コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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原稿と照らしあわせ、リーザ・スズカ・フォン・ノイエンドルフの年齢を訂正しました。ライルと同じ19です。


BERSERK-43『新たな謀略』

ライルは突然、離宮に呼び戻された。何事かと思えば、ライルと結婚したい令嬢方のリストを見せられた。前に断った顔ぶれの比率が圧倒的に多く、皆平民出身の部下達を平然と侮辱するような権力に肥え太った女ばかり。相当に甘やかされて育ったのが見て取れるうえに、自分もこいつらの完全な仲間入りをしていたかと思うとぞっとするからだ。

 

そして、そのまま帰らせてもらえずに三日が経った夕暮れ時……

 

「どうした?」

 

〈で、殿下!申し訳ございません!!〉

 

良二だ……

 

「良二…何があった?」

 

〈ま、またしても誘拐です!今度は暗殺も!〉

 

何!?誘拐と暗殺!?私の臣下だけ!?

 

そして、ライルは真っ先に首謀者候補が浮かんだがすぐに頭を切り替える。

 

「すぐに基地へ向かう!手配を!」

 

〈既に済ませてあります!〉

 

軍服に着替え、脱いだ服の整理を頼んで離宮を出ようとしたところ。

 

「お待ちなさい、ライル。」

 

呼び止めたのは、母シェールだ。

 

「……どこへ行かれるのです?」

 

「軍からの緊急の呼び出しです。可及的速やかに、私のサインが必要な案件らしいのです。それに、幕僚達もそれに伴う会議を行いたいとのことです。」

 

が、母は

 

「会議など下々にやらせればよいのです。貴方は皇帝になるのですから。」

 

思った通りだ。しかし…

 

「皇帝とて、会議の結果に承認のサインはせねばならないし議会や軍の人間を交えた公務は必要な身。母上とてお分かりのはずですが?」

 

「一日遅れたところで問題にはならないのではありませんか?」

 

「その一日遅れが戦場の将兵達の物資不足や死を招くのです。それに、軍務である以上は母上の権限が及ばないはずです。」

 

「私は貴方の母です。つまり、私の軍なのです。」

 

案の定、見当違いも甚だしい暴論を又も繰り出してきた。このままでは平行線。かといって、実力行使は無理だ。どうしようか、と思ったが。

 

「では、私も殿下にご同行いたします。」

 

ティーナ・B・アルバートフが名乗りを上げてきた。何故ここにいるのか、先日からシェールが招いて滞在をさせていたのだ。

 

「ティーナ?」

 

「可能性は低いですが、私とて殿下に嫁ぐ可能性を秘めた高貴な身分。伴侶として殿下を支えたく、また遠縁でも親類として殿下の臣下に労いの言葉をかけたく存じます。」

 

なるほど、将来の皇妃候補として臣下達への挨拶。しかも親戚なら筋も通る。

 

「母上、アルバートフ家の御息女にて私の又従姉のティーナまで同行してくれるのです。ここは縁戚のアルバートフ家の御意思を尊重していただきたいのですが。」

 

「…では、貴方は彼女を妻として迎え入れる用意があるので?」

 

「少なくとも、候補としてはサラ・クラウザー嬢と我が親衛隊のクリスタル・ウィスティリアに次ぐ程度に考えております。」

 

「い、良いでしょう。」

 

実家の爵位が自分の家より上で、本人も気に入っている家柄の娘二人を持ち出されて母もようやく譲歩した。しかも、相手は最初に自分が結婚相手候補にしようとした上に関係修繕を考えていた相手だ。

 

が、こちらも考えが足りなかった。ティーナなら自分に味方すると思って、こちらに呼び込んだんだな。やはり、政治では相手の方が上だ。とはいえ、それならもう少し味方にする相手の事情を考慮に入れるべきではないだろうか?実入りが大きくないと味方しないケースだって多いはずだ。

 

今の場面はとっさのアドリブで乗り切ったが、やはり自分がシュナイゼルには到底及ばないことを痛感させられる。

 

 

 

ライルに着いて車に乗ったティーナは父から知らされた話に半信半疑だった。いくらなんでも、そんなことを大規模でやるはずがない。失敗する可能性の方が高いし、うまくいったとしても標的のライルの感情はもはや修正不可能なまでに敵意一色になる。どうして、彼らはそれが想像できないのだろう?

