コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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文字通り、カジノと腐敗貴族共への逆襲です


BERSERK-45『逆襲』

四つに分かれて逃げた。既にグレイブも呼んでおり、保険を掛けてある。あとは所定地点に移動するだけ。流石にパニックになっているだけあり、移動は困難だがこれでは相手が見つけるのも困難。

 

このまま逃げてしまおうと思われた時、KMFが現れた。ナイトポリス、となれば警察の協力者がいる。と思われたが絶句した。なんとサザーランドとグロースターまであった。しかも、全機対人機関銃を装備している。

 

〈いたぞ、あの男だ!商品ごと撃て!!〉

 

「有紗!」

 

有紗を抱きかかえ、ライルは全力で走る。途中でポーカーテーブルやスロットを影にして的をそらすが、やはり相手はKMF。このままでは殺される。

 

〈殿下、今そちらにKMFを降ろします。〉

 

連絡が入るや否や、天井を壊して『フォーリン・ナイツ』のグロースターとヴィンセントがやってきた。長野と幸也だ。

 

〈VTOLからベディヴィエールを降下させます。早く!〉

 

幸也が言った通り、ベディヴィエールが下りてきた。だが、こちらからは遠い。長野と幸也が盾で時間を稼いでいるが走って乗り移るのは危険だし、下手をすれば有紗が撃たれてしまう。

 

ならば、手は一つ。起動キーのスイッチを押してベディヴィエールをこちらに呼んだ。ランスロットやヴェルキンゲトリクスで搭載された機能だが、こういう時には役に立つ。ベディヴィエールが主と信頼関係を築いた馬のごとくライルの目の前に留まり、有紗を抱えて乗り込む。

 

「君はシートの後ろに。」

 

「はい。」

 

有紗がシートの後ろに回り、ライルはベディヴィエールを起動させる。ナイトポリスが起動に気づいてライフルを向けるが、左腕のシールドを展開して弾を防ぐ。同時に反対の腕のクローハーケンでライフルを破壊する。そのまま走り出し、コクピットにクローを叩きこんでパイロットを殺した。

 

ちっ!有紗の前でまたやらせて!!

 

血の突いたクローを引き抜き、更にベディヴィエールをジャンプさせてサザーランドを今度はその着地でコクピットを中の人間ごと踏みつぶした。

 

そして、そのまま飛び出していった。派手なKMFで動き回ったことで相手もこちらに注目するが、今度はライル軍のサザーランドが買収された機体を撃破して脱出の援護を行う。

 

〈♠キングよりジョーカー。クイーンたちの安全確保に成功しました。ジャックも全員退避、後はそちらのクイーンのみです。〉

 

ゲイリーだ。どうやら、全員が脱出に成功したようだ。となれば、長居は無用だ。撤退を指示し、合流したサザーランドが煙幕弾を発射する。催涙ガスだが、KMFで撃てばこの店内を十五分は無力化できる。

 

その間にライルはベディヴィエールで壁を破って脱出、権限を使い、借り切っていたビル内に待機していたトレーラーに駆け込んだ。

 

「よう、お帰り。ビリだぜ。」

 

「店が予想より怖い番犬を飼っていたんだ。」

 

有紗を抱えてタラップで降りたライルをヴェルドが軽く毒づき、ライルも返す。

 

「有紗……」

 

バニー姿の有紗は扇情的だった。これがもし、あのバベルタワーみたいな場所なら絶対に狙われていただろう。冗談じゃない。

 

ライルは有紗をきつく抱きしめた。

 

「すまない……また油断して、君をこんな目に。」

 

「ライル、様…大丈夫です。また、助けに来てくれたから…」

 

有紗も背中に腕を回し、二人の間に安らいだ時が流れる。

 

「殿下、後にしてください。奴ら完全に暴走しています。」

 

フェリクスが傍受した通信をこちらに回してくると、案の定暴走状態の敵の通信が聞こえる。

 

〈政府に感づかれた!〉

 

