コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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バベルタワーみたいなシチュエーションです


BERSERK-44『潜入』

カジノへの潜入はクリスタルが先行していた。別の意味で悪い予感はするが、内側からという意味では潜入工作は基本だ。幕僚もグレイブの伝手で来てくれた情報部の軍人が何人か護衛として潜り込んでいる。

 

有紗達が売られたカジノは気に入ったバニーを買い取ることが可能で、スムーズに進めば買い取って早々に逃げる手はずだ。買い取ってしまえば、相手は文句を言えないし不正アクセスで戸籍などを抹消された件も母共々、主犯格を抑える準備はしている。ナンバーズや平民が相手と言う言い訳を相手が用意する以上は軍のデータベースへの不正アクセスで逮捕するのが一番無難だからだ。また、万が一に備えて余罪を洗ってもらっており、既に告発できる状態。あとは、こちらがどういう形でギロチンの刃を下ろすかだ。

 

 

 

日付を遡り……

 

「ライル・フェ・ブリタニア殿下でいらっしゃいますね?」

 

秒読み段階でやってきた来客にライルは内心で苛立っていた。何せ、待っていたかのように貴族の令嬢がやってくるのだ。

 

まさか、読まれて敵が先手を打った?実力行使の備えはしてあるが、どうなる?

 

やってきたのは赤紫のマントと『ラウンズ』とはやや違う白い制服の騎士だ。濃い目の紫の髪が特徴の美男子で、20代半ばに見える。だが、ライルは顔だけは知っていた。実年齢も三十代だ。

 

「まさか皇帝陛下が私的に抱える騎士団『セントガーデンズ』を率いるレイシェフ・ラウ・ヴァリエール卿がお越しになるとは思いませんでした。」

 

名門ヴァリエール公爵家の現当主。かつては『ナイトオブラウンズ』にも名を連ねていたが、ある事件をきっかけに辞退している。が、実力は折り紙付きでビスマルクがいなければ『ナイトオブワン』になっていたと帝国の騎士の誰もが評価する。

 

人格も高潔で、相手がナンバーズや平民でも公正に接して敵国からも一定の信用がある。何より、その美貌と存在感が貴婦人たちの間で人気を誇り、若くして未亡人となった貴族……或いは20近く年下の令嬢さえ心を奪われて結婚を申し込むほどだ。

 

これで独身なのが不思議だが、実際のところ彼は19歳で結婚どころか一人娘をもうけていた。が、問題はその相手。相手は屋敷のメイドで、両親の反対を押し切って結婚……仲睦まじい親子として知られていたが、屋敷がテロリストに襲われて妻エルザは死亡、娘も行方が分からなくなっていた。以来、彼に求婚する女が多かったが、彼自身は妻と娘への愛を貫いて、再婚をしていない。

 

出来過ぎだからな、黒幕は先代の当主夫妻だろう。

 

彼の両親は厳格だが、それ以上に自分勝手な人間だという。何しろ、妻の葬儀さえ済ませていないのに再婚相手を紹介するほどだ。外野から見ても、両親が妻子を殺したのは明白。本気でレイシェフに惚れて、彼の絶望を癒したいという女も多いだろうが全てが『両親の手先』に見えるのも無理はない。

 

僕と……いや、この場合僕が似ているというべきなのかな?

 

「殿下?」

 

「いえ、後ろのお二人はあなたが目をかけているという噂の若手騎士ですか?」

 

「ええ、クレス・ローウィングとアリア・フローベルです。」

 

赤い髪の美男子に、小柄な美少女だ。二人が一礼をして、ライルも返礼をしたのちに三人を座らせる。

 

「それで、どのようなご用件で?」

 

「殿下が妙な謀略に巻き込まれたという噂を耳にしまして、その真偽を確かめに伺いました。」

 

耳が早い……まあ、あれだけ派手に暴れれば気付くだろう。

 

「皇帝陛下の名代として手を引けと?だとしたら、これは私と私の部下達の問題。いかに皇帝陛下と言えど、騎士の専任と同じく干渉できることではありません。」

 