 

ナンバーズだから?平民だから?それであっさりと納得するなら、ナンバーズ系の採用なんて方針を打ち立てるとは思えない。

 

ティーナは薄々察した。彼らは本気でそう思っている。自分達貴族こそが全てを担っている。貴族と皇族がいれば、国は、世界は成り立つ。だが……彼らの祖先とて最初から貴族だったわけではない。家を貴族にまで上り詰めさせた始祖の奮闘あってこそだ。『ノーブル・オブリゲーション』とはその家ごとに受け継ぐ責任だとティーナは考える。

 

つまり、彼らは、その祖先の偉業に溺れている。その努力を理解していないのだ。維持する努力すら忘れてしまったのではないだろうか?何もせずとも家が存続するわけがない。親から受け継いだ財産でも権力でも活かし方を間違え、維持する努力さえ怠れば権威は失われる。

 

そして、今回はその努力の方向を見誤った貴族の失敗だ。

 

「殿下、実はシェール様が私を招いた理由には心当たりがあるのです。」

 

「今回の誘拐で私を引き留める囮。」

 

流石に見抜いていた。当たり前だ……タイミングが良すぎるのだ。普通は気付くだろう。

 

「…申し訳ありません。父にギリギリまで黙っているように口止めをされていまして。シェール様が有紗さんやクレヴィング将軍といったライル殿下のお側の方達を他の貴族と一緒に排除しようとしていることを………」

 

ライルが睨みつけてきた。『何故、ぎりぎりまで?』と言っているのが感じ取れた。

 

「厳しい言い方ですが…分かっていても、防げなければ意味がありません。」

 

「っ、真っ当な意見だな。あの女を僅かでも信じた………どこかでまだ母親としてのあの女に甘えていた私が馬鹿だったんだ。」

 

「……正直、それは行けなかったと思います。ですが、母親を信じたいお気持ちは分かりますし…今の情勢で殿下のお力を弱めるようなことに意味はありません。父も同じ意見でした。」

 

アルバートフ卿は流石に厳しい。ゲイリーやフェリクスと違い、外野だからなお響く。

 

「で、アルバートフ卿はどうやってそのことを?あの女の側にスパイでも送った?」

 

「いいえ、シェール様の計画に加担した者達が保身のために。」

 

「土壇場でか……いくら私でもお咎めなしにはできないぞ?お父上の口聞きでも。」

 

そうだろう。臣下達の誘拐に暗殺まで発展した。処刑されても文句言えない。先方も処刑される可能性くらいは覚悟しているだろう。なら、せめて処刑されるのを自分だけにして欲しいという嘆願くらいは来るだろう。

 

 

 

基地に到着し、ライルは一部始終を聞く。

 

「で、誰が誘拐された!?」

 

ゲイリーが顔を一度伏せて、紙を手渡す。

 

「な!?」

 

誘拐されたのは有紗、優衣、涼子、ノエルだ。レイとテレサは撃退に成功。更に秀作とゲイリーも屋敷で狙われた。夫人にけがはなかったが、使用人達には負傷者が出た。そして、長野と良二も刺客に襲われるがこれを返り討ちにして、捕らえたとのこと。だが、最悪なことに美水まで誘拐されてしまった。

 

「ここまで徹底的に!」

 

有紗を除いても、全員が今ライル軍では貴重な人員で軍事の重要な役職についている。全員をやられたら、軍が立ち行かなくなる。

 

しかも、美水まで誘拐など!いくら政変があったとはいえ先日、ライルが客人として遇すると政府側にも通達したばかり。それを誘拐するなど、中華連邦側の対ブリタニア連合を加速させるようなものではないか!!

 

あの女は!本気で高貴な血筋で何でも解決するとでも思っているのか!?

