトリガーを引き、前衛部隊に向けて砲撃する。ガウェインをより火力強化しただけあり、射程距離は長い。前衛部隊を薙ぎ払い、その隙をついてルーカスの部隊が前進する。

 

「ふん、まあいい。俺様を顎で使えるつかの間の天下を楽しむんだな。」

 

敵は後退しつつ砲撃をする。サザーランドが何機か破壊されるが、ルーカスは意に介さない。先行してこのまま本陣まで突入してやる。

 

〈ルーカス、深追いするな。孤立するぞ。〉

 

「ああん?俺様に命令するな!」

 

このままどんどん追い込めば、孤立することなんかない。大体、見てみろ。どんどん敵は下がるではないか。

 

 

 

クルークハルトは舌打ちした。

 

「えぇい、誘い込まれていることさえ分からんのか!?」

 

他の連中も通信越しで妙に調子に乗っている。自分達が本気で百戦錬磨だと思っているようだが、こいつらは本当に勝って当たり前の勝負しかしない。そんなのが、いくらボンクラばかりでも首都圏が目前でようやくやる気を出した軍相手に勝てるわけがない。

 

だからと言って、放っておくわけにもいかない。

 

「ルーカス殿下の後方を我らは守ります!殿下は我らに合わせて前進を!」

 

〈……すまない、頼むぞ。〉

 

 

 

バルディーニは相手の動きを分析する。第五皇子は生身の射撃の才能はあり、KMFの砲撃戦を好んでいるという。確かに現場の報告からも正確ではあるが、本人があれでは才能が殺されている。

 

こちらの見え透いた誘いにまんまと乗っている。まるで足並みをそろえようとする気がない。既に後方の部隊との距離が開いている。

 

「やはり、シュナイゼルに押し付けられたようだな。」

 

向こうも奴が足並みをそろえないということは想定しているのだろうが、出来たところでそれを早く崩せば意味はない。

 

「砲撃部隊、突出した敵部隊とその後続を中心に砲撃。各艦もミサイル発射用意。」

 

目には目を…というつもりはないが、孤立した部隊を徹底的にたたけば後続部隊の進軍を遅らせることができる。相手がそうであるかは別問題だが。

 

後方のリヴァイアサンを始めとした全ての陸上艦、パンツァー・ヴェスペが一斉にミサイルと大砲を撃つ。

 

ラモラックと何機かのヴィンセントが対応し、後ろにいるライル軍のローレンスが迎撃を行う。だが、その程度なら織り込み済み。

 

「第二射、撃て!」

 

間髪入れずに次を撃った。相手も再び迎撃するが、まだ第一波の対応が終わったばかり。ローレンスとラモラックの砲撃でもミサイルを撃ち漏らし、先行した地上部隊がミサイルに襲われ、その中で足の遅いカンタベリーは半数以上が撃破されてしまった。

 

 

 

〈おい、ライル!あとはお前に任せるよ!〉

 

シルヴィオはパネルを殴りつけた。指揮官はライルだというのに、無視して勝手にどんどん突き進んでいって勝手に後退を始めようとしたルーカスの醜態には怒り以外なかった。想定しながらも、一番来てほしくない展開になってしまった。

 

〈なんなんだよ、あいつら!〉

 

〈弱いんじゃねえのか!?〉

 

〈話が違うわよ!殿下助けてください!〉

 

泣き言がこちらにも聞こえてくる。ブリッジの全員の想いは『散々、勝って当然の相手としか戦わなかった報いだ』となっている。だが、こちらの命令を無視される事態にまでなってしまったらやむを得ない。

 

「ライル、我々も出る。」

 

〈ええ、我々が注意を惹き、ルーカス達には後方からの支援砲撃に徹してもらいましょう。〉

 

〈分かっているとは思うけど、ルーカス。ライル達を後ろから撃ったら、私達がお前を撃つからな。〉

 

〈分かりましたよ…ライルならともかく、姉上たち三人を一度に敵に回して勝つ自信はありません。〉

 

分かっていない……年下でも、ライルは積極的に前線に出ていた。部下達に実績を挙げさせるために。信頼を得るために。

 

そもそも、エリア制度の改革の手段が『フォーリン・ナイツ』なのだろう?

 

あの事件以来…いや、それ以前からまずうるさい貴族共を黙らせることが先になっている傾向がある。大丈夫だろうか?