レイシェフは穏やかな笑み、いや冷たい笑みを浮かべながらクレスがもっていたトランクを開いた。その中に入っていたものを、ライルは良く知っていた。

 

「………なんの冗談ですか?」

 

「いえ、流石に見かねて。此度の敵は殿下のお力だけでは不足。ならばと、私が少しご助力をいたしたく。」

 

その助力がこれか……あまりにも強力すぎて、逆に怖い。これがルーカスなら気をよくしそうだが、ライルは逆に尻込みする。

 

「こんな怖いもの、使いたくありませんね。」

 

「ですが、皇帝陛下もお使いになるのを認めておられます。陛下は貴方をシュナイゼル殿下以上に評価しておられるようで。」

 

まさか、そんなことあるわけがない。先日の帰国の報告及び美水の一件どころか中華連邦でさえほとんど関心がなかった男だ。たかが息子の部下とメイドのことで介入するなど、どう考えても裏がある。

 

「それと、これの受け取り拒否は許しませんよ。皇帝陛下が絶対に受け取れと。」

 

そう来たか、皇帝の勅命とあってはこちらが断ることはできない。拒めば、処刑。なくとも収容所だ。

 

「……受け取っても、使うとは限りませんよ。」

 

「ええ、使いどころは殿下の御采配に任せるとのこと。」

 

要は使って勝とうが、使わずに勝とうが構わないということか。『虎穴に入らずんば虎子を得ず』というが、入るには闇が深すぎる穴だが…

 

「では、謹んで。と、言いたいところですが…」

 

 

 

レイシェフはライルとの謁見を済ませた後に、ビスマルクと紅茶を飲んでいた。

 

「殿下は受け取られたのだな?」

 

「陛下からの御勅命とあらば、拒否はできまい。」

 

最も、物が物であるためにライルは疑っていた。正式な皇帝の署名と捺印でもなければ信用できないと言われ、万が一にと用意した署名と捺印の文書を手渡した。かと思えば、同じものをもう一枚、こちらも保管しろと言ってきた。万が一にも公文書偽造の嫌疑をかけられた備えだ。そして、その文書は両者の正式な署名と捺印の書簡で別個に軍の機密文書として、保管させるほどだ。

 

「直情的なのは否めないが、鼻は本当に効く。嗅ぎつけられるのも時間の問題だ。」

 

普通なら、あれを渡されれば有頂天になる。だが、ライルはレイシェフだけでなく皇帝までも警戒していた。ゼロとシュナイゼルが目に見えてわかる脅威ならば、ライルは潜在的な脅威だ。

 

「同志にできればと考えたが、やはり一筋縄ではいかぬな。最悪の場合は…」

 

「やむをえまい。あの方は飼いならすには獰猛すぎる。」

 

貴族の特権意識は別にして、ライルは素直に飼いならされるタイプではない。下手な方法で機嫌を取れば逆に噛み殺される。既にエリア11であの内政省の不正を告発し、主犯の事務次官が処刑されており、昨年の反乱事件でも部下の暗殺を企てた将官達も失脚させられている。

 

「それで、殿下はあれをどう使うと思う?」

 

「ご本人は使うのを渋っておられるからな。いきなり使うことはないだろう。可能性としては、使わずに大半を片付ける。そして、使うとすればおそらくトドメの一撃を指す最後の一手として温存しておくだろう。絶対に逃げられないようなチェックメイトをかけるために。」

 

「殿下はポーカーを好んでおられる。この場合はロイヤルストレートフラッシュか5カードと言ったところか。」

 

 

 

日付を戻し、ライルはかつらと眼鏡で変装して潜入した。協力を申し出たサラは一般客に紛れ込む形で潜入し、部下達が警護に就いている。

 

当初はヴェルドとコローレがライルの随行役と考えたが、今二人は会社経営に多少なりと関わっているが基本は庶民生活。警護役を着けるのは不自然で、ライルは若手貴族の友人役として潜っていた。

 