 

「おい、捕らえた奴から情報は?」

 

「は、やはり貴族に雇われたようです。」

 

「知っていることは全て吐かせろ……最悪リフレインで廃人にしてもいい。」

 

全員の血の気が引いた。今回のライルは、あのエリア11の誘拐の比ではない。無理もない。規模が大きいのだ。

 

 

 

「いぎぃぁやあああああああああああ!!!!!」

 

レイとテレサに捕らえられた軍人は既に手足の爪をナイフで剝かれていた。激痛に喘ぎ、さらに今度はライルがゆっくりとナイフを包丁で野菜を切るように前後させようとする。

 

「さあ、どこがいい?右手?左手?それとも耳?ああ、大丈夫…片方だけは残してあげる。そうだ。眼も抉ってあげるよ。知り合いの日本人に左目を無くした男の子がいてね。右目を無くしたなら、君たちいい友達になれるよ。」

 

にこやかに言うライルの顔には狂気と憎悪が溢れていた。タガが外れかけている…古株達は確信していた。ようやく落ち着いたと思ったら、またこんな事件。貴族共は未だに自分達が是とすることをライルが基本的に拒んでいることを理解していないのだろうか?

 

「じゃあ、右目と左耳を。」

 

余りに子供みたいに無邪気に笑う姿におびえた兵士は股間を濡らし、喚きだした。

 

「ま、待ってください!知っていることを全部話します!だから、もうやめてください!許してください!!!」

 

ライルは笑顔を消し、右目手前にナイフを突き出す。

 

「最初から素直に言えばいいんだよ。でも、死にたくないからって出まかせを言えば……手足も目も耳もなくなるよ?まさに生きながらの地獄?」

 

「ひ!!」

 

情報部の軍人が思わず怯えて息をのんだ。普段、拷問を嫌っているライルとは思えない。自白剤だってよほどのことがなければリフレインまで行かないのだ。それがもう、理性の針が降り切れているとしか言いようがない。

 

「で、首謀者は?やはり、私の母?」

 

「い、いえ!私は命令されただけです!!貴方の母君が首謀者かは知りません!本当です!信じてください!!」

 

端正な顔をぐしゃぐしゃに濡らして喚く姿が最初に尋問を行った士官には哀れに映った。平民らしいが、それなりの成果でパイロットへの転属が認められて騎士候になれるかもしれなかったというのに、餌につられてこんなことを。しかも、ライルが出てきた時にこの男は

 

『どうせエリアで攫ってきた女共じゃないですか。あんなのいくらでもいますし、また新しいのを攫えばいいだけの話ではありませんか。』

 

その時だろう…ライルの理性が飛んだのは。親衛隊の隊員が四人待機しているのはこいつの逃亡防止もだが、ここまで来るとライルの暴走を抑えるのが主目的になりそうだ。

 

「では命令したのは?そいつは知っているよな?」

 

「は、はい!!クラウザー伯爵家の当主です!!娘と殿下が結婚した暁には、私を騎士候に取り立てて、家臣の列にも加えてくれると約束されたのです!!」

 

何!?クラウザー家だと!クラウザー家と言えば、ライルが懇意にしているサラ・クラウザーの実家……

 

「ほう、なるほど。で、まさか娘も噛んでいるのか?」

 

「知りません。私は当主にあのハーフと『ユーロ・ブリタニア』の女を殺すか攫えと命令されただけです!本当です!!」

 

「………攫ったらどうする?男は殺すしかないが、あれほどの美人なら、売るよな?」

 

「は、はい!!クラウザー家が贔屓にしているカジノに売ると!!それ以上は何も知りません!許してください!!助けてください!!」

 

 

 

ゲイリーが尋問していたのは今回の計画の一部を密告したフィリドール家の当主だ。よりにもよって、あの事件の後に新兵として配属された貴族の父親まで絡んでいたとは。当主は手錠をかけられ、他の貴族達もうなだれている。

 

「では、シェール様が首謀者なのは本当なのだな?」

 