 

 

 

突出した前衛部隊が後退し、後方と陣形を入れ替えつつある。

 

前線部隊の指揮を執るマスカールは首をひねる。

 

「味方に足を引っ張られるのは、向こうも同じか。」

 

バルディーニが敵の動きを見て、指示を出す。

 

「陣形を入れ替えるならば攻撃の手が緩む。今のうちにこちらも陣形を再編。」

 

「…混戦に持ち込まれないのですか?」

 

「最初は考えたが、そうなれば殴り合いを前提にしたブリタニアのKMFの方が有利だ。」

 

確かに、そうだ。こちらのは戦車の延長に等しい。白兵戦になれば、こちらに勝ち目はないし味方誤射のリスクもこちらが高い。

 

「敵の陣形が入れ替わったところで再度砲撃。いつでも撃てるようにしておけ。」

 

ルーカス軍が後方に下がり、それに合わせてライル軍が前衛に出てくる。敵の大将を引っ張り出すことには成功しているが、アンドラとの国境線沿いの情報だけ見ても、ライルは異名とは裏腹に指揮官としても油断できない。

 

発展途上なのだろうが、武器の扱い方だけで言えばおそらく並の指揮官を超えているな。

 

 

 

ライル軍はルーカス軍の後退に合わせて、前衛に出てくる。

 

ルーカスめ……わざと命令無視して私達に押し付けたな。

 

そして、こちらが手こずっているところで後ろから撃って手柄だけをもらう、とでも考えているのだろう。だとしたら、そうはさせないしそんな手が通じる相手でもないだろう。

 

「陣形が入れ替わるのと前後して雛の砲撃部隊に全火力を正面に叩き込ませる。ゲイリー、タイミングを頼めるか?」

 

〈は。〉

 

〈ライル様。〉

 

優衣が通信に入った。

 

「なんだ?」

 

〈ちゃんと帰ってきてくださいよ。一晩だけじゃいやだから。〉

 

〈じゃあ、お前もしっかりやれ。沈んだら元も子もないからな。〉

 

〈うっさいわね!〉

 

聞こえてきた将兵達の笑い声が入り、緊張がほぐれたようだ。そして、グロースターの幸也が顔を赤くして口をはさむ。

 

〈そ、そういうのここで言わないでくださいよ……俺、そういうの苦手なのに。〉

 

〈勿体ねえな、せっかくいい顔してるのに。〉

 

ヴェルドが茶々を入れるが…

 

〈…母さんと姉さんが殺されてから、ちょっとそういうのは…〉

 

〈あ…………ああ…悪い。〉

 

ヴェルドが謝罪し、全員が神妙な顔になる。それを見計らったようにフェリクスが問う。

 

〈それじゃ、行きますか?〉

 

「ああ…涼子、君の整備あてにしてるよ?」

 

「そういうの、口説き文句としては0点ですね。」

 

軽く毒づいて、涼子が機体から離れた。

 

「ユグドラシルドライブ出力正常、武器システムグリーン。」

 

〈ベディヴィエール、発進!〉

 

ベディヴィエールが発進し、更にシルヴィオのディナダン、エルシリアのベイリン、セラフィナのベイランも発進した。

 

 

 

新たに発進した四機のKMFはE.U.のデータベースにもある機体だ。『侍皇子』のディナダンと『双剣皇女』のベイリンとベイラン、『狂戦士』のべディヴィエール。最後のはようやくロールアウトしたようだ。

 

更に、その四機の発進に合わせてライル軍のカンタベリーと雷光がローレンスと共に砲撃を行う。ほぼ同時にE.U.側も砲撃を開始した。二機の砲撃が殆ど相殺され、ローレンスのハドロン砲もミサイルの迎撃のみになった。

巨大な爆炎が発生するが、それは好機だった。

 

「私達が先陣を切る!」

 

爆炎に突っ込んだ四機が顔を出した。小さいが奇襲だ。

 

ベディヴィエールがグロースターのランスでパンツァー・フンメルの大群の中に突っ込み、そのまま突進する。パワーにものを言わせた突進に陣形の一部が崩され、そこへさらに上空のベイランが右肩のハドロンブラスターで砲撃し、左手のアサルトライフルで追撃をかける。

 

間髪入れずにベイリンが長剣でパンツァー・フンメルを二機両断し、ディナダンが刀でライルの後ろに回ろうとした部隊を斬りつける。

 

たった四機の連携でE.U.は翻弄され、徐々に後退してブリタニア軍も陣形を進める。しかも、中央のライルに合わせて両翼から来た三人が陣形を狭める。

 

 

 