これはフェリクスとライルが考えたアイデアで、部下達の多くは反論したが…

 

「日本にも、家臣が主君を殴りつけることで敵の見張りを掻い潜ったという演目があります。普通は、主君が家臣の下役を演じるなど誰も考えないでしょう。」

 

「主従の固定観念の盲点を突く、か。相手がシュナイゼル殿下のレベルでもない限り、成功の眼はあるな。」

 

部下達の反論に長野が意見し、ゲイリーも同調する。実際、相手は所詮貴族の恩恵にあずかるマフィアとその下請けに等しいカジノ……普通でもいいが、念には念を入れた方が良いとライルもその提案を通す気でいたため、部下達も同意した。

 

「いやな空気だ…」

 

「言うなって。」

 

煌びやかだが、そこかしこに自らの財力や権力をアピールしたいような装飾がある。別にオーナーやどこかの貴族の彫像があるわけではない。ただ、やはりと言うべきか皇帝の肖像画、と言ってもどこかのレプリカだろうが展示はしてあった。

 

「こういうのを成金趣味って言うんだろうな。あの女に似ている気がする。」

 

そう思ってうろついていると、たしかにブリタニア人ではない人種のバニーがいる。よくもナンバーズを本国に入れたものだ。スザクや『フォーリン・ナイツ』のような例外でもなければ不可能だろうに。

 

「いったい、どういう賄賂を本国の入国管理課に渡したのやら。」

 

「ろくでもないものなのは間違いないでしょうね。さ、分かれてお姫様達を探しましょう。」

 

コローレに言われるまでもなく、探すのは決まっている。先行した部下達からの連絡はまだないから見つかっていないのだろう。

 

「先に見つけたのをいいことに、なんてするなよ?」

 

「んな、死にに行くようなことするか。つうか、あんたのお姫様に手ぇ出す度胸はないから。」

 

「…それは信じるが、遊び過ぎて本来の目的を忘れれば本当に処刑すると思えよ。」

 

「それも大丈夫ですから。殿下こそ、プライドが邪魔にならないように。」

 

「っ、分かっている。プライドより有紗を取るよ。」

 

三人は解散した。ライルはできるだけ周りに怪しまれない程度で店内を歩き回り、見覚えのある顔を探す。情報通りならば、有紗達は今日からここに入る。今日を逃せば、チャンスは永遠に失われる。

 

何とか冷静になるが、そこへ……見覚えのある顔が映った。

 

「え、『ユーロ・ブリタニア』の?」

 

今見つけた、バニーを見つけると……

 

「リーザ・フォン・ノイエンドルフ?」

 

「…え、その声……ライル殿下?」

 

青紫に胸からへそまでスリットが入ったスーツを着たのはパリで出会った『ユーロ・ブリタニア』貴族の令嬢リーザ・フォン・ノイエンドルフだった。

 

「な、なんで君がここに?」

 

「そ、それが…」

 

 

 

本国へ帰国した後、いきなりノイエンドルフ家の財産を差し押さえるなどと言う通達が来た。いくらノイエンドルフ家でも支払いきれない額で、ならばとその役人達は娘で支払えと言ってきた。有無を言わせずにリーザを拉致した上に、両親も祖父母も銃を突きつけられた上に使用人の一人が撃ち殺されてしまった。そして、負債を返すためにとこのカジノのバニーをやらされる羽目になった。

 

「身に覚えがないんだな?」

 

「はい…」

 

「そうか……まさか、とは思うが。」

 

「殿下?」

 

「なんでもない…少し、いやな思いをさせるぞ。」

 

ライルが突然リーザの手首をつかんで、カジノの警備員に声をかける。

 

「失礼、この子を気に入ったので買い取らせていただけますか?」

 

「おお、それは新人でしかも没落したとはいえ貴族なんですよ。値は張りますよ?」

 

「ええ、覚悟しています。それだけの価値はあるでしょう。」

 

え、私を?買う?

