コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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返す場面です。より正確には返される前の女達です。


BERSERK-39『革命と貴族の女達』

ライルとバルディーニの取引により、貢ぎ物にされた女達は民間捕虜及びこれまでの戦闘で捕縛した捕虜という形にすることで返還が成立。同時に、それに伴って抹消された市民権や軍籍も回復し、主導したフランス政府の官僚は彼女達の出身国及びブリタニアから徹底的に糾弾された。

 

これによって、事実上売国を企てた官僚達は一掃された。結果として、市民達の防波堤になる気概のある官僚が和平を担当することになった。彼らは『方舟の船団』の時もパリを逃げ出さなかった少数派の政治家で、市民からも支持されている。

 

ブリタニアにとっては痛手だが、後々のエリア政策で発生しうる不正摘発のモデルケースになると同時に、『方舟の船団』で逃げなかった彼らとの和平で市民感情をコントロールするシュナイゼルの狙いが噛み合い、彼らを処刑或いは終身刑にすることでよりこちらに靡かせた。

 

 

 

ライルが宿泊するホテルのナイトプール……ライルは女達にそこで泳ぐのを許すほか、ホテルの中では比較的自由に過ごさせていた。

 

浅海もライルが手配したビキニで泳いでいた。ホテルの上層バルコニーにあるだけあって夜景も綺麗で、セレブが恋人と過ごすのにはうってつけのシチュエーションだ。他の女達も気分を紛らわすように泳いでいるが、ライルは一度もここにきていない。より正確には、呼び戻すために顔を見せるがそれだけ。

 

『主戦派に狙撃されかねない』というのが理由らしい。だが…浅海はライルに選んだ水着を見てほしかった。

 

胸はあの総隊長には到底及ばないが、ちゃんと出ている自負はあるしウェストにも自信がある。

 

だが、不安として他の女までがライルに興味を抱き始めていて、浅海より豊かな身体付きの女が多い。それで迫るそぶりを見せていたが、ライルはあしらっていた。最初に言ったように、夜の相手を求めるようなことはしなかった。和平交渉や女達を返還させる工作で疲れ切っているはずだが、その癒しを女に求めることはしなかった。

 

『送り返してやるから、見返りに身体をよこせ』

 

等と一言も言わない。せいぜい、帰ってきた後の軽食の相手を頼む。或いは持ってきていたチェス、トランプゲームの相手をしてもらう程度。それ以外は身の上話を聞く程度だ。

 

浅海はライルを間近で見ることになったが、今まで見てきたブリタニア貴族やE.U.の資産家とは真逆だ。

 

莫大な富と名声は持っている。だが、ライル自身はそれを自慢しない。母の実家が田舎貴族と言っていたが、それを好んでいるようだ。

 

例え田舎貴族でも、皇族に生まれたのだからもっと威張っていいはずなのに………そうして威張るのを嫌っているようにも見えた。

 

もうすぐ彼と別れる…その前に、彼ともう少し話したい。

 

 

 

リーザ・フォン・ノイエンドルフはロシアから来ていた両親と会っていた。

 

「それで、ライル殿下はどうなのだ?」

 

「まだ、なんとも。ただ…」

 

「ただ?」

 

「……実は、噂で聞いたことですが。」

 

リーザも噂は耳に入っていた。軍籍や市民権を抹消された女達がライルに宛がわれ、それを送り返そうとしていると。

 

「もし、ヴェランス大公閣下みたいな民を考えるようなお人なら……政略でも。」

 

父は軽く息をついて、肩に手を置く。

 

「そうか………なら、もう一度会ってみなさい。もうしばらくはこちらにご滞在なさるからな。私からも掛け合ってみる。」

 

「はい。」

 

 

 

浅海はプールを出て、着替えてライルがいるスイートを訪れた。

 

「ライル、入るわよ?」

 

「どうぞ……」

 

ドアを開けるが、ライルは銃を向けてきた。一瞬だけ怯むが、すぐに当然だと思い直す。ライルも銃を下ろし、水を出す。

 

「用心深いのね。」

 

「こんな立場だから………しかも私は『洗脳皇子』だ。」

 

