E.U.では、あのクラリス・ドゥ・ピエルスが父の不正を告発。彼はあの貢ぎ物の事件の主犯格で『ロンスヴォー』の将兵達も被害に遭っていたようだ。それらを告発した功績で彼女は昇進こそなかったが、イタリアへの亡命を認められた。結果として、ライルのあの判断は利敵行為になってしまった。
しかし、すでに半分の加盟国がこちらの領土となっている上に、中枢のフランスが陥落したことで戦争状態は継続しながらも今後は前ほど力を入れる必要はなく、女達の返還は人道及び軍や政府の良識に則っていたライルに道理があり、その成果を持って今後の交渉カードに使うべき……『ロンスヴォー』の主導権がイタリアに移ったのは結果論とシュナイゼルが主張したことで問題にならなかった。
エリア24のマリーベルは何か言うかと思ったが、それどころではなくなってしまった。未確認だが、竜門石窟で『ピースマーク』の一本角……白炎が現れたという。『マドリードの星』のアマネセールと呼ばれる赤いKMFもそこにいた。オルドリン・ジヴォンは記憶喪失に陥っていた模様で、その状態で『マドリードの星』でアマネセールのパイロットをやっていたようだ。
ノネットの報告によれば、更に所属不明のブリタニアKMFの部隊が現れ、『グリンダ騎士団』と『ピースマーク』がなし崩し的に共闘して撃退したという。
記憶喪失になっていた状況と『グリンダ騎士団』及び世界の情勢からオルドリンは同じく、身を隠していたソキア・シェルパ共々収容されていたが、程なく釈放されて二人共『グリンダ騎士団』に復帰するという話をノネットから聞いた。
「もう暫く、ノネット様はそちらにいらっしゃるのですね?」
〈ああ、そっちも一度本国へ戻ると聞いたよ。〉
ノネットが皇族に接するとは思えない態度でライルに馴れ馴れしくしてくる。コーネリアにもこんな態度だし、ライルが初めて出会った頃もこういう態度だった。
「ノネット様を独り占めできる『グリンダ騎士団』が少し羨ましいです。というより……マリーを含めあの五人を一発ずつ平手をくれてやりたいです。」
〈それは情勢が落ち着いてからにしな。〉
初恋の人に窘められ、ライルは通信を切る。
「これでしばらくはマリーもおとなしくしてくれるといいが……」
だが、本来ストッパー役のシュバルツァーが命令通りに動くだけの機械のような状態の今、何をしでかすか分からない。ただでさえ、中華連邦に逃れたゼロの問題もあるというのに。
ライルも中華連邦へ行こうとしたが、E.U.遠征で将兵達が疲れ切っているし亡命した『黒の騎士団』を刺激するという意見でシュナイゼルには当初の予定通り本国への帰還を命じられた。いずれも現実的な意見で、ライルは黙るしかなかった。
浅海は無事に軍服に袖を通すことができた。戻ったその日…デルクが出迎えてくれた。
「何か、されなかったか?」
「大丈夫です………ポーカーやチェスの相手、あとは食事の相席で他は。」
「…なんだそりゃ?こんだけの上玉をもらって、それ止まりか?」
オランダ人の同僚が目を丸くしたが、デルクが足を踏みつけた。
「それならいいが……場合が場合だ。しばらく、寝返った可能性も疑われるだろう。」
心外だ。と言いたいが、確かにそう思われても無理はないだろう。
実際、この人達がいなかったら…いや、あの時もう彼らのことは頭から抜けていた。ブリタニアと戦うことさえできなくなり、このまま終わる。ならば、今までの信念をすべて放棄してライルに抱かれて…縋りたかった。ただの愛人でも…彼の側が……
「美奈川、どうした?」
「い、いえなんでも…それより、私と一緒に送り返された人達。民間人もいましたけど。」
「ああ、こればかりはブリタニアに感謝だ。主導した連中の口座やらなんやら、相当強引にハッキングして調べたようだな。徹底的につぶされ、市民権と仕事の復帰は何とかなりそうだ。」
「よかった…………ライルがフランスの総督になれば尚良いけど。」
が、今のは聞こえてしまった。
「お前、随分と入れ込んでいるな。まさか惚れたのか?」
「え?」
私が、ライルに?