「やむを得ん……『ヒポグリフ隊』、『フェンリル隊』、『ベヒーモス隊』、『モノケロス隊』を前衛に出せ。『リンドヴルム隊』は後方支援。」

 

できれば避けたかったが、こうなってしまっては虎の子の飛行KMF隊と航空戦力で混戦に持ち込むしかない。

 

〈イレヴンの猿真似の皇子さヴぁぁあ!!〉

 

〈なにが『双剣皇女』よ、どうぜだぁぁ!!〉

 

〈な、なんだよこいつら!ボンボンのお坊ちゃまとお嬢さまじゃねえのか!?〉

 

甘く見過ぎだ。グランビルで枢木スザクにやられた連中にもこういう手合いが多かったらしいが、本当にハリボテ部隊という実態が証明される結果になってしまった。

 

「もう、あんた達は下がって!私達がやってあげるから!!」

 

〈お前らでも後ろから飛んでくるミサイルぐらいは撃てるだろうが!!〉

 

クラリスのローレンスとフィリップのオリヴィエが対応し、皇族のヴィンセント部隊にも攻撃を仕掛ける。

 

〈ピエルス大佐、第八皇子をお願いします!〉

 

「池田少佐、いいの?」

 

〈えり好みしてられませんよ!〉

 

「ありがとう!帰ってこられたら、おごるわ!!」

 

クラリスはローランの剣で青い新型のKMFに斬りかかる。

 

「第八皇子で良いのかしら?」

 

〈ああ!久しぶりだね、クラリス・ドゥ・ピエルス!〉

 

あたりだ。あの男ともう一度やりあえるとは。こんな時なのに、クラリスは高揚していた。

 

「素敵なKMFを持ってきたのね!その剣に名前はあるの!?」

 

〈ああ、ベディヴィエールという。そして、この剣はカルンウェナンと名付けた!〉

 

「こっちの剣、伝説にちなんでミュルグレスっていうの!」

 

伝説に出てくる裏切り者の武器の名前とは、中々にパンチが聞いている。『方舟の船団』で逃げたあいつらに、その血縁の自分にぴったりの名前だ。

 

〈気取った名前同士で、暴れるか?〉

 

「今度こそ、私が勝つわよ!」

 

ミュルグレスの一撃をベディヴィエールの剣が受け止め、前のように二刀流で受け流す。だが、今度はハドロン砲で砲撃するが、距離を置かれる。が、そのまま発射するがベディヴィエールも胸のハドロン砲で相殺する。

 

ローランのミュルグレスをベディヴィエールは積極的に攻めず、受け流す構えを取っている。さっきから、突きも斬撃も二刀流で受け流されるか止められるか。

 

「これのどこが狂戦士なのよ!?」

 

しかも、剣を下げたと思えばクローで格闘戦を仕掛けてくる。こちらも腕のハーケンをルミナスコーンを展開した手甲にして対抗する。正に一進一退の攻防であった。機体性能の差がなくなった分、純然たるパイロットの力量勝負になりつつあったが、その力量もほぼ互角だ。

 

 

 

シルヴィオは再びシュテルンと対峙した。

 

〈また、会ったな!〉

 

「ああ、うれしいね!」

 

シュテルンの剣とディナダンの刀が再びつばぜりあう。一度戦っただけで、二人は互いの太刀筋をおおよそ読んでいた。シュテルンの二本の剣がディナダンの刀をくぐるか、ディナダンの刀がシュテルンの剣を折るか。

 

二つに一つ、互いの剣戟は決められないままぶつかり合った。

 

 

 

〈また、会ったということで良いのかな?エルシリア皇女殿下?〉

 

「貴官は?」

 

〈日本軍の海藤隆一大佐……おたくの弟に追い回されてたのよ。〉

 

月下タイプのパイロットはエルシリアが資料で見た軍人本人だった。

 

「子供達を保護して、戦わせているようだな。」

 

〈ああ、俺は最低のくそったれさ。あの子らの復讐を止める言葉なかったからね。〉

 

想像していたウチの一つが出てきた。もし本音なら、この男を見損なっていたことになる。

 

「日本独立の戦士を育てた、とは思わないんだな。」

 

〈冗談…おたくの軍学校でもないのに、小学生にまで人殺し教えるのを誇りたくないね。〉

 

「そうか……手配画像通りではなかったか。」

 

〈見た目で判断するのは危ないって。あんたと妹姫様だって、戦場よりドレスが似合う美人でしょ。〉

 

確かにそうだ。ライルの部下達とて軍人には見えないが、実力は高い。見た目と能力は一致しない良い見本だ。

 

 

 

浅海はアストラットとベイランに槍を突き出した。アストラットがMVSで受け止め、はじき返してベイランが右肩のハドロンブラスターを撃つ。

 

浅海もソレイユのブレイズルミナスを展開し、受け流した。下手に正面から防御するよりも受け流した方がリスクは低い。シールドで砲撃をそらし、ベイランに再び肉薄するが、今度はアストラットが蹴りを入れる。

 

「つ、強い!」

 

畑方秀作が乗っているのは既に知っているが、これほどまでとは!