〈どこのどいつだ!〉

 

〈客ごとやっちまうか!?〉

 

〈馬鹿、敵の正体も分からないのにそんなことするな!!〉

 

酷いものだ。流石にマフィアと軍隊では練度に差がある。それにしても……

 

「こいつらにはドロス・ファミリーのような臣民更生プログラムは適用したくない。まあ、する気もさせる気もない。」

 

「言うと思いましたよ。まあ、ナンバーズの不法入国に外国要人並びに植民地政策協力者親族の拉致、そして皇族弑逆未遂。無理ですよ。」

 

「あんな連中に適用するくらいなら、ナンバーズ向けのプログラム導入をしたい。就学助成プログラムもね。」

 

「そういう文句は、それの適用対象外の連中を始末して来てから。」

 

雛も軍服のままローレンスに乗り込んだ。といっても、今回武器はサザーランドと同じライフルでハドロンバズーカはあくまでシールドとしての運用。指揮所防衛に専念する手はずだ。

 

「ほら、行ってきてよ。お姫様達のとんでもない恰好を晒されて怒ってるんでしょ?愛の巣に行くリムジン守ってあげるから、さっさと行ってきなさいって。」

 

「ああ、言われるまでもない。」

 

改めて、ライルは有紗を見て…

 

「有紗、すまないがもう一度行ってくる。」

 

「……はい、お待ちしています。ですが。」

 

有紗はライルの唇に自分の唇を重ね、豊かな胸を密着させるように抱き着いた。

 

「今は、これだけで。」

 

「ずるい!私にもやらせて!!」

 

「後にしなさい、レイとクリスタルも我慢してるんだから。お帰りなさいのキス一番乗りを狙う。」

 

バニーのまま優衣と涼子がいつものやり取りをしているのを見て、ライルは微笑した。

 

……ああ、有紗だけじゃない。優衣も今の僕に必要なんだ。

 

ヴェルドとコローレとのくだらないやり取りもだが、自分にとって大事なものだ。絶対に失いたくない。あの女はこれを奪おうとしたんだ。

 

ライルは怒りを改めて実感し、ベディヴィエールに乗り込んだ。

 

 

 

KMFに乗り込んだライルの姿にリーザは胸がまた高鳴った。最初に会った時、整った顔立ちに目を奪われた。今までの貴族はクォーターを理由にイレヴンと見下してくるような態度だった。挙げ句に祖父をイレヴンに誑かされた、更には祖母が金目当てで口説いたなどと侮辱した。ノイエンドルフ家よりも規模が小さい貴族までもが純血であるという理由だけで威張る。

 

それならば、なぜ外国人それも現政権で後からナンバーズになった人との結婚など許すのだ?こうなることが最初から分かっていたのか、と祖父や母が先方に問うと相手は押し黙ってしまった。

 

それでも、リーザも自分の顔と体型に群がる男には辟易して、只一晩それを味わうために見え透いた口上を並べる貴族にうんざりした。そんなのと結婚するくらいなら、母の遠縁の子供を養子にして家督を継がせる方が良いと思うくらいだ。

 

カジノのバニーにされ、それさえ叶わず家も自分も終わりと思われたところでライルに救われた。本人にとっては、偶然知り合いを見つけて本来助けるべきメイド達を助ける成り行きかもしれないが……

 

私、この人のこと………

 

 

 

エレーナはパリの講和パーティーと公演から戻った後、突然本国での特別講演を申し入れられた。相手は本国の大貴族で断ることもできず、三人だけで本国へ向かった。ところが、到着した途端に軍に捕らえられてこのカジノに連れてこられた。セルフィーはエレーナと同じくカジノのバニー、弟のヴァルは安い警備兼男娼が決まっていた。はめられたのだ。

 

「こんなことなら、無理にでもライル様にあげればよかった……」

 