『洗脳皇子』……かつて、浅海はそう信じて疑わなかった。多くのナンバーズを騙して、同族殺しをさせてそれを楽しむ悪魔。洗脳でなくとも、名誉ブリタニア人達の家族や友人を人質に逃げられなくしている、と。

 

「でも、それはただの邪推でしょ?」

 

「邪推でも、半分以上は正解だ……」

 

半分以上…確かに裏切れば殺されるし、家族にだって害が及ぶ。昔の浅海はそれを人質にしていると安直に決めつけていた。それに………

 

「本国での反乱……あれ、特区の事件が原因でしょう?」

 

「……どうしてそう思う?」

 

「だって、貴方の方針なら日本人もいるはずだし。」

 

ライルは沈黙した。つまり、肯定ということだろう。

 

「ねえ、政治は分からないけど…どうしてそんなリスクの高いことを始めたの?」

 

「………貴族への反感。」

 

「え?」

 

「それが根本的な理由だ……家柄で勝った気になって、更に人種で勝った気になる連中を見るのに耐えられなくなった。」

 

家柄と人種で…それはまさにブリタニア人、特に貴族だが……

 

「もう一つ、世界制覇がなっても維持する人材はどこから調達する?ブリタニア人がナンバーズの百倍働けるなら、大丈夫だろうが。」

 

「それは…無理のある話じゃない?」

 

ブリタニアが戦勝国だからと言って、全てがナンバーズの百倍上なら名誉ブリタニア人制度自体必要ないはずだ。

 

「ああ、だが貴族共は看板でその気になって、いざ突きつけられればそれらしい方便で逃げる。負ければ、文句をつけて酷ければ陥れる。これが続けば、ブリタニアはいずれ自滅する。」

 

なんとなくわかった。この人は、今のブリタニアに危機感を抱いている。世界制覇で領土が広がり、それに伴う国民意識の低下や現実認識の欠如に警鐘を鳴らし、皇帝の演説に酔いしれている貴族達に現実を伝えようとしているんだ。彼なりの『ノーブル・オブリゲーション』だろう。

 

私は、日本を取り戻すことだけ考えていた。そう、名誉ブリタニア人の事情なんかまるで考えようともしないで。

 

「……特区が成功していれば、私の意見も少し通りやすくなると思った。なんで、あんなことに…それも、あの子が。」

 

ユーフェミアのことだ。しかも、この口ぶりからして彼女が誰かに唆されたとでも考えている。だが、状況的にもはや彼女の名誉挽回は不可能だ。ブリタニア側の証言だってある。

 

まさか、この人の政策を邪魔するために?

 

あの事件でライルも同類だと決めつける風潮が『黒の騎士団』であった。こちらに共に逃れた団員達も同じだ。

 

ライルはうなだれ、背中を丸めていた。

 

「一人にしてくれ……」

 

が、浅海はそれを聞かずに背中に寄り添った。

 

「貴方が私達に手を出さなかったこと…上官に進言するから。少なくとも、貴方は信用できるって。」

 

「…やめておけ。洗脳かスパイになるのがオチだ。」

 

「でも、特区だけじゃなくてエリア24まで……貴方の国際的な信用が妹のせいで落ちているのよ?」

 

名誉騎士団だって、実際のところは家族を人質にしている証拠はない。そもそも名誉ブリタニア人は希望者が試験を受けて、資格を取得するもの。皇族権限で例外はあるかもしれないが、そんなことをするメリットはない。大体、反乱すれば家族に累が及ぶことくらいは彼らの方が分かっているはず。

 

何より、浅海は昔…仕方のないこと、独立を勝ち取れば解決することだと言い放ってゲットーの人々から食料を巻き上げていた。自分に都合のいい言い訳をして、仲間になる要求をしたこともあった。

 

ライルを見て、分かった。

 

少なくとも、自分にライルを洗脳呼ばわりする資格なんかない。

 

実際に衣食住などの見返りを保証できるだけ、ライルの方が物質面で誠実さがある。いや、精神面でも彼は今でも多くの名誉ブリタニア人達に信頼され、家族を本当に人質にするなどという事をしない。『日本独立のため』、『いつかできる』などという希望的観測や耳あたりの良いことを並べるだけの自分達よりずっと誠実だった。