 

カジノのバニーにパーティーでちらりと見かけたライルの部下そっくりの女性もいた。まさか、とは思ったがここにライルがいるということはもはや疑いようがない。手錠と首輪をつけられ、リーザはライルに連れられる。

 

「すまない、抜け出すまで合わせてくれ。」

 

ちらりとライルの顔を見ると、苛立っていた。良心の呵責と…何かを傷つけられたような、そんな顔。リーザは状況を忘れ、見とれてしまった。

 

 

 

ライルは思わぬところで知り合いを見つけ、流石に見て見ぬふりはできぬとリーザを助けたが他はなかなか見つからない。と思ったところで

 

「お飲み物はいかがでしょう?」

 

聞き覚えのある声がした。声をかけてきたのは、クリスタルだ。ワインレッドのバニースーツで、サイズがあっていないのか前より大きくなった胸がこぼれそうな様相。まさか、狙っていた?いずれにしても肌を合わせた女のこんな格好をこれ以上さらしたくないライルは手首をつかんだ。

 

「飲み物よりも、味わい甲斐のある物を持っているじゃないか。」

 

自分で言っていた腹が立つが、強調されたクリスタルの二つの果実を見下ろしながら下品な口調をまねする。

 

「い、いや…!」

 

「拒否権なんかないよ。」

 

そして…

 

「見つかったのか?」

 

「何度か見つけて発信器を…」

 

流石だ。クリスタルも買い取り、有紗達の発信機を端末で探る。

すると…

 

「一か所に固まっている?」

 

まさか、既に買い取られた?

 

「一緒に来てくれ。」

 

すぐに発信器の位置まで行こうとしたところで、またもぶつかった。

 

「失礼。…エ、エレーナ・ガルデニア?君まで…!」

 

「いえ、申し訳ございま…ライル様?」

 

エリア24成立後も『ユーロ・ブリタニア』と本国の計らいでエリア間の慰問ダンスを許可された現ナンバーズ系でスザクを除けば特例中の特例である彼女が何故?本国の中規模劇場で皇族や大貴族相手の公演なら説得力があるのに。

 

「ほほう、これはこれは……凄いね。まさか今日だけでこれほどの上玉をこんなに。赤字だが、これだけあれば赤字にしても文句はないな。」

 

派手な指輪や腕時計の、成金と言わんばかりの男がエレーナの髪を掴んでその体を嘗め回すように見る。あの事務次官やルーカスと同類だとライルは本能で察した。そして、そいつの後ろに……

 

有紗…優衣と涼子、ノエル!美水まで…!!

 

更にはセルフィーまで捕まっていた。ここまで顔見知りがそろうとは、流石にライルも想像だにしていなかった。おそらく、天文学的な確率だろう。

 

すぐにでもこいつを殴り倒して、取り返したい。が、ここで騒ぎを起こせば面倒なことになる。ライルは必死に自分を抑え…

 

「今、そちらと会話をしていたのですが…邪魔しないでいただけますか?」

 

「なんだね、君は…ほう。そちらも極上だな。この娘達と合わせて百万ポンド、いや二百万払っても惜しくないな。」

 

「……飽きれば、捨てるくせに。」

 

「誰だか知らぬが、君もそうではないのかな?」

 

同類扱いされ、腸が煮えくり返るが何とかこらえる。

 

「自分が気に入った女に対しては気の済むところまで責任は取るのがポリシーです。身体だけいただいて、飽きれば捨てる男よりは虫一匹分はマシでしょう?」

 

 

 

ヴェルドはライルの連絡で発信器のポイントへ向かうと…年輩の男が有紗達を手錠と首輪で買い取っているのが見えた。全員が見事な肢体を強調したバニーになって、あれは男なら食いつく。特に銀髪の女性はクリスタル以上に豊満な肢体で、とびぬけた美女だ。あれは十年ほど楽しめそうだが……

 

よりにもよってとんでもねえのが出てきやがった。

 

あいつはよく知っている。裏では名の通ったポーカーの達人でしかも好色家でもある。奴にとって、有紗達はまさに極上の美酒だ。

 

アレと有紗ちゃん達じゃあ美女と野獣にすらならねえ……つうか、面倒なことになる。

 