いくらライルでも、こんな本国のカジノに来るわけがない。きっと、父も総督に何を言っても相手にされず、搾取され続ける。E.U.の革命政府に勝る腐敗した政権はない、と思っていたがブリタニア本国も同じくらい腐敗していた。もう、終わりだ。

 

そう思いながら、極力目を着けられないように動いていたところで一人の男にぶつかった。その声を聴いて、よく似た他人だと思ったら……会いたいと思っていた人だった。

 

うそ………会えた。

 

呆然としている時、髪を掴まれていかにも成金という男に捕まった。しかし、ライルは自分の部下やメイドと一緒にエレーナを連れ出した。

 

最初は相手のルールに乗ってポーカーで勝ったが、相手が権力乱用に出たら自分はそれ以上の力で跳ね返し、協力企業の親族というさほど無理のない理由も活用し、オーナーも捕らえた。

 

少なくとも、今回のは最後の手だったのが分かる。こんな強引な手まで用意して、部下を救おうと形振り構わないライルの姿にエレーナの心は……

 

もう、実感してしまった。私、エリア24で会った時から……

 

 

 

張 美水は絶望した。あの後、ライルが用意した官舎へ行こうとした途端に基地の兵士に誘拐されて、有紗達と共にここへ連れてこられた。有紗達は美水だけでも解放するように訴えたが、相手は目先の利益しか映らないのか聞く耳を持たなかった。

 

どうせ戦争が確定した国の女だから、ライル殿下が諦めると思ったのね。

 

もう、中華連邦に戻ることはできない。このまま、どこかの貴族に買い取られて夜の相手をさせられ、飽きたら捨てられて野垂れ死にする。

 

絶望に打ちのめされ、髪を掴まれた。

 

「ほう、東洋人…イレヴン、いや中華連邦?いずれにしても、これは上玉だ。」

 

「流石にお目が高いですな。さる筋を経由して中華連邦から仕入れたものです。」

 

ああ、終わった。髪を掴んだのは四、五十代の男だ。貴族かもしれないが、それ以上になり金と言わんばかり。まるで大宦官の手下の腐敗軍人みたいだ。

 

だが、ライル・フェ・ブリタニアが来ていた。有紗達を助けに来たのは明白だ。この状況下、美水の眼にはライルが西洋の絵本に出てくる白馬の王子様に見えた。

 

宝石と権力で太った大宦官の手先の男達と全く違う。オブザーバーとして側で見てきた美水には、彼の心はまさに青天の空…もしくは幼児のように純真に見えた。今まで出会った男と真逆………そして、純真ゆえの葛藤。

 

彼の側で支えたい……考えてはいけないことなのに、父も四川も中華連邦さえ投げ出したいと考える自分がいた。

 

 

 

ベディヴィエールで再度発進したライルはモニターをチェックする。IFFを外されたKMFの反応がいくつか見られる。が、機種だけは特定されている。グラスゴー、サザーランド、ナイトポリスまでは想定内だが……

 

「ヴィンセントまで!」

 

まだ皇族の親衛隊以外に『ラウンズ』の直属や一部のエース部隊用の機体としての運用が主のグロースター、更に配備数が少ないヴィンセントまで。

 

一体、どこの誰が横流ししたのか。いや、あの女と接点のある将軍が横流ししたのだろう。だが、扱いの難しいヴィンセントを素人に毛が生えた程度のマフィアのパイロットが扱えるとは思えない。

 

となれば、現役の軍人が乗っている可能性が高い。少なくとも、グロースターとヴィンセントはパイロットを生け捕りにせねば。

 

「ジョーカーよりディーラーへ、敵のカードにイカサマを確認した。追加ドローを要請する。」

 

〈こちらディーラー、了解しました。〉

 

今回、市街戦でハドロン砲を使うわけにはいかない。ならば、背中のカルンウェナンでやるしかない。信号の方向へ進むと、早速サザーランドを二機発見した。敵もこちらを視認してライフルを構えるが、遅い。一機のコクピットをカルンウェナンで貫き、もう一機はゼロ距離からハーケンを発射して中のパイロットをミンチにする。