 

それを卑下するようなライルに、浅海の心は惹きつけられていた。敵なのに。

 

 

 

時間は少し遡り、クラリスはライルが貢がれた女達を全て返す話を聞き、より興味をそそられた。

 

「私だったら、みんないただくのに。好みに煩いとか?」

 

「ネットで噂の女で手一杯なんじゃないか?あるいは、ただ単純にその手口を嫌う。」

 

フィリップがもっともらしい可能性を述べた。後者ならば高潔だし、前者でもある意味で誠実だろう。もしくは両方か。

 

「もう一度会ってみたいものだわ。」

 

同じ貴族の血筋だというのなら、東洋にあることわざに習って、父に彼の爪の垢を煎じて飲んでほしいくらいだ。尤も、既にその機会を失わせる手は打ってあるが。

 

和平交渉の準備が進んでいるある日、クラリスはライルが宿泊するホテルを訪問した。既に父の秘書官を通じて、話は通してある。

 

少しモーションをかけようと、パーティーのとは違うドレスで訪問したが……相変わらずボディラインを強調したようなのしかなく、ショールがあってもホテルの従業員の目を引いていた。その中に混じった情欲をやり過ごしながら、目的地の上層にあるバーでライルは待っていた。ご丁寧に酒を頼まず、本を読んでいた。

 

「紳士ね、それとも坊やなだけ?」

 

「どちらでも。で、貴族の家系らしく決闘の申し込み?」

 

クラリスは隣に座り、わざと胸を押し付けるように耳元でささやく。

 

「ベッドの上でなら…」

 

「なら、断るよ。上の階の彼女達を断って、君では示しがつかない。」

 

「あら、初心なのかしら?」

 

頼んでいたカクテルがやって来て、まず乾杯する。

 

「それで…本題は?」

 

「貴方に興味がある…これは私個人でウチの親は関係ないわ。」

 

ライルは横目でこちらを睨んでいる。やはり、疑ってかかるだろう。何せ、貢ぎ物達の件の首謀者と疑われるような父親だから、その差し金と考えるのが普通だ。

 

「冗談よ…ウチの部下も、危うく貢ぎ物にされるところだったの。何とかターゲットから外れたけど、他が何人かやられていたの。」

 

「……確かに、フランスの正規軍所属の人もいた。君が所属する機甲連隊の隊員だ。」

 

呆れたものだ。首都圏防衛という役割が終わった途端に軍籍抹消とは。軍人として最低限の筋を通す気すらないのがよくわかる。

 

「あれでよく『ノブレス・オブリージュ』なんて言えるわ。」

 

「『高貴なる者の責任』、か。私も果たせているか疑問だがな。」

 

「『方舟の船団』で逃げた連中よりは、果たせてると思うけど?」

 

「………比較対象が酷すぎる。」

 

確かに、自分で言っておいて同意見だった。クラリスはあの時、逃げずに事態の収拾にあたって逃げようとした父を取り押さえた。それで出世しても、実力とは言えないしあれではとてもうれしくない。

 

「それで、その子達は帰れるの?」

 

「一応、そちらの機甲連隊の副司令を捕まえた。」

 

マスカール将軍か……確かに、彼は職業軍人だが父と比べればはるかにまとも。信頼はできるだろう。

 

「その人なら信頼できるわ。」

 

「部下で且つ同国人の君が言うのなら、大丈夫そうだね。」

 

ライルはカクテルを飲みほした。が、口元を抑えた。

 

「まだ、未成年なのに一気に飲むからよ。」

 

軽く背中をさすり、水を頼んだ。

 

「全く、情けない。」

 

「でも…貴方、やっぱりいい男ね。顔もだけど、中身が。」

 

水を一口飲んだ、ライルが目を丸くする。

 

「散々言われた誉め言葉で、しかも邪な魂胆が見え透いているから嬉しくないんだが?」

 

「純粋な誉め言葉なのに、寂しい子なのね。」

 

豊かな胸を押し付けると、ライルが一瞬こわばった。

 

「離してくれないかな?」

 

「やっと、男の子らしい反応してくれた。」

 