「ち、違います。確かにエリア11で会って、向こうで私が見ようとしなかったものを指摘されたけど…」
「それが惚れたと言うのだろうが。」
オランダの将軍が呆れた様子でやってきた。
「全く……帰ってきたのは嬉しいが、これとは。まさか、あの男それを狙って?」
「あの人はそんなことするようなタイプじゃありません!」
「………お前、個人の恋慕とこちらを分けろ。」
「あ、申し訳ありません。」
デルクを含め、全員が呆れ果ててしまった。他のオランダから帰ってきたライルに充てられた女達もここまでではないが、随分とライルを信用している。
「軍や政府に最低の形で裏切られたからその反動だろうな。」
「上層の人間としては、耳が痛いな。」
「当時の貴族に、奴の半分でもそうした心構えがあれば革命もなかっただろうに。」
当時の貴族は富と権力に肥え太り、今回のような考えなど殆どしようとしなかった。
「いずれにしても、暫くは監視をつける。理由は分かるな?」
「…はい。」
ここまで入れ込んでいる以上は、衝動的にせよ内通の可能性もある。とはいえ、伝え聞く話ではライルは謀略が不得手だと聞く。シルヴィオも同様でウェルナーは論外。となれば、消去法的にもシュナイゼル以外にいない。
イタリアに主導権が移った『ロンスヴォー』でフランスの正規軍及び外人部隊は転籍或いは亡命で引き続き共和国軍として活動することになる。
幸也は敵の資料を見て、イタリア外人部隊に所属する日本人を見て資料を握りつぶした。
「こいつだ…こいつだ!」
行村鷹一中佐……あの時の階級は確か、少佐と名乗っていた。出世したのか、イタリア軍で。
再びあの記憶がよみがえる。遊びでブリタニア軍人が父を殺し、見逃された幸也達は日本軍人に保護を求めた。だが、彼らの答えは息子を押さえつけて母と姉の身体を弄ぶこと。あの頃、おぼろげながら意味を分かった幸也は母と姉が泣き叫び、最後は壊れて喘ぐだけとなって……用済みと殺されるのを見た。
『我らのこの行為は正義だ。君の母と姉は正義のために貢献したのだ、君は母と姉を誇るべきだ。この、行村鷹一の名を覚えておきたまえ。君たち日本人をブリタニアから救う勇者の名前だ。』
勇者?日本独立の?だから、あんなことをしていいのか?
一人ぼっちになった幸也は地元周辺のゲットーで何とか生活していた。無事だった学校の教材で死に物狂いで勉強し、名誉ブリタニア人の試験に合格。入隊して、父を殺した連中の所在を聞いたら、父を殺した張本人は既にテロで死んでいた。
父の仇はもういないが、母と姉の仇はまだ生きていた。しかも、イタリアで昇進している。ブリタニア軍の情報分析によれば、奴はほとんど何もしていない。今回のパリ防衛でも後ろでふんぞり返るだけだったと聞き、収容所や避難民の若い女性を政府や上層部に献上して、いくらかおこぼれにも預かっていたという。
「母さんと姉さんを殺しただけじゃなく…!あの、ゴミ野郎!!!」
近くにいたブリタニア軍士官が恐る恐る問う。
「は、話に聞いていたお前の母と姉を殺したのがそいつなのか?」
「ああ、そうだよ!すぐにイタリアに進撃して奴をぶっ殺してやる!いや、イタリア全土を空爆して!!」
「哀沢准尉!軍隊は君の私怨を晴らす道具ではない!!」
「遊びで父さんを殺したブリタニア軍に言われたくない!!」
その言葉に、全員が黙ってしまった。そして、幸也も「言ってしまった」と気付いた。が、相手は黙ったままだ。少し前までの彼らならば『イレヴンごときが』と言っていたが、ライルに仕える内に彼ら自身も気付かぬうちにナンバーズや平民の事情に多少なりと理解を示すようになっていった。
「……すまぬ。今のは我らの短慮だ。とにかく、今は怒りを鎮めてくれ。今のは聞かなかったことにする。」