 

しかも、『双剣皇女』の妹セラフィナと見事な連携だ。二対一では勝てない、と思われた時。

 

〈美奈川!〉

 

一機のKMFがやってきた。『w‐ZERO』のアレクサンダによく似た機体。メリサンドだ。ブリタニア型のフロートユニットを装備して二機にライフルを撃ち、牽制する。腕に固定型の剣を装備した、ベーシックな機体だがスピードは折り紙付きだ。

 

〈二対二で行くぞ!〉

 

「はい!」

 

メリサンドとソレイユ、アストラットとベイラン……二対二の戦いはお互いに譲らない膠着状態を作り出した。

 

 

 

ゲイリーは全軍の動きを確認した。突出したルーカス軍は後ろに下がり、陣形を立て直している。相手の精鋭部隊は最強のKMFを出してきたが、皇族達によってそれは抑えられている。

 

ライル軍でKMFでありながら重戦術級の砲撃がとれるローレンスは航空戦力と地上部隊の砲撃を受けている。ハリファクスも飛行量産型の相手をさせられている。

 

しかも、どちらも撃墜するのではなく砲撃をさせないためだ。こちらの指揮官がライルで、ハリファクスとローレンスの二機が戦術的勝利の最強カードであることを既に念頭に置かれている。

 

シルヴィオとエルシリアの親衛隊も同様で、敵は前進と後退を繰り返して波状攻撃を繰り返している。

 

「く、こちらの攻撃を息切れさせるのが狙いか。」

 

いや……むしろ、これを逆に利用すれば。レイと長野は先日の青いKMFと交戦中で、シルヴィオとエルシリア、セラフィナもそれぞれエース級の相手を押しとどめている。

 

殿下なら、これを逆用するな……最強のカード同士でぶつかり合っているからこそ、残った弱い札でも勝てる。

 

「……殿下を含めた全軍に通達、カンタベリーと雷光で長距離砲撃を仕掛ける。対地砲撃だ。」

 

あの時、ライルがやられた手をお返ししてやろう。

 

 

 

バルディーニは最後方で相手の動きを分析していた。こちらの最強カードは今のところ、相手の最強カードを押しとどめている。それ以外も前進と後退の繰り返しによる波状攻撃で踏みとどまっている。

 

このまま何もなければ、敵の攻勢を息切れさせられる。エリア24があるとはいえ、先方にとってこちらはまだ敵地。各国を制圧して、エリア化することで補給路線を構築している。だが、長すぎればそれも滞る。しかも、ブリタニアの内情はゼロに加えて正規軍の略奪への対応で安定していない。

 

少なくとも、ここを押し返せばシュナイゼルの相手をしている連中も勢いづく可能性はある。エリア24とアンドラを奪還するのはまだ無理だが、ここで押しとどめて、少しでも時間を稼がねば。

 

「敵後方から砲撃!」

 

「迎撃しろ!!」

 

相手の砲撃はこちらに向かっていた。確か、エリア11の雷光に『ユーロ・ブリタニア』のカンタベリーをライル軍は保有していた。それらが来ることそれ自体は想定していた。

 

「間に合いません!」

 

砲撃はまっすぐに陸上艦の一隻に直撃した。やられた!リニアガンであることを利用して直線砲撃をしてきた。

 

「砲撃の位置は!?」

 

「敵の航空艦……待ってください!後方に下がったルーカス軍が進撃してきます!」

 

パネルにもある通り、三つの軍を横切るようにルーカス軍が進撃する。

 

「ついさっき、手痛い反撃を受けたのに…」

 

まるで連携を取る気がないようだ……ここで乱戦になれば同士討ちの恐れも出てくるのに。

 

〈い、今の砲撃をまた受けたらひとたまりもない!〉

 

〈一時後退します!〉

 

今度はこちらの味方が我先にと、逃げ出す。このままでは最前線の『ロンスヴォー』が孤立してしまう。

 

なんて、最低な戦争なんだ。

 

 

 

「待て、ルーカス!それでは連携が取れない!」

 

シルヴィオが止めるが…

 

〈連携なんか取る必要ありませんよ、兄上!俺様の精鋭たちでもう押しつぶせる!〉

 

〈役立たずのナンバーズや平民共の出番など終わりです!〉

 

〈下級貴族共も、我らの活躍を規範とするがいいわ!〉

 

上級貴族の子弟たちが突っ切る。普通ならば、止める。だが、相手が今の砲撃で完全に逃げ腰になっている。聞くわけがない。

 

ちっ!!放っておくわけにもいくまい!!