 

次にグロースターとナイトポリスを発見した。ナイトポリスはハーケンを使うまでもなく、フロートで飛んだ状態で急降下。コクピットブロックを踏み潰し、グロースターはブレイドハーケンで足と腕を破壊した。コクピットブロックが射出されるが、それより先に捕まえてハッチを下向きにして道路にたたきつけた。重傷だろうが、これで中に閉じ込めることには成功した。

 

その調子でKMFを無力化し、最後の一機がヴィンセントだ。流石にヴィンセントは速い。自分も乗っていたからそのスペックの高さがよくわかる。しかも乗りこなせている辺り、腕の立つパイロットなのはわかる。

 

「全く、才能の使い方を間違えている!!」

 

カルンウェナンを二本抜き、ヴィンセントに接近する。敵もMVSを抜き、ランスモードでこちらから間合いを取った攻撃をしてくる。だが、ベディヴィエールは急速ターンでかわし、相手の攻撃は空を切る。そのまま肉薄してMVSを持った腕を切断し、膝蹴りで転倒。そのまま後ろへ回ってコクピットブロックを強引に引き抜き、制御を喪ったヴィンセントは爆散した。

 

そして、

 

「さて……今、私は腸が煮えくり返っていてね。死にたくなければ、正直に全部話した方が良いぞ?」

 

接触回線で相手が息をのむのが聞こえた。

 

〈お、お許しください!お助けください!〉

 

「じゃあ、全部正直に吐くんだな?」

 

〈は、はい!知っていることはすべて話します!どうか、命だけは!!〉

 

「では、今この場で尋問を行う……ああ、言っておくが少し高めの高度でな。少しでも誤魔化そうとすれば、真っ逆さまだぞ?」

 

本当にベディヴィエールはビル20階ほどの高さまで飛んでいる。ここからわざとコクピットブロックを落とせば、中の人間は木っ端みじんだ。

 

流石にパイロットもはったりだと思わなかったのか、知っていること全てをべらべらとしゃべってくれた。死の恐怖ほど、生物を圧するものはないだろう。ライルも、あの反乱でそういう恐怖があった。だから、一思いに死ねるのを期待したのだから。

 

「では、約束通り命は助けてやる。ただし…後で嘘偽りがばれれば分かっているな?今の私はそれだけ頭にきているんだ。」

 

〈ほ、本当に知っていることは全て話しました!もう、これ以上は何も知りません!!証拠も提供します!!〉

 

完全にパニックになっている。これ以上は揺さぶっても何も出てこないだろう。約束通り、ライルはコクピットブロックを指揮所へ持って帰り、乗っていたパイロットを拘束した。

 

 

 

「あ、じ、地面に足がついてる。」

 

ヴィンセントのパイロットは顔をぐしゃぐしゃにして完全に腰を抜かしており、歩くのもおぼつかない。

 

「殿下、やり過ぎです。あれは再起不能……といっても、マフィアと組んでいたなら同じか。」

 

コローレが言うように、どのみちマフィアとの癒着は既に洗いざらい吐かせている。不本意ではあるが、こういう時に皇族の特権が役に立つのは皮肉だ。他のKMFのパイロットも生存者は全て逮捕、ライルが睨んだ通り中には現役の警官や騎士もいた。何年か前に『シャドウ・ヴェノム』というグループが汚職貴族達を一掃していたが、やはり別の汚職貴族が出てきていたようだ。

 

「おのれ、ナンバーズ共!貴様らが我らブリタニアの栄光をごぶ!!」

 

店内にいた貴族の中にも共犯者がいて、捕えられて喚いている。そこに秀作が言い終えるより先に鳩尾に膝蹴りを入れた。

 

「うるさい……今無性に腹が立ってるんだ。弱い犬は引っ込んでろ。」

 

「弱い、犬だと?実力もないくせに祖父の威光で殿下に取り立てていただき、将軍に取り入った貴様は皇女殿下も誑かした!この卑怯者が!」

 