「は、はい……貴方やあの名誉ブリタニア人達を排除した暁には便宜を図ると約束され、それにつられて………」

 

「なぜ、実行寸前で思いとどまった?」

 

「……私は息子のためと思いましたが…息子自身が…『勝つのなら、実績で勝ちたい』と言ったのを思い出し………しかし皇族にお仕えする方々を害そうとしたのは事実です。裁きは受けますが、どうか息子と我が家の財産や領地については!」

 

息子、か……息子のためと言いながらも、この男も家や自分の権威に目が眩んだ。しかし、ギリギリのところで踏みとどまった。

 

「………私からその旨だけは伝えるが、確約はできぬ。まあ、息子の降格や左遷だけは最大限の努力をする。私にも息子がいるから、気持ちは分かる。」

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

「私はエリア11の植民地政策に協力している日本政府官僚から正式に許可を得ている。まして、武石良二に至っては今現在も植民地政策に協力している財閥の息子。エリア11の植民地政策妨害と捉えられるぞ?」

 

「何を言うか、イレヴンが!娘を売って今の地位に着いた卑劣漢に次期子爵のこの私が後れを取るわけがないのだ!!」

 

なるほど、こいつは私が娘を…絵里を売ることで出世したと思っているのか。

 

「では聞くが、何故娘は今もエリア11にいる。売るのならば殿下に売るはずだが?」

 

「そ、それは。ふん!エリア11で可愛がってやるためだろうが。楽しみは多い方が良いではないか!?」

 

「そうか……では、貴様は我が君を全く理解しておられない。そのような出世を侮蔑するのならば、私の知る限り第五皇子殿下の幕僚に言うべきであったな。連れていけ。」

 

「イエス・マイ・ロード!」

 

 

 

ティーナから聞かされた貴族達は既に出頭しており、標的にライルの領地であるあの農場も含まれていることを聞き、すぐさま親衛隊と『フォーリン・ナイツ』を派遣。罪状はライルの暗殺を企てていたとのことだが、捏造した証拠は全てフィリドール家を筆頭とした貴族及びその縁者の軍人が抑えていた。自分達の罪状を軽くしてもらうためなのは明白だが、今回は敵を裁くための証拠として受け取ることにした。

 

農場にやってきた軍はシェールの手下が半分以上だった一方、本当に騙された兵士も多かった。騙された者は全員を一階級降格及び一年の減俸処分を下した。そして、真相を知っていた将校は全員処刑或いは終身刑を政府に要請した。

 

 

 

ライルは自室に軍学校時代の知人達を呼んで酒を飲んでいた。

 

「なあ……本音を言っていいか?」

 

「なんだ?」

 

付き合いの長い顔ぶれしかいない中、ライルは酒を煽っていた。ガラにもなく、強い酒ばかりだ。自棄酒なのは明らかだ。

 

「もう、あんな馬鹿共の皇子であることに耐えられない!我慢できないし、したくない!!」

 

どいつもこいつも、ナンバーズごとき、平民ごときいくらでもいるからどんどん死なせようなんて言うやつばかり!!

 

配属されてから、こういう文句は増えていたが、今回は極めつけだろう。

 

「だったら、自分達でやればいいじゃないか!!区別だ、差別だと言ってナンバーズがいらないなら、自分とナンバーズ出身者の分を一人でこなせ!!私がそういえば、屁理屈を並べて逃げるくせに!!」

 

時折、こういう愚痴を聞かされるのは士官学校時代をよく知る彼ら、もしくは人生経験が豊富な年長者にしかできないだろう。

 

しかし、今回彼らの眼にはそれが今までで本当に一番酷く、ジュリアの時に引けを取らなかった。いや、彼女との決定的な違いは被害者に本当に結ばれた女性がいること。ナンバーズと、と言ってしまえばそれまでだがならば権力で攫ったナンバーズの女を無理やりはいいのか?と言うのが彼らの主だった言い分だ。男女の関係でも、主従の信頼でもそこは人格や能力の範疇で差別の仕様がない。