「い、いえ…こちらも言葉が過ぎました。」
「秀作、良いか?」
「なんだ?」
ゲイリーに呼ばれて振り返る。
「セラフィナ様に言い寄った男を殴り倒さなかっただろうな?」
「……なんでセラが出てくる?殴り倒してはいないが。」
確かに、パーティーで彼女に言い寄る男は多くて宿泊中も言い寄られていたとは聞いている。それが面白くなかったのも事実だ。
「確かに面白くはなかったが…それが?」
突然、ゲイリーの口元が穏やかに上がった。
「いや、良い傾向だ……女絡みでの嫉妬というのは基本的に悪い方だが、お前の場合は良い。」
「訳が分からん。」
「………昔と比べて、成長したということだ。『将軍の孫』という道具ではない、畑方秀作という人間としてちゃんといる。」
「俺と、して…まだ復讐を果たしていないぞ。」
が、ゲイリーは頭をなでて優しく語りかけた。
「復讐をするな、とはもう言わない。だが、たとえ復讐を果たせなくても私やライル殿下、セラフィナ様にとってはお前はちゃんと畑方秀作という人間として存在する。『将軍の孫』であろうとなかろうと、お前を見ている。少なくとも、セラフィナ様と殿下はそうだろう?」
それを言われれば、確かにライルとセラフィナは『奴』のブランドに興味はあったが、だからと言って『敵拠点を壊滅させる作戦をよこせ』、『ブリタニアを勝利させる戦略を立てろ』と『畑方源流の孫だからできて当然』とは言わなかった。他のブリタニア人共は『畑方源流の孫だからスパイ』と決めつけたが、ゲイリーも最近は『首相の息子の枢木スザクはどうなる?』とスザクを引き合いに出して、反論していた。
「今士官だが、それは奴の孫だから出世したとでも?」
「そんなもので殿下が出世させるような方だと思うか?」
「思わない。」
「それだけで、お前をちゃんと見ているんだ。」
雛は自室のベッドで何度も寝返りを打っていた。昇進に伴い、士官室を使わせてもらっているが……やはり不愉快だ。パリを観光する機会はあった。土産として菓子や紅茶を買った。何故か、ブローチのような衣類と合わせるアクセサリーも買った……着ける価値なんかないはずなのに。それにウェルナーが資産家の令嬢や貴族にアプローチされているのが面白くなかった。あの時、帰そうとした女達もウェルナーに「また、会える?」などと質問する女までいた。
「あぁー、おもしろくないーーー!!!」
今度は子供みたいに足をばたつかせていた。少し構ってほしくて呼んだテレサが……
「あんたガキ?」
「同い年にガキ呼ばわりされたくないーーー。」
「何が面白くないの。」
「だって、ウェルナーが向こうのお嬢様や貴族にアプローチされてたの。可愛いし、性格いいけどさー。どう考えても箱入り息子だから口説きやすいって魂胆バレバレじゃない。」
が、それを聞いた瞬間テレサが心底うんざりした顔になった。
「あほくさい。付き合ってらんない。……こっちは勝ち目がないってのに。」
そそくさと出て行ったしまった。
「何よ、薄情者!」
テレサは深いため息をついた。要は、雛は嫉妬しているのだ。片思いの男が他の女に言い寄られているのが気に入らない。しかも、本人は自分の気持ちに自覚がない。
「あんな顔になっちゃったから、自分がそういう対象として見られるという発想も自分がそうなるという発想自体がないのね。」
相手は皇子様。とはいえ、今後の実績次第で結婚は無理でも専任騎士は望みがある。それだけでも相当なものだろう。
「かくいう私は……」
主君のライルを初めて見た時、不思議と惹きつけられた。その振る舞いと薄布でくるんだ剣のような雰囲気。マンフレディに次ぐ新たな主君として仰げる…そう感じていた。エリア11の誘拐と中華連邦、今回。ライルはまさに高潔な『ユーロ・ブリタニア』帝国の貴族のような振る舞いだ。