ヴェルドは前もって、待機していたフェリクス達に連絡を入れた。

 

 

 

「君は私が誰なのかを知っているのかね?」

 

「さあ、若輩の私には豪勢な指輪や宝石の価値も分かりません。」

 

とにかく、徹底的に挑発してやる。クリスタルとリーザには悪いが、この際二人には餌になってもらうしかない。

 

「価値が分からないのなら、そちらの女も君には勿体なすぎる。」

 

「だから、よこせと?すでに私が買い取っているのですが?」

 

男はわざとらしく顎に指を当ててうなる。

 

「では、カジノらしくポーカーで決めようではないか。君が勝てば、私が買った女を全て君にあげて、私は引き下がる。君が負ければ、その女を私が全てもらう。どうだね?」

 

やはり、そう来たか。相当なポーカーの達人であることは間違いない。だが、これは好都合だ。どう転んでも、最後の手段に持っていくことはできる。

 

そうでなくても、ここで引き下がればもう二度とチャンスは巡ってこない。流石は本職のギャンブラー。こちらが引き下がれないように誘導してきた。

 

 

 

有紗は声と口調で目の前の相手がライルだと気付いた。優衣達も似たような様子だ。

 

ライル様…私達を助けるために?

 

いくらなんでも無茶だ。助けに来てほしい、と願ったが本当に来るなんて。

 

こんな状況なのに、有紗の胸は高鳴っていた。

 

私、もうこの人以外……

 

横を見ると、美水までがライルを見て顔を赤くしている。

 

嘘、ここにもライバルが…

 

でも、この人も結婚相手として申し分ない。中華連邦でクーデターが起こらなければ結婚できただろう。

 

有紗は僅かに問題なく結婚出来るレイや美水に嫉妬した。が、すぐにそれを振り払う。今はそれどころではない。

 

 

 

フェリクスは先行してブラックジャックで取ったチップを換金し、50万ポンドは稼いだ。ほぼ勘だが、意外と当たる。そう考えていた時…ヴェルドから通信が来た。

 

〈お姫様達を発見、よりにもよって裏じゃ結構有名なポーカーの達人と遭遇。〉

 

呆れた…とんでもない大物に勝負を挑むのか。

 

「大変ですね、ウチのジョーカーは。」

 

全く、何回こんな騒動に巻き込まれているのか分かった物ではない。

 

〈まあ、おかげでこっちのダイヤのクイーンに目をつけてきやがった。しかも、どうやら山札のクイーンまで連れてこられたらしい。〉

 

つまり、ここのバニーに知り合いがいて助ける相手が増えるということだ。全く、あの人は本当に厄介ごとに巻き込まれやすい体質のようだ。

 

「では、こっちは万一に備えておきますね。あれは持っているんですよね?」

 

〈ああ、二つともね。使わなきゃいいだろうが、多分相手はそれを使わせるだろうな。〉

 

「こういう場合、奥の手は多い方が良いんですよね。」

 

 

 

ポーカーは一対一を別のブースでやることになった。待機中のディーラーを一人呼んで、配ってもらった。チップは幸いにもヴェルドとコローレから分けてもらった分がある。総どりしたら勝負は決まるため、お互いに最初からチップを多く賭けていた。

 

スタイルは家庭でも知られるファイブカードドロー。単純だからこそ、駆け引きが要求される。

 

勝負はライルがやや優勢だった。相手は流石に場数を踏んでいて、ライルの役を読んでくる。だが、ライルも相手の手が読めていた。

 

腹の探り合いが得意ではないライルだが、ポーカーやチェスに限れば自分よりはるかに強い相手を二人知っている。その二人に比べれば、この男は雑魚だ。

 

「中々やるね、本当に素人かね?」

 

「さあ…」

 

相手は随分と苛立って見える。二十歳前後の若造に苦戦していることでプライドを傷つけられたか?