 

「まあ、言いたいことは分かります。」

 

フェリクスがチーズをかじって答えた後…空になったグラスに追加を注ぐ。

 

「それで、ナンバーズが手柄を上げれば卑怯扱いだ!!自分達が同じことをやれば、正当な手段!?ナンバーズが努力で出世すれば卑怯!!ブリタニア人様はなんだ!?神の使いか化身!?神聖ブリタニア帝国だからそうなのか!?奴らの頭はどういう構造をしているんだ!?」

 

「俺らはそう思わねえよ、銃どころかバットで殴られたって死ぬ人間だ。」

 

ヴェルドが酒を飲んで、同調する。

 

「見どころがあれば、平民もナンバーズも取り立てる僕は頭がおかしいのか?異端なのか?」

 

「…異端、とは思われますが頭がおかしいとは思いませんよ。爵位や人種で戦争に勝てるわけがないですから。」

 

クリスタルが擁護するが、とても効果はない。

 

「なのに、貴族共ときたら!危なくなれば家柄を並べて安全圏に逃げようとする!『ナンバーズ共などあてにならない』等と言っておいて、やりたくない仕事はナンバーズ共にやらせよう!!どうなっているんだ、この国は!?平民だって似たり寄ったりだ!!地震や津波が来ても、ナンバーズを生贄にすれば、神が自分達だけ助けてくれると思っているのだろうよ!!もう我慢したくない!いっそっ!」

 

ライルの意識が途切れた。

 

 

 

コローレが首筋に手刀を当てて気絶させた。相当参っている。もし、狙いすましたように貴族の娘達が来たら生首がいくつ転がっていたか。そうなりかねなかった。

 

「ふう、間に合った。しかし、言いたいことはご尤もだが今回は酷いな。」

 

「ああ、有紗ちゃんの時のが可愛く見える。」

 

あのまましゃべらせたら、ブリタニア本国全土を火の海にしてやろうなどと言っていただろう。もう、ライルの中では

 

ブリタニア人-(自軍+一部)=母の手下

 

という方程式が根付いているのだ。秀作の同国人への敵意とほぼ同じ。他のメンバーの中で、秀作にはやや甘いのも、そこから来ているのだろう。

 

「これがゼロの味方だったら良かったのに、それがよりにもよってブリタニアそれも皇族から出るとは。」

 

デビーとフェリクスがベッドに寝かせて、布団をかける。

 

酒が入っていたのを抜いても、ライルがこれまでため込んでいた自国への疑念と不信感……それがここにきて爆発している。

 

「あり、さ…ゆい……はな、せ…!よ、くも…フェリクスを!」

 

魘されている。しかも、有紗と優衣に加え、フェリクスの名前まで。疑いようもなく、最悪の夢を見ている。

 

「……真面目な話、休戦条約の締結でもなんでも『黒の騎士団』との戦争が終わったら、この方を一年くらい軍から外してあげたいわ。」

 

クリスタルが眠っているライルの頭をなで、唇に触れる程度のキスをする。

 

「私にそんな資格ないのは分かってるけど……その時に、あの時の本音を打ち明ける。振られるじゃすまないのも覚悟で。せめて、愛しているから。」

 

意味を察したコローレとフェリクスも頷く。

 

「…首を飛ばさないように説得はするよ。」

 

「とにかく、しばらく休ませてあげましょう。」

 

実際問題、本当にこの人は才能や能力よりも性格が軍人や皇帝には向いていない。悪い意味で善良で繊細……何より、大事なもののために手段を選ばない。

 

 

 

サラは父が他の貴族達と会っているのを見つけ、何を話しているのだろうと聞き耳を立てていた。

 

「何人かは失敗したようだ。」

 

「だが、本命の一人は確保した。」

 

失敗。本命の一人…何の話だろう?

 

「しかし、見れば見るほどに上玉だ。このまま私がもらい受けたいくらいだ。」

 

「よせ、ライル殿下に感づかれるぞ。」

 

ライル殿下?なんで、ライル様が?