「あんたらがそれ言う?マフィアとつるんで、せこい商売してた自分を棚に上げて。」

 

雛が嘲笑と呆れが混じったような眼で公職の男達を睨む。そして、雛に同調するようにゲイリーもうなずいた。

 

「我らは強者たるブリタニアだ!弱者のナンバーズごときに後れを取るはずがない!!」

 

雛の言っていることの意味がまるで分かっていないようだ。強者至上主義が自分達にだけ都合のいいように働くものだと勘違いしているのではないか?

 

「殿下、討論するだけ無駄です。」

 

「分かっている……」

 

「殿下!貴方はこのナンバーズ共に唆されているのです!こんな劣等種共よりもはるかに良い女を我々がぼぉ!!」

 

今度はデビーが顔面にパンチを叩きこんだ。

 

「彼女達が劣等種なら、それに連行されるお前達は超劣等種だな。『フォーリン・ナイツ』と名誉部隊、細やかな仕返しだ。連れていけ。」

 

「イエス・マイ・ロード!」

 

命令通り、名誉ブリタニア人達が犯人を一斉に捕らえ、改めて連行する。

 

「ナンバーズ共が!我らを誰だと思っているのだ!?」

 

貴族達が家柄を笠に着るが、こんな状況で喚かれても何も響かない。

 

「悪党。」

 

「皇族弑逆未遂の大罪人。」

 

「汚職軍人。」

 

覆りようのない現実だけつげられて、全員が連行された。あとにはライル軍の面々だけが残った。

 

 

 

ニコラは連行される貴族達の姿を見て、寒気がした。父はギリギリで思いとどまり、他の貴族達も何人かが土壇場で今回の首謀者を裏切った。だが、無罪放免とまではいかず今回被害に遭ったライル軍内部の女への慰謝料及びライル個人への法外な賠償金は求められた。普通ならば爵位剝奪、酷ければ主犯の当主は処刑されても文句は言えないだけのことをしたのだから、首がつながっただけマシとしか言えない。

 

当然だが、今回最後の一歩を踏みとどまったとはいえ加担したという事実の公表は避けられなかった。領地を保有する貴族に至っては、その一部を手放さなければならないほどだ。

 

多くの貴族が抱いているような『相手がナンバーズや平民だから罪にならない』、などという論理がライルには絶対に通用しないことを直接関わる機会がほとんどないニコラでさえ理解していたのに、彼らは理解していなかった。

 

だが、問題は今回の黒幕だ。噂によれば、その黒幕は……

 

 

 

犯人たちが連行された後……

 

「ライル様!」

 

今度は優衣が真っ先に抱き着いた。

 

「優衣…よかった、無事で。」

 

「今度の、本気の本気で怖かったの…!あのまま変なダンスさせられて、いろんな男の相手させられるんじゃないかって!」

 

偽らざる本音だ……せっかくライルのおかげでまともな人生を送れると思った矢先、またこれだ。もしライルが来てくれなかったら、本当にそうなっていたのは疑いようもない。

 

「ライル様……改めて。」

 

「はい…」

 

「もう、ライル様しか考えられません!秘書としても頑張るから、結婚が無理でも愛人にしてください!!」

 

 

 

幸也は有紗達の扇情的な衣装を見ないようにしていたが、今の優衣の宣言に思わず我を忘れてしまい、二人を見た。

 

「そ、それってつまりプロポーズ?」

 

「違うでしょ、その前に……とんでもない恰好で何言ってるのよ。」

 

銀髪の少女セルフィー・ガルデニアが優衣の格好を指摘した。確かに、まだバニーのままだ。全員が豊かなプロポーションでクリスタルなどライルに見せる機会をうかがい、今真剣な優衣もそれだった。

 

セルフィーはどちらかと言えばスレンダーだが、それにあった衣装でこれはこれでいい。何より、灰色がかった綺麗な銀髪に釣り目の瞳に引き寄せられる。

 