 

兄の方はどんなに苦しい状況でも表情を崩さない。だから強い。弟はやや顔に出やすいが、それでも負けないという執念を幼いながらに感じた。だが、この男にあるのはただの虚栄心と欲望だ。

 

そして、徐々にライルが押してきて…

 

「ロイヤルストレートフラッシュ。どうやら、私の勝ちのようだね。」

 

「……残念ながら、私もロイヤルストレートフラッシュです。ただし、同じ役なら貴方は♦、私は♡。♡は二番目に強い、私の勝ちです。これで、完全にバストアウトですね。」

 

相手はうなだれた。若造に負けたのがよほどショックだったようだ。

 

「では、勝負は勝負です。彼女達は私が譲り受けることで…」

 

「いやあ、参ったよ。まさかこれほどまでに上手いイカサマを仕掛けてくるなんて。」

 

「……どうやって、イカサマを?」

 

だが、相手はまるで証拠があるかのようにほくそ笑んでいる。いや、この場合は……

 

「証拠など、この私が言えばどうとでもなるのだよ。」

 

「な、でっちあげ?」

 

優衣が意図を口にした。

 

「最低…」

 

エレーナが絶句し、セルフィーも「ゲス」と小声で罵った。

 

「ふん、白馬の王子様を気取った坊やに社会の常識を教えてあげるのだよ。さあ、君の反則負けだ。その女達も私の物だ。」

 

黒服たちがクリスタルとリーザの豊満な肢体を嘗め回すように見ながら近づく。だが、

 

「く、くく…くひひひひ……ひひゃはははは。」

 

ライルはもはや、笑うしかなかった。

 

「おや、気でも狂ったかね?可哀そうに。」

 

「いいえ…あまりにも予想通りの展開過ぎて、もう笑うしかないんです。」

 

本当に予想通り過ぎる……このような手で面子を守る手段は確かにあるが、これでは只の恥の上塗りみたいなものだ。なりふり構わない、とも言うが………

 

「なりふり構わないなら、こちらも。」

 

ライルは懐から出したリモコンのスイッチを押す。次の瞬間、店内が振動に襲われ、同時に…

 

「テロだ!主義者勢力のテロだ!!」

 

外にいる仲間がわざと大声で叫んだ。振動の直後にこの叫び、誰もがそれを信じて店はパニックになる。

 

そして…

 

「優衣!涼子!思いっきりやれ!!」

 

唖然としていた優衣と涼子だが、ライルに言われて気付き…自分達を拘束していた黒服の足にヒールのかかとを叩きこんだ。完全にかかとが突き刺さり、相手は膝をつく。あれは痛い。

 

そして、ストリートで荒事をしてきたエレーナとセルフィーも意図を察したのか、ボスの鳩尾にヒールを叩きこんだ。

 

護衛の他の黒服が銃を向けるが、有紗が中身の入ったワインボトルで殴り、ノエルも膝蹴りを叩きこんだ。黒服はそのまま気絶するが、銃が暴発して余計パニックになる。

この様子を見たオーナーは逃げようとするが、クリスタルが蹴とばして転ばせた。

 

「おぉっと!あんたは逃がさないぜ、おっさん!!」

 

ヴェルドとコローレが合流し、フェリクスも遅れてやってきた。

 

「あ、あなた方は…ホーネット兄弟。」

 

「おお、我らをご存知で。でも、もっと怖いのを既に敵にしてますよ?」

 

もう変装は不要だろう。ライルは眼鏡とカツラを取り去った。

 

「ブリタニア第八皇子ライル・フェ・ブリタニア……皇族嗜虐未遂の現行犯で貴様らを逮捕する。更に、私の臣下達を誘拐した罪も付け加えさせてもらおう。」

 

「だ、第八皇子殿下?」

 

流石にマフィアのボスも青ざめてしまい、黒服たちも恐れをなした。オーナーに至っては……

 

「あ、こ、これは第八皇子殿下!そ、そこの女共は当店が仕入れた」

 

「ああ、知っているよ。私の部下とメイドだからね。」

 

「………え?」

 

「なぜか軍籍や戸籍を抹消されて、ここに連れてこられた。」

 