 

一体、彼らは何の話をしているんだ?

 

「シェール様はなんと?」

 

「クレヴィング将軍と彼が保護者をしているイレヴンは失敗したが、鬱陶しい小娘共が消えたことに満足しておられた。」

 

「では、他の者は?」

 

「まあ、待て。近い内にゼロが行動を起こすだろう。その際に…」

 

「なるほど、ゼロにも手伝ってもらうというわけですな。そのほうが我々にとっても好都合だ。」

 

話の内容は分からないが、側近のゲイリーの名前が出ている以上…何かの危険なやり取りだ。ライルに知らせた方が良いようだ。

 

気付かれないようにサラはこっそりと離れていった。

 

 

 

ライルは母からの呼び出しを無視し続け、更に先日拷問した兵士からクラウザー家が贔屓にしているカジノを徹底的に洗い出すとともに情報部に要請してクラウザー家の所有する口座全てを洗い出し、誘拐発覚から一週間後に大きな入金をしたカジノを見つけた。ヴェルドとコローレも行ったことがあるカジノで、そこで新しいバニーガールが来たという情報がある。

 

何より、サラがライルを訪問して………

 

「父達が何人かの貴族とライル様とシェール様のことを話していたんです。まさか、こちらで有紗達が誘拐されていたなんて…………信じたくありませんが、父が誘拐に協力したんですね?」

 

「…君には残酷だが、ほぼ確実だな。私と君を結婚させるうえで邪魔な有紗達を排除、所詮平民とナンバーズだからすぐに忘れる。なんて考えたんだろう。」

 

「そんな…!有紗達とは良い関係でいたいって言い続けていたのに!」

 

全くだ…実際出立の時もサラは有紗達と会っており、ライルから見ても仲の良い友人関係だった。しかも、娘がナンバーズ出身の枢木スザクと同じ学校で彼とも付き合いがあったのに、それを無視するとは。娘のことを案じている、と言われても説得力がない。

 

「あの、私に何かできることは?父がこんなことをしたのなら、次期当主として不正を正さないと!」

 

サラの提案にライルは頭を悩ませた。相手は軍だって絡んでいるだろう。民間人、それも学生のサラを巻き込むことは躊躇していた。しかし……

 

「父君と会っていた貴族で知っている顔はいたか?知っていれば、名前を教えてくれ。」

 

「はい。それに、今後のゼロの動き次第ではクレヴィング将軍や他の平民やナンバーズ出身者の人も始末できると。多分、軍に働きかけてライル様の名誉騎士団を敵に殺されやすい配置にするんでしょう。これなら、自分の手を汚さずに合法的に殺せますから。何か罪状を捏造する可能性もあります。」

 

そうだろうな……安全な本国にいるだけの連中に現場のことなど分かるわけがない。だから、こんな情勢でこんなことをする。

 

「情報部にいる知り合いを通じて他の連中を探ってもらっている。とにかく、有紗達が売られる前に助ける。店を潰してでもな。」

 

「…お前の場合、売られてもオーナーを拷問して吐かせて、買い取り先が手を付けていたら楽に殺さないだろう。殺してくださいと介錯を請われ、そのタイミングで放置してゆっくりと死なせる。くらいはやりそうだ。」

 

セヴィーナの指摘にライルは…

 

「ああ、それを百回繰り返す程度じゃ収まらないね。」

 

セヴィーナがため息をついた。

 

「この男なら本気でやりかねない……全く、悪いところだけ似ているようだな。」

 

「大事なものに累が及んだ場合に限っているだけ、マシだ。」

 

ゲイリーが一応のフォローを入れて、全員が再び動く。ターゲットになっているメンバーは暫く室内で待機。端末を通じて行動し、親衛隊と『フォーリン・ナイツ』を一人ずつガードに着けていた。

 

 

 

そして、捕えた貴族への拷問はライルが手ずから行い…リフレインの投与をもちらつかせた。しかも、自白剤として投与する量の数十倍の濃度を目の前で注射器に入れたのだ。

 