父やマンフレディと違う高潔な貴族の姿を見た。その背中に…心を奪われた。だが、既にライルの心はイレヴンの有紗に…姉と同じ貴族のクリスタル、ハーフのレイに向いていた。同じ貴族のクラウザー家の娘にも多少なりと心を開いている。
自分が立ち入る隙間などないと分かってしまった。だが、女としては負けを認めてもせめて最後までお仕えする。これだけは負けようが負けまいが譲れない。
「そうよ…私だって血筋だけは貴族だもの。これくらいの意地ははってやる。」
ライルは久しぶりに三人を一度に抱いて…否、今回は優衣も入れて四人だ。
「ねえ、本当にこの前の女の子たちに手を出していなかったんですか?」
クリスタルの問いにライルはため息をついた。
「しつこいな……食事の相席やチェスの相手以外は本当に何もない。」
が、レイも納得していない。
「だって、私達も言い寄られてたんですよ?ライル様は優良物件なんだから尚のことじゃないですか。」
有紗がまた大きくなった胸を押し付けて上に乗る。
「こうやって、迫られることはあったんでしょう?」
優衣も有紗を押しのけるように乗ってくる。四つの大きな果実が潰れて、実に心地よい感触。と言いたいが、これでは日本の子供の古い遊び……おしくらまんじゅうみたいだ。
「ちらっと見たけど、みんな美人でスタイルも良かったし。」
優衣に図星を突かれた。実際、断っても浅海以外に何人もの女が勝手にベッドに入り込もうとして、追い返すのに苦労させられた。
「ただの自暴自棄だろう?」
「私だって、最初は自棄だったんですよ?」
そういえば、有紗と知り合った時はまさにそうだった………そう考えていると、両脇からレイとクリスタルが胸を押し付けて、腕を挟み込む。心なしか、二人も大きくなっている気がする。両腕と胸板の柔らかな感触を堪能したいが、逆に窮屈でそれどころではない。
「向こうだって、名残惜しそうだったじゃないですか。」
「そうよ……絶対に惚れたわ。」
レイが断言して、唇に吸い付くとクリスタルと有紗、優衣も張り合うように唇に吸い付いた。どうも普段とベッドの上でのギャップが凄まじい。いや、優衣とクリスタルは普段と大差ないが。
「もしかして、怒ってるか?」
すると、四人が無理やりライルを起こして胸で顔を潰してきた。そして、有紗が…
「当たり前です。」
レイが張り合うように頭をなでてきた。
「パリでは食事だってかなわなかったんだから…」
「せめて、艦にいる間は良いでしょう?」
「というより、してくれなきゃいや。」
優衣とクリスタルまで、普段にもまして積極的だ。四人の大きいが、微妙に異なる果実の感触に酔いしれたいところだがまず息苦しい。とはいえ、まさかここまで不機嫌だったとは。こうなったら、仕方ない。徹底的に相手をしてやろう。
「しかし、これではルーカスと同レベルだ。」
少なくない自己嫌悪に陥るが……優衣が怒って足をつねった。
「ライル様のこと、本気で好きなの。何度も言わせないで…」
「…こんな浮気性相手に。分かったよ……」
再びライルは四人を抱き倒した。『ロンスヴォー』と浅海、クラリスの安否は気になるが今は目の前のことに集中することにした。
流石にE.U.であのエレーナやクラリス、中華連邦で美水や楊 鈴維、『ユーロ・ブリタニア』のリーザなどとやたらと増えたりはしないだろう。まして、エリア11のテロリストの浅海など…彼女ならオランダ軍か『黒の騎士団』に恋人がいてもおかしくない。ライルに惚れるなど、いくら何でもあの時は半ば自暴自棄だっただろうが……
ティーナやサラもだが、彼女達は容姿については勿論だが、性格もわずかに話した程度でも、魅力的に感じた。少なくとも、ライルがこれまでうんざりするほどに見てきた自分の家柄やコネ、自分とは何の関係もない親のキャリアを自慢する令嬢よりはずっとまともに見えた。だが、自分よりいい男など探せばいるはず。性格だってそうだし、社会的な立場が並でもいいではないか。