「年下に何を考えているんだ?」

 

「さっき言ったけど、貴方に興味があるのは本当よ?」

 

ライルはため息をついて、腕を放した。

 

「……なら、ここの代金くらいは奢ってくれ。そちらの市民や部下を返す報酬で。」

 

「お安い御用よ。」

 

それから、二人は何杯か酒を飲んでいたが…並外れた美貌と身体つきの美女と、年下と思しきブリタニア人の少年が飲んでいる姿は、同じく任務で宿泊するブリタニア軍人を圧倒し、相手の少年が皇族だと知らない貴族は嫉妬さえ抱いた。どこの生まれかは知らないが、あんな小僧より自分の方が相応しいと。最も、後にその相手が異端児とはいえ皇族だと知った彼らは不敬罪で首をはねられる恐怖にしばし怯えることとなった。

 

官舎まで送ろうとしたが、それは流石にまずいと遠慮してホテルの前にある車を見送るところで止まった。

 

「年下の男の子にそういう心配されるのもちょっと、ね。」

 

「その年下にモーションをかけたのは誰だか……」

 

それを言われたクラリスは少し考えこんで……ライルを引っ張って唇を重ねた。さらに、そこから吸いついて舌を絡める。ライルは一瞬硬直し、しばし応じる。それからどちらからともなく、唇を離した。

 

「お別れのキス、いかが?」

 

「お別れにしては随分と濃厚だった……」

 

「もう、ファーストキスなんだから。」

 

「……嘘。」

 

「ほんと。」

 

車に乗り込んで、クラリスは一息ついた。そして、唇に指を触れた。言い寄られ続けてきたまま、身持ちが硬く成ったクラリスにとってこれは本当にファーストキスだった。その相手が年下で、しかもブリタニアの皇子……

 

「獄中結婚もいいかも。」

 

 

 

捕虜交換のための移送を翌日に控えた日……女達はすでに荷物、と言ってもあの衣装だけでやってきた彼女達に荷物と呼べるものはない。あるとすれば、ライルが買い与えた数着の着替えだけだ。

 

浅海はライルと別れるのが寂しかった。あんな形でとはいえ、もう一度会うことができて…自分が抱いていたブリタニアと真逆の精神性を持つ彼に心を奪われていた。

 

「ねえ、また会える?」

 

「……会えるとしても、戦場で敵同士だ。君が私を殺すかもしれないし、私が君を殺すかもしれない。この中にいる軍人だって、そうなんだぞ。」

 

そう、正論だ。しかし…女達の中にはこの数日でライルに少なからず心を奪われた女達がいた。フランス出身者に至っては、ブリタニア軍への転籍を希望する者さえいそうだ。

 

「私のことなんか、忘れろ。それだけの美人なら、真面目に想ってくれる人の一人や二人寄ってくるよ。」

 

それが本気で浅海のことを考えての発言、そしてここ数日ライルに近づいていた女達へも向けられたものだ。

 

「…………次に会う時まで、死なないで。」

 

「……確約はできないよ。」

 

ここで『分かった』、なんて言わないのは自分の立場を自覚しているからだ。不器用な生き方しか出来ない人なのも分かる。が、浅海はせめてと、ライルに抱き着いた。

 

「違う形で…会いたかった。そうしたら、貴方のこと……」

 

それ以上は言わず、行動で示した。ライルの唇に自分の唇を重ね、ぎこちなくも吸い付いた。ライルの方も腕に少し力を籠めるが、浅海の方から顔を離した。

 

何も言わず、浅海はそのまま車に乗り込んだ。

 

 

 

見送った後、ゲイリーが近づいてきた。

 

「『黒の騎士団』やもしれぬ女に情けをかけるとは……」

 

「甘いのは分かっている。だが、今彼女はオランダの市民権を得ているんだ。『黒の騎士団』だから市民権を取り消せ、なんてオランダ政府に君が抗議するか?しかも今はオランダの軍人だ。」

 

「無理ですね。状況証拠だけでは不可能、ということにします。」

 

「甘いのはどっちだか。」

 

「誰かに影響されたのでしょうね、我ら全員。」

 

 

 

ウェルナーは宛がわれた女達と挨拶を交わしていたが、雛は面白くなかった。

 