凄い、綺麗な子だ………

 

ライルから話を聞いて、少し雑誌などで見たが本物はその数倍綺麗だ。幸也が隣で見とれていると、今言われた優衣が……

 

「格好の問題じゃないでしょ。それに、本当に危なかったんだから。あんたこそ、そんな薄っぺらな胸でよく目を着けられたわね。」

 

「んな…薄くないわよ!これでもE.U.や『ユーロ・ブリタニア』のおっさんが三人に一人は言い寄ってくる程度の身体はしてるのよ!?あんたこそ、日本人みたいだけど私と同じくらいでそれ何!?『極東事変』の時に手術でもしたの!?」

 

「9歳でそんな手術するか!」

 

優衣が言い返し、セルフィーもさらに言い返してくる。ライルから聞いたように気の強い子のようだ。そんな姿も幸也には眩しかった。

 

「おーい、どうした?」

 

ヴェルドに声をかけられ、幸也は正気に戻った。

 

「あ、な、なんでもない。」

 

「んん?……ああ、なるほど。あの美人だ、当然だな。」

 

「な、何が当然?」

 

が、ヴェルドとコローレは面白がりながらも、穏やかな顔で肩を叩く。

 

「よかったじゃん、復讐以外に人生の彩が浮かんで。」

 

「そうそう。我々が言うのもなんだが他のエリアのナンバーズ同士が恋愛をするな、なんて法律はない。むしろ、殿下の手助けになるかもしれない。」

 

「は?」

 

言っている意味が分からなかった。

 

だが、ここでさらに話が複雑になっていく。

 

 

 

「あ、あの!」

 

リーザは意を決した。まだ一月足らずだが、もう自分を抑えられなかった。

 

「ライル・フェ・ブリタニア様!リーザ・フォン・ノイエンドルフと結婚を前提にお付き合いください!!」

 

「えぇ!?ちょっと、便乗しないでよ!」

 

秘書の少女木藤優衣が止めるが、リーザは怯まない。

 

「便乗じゃありません!こんな格好までさせられて、もう終わりだと思った……でも、ライル様はついででも助けてくれた。もう、私にとっては白馬の王子様です!!」

 

「何よ!私にとっても白馬の王子様よ!って、それ言ったら有紗にとってもそうじゃない!!」

 

「あ、あれは…その!」

 

 

 

市街の敵を対応し終え、KMFのチェックをしていた良二はコクピットから女達の姦しいやり取りが聞こえていた。

 

「とんでもない状況だな……スザクも年上のお姉さん達に囲まれて大変なことがあったというが。」

 

まあ、ライルはルックスと立場もそうだが、人間的に申し分ない。両親に彼の爪の垢を煎じて飲んでほしいくらいだし、他のブリタニア貴族も彼の考え方が一割あればとも思う……そして今回の事件、あいつらなら平然と社員を見捨てるどころか結託しかねない。

会社がつぶれるようなことになっても大丈夫、とでも思っているのだろうか?それとも、武石財閥だけは潰れないと思っているのだろうか?

 

武石財閥が桐原産業や皇コンツェルンに次ぐ規模と影響力を持つのは良二も分かる。だが、それは祖父母や曾祖父達、彼らの元で働いてきた社員の努力あってこそだ。両親はそれを分かっていない気がする。

 

爺様は俺にそう教えていたのに………

 

少なくとも、今回の事件は世襲の負の側面を垣間見た気がした。そして、首謀者がライルの親であったという事実が良二にも突き刺さっていた。

 

あいつらのことだ、ライル殿下に取り入ろうとするだろうが今回の件は釘をさしておくか。

 

 

 

エレーナもまた、意を決した。

 

「ライル様……私も、ライル様の愛人になります。だから、暫く弟達を本国で預かっていただけますか?」

 

「な、姉さん!?」

 

セルフィーが抗議してきた。が…

 