 

本音は、このまま勝手にやらせて少し痛い目を見てもらいたいがそうも言っていられない。

 

何より、あの手合いはそうなった責任を全てこちらに擦り付けるために親の権力を濫用するのが目に見えているのだ。部下達に飛び火するのを回避しなければならない。

 

 

 

ルーカス軍が突出するが、まだ残っていた部隊が再び攻撃する。案の定、集中砲火を受けておおくのKMFが撃破されるが、ルーカスやフィリアはそんな状況でも後ろにいたから砲撃を受けずにいた。

 

ライルはローランと戦いながら、突出したルーカス軍の後退を指示して…

 

「ルーカス、お前達はもう撤退しろ!これ以上は無理だ!」

 

本当は面と向かって言ってやりたい。『お前達は邪魔だ。』、と。

 

〈なんで、もっと早く言ってくれないんだよ!?〉

 

〈おかげで我々が危険にさらされたんですよ!〉

 

逃げのびた貴族達は文句を言ってくる。こちらの命令を無視して勝手に動いて、危なくなれば責任転嫁をしてくる。

 

命令を無視しておいて、よく言う。終わったら、すぐに報告せねば。

 

 

 

ゲイリーはルーカス軍の物言いに呆れ果てた。いったい、あの息子達はどういう教育を受けてきたというのだ。

 

彼自身、息子達の育て方について違う形で失敗してしまったという自覚がある。だが、少なくとも息子達はあんなことはしているという話は聞かない。それに引き換え……あの連中はただのドラ息子の集団。

 

『命令違反しようが、家の名前でもみ消せる』、『大貴族の跡取りが言えば、都合よく変わる』などと思い込んでいるのが言動で分かる。

 

既に何度も見ているが、これでもし世界制覇を成したらどうなるか。考えるのもおぞましかった。

 

ライルではないが、今からでも方向修正しなければ本当にこいつらによってブリタニアどころか、ブリタニアによって制覇された世界さえ食いつぶされる予感さえした。

 

そこへ、通達が来た。

 

 

 

シルヴィオはその通達をみて、反射的に機体の操縦を止めた。そこへ、隙が生じて地上へ肉薄していたディナダン目掛けて、無頼が刀を投げた。

 

完全に虚を突かれ、シルヴィオは死を覚悟した。そして、ミルカと木宮…彼の姉アカネと母詩織の顔がよぎった。そして、最後に実母の元へ逝くと覚悟した次の瞬間……何かが機体を突き飛ばしたような気がした。

 

機体を振り向かせると、『十勇士』に配備されたヴィンセントが一機貫かれていた。あれは、イレネーの機体だ。

 

「イレネー!」

 

〈申し訳ございません、殿下…〉

 

ヴィンセントが爆散した。刀はコクピットに届いており、どのみち死んでいたことが分かる。

 

 

 

同じころ……後方から撃ってきたラモラックの砲撃に橋本の無頼改が狙われたところで、土田の機体が間に入った。

 

「土田さん!」

 

〈橋本、生き延びろ!〉

 

爆散し、橋本はパネルを殴りつける。せめて、目の前の敵だけでも地獄に送ってやろうとKMFを動かそうとしたとき……

 

〈両軍に告げる!フランス政府の意向により和平交渉が執り行われる!!これ以上の戦闘行為の継続は安息を求める市民からそれを奪うことになる!!速やかに戦闘行為を停止せよ!!〉

 

和平交渉…つまり、こちらに注意を引き付けられている間にグランビル海岸側の防衛線が突破され、パリに肉薄されたのだ。

 

せめて、これがあと数秒早く伝わっていれば……土田さんは!