「さて、これだけの量のリフレインを一気に投与されたらどうなるかな?お前は何年前まで逆行するのかな?まあ、効果が切れたらその時点でもう廃人だろう。いや、その前に心臓か脳が壊れるか?」

 

「お、おやめください!」

 

「へえ、そう言って抵抗する私の部下を攫ったくせに……じゃあ、この粉末の状態のリフレインを一気に口に押し込んでやるのもいいな。」

 

「ひ!!わ、分かりました!知っていることは全て言います!命だけはお助けください!!」

 

「分かればよろしい…ああ、嘘と分かればその後で裁判もなく地獄だから、そのつもりで。自殺扱いにしてあげるから。」

 

フェリクスは背筋が凍った……先日、あれだけ喚いただけあり本当にタガが外れている。有紗の存在が正にライルにとっては安らぎの象徴であり、帰りを待ってくれる人の代表だったのだ。あの農場の人達とはまた違う意味で、有紗の存在はライルの心の支えだ。レイや優衣の存在もライルにとって必要なのだ。

 

それを親のエゴで奪おうなど……野生のライオンから子供を攫って、無理やりサーカスで調教するようなものだ。『返してほしければ、玉乗りをこなせ』など野生のライオンに通じるわけがない。

 

個人的感情としても、今回の誘拐は許しがたい。この期に及んでも、まだライルの主張を『替えが効くナンバーズを使い捨てにする』程度にしか認識できないとは。

 

 

 

情報部のグレイブ・ガロファーノが訪問してきた。士官学校で短期の教官を務めた平民上がりで、KMFのパイロットとしても優秀だった。良くも悪くも公正で、ライルのことも生徒として接しており、訓練でグラスゴーの反応が遅いから負けたと言い訳をしたことがあった。

 

そんなライルに平手打ちを喰らわせ、

 

『貴方は実戦でもそんな言い訳をする気か!?今のが実戦であれば、貴方は死んでいた!!』

 

その一言以来、ライルは彼を敬愛していた。親衛隊に是非とも欲しかったのだが、彼自身が固辞したので断念した。しかし、依頼情報部の動きを送ってくれる半ば私的なエージェントになってくれていた。

 

「お姫様達が売られたカジノが分かりました。あれだけの美人揃いだからね。オークション形式で一番高く出した店に高く売りつけたそうです。」

 

ラスベガスの大手カジノ。表向きは堅実だが、裏ではマフィアと通じているらしく、しかも平民や没落した貴族の娘をバニーにして買い取り、更に売っているとか。裏ではナンバーズも輸入しているらしい。

 

「そんな連中だから、払い下げのグラスゴーくらいは持っていそうですね。」

 

「あたりです。」

 

「実力行使は危険…とはいえ、悠長に返せと言っている余裕もない。」

 

そんなことしている間に有紗達は売られてしまうし、とぼけられるのが関の山。いや、もうすでに…

 

「いえ、どうやらまだのようです。所謂その手の仕事にもまだつけておらず、仕事に入らせる日取りもつかんでいます。」

 

「よく、そんなところまでハッキングできますね……」

 

「機情の動きだって探れる私を舐めないで下さい。それに、機情に比べれば優しい相手です。」

 

それは確かにそうだ。

 

「で、私が来ても大丈夫なんですか?」

 

「念のため、変装した方が良いでしょう。」

 

 

 

有紗達はマフィアに拘束されていた。男達はこちらを舌なめずりする目で見てくる。前も感じた視線で、いつ見ても不愉快だ。

 

「あの第八皇子殿下の女達とは、随分と危ない買い物をしたものだな。」

 

「まあ、これはそれだけの価値のある上玉だ。今俺達が戴きたいくらいだ。」

 

「馬鹿、もう手つきだぞ。」

 

有紗は歯ぎしりしながらも、睨みつけて美水を首で指す。

 

「私達は良いけど、こっちの人だけは解放して。中華連邦の軍上層の娘で、ライル様のお客人です。ライル様の責任問題だけじゃすまなくなっても良いんですか?」

 