自分に言い寄る女達を見て、ライルは思った。クリスタルは勿論だが、エレーナやクラリスに言い寄る男達の中には本気な男も何人かいるだろう。だが、大半は彼女達の美貌を貴族だ資産家の自分こそが相応しい、もしくは自分の妻に相応しいとトロフィー程度にしか認識していない。
そう、貴族の女達がライルに言い寄り、平民のジュリア、ハーフのレイ、たとえ貴族でも落ち目のヴェルドとコローレを、妾腹の息子のフェリクスに陰口をたたいている家柄だけが立派な貴族共にとって、自分や家に箔をつける主君を求めている。そんな忠誠も愛もライルは欲しくない。ライルにもしものことがあれば、すぐに裏切るのが分かり切っている。自分がシュナイゼルやコーネリアほどの才覚や人望がないことは自覚していても、家自慢ばかりする手合いを信用しないのはそれが大きい。
だから、結婚も消極的だ。有紗や優衣がライルの地位目当てだとしても、彼女達はブリタニアに全てを奪われている。仕返しのために近づいたとしても納得がいくし、さほど傷つかない。大体、家柄を持ち出して言い寄った自分達を棚に上げ、顔や身体で取り入ったと罵るその発想が受け付けなかった。
あの女が気に入るようなのを近づけないためにも、サラとまじめに付き合って結婚した方が良いのだろうか。
四人の身体を堪能しながらも、ライルはそう考えた。家柄だけで言えばレイとクリスタルは申し分ない。もし、サラと結婚すると同時に今抱いている四人も迎えるのならば、サラとクリスタルで一位か二位、レイを三位、優衣を四位、そして有紗を最下位だろう。
ふと、外国人の枠で美水やエレーナが浮かんだ。彼女達も中華連邦やエリア24の政策上、皇族と結婚する相手として無理はないはず。
………よそう、今はこんなこと考えるのは。
大体、そんな打算だけの結婚なんて相手にも失礼だ。自分が散々、忌避していることを考えるなんて………最低だ。
そんな最低な発想をぬぐうようにライルは四人をさらに激しく攻め立て、徹底的に注ぎ込んだ。何度も身体をのけぞらせ、遂に許してと泣き出すまで……本当に愛していると、自分に言い聞かせるように。
シェール・フェ・ブリタニアは机を叩いていた。息子の周りにいる者達はあのウィスティリア家の娘以外は、落ち目の男爵家の放蕩息子、もう一つの落ち目の男爵家ベアーズリー家の息子は伯爵家の娘と婚約しているが、それも不届きだ。更には伯爵家の息子、と言っても妾腹の息子等を側近にしている上に、中華連邦の将軍の娘をオブザーバーにしている。
こちらに至っては、現地における上流階級などではない不遜にも平民の成り上がり。更には植民地政策に協力している資産家の養女、それも捨て子などという卑しい女とつながりを持っている。
我が息子ながら情けない。真に選ばれた血統の者ではなく、あんな下賤な輩ばかり。軍人家系のクレヴィング家に至ってはたかが辺境伯家、あの騎士とて侯爵家の娘でもイレヴンのハーフ。
せっかく、取り付けたアルバートフ伯爵家の娘とは双方合意で結婚する気がない上に先方の親も娘の意志を尊重、あくまで遠縁としての付き合いにとどまっている。クラウザー家の娘に至っては、あの卑劣な枢木スザクと学友だったせいでイレヴンの小娘共とも親しくしている。
全て、あのイレヴンと平民共のせいだ。私の息子が狂わされている。
このままでは、息子が皇帝になったところでその重臣はあの平民や下級貴族共、皇妃さえハーフやイレヴンが収まってしまう。従者というだけでも大罪であるというのに。私の選んだ精鋭達には目もくれない。卑劣な手で勝っていることも分からないとは!