 

結局、彼は何も成し遂げられず……再び祖国の土を踏むことなくこの世を去ることとなってしまった。

 

 

 

「…イレネー。」

 

良い部下だった……伝統ある家柄に胡坐をかくどころか、後継ぎとして己を磨くことを怠らない有望な騎士だった。

 

〈良い、部下を喪ったようだな。〉

 

シュテルンのゼラートから通信だ。どうやら、聞こえていたらしい。

 

「……ああ。」

 

〈羨ましいよ………良い部下に、良い味方が多くて。〉

 

「そうか……」

 

ディナダンを浮上させ、相手を見る形でゆっくりと後退させる。

 

〈弔い合戦の相手くらいには、なってやる。〉

 

「その前に死んだら、地獄から引きずり出してやる。」

 

〈地獄までついてこられたらかなわないよ………〉

 

 

 

ライルはローランと池田の機体…蒼天を睨みつけていた。

 

「水入り、になったようだね。」

 

〈そうだな……〉

 

〈行きなさい……今度はこっちが見逃してあげるわ。〉

 

「そうか……」

 

ベディヴィエールを相手に向けたまま、ゆっくりとライルは後退させる。その時、地上からロックオンされていることに気づいた。その方向を見ると、無頼がバズーカを構えていた。

 

この状況で撃てば、和平交渉は水の泡だ。私の首を取った実績で許してもらえる次元ではないぞ!

 

シールドを展開するが、先にローランがその無頼のコクピットへ背中から抜いたショートソードをわずかに食い込ませる。

 

 

 

「何のつもり、あんた?」

 

この機体は知っている。池田の部下の一人だ。

 

〈せ、『洗脳皇子』を討ち取って我らの同胞を…〉

 

「それは次の機会になさい。まあ、命が惜しくないなら撃っていいわよ。それより先に、私があんたを殺すけど。」

 

〈ひ!〉

 

相手が震えるのがわかった。このまま数秒ほどして、蒼天が近づいてきた。

 

〈大佐、部下が申し訳ございません。ライル、そちらは?〉

 

〈いきなり馴れ馴れしい……まあ、良いよ。大丈夫だ。〉

 

〈そうか……どうやら、部下の独断だったようだ。決して、停戦命令を我々全体で無視しようとしたわけではない。〉

 

池田がこちらの意志を示す。そう、不本意だが政府の決定である以上は従うしかない。だが、こうなってくると目的を一旦ブリタニアから国内の敵への対応に変えなければならない。

 

そんなことを考えるクラリスの耳に、ライルの声が入る。

 

〈分かっている……ただ、本国の要望如何ではそのパイロットだけでも和平の妨害の罪で、ということもあるだろう。〉

 

〈承知している。〉

 

〈しょ、少佐!?〉

 

パイロットが驚愕する。当たり前だろうが……軍人のくせにそんなこともわからないのか?

 

〈それが当然でしょう……外国の問題で片づけて良いものではありません。それに、ライルを殺せば、彼の部下が一斉に目を覚ますなどという都合のいい話はありません。マジックショーではないのですよ?〉

 

「そうね………それで済めば、名誉ブリタニア人制度自体いらないものね。」

 

池田の部下、稲垣は声には出さないがまだ不服のようだ。

 

『洗脳皇子』、ね……随分とこっち側に都合のいい呼び名だこと。

 

名誉ブリタニア人だけで構成されたKMF部隊……ライルの場合は歩兵やそれ以外にも見込みがありそうな名誉ブリタニア人の兵士を起用しているのはE.U.でもよく聞く。名誉制度を通じて、ナンバーズの人権を向上させることで恭順を促し、それによるエリア制度の安定。名誉騎士団もその一環というのが、諸外国の分析だ。

 

こっちと決定的に違うのは、本国の連中が捨て石にしたがるのに対してライルは本気で人権向上とエリア制度及び今後のブリタニアのための人材発掘のためにやっているということ。

 

洗脳で済む、問題じゃないってのに……あの行村やその手下どもはそうだと決めつけ、ゲットーの若い娘を大勢手籠めにしていると喚いている。じゃあ、自分達は何をしているのだ?

 

あいつらの場合、ライルを悪者にこじつけたいだけじゃないかしら。

 

人間の本能の一種の自己防衛、にしても悪辣すぎるが。

 

数日後、講和条件として捕虜交換が提示されてフランス政府も承諾。正式な式典の折に変換が決定した。そして、フランス政府から講和を祝したパーティーの招待状が届いた。

 

 

 

 

 

 

 




ライル達はルーカスに足を引っ張られましたが、何とか力押しで勝つことができた。

総合的に相手のカードが弱かったおかげで勝ったようなものでしょう。

ただし、海棠とシルヴィオは部下を喪いました。
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