「イレヴンのくせに、我々に異議を唱えるか。」

 

まるで分かっていない。相手が中華連邦の軍上層部の娘ともなれば、ばれればライルの責任問題では済まされない。むしろ、皇族の客人と分かってて誘拐したこと自体も問題なのに。

 

「こいつら、分かってないのね…」

 

優衣が小声で毒づいた。

 

「この様子だと、私達の名誉の戸籍や軍籍も消されている可能性が高いわね。」

 

涼子が分析し、ノエルもうなずく。

 

「ええ、殿下のことだから気付いて容疑者を拷問するくらいしそうだけど。」

 

実際、それをやっていたのを知るのは後程だが。

 

 

 

「父がシェール様との間で私と殿下の婚約を既に取り付けているそうです。私も連れて行ってください。」

 

「駄目だ、相手はKMFを持っている。君まで守れる自信はない。」

 

こちらはただでさえ、大きなカジノの中から有紗達を見つけて連れて帰らなければならない。売買をしているのなら、買い取ってそのまま全てを暴露して合法的につぶせる。が、最悪の場合はKMF戦で先に物理的につぶすことも起こりうる。ライルは九割以上の確率で、後者になると予想していた。

 

「危なくなったらすぐに逃げますし、せめて買い取りに来た貴族の連れ役を。私なら、多分相手にも顔が割れていません。」

 

サラの申し出は作戦としても、個人的にもありがたい。何より、父の不正の告発に協力したいという意志が好ましかった。

 

「殿下、ここまで言っている以上は仕方ありません。」

 

フェリクスが耳打ちをして、相槌を入れる。

 

「それに、母君を完全につぶす意味でもこの状況は逆用できます。彼女の協力をもって、クラウザー家の処遇を婚約破棄に留めることで親戚筋と父親が二度と悪さを出来ないようにする意味でも。」

 

またも、もっともらしい政治的な理屈を並べてきた。親友のこういう部分は本当に助かるが、同時に腹も立つ。

 

「潰せれば、の話だろうな…」

 

「潰さないのですか?」

 

「冗談じゃない…これ以上横槍を入れられてたまるか。確固たる正義や理念があるだけ、奴らよりゼロの方が好ましいくらいだ。」

 

「では、決まりで。」

 

いつの間にか、決定に持っていかれた。本当にフェリクスはこちらに決定をさせるのが上手い。敵に回したら、もっと恐ろしいだろう。

 

ライルが知る限りで憎まれ役や汚れ役としての参謀をやらせれば、敵うのはシュナイゼルだけだ。このままいけば、シュナイゼルと張り合えるようになるのでは?ライルはそんな気がした。

 

 

 

 




ライルはもはや、母親の過干渉に我慢が限界を超えた幼児状態です。

でも、言っていることは間違っていないし軍としても正しい側面もある。

身内やシュナイゼル等の一部皇族以外全部母の手下というのは、小説版で僅かに覚えている、ルルーシュのブリタニア人=あの男の一味という同じ考えですね。

レイにとっても、当初は父以外の日本人はみんな死んじゃえ、母以外みんな死んじゃえ。

秀作は日本人全て死ね。リュウタも同じ。

幸也も良二も雛も限定的でもイレヴン死ね。

ライル軍は敵国人よりも同国人への敵意が強いメンバーばかりですね。特に若いナンバーズ系。この場合、周りの大人が頑迷で、その影響をもろに受けた連中への反感か……それとも大人が頑迷じゃなくて幼稚なのか。意見が分かれそうなところ

ブリタニアへの忠誠心は薄いが、テロリストへの敵意は並外れている。普通のブリタニア人士官なら、持て余してそうです。



サラは有紗達とは良い関係でいたいと父に言い続けていた。けど、父は血統や特権意識しか見ず、スザクと付き合いがあったということさえ忘れて自滅の道を進みます。

ちなみに、書いてないけど手引きした基地の奴らも処刑か終身刑、よくても数十年物の服役でしょう。実質軍の基地にテロリストを手引きしたんだから。
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