ライルが事実だけを告げる。

 

「ああ、とぼけても無駄ですよ。既に仕入れ先は突き止めていますから。」

 

「せっかくのダイナマイトバディのバニーが沢山だけど、全部ウチの大将専用なの。」

 

「あまり邪な目で見てると、我々のお叱りなど比べ物にならない地獄…もう確定か。」

 

フェリクスが相槌を入れて、更にヴェルドとコローレも追い打ちをかけて逃げられなくする。そして、ボスの方も……

 

「で、殿下!実はまだ手を付けていない女がいるのです!殿下と釣り合いの取れる年ごろです。どうでしょう、先程の非礼はお詫びいたしますし控えの女達も全て殿下に差し上げます!だから…」

 

これ以上は聞いていられなくなり、ライルが殴ろうとしたら別の誰かが殴り倒した。

 

「この野郎、よくも姉さん達を!って、なんであんたが?」

 

「ヴァル…やっぱり君もいたのか。」

 

ヴァレンティン・ガルデニア……エリア24の人気ダンサーの長男だ。服からして、警備かディーラー…いや、男娼兼任か?

 

「よくここが分かったね。」

 

「姉さん達が連れていかれるのが見えたからな……どうしようかと思ったら、この騒ぎだ。で、殴り込んだらお前がいた。」

 

なるほど、しかしここは本国。逃げ出せても後がなかったはずだ。

 

「しかし、勢い任せでやったが考えなしだったな。エリア24じゃなくてここは本国なのを忘れてた。まあ、お前がいたのは運がよかったな。」

 

「そうだね……さて、オーナー。こちらの銀髪の女性二人はエリア24の植民地政策に協力している資産家の御息女、そちらの東洋人は中華連邦軍幹部の令嬢、覚悟はしてもらいますよ?」

 

「あ、あああ…お、お許しを。」

 

「無理だね、こうなった殿下はもう止められない。」

 

「諦めな……喧嘩を売った相手が悪すぎる。」

 

ホーネット兄弟がとどめを刺し、完全にオーナーは膝をついた。

 

「さて、こいつらは頼めるか?逃げられないように足を撃ってもいい。」

 

「ったく、容赦ねえ。ま、さっさとずらかった方が良いな。」

 

「さて、彼女達の首輪と手錠のカギは?こういう場合、オーナーがマスターキーの類を持っているでしょう?」

 

案の定、鍵はオーナーが持っていた。ここにいる全員の首輪を外すまたは手錠を銃で撃ちぬいた。

 

「ライル様!」

 

優衣が真っ先に抱き着き、巨大な果実を押し付ける。既に何度も素肌でふれあいながらも、薄布越しの見事な感触に酔いそうになるが、今はそれを振り払う。

 

「優衣、後にしてくれ。ゲイリー達も待機させている。」

 

しかし、こうしてみると全員何とも言えない扇情的な格好だ。セルフィーは浅海と同じくスレンダーだが、胸はちゃんと出ているし腰も細い。エレーナは言うまでもなく、優衣やノエルもそそられるほどの豊満な身体だ。ここが娼館ならば人気上位を争っていた、などと邪な考えがよぎってしまった。

 

「で、どうやって逃げます?店はパニックです。正面口からは逃げられません。」

 

「……フェリクス、別れて逃げよう。どうせこいつらのことだ。私達を殺して有耶無耶にする可能性は高い。」

 

「賛成です、殿下。………それと、本命のお姫様を守る役はあげるからちゃんと逃げきること。」

 

「分かってるよ……難儀な宿題だけどね。」

 

既にサラは他の幕僚達が連れて退避させている。しかも、オーナー以外の幹部は完全にサラをこちら側だと思い、油断していたらしく抑えている。自分から勝手にサラがライルの部下達を回してくれたと吐いてくれた。

 

「さて、離れないようにね。」

 

 

 

 




バベルタワーのルルーシュみたいになりました。そして、攫われた有紗達やリーザ、エレーナという知り合いまでいるというとんでもない巡り合わせ。

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