「こんなことになったのよ?一歩間違えれば私達は本国への不法渡航で殺されるわ!」

 

「それはそうだが!」

 

ヴァルもこれには抗議する。三人で口論しそうになる中、ライルが間に入った。

 

「と、とにかく全員落ち着いて。君達の証言とここへ来た流れは今情報部に洗い出してもらっている。君たち三人の安全については、マリーの監督不行き届きを追及する。いくら彼女でも、こんなことになって強硬手段に出れば本当にエリア24どころか本国とE.U.を敵に回しかねない。」

 

それはそうだが、セルフィーはまだ躊躇している。

 

「ナンバーズとしては、望み薄だけど……」

 

「余計なことだが、殿下の提案に乗った方が良い。」

 

そこに、ライルの側近というゲイリー・B・クレヴィング将軍が意見を入れた。

 

「今のマリーベル様は正気とは思えない。仮にライル殿下の要請通りにエリア24へ送り届けても、殿下がいなくなれば始末できる。等とやりかねない。」

 

それは、確かにあり得る。と、ヴァルが数秒うなり

 

「結局、あんたの側が少なくとも俺達にとっては安全ということか。なら……あんたに救われた恩に報いるために軍へ志願する。ダンサーを暫く休業する。」

 

ヴァルの提案に全員が唖然とした。

 

「な、君本気か?」

 

「ああ、ストリートより危ない橋を渡るのは分かっているし、ただ飯は嫌だ。それに、俺の取り柄はダンス以外にはドンパチだけだ。」

 

「……ストリートの小競り合いの比ではないぞ?」

 

「分かっている。それに、あんたが死んだら安全地帯がなくなる。」

 

「だ、だったら私も!自分の身を守る術くらいは欲しいわ!!」

 

「あ、私も愛人と兼任で。」

 

セルフィーが志願すると言いだし、エレーナも名乗り出た。

 

 

 

ライルは頭を抱えたくなった。リーザが結婚、優衣とエレーナが愛人。ヴァルとセルフィーはエレーナと共に軍へ志願。話が複雑になっていく。

 

「言いたいことは分かった。だが、その前に一連の黒幕を退治させてくれ。」

 

そもそも、黒幕が誰か知れば彼らは躊躇するかもしれない。ここでYESと言うわけにはいかなかった。有紗や優衣だってもしかしたら……

 

そして、一旦解散になりライルはグレイブに連絡を取る。

 

「グレイブ様、実は少し頼まれてほしいことがあるんです。情報部にも……」

 

正直、秘密裏に処理したいがもはや不可能だ。規模が大きすぎるし、相手も権力が強い。

 

有紗達に嫌われたら、どうしよう?

 

幼い子供が親に叱られる。そんな不安をライルは抱いたまま、段取りを進める。

 

「ただ、問い詰めるだけでは面白くないからな。」

 

ライルは自分が冷徹で凶悪な笑みを浮かべていたことに気づいていなかった。

 




この場面だけですが、カジノのテーブルみたいなやりとりをちょっとだけ加えました。

今私のマイブーム漫画はサブタイトルがチェスの用語で、主人公もゼロと同じチェスプレイヤーです。

後は…前も言ったと思いますがゼロとロゼがチェスなら、こっちは敢えてポーカーという点でやってみたいというのも本音です。

ライルの場合、誰がクイーンでエースかは難しいです。

ジョーカーはライル、指揮所がディーラーです。

ゲイリーは間違いなく♠のKなんですけどね。普通なら、有紗は♡のQでレイは♡のA、クリスタルは♢のQ、中の枠組みでは優衣は♡のクイーン、エレーナは♧のクイーン、ちなみに秀作は♠のAのイメージだと思います。フェリクスは♢のA。長野も♧のKというところでしょうね。

ちなみに幸也はセルフィーと直接会い、一目惚れしました。掲示板時代、原案の方から原典でフリーだったセルフィーの相手役として用意したとのことでした。偶然って怖いです。


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