平民やナンバーズが歴史と伝統を誇る貴族に勝つなどありえない。卑劣な手を使っていると、シェールは信じて疑わなかった。
息子と何度も口論し、息子が『誰だって最初は平民だった時代がある。子爵家の実家だって平民だった時期があったはず』という主張さえ頭の中から消えていた。
自分は選ばれた人間、田舎の子爵家で収まっていい器ではない。ブリタニアを、ひいては世界を束ねるべくして生まれた。そして、それをさせてくれるのが息子。皇太后となって、皇帝へ即位した息子のブリタニアを、世界を手に入れる。
そう、世界はこの私の物だ。
そのためにあらゆる手を尽くした。そう、息子の部下に相応しくない平民を抹殺し、ナンバーズ共を駆逐する。それをもって貴族達を取り立てようとしたのに、どいつもこいつもやろうとしない。それを理解し、実行しようとしたら失敗している。
どいつもこいつも役に立たない。この私のために尽くす幸せを理解できないとは。
何より、可哀そうなのはライル。
「ああ、私の息子……可愛いライル。皇帝になって、私を皇太后にすることこそが最上の幸せなのに。」
『ナイトオブラウンズ』とはいえ、農場ばかりの田舎しか領地をもたない野蛮な娘にうつつを抜かし、コーネリア、シュナイゼルなどという軍師気取りの小娘とまぐれで宰相になった小僧なんぞと仲良くした挙げ句、平民のくせに卑劣な手で皇妃になったマリアンヌの子供と遊んでいた。
更には騎士家系のくせにあのマリアンヌを評価する恥さらしの息子や、下賤な者共との交流を重んじるフローラの娘達……『双剣皇女』などと大層な異名を賜る身の程知らず共。どいつもこいつも、我が息子を毒している。
せっかくゼロという最上の獲物が現れたのに、これではあのルーカスにまで横取りされるではないか。あれはこの私が皇太后になるべくして現れた獲物なのに。
「そう、母としてまず息子の足かせを取ってあげなくては。」
シェールは早速他の貴族達に、家臣に連絡を取ることにした。
ライルはルーカスと同じようなことをしながら、他の女を考えるという…はっきり言って書いててこれは最低だと思います。
中身はかなり大真面目な情勢なども込みですが。恵まれた地位の悲しい性でしょうな。
クラリスや浅海、鈴維は好ましく思っていても、自分に惚れるとは思ってないライル。……自爆確定ですね。
幸也の方は、本当にどうすれば良いんでしょうね。父親を敵に、母と姉を味方に奪われた。どっちかなら力のある方につくし、それにブリタニアと日本ならある意味、ブリタニアは諦めも付いてしまっているかもしれません。何しろ、当時は敵で…仇ももうこの世にいない。なら、生きている方を殺しやすい側に付く。感情としても復讐の論理としても間違ってないと思います。
シュナイゼルとコーネリアの場合、家自慢する馬鹿は……シュナイゼルならうまく使って、絶妙なタイミングで相手に取らせるポーン。コーネリアはそもそもライル同様相手にしないでしょうね。ゼロも同じ。ギアスで自爆させるくらいしか期待しないかも。
で、ある意味ライルの最大の政敵がいよいよバカをやります。
ガンダムSEED ASTRAYで言えば、『賢者百人分のことをやる馬鹿』まっしぐらです。
領民の信頼が厚い祖父母からなんでこんなのが生まれたのやら。