「あんだけ細くて可愛い顔だから、そりゃ女受けするわよ。」

 

だが、どうも面白くない。これでは、まるで。

 

「ないない。だったらこっちのお嬢様と結婚して植民地政策有利にする方が現実的よ。」

 

ライルのように我を押し通せる武力はウェルナーにはない。雛が側にいるのは、彼の騎士になるのが最上だ。

 

だが、自分でも分からない。あの女達は少なくとも、ウェルナーをそういう対象とみているかは分からないが、もしそうなら、雛に勝ち目はない。こんな顔では…

 

勝ち目って……ありえないでしょ。なんでそうなるの?

 

 

 

シルヴィオは女達の対応はミルカと木宮に任せていたため、シルヴィオと接触する機会は少なかった。

 

「よかったわね、ライバルが増えなくて。」

 

「一番のライバルに言われても嬉しくないわよ…」

 

確かに、シルヴィオほどの男ならたとえ敵国人でも心を奪われる女はいる。実際、何人かはシルヴィオが来た際に声をかけていた。ただでさえ、男が最大のライバルなのにこの上女まで増えたら収拾がつかない。

 

女として、彼女達の境遇には思うところがあるから手は抜かない。市民権や軍籍の抹消が彼女達の国の上層部の仕業という証拠は押さえ、既にライルの計画に合わせてリークしている。今頃はマスコミが騒ぎ立てていることだろう。

 

 

 

ブリタニア側の狙い通り、フランスのメディアは若い女達が軍籍や市民権を抹消されてブリタニア貴族達の貢ぎ物にされ、大勢が帰ってこなかったことを騒ぎ立てた。そして、極一部の少数派は一切手を付けずに女達を送り返した。その中心が第八皇子ライルであることまでがメディアにリークされ、フランスの市民はブリタニアに靡いた。

 

少なくとも、ライルと一緒に女達を送り返した貴族なら政府の連中よりマシだと。そして、その女達を手籠めにした第五皇子ルーカス…正確には彼と接触しようとした要人達はこの大事な時期に軍と下級官僚、市民の三方向からバッシングを受け、女の家族或いは恋人に殺された者さえいた。

 

ただし、例外として何人か14歳以下、なんと10歳どころかまだ小学生に上がったばかりの娘までも貢ぎ物の中にいた。しかも全員に共通して言えるのは両親が金銭と引き換えに売り払ったとのこと。流石にこれはブリタニア側も送り返せばどうなるかを理解し、頭を悩ませた。が、シュナイゼルを経由してそれを聞いたオデュッセウスが

 

『それはいくら何でも可哀そうだよ。親元に送り返しても、また売られるのが関の山だ。その子達だけでも、亡命という形で本国に移住してもらおう。就学助成プログラムで学力も保管できるように私が計らうよ。』

 

相変わらずの言い方だが、オデュッセウスの発案を採用。事実上親権を放棄したも同然であり、本人達も承諾した。両親と引き離される、よりも既に捨てられたという認識が既にあった模様で、中には夫婦関係が破綻して女遊び、男遊びに明け暮れる両親の面倒まで見させられる子もいた。幼い弟妹がいる少女達は弟や妹も一緒に連れて行きたいと希望、今後の恭順ケースを作るという意図で了承。

 

数人はライルの領地に送られ、屋敷を管理する執事夫婦の養子という形を整えた。これにより、子供達は両親から解放された。皮肉なことに、ブリタニアの侵略が一部ではあるが横暴な親から子供達を救ったのである。

 

更に余談であるが、恋人がいた女の中には資産家の息子がおり、貴族と結婚するために濡れ衣で捨てられた者もいた。それらが露呈し、信用を無くす羽目になった者もいた。最も、外野のブリタニア人でさえ自業自得と思っていたが。

 

「兄様、何もしてこないかと思ったら……」

 

しかも、この情報は殆どが事実であるから余計に質が悪い。なんと、ライルどころかウェルナーに貢がれた女達の証言を秘密裏にとって公表。敵国の皇子よりも自国の政治家こそ、ユーロピアの市民が打倒すべき敵であったと誘導してしまった。

 

反ブリタニア感情が強い今は『ブリタニアの皇子がそう言わせている』と疑う者もいるだろうが、事実であれば荒立てることはできない。その上、万が一うまくいかなくてもシュナイゼル自身が被る損害はない。ライルやウェルナーには少々の疑念を与えるが、送還された女達の証言、和平交渉を破綻させるわけにはいかない現実的観点で反対派の対応を遅らせる狙いもあるだろう。

 

「…やはりすごいが、同時に怖いな。」

 

とはいえ、実際に子供達の親に会ってみたライルとしては、あのまま親元に帰しても碌なことにならないために領地で何人か引き取るのを了承した。

 

 

 

クラリスの父、ピエルス将軍は逮捕されていた。

 

「な、何故だ?私を誰だと思っているのだ!?」

 

「『方舟の船団』で逃げ出し、今回も娘の部下をブリタニアに売ろうとした最低の男。更には娘さえも自分が貴族に返り咲く道具にしようとした。」

 

連行する士官が顔を見せた。それは

 

「フィ、フィリップ君!?」

 

「ええ、どうやら父は私を貴族の娘と結婚させるまではやっても、女達の戸籍抹消まではやる度胸はなかった。だが、貴方は自国の軍隊の将兵を不当に軍籍から抹消した。ユーロピアとブリタニア、合同の軍事法廷が待っています。クラリスもそれで裁くのを期待しています。」

 

クラリスが?馬鹿な!?私の言う通りに動くはずの娘が何故!?

 

「部下にまで害を及ぼそうとした父親に完全に愛想をつかしたそうです。あと、貴方の固有財産は全て娘が相続し、それ以外に不当にためた分は今後の植民地政策においてゲットー住民のために使うという条件でブリタニアもフランス政府もOKしてくれた。もうゲームオーバーですよ。」

 

「あ、ああ……」

 

ピエルスは膝をついた。そして、統合本部の将軍が将兵達の軍籍および市民達の戸籍抹消の主犯格の一人だった重罪でピエルスは終身刑が言い渡された。結局、腐敗貴族のまま終わった父は先手を打ったバルディーニによってイタリア軍への転籍が決まった娘の踏み台になってしまった。

 

 

 

ルーカスはライルやシルヴィオが女達を手放したという話を聞いたが、理解に苦しんだ。これほどの上玉たちを労せずして手に入れられるというのに、一人残らず手放した。いや、こいつらより幼い小娘達はオデュッセウスが主導となって、本国の孤児院もしくは寄宿学校に入学することになり、その費用は政策の便宜と引き換えにフランス政府が負担することになっている。

 

全く、愚かすぎて理解できない。やはり、ブリタニアを…そして世界を導くのはこの俺様だ。この女達はその寵愛を受ける幸せ者だ。

 

「ねぇ、ルーカスさま…もっと?」

 

「あん…ご主人様…私の…」

 

「私のがいいでしょ?」

 

「ねえ、私の方がおいしいんですよね?」

 

既に今抱いている四人は何度もルーカスに身体の奥底まで蹂躙され、ルーカスに従順だ。身体も申し分なく、今も豊かな果実をルーカスに食べて欲しくて押し合っている。どれも大きく美味で、目移りする。よし、次はこちらからだ。

 

 

 




ライルとウェルナーはイメージと真逆の皇族の振る舞いで、ある意味危機を増やしてしまいました。

シルヴィオはミルカと木宮(正妻と相棒)に任せて、数は少ない。そして、ルーカスは分かりきっている。

政治は分からんけど、実際にこういう悪さをした政治家を侵略者側が裁けば、侵略された側はその単位ではマシだと思うことでしょう。正に『駄目な革命政府の政治家よりはそうした連中を潰したブリタニアの一部皇族の方がマシ』

シュナイゼルらしい合理的な手だと思います。

ライルのやり方も、敵に塩を送っているけど…今後ライルを対E.U.の矢面に立たせれば相手をやりにくくする狙いもあるでしょう。何せ、万が一ライルがやられても自分には大した被害は来ない。例え、捕虜になってもナナリーほどじゃないけどいきなり処刑は出来ないタイプと認識されるでしょう。


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