コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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後始末です。色々な意味で……


BERSERK-48『狂戦士を取り巻く者達』

「そうした理由で、母が皆さんに大変なことをしでかして申し訳ございません。」

 

「私共からもお詫びを申し上げます。」

 

ライルは祖父母と共に農場の代表者に頭を下げていた。幸い、軍は来なかったが危うく殺されかけたという事態は伝えるし、メディアだって黙っていない。なら打ち明けるべきだ。

 

「で、殿下と領主様に頭を下げられるとこちらも……それに、実害はなかったわけですから。」

 

「ええ、ただ軍の不手際なのは事実です。今回の件に加担した将官達は軒並み逮捕されており、上層部から慰謝料を大量に搾り取って、全額新しい農作業機械などに充てられるように均等に分配します。」

 

「我がハウエルズ子爵家からも保証をいたします。」

 

代表者は流石に返答に困った。

 

「と、とにかく……皆さんからの謝意はお伝えします。それからしばらくは来られない方がよいでしょう。」

 

「ええ……子供達にもお伝えください。」

 

 

 

屋敷の執事長と農場の経営者たちは話を聞いて、憤った。しかし…

 

「領主様と、殿下が頭まで下げて…これじゃあ怒れないよ。」

 

「というより、殿下に落ち度はないだろう。」

 

まして、大元の子爵家は慰謝料を支払った上にライルは軍からも農場への賠償をもらって、それらは全てこちらに還元している。

 

「もとはと言えば、殿下が来なければ…」

 

「おい、待て!この農場は元々、殿下が母君から受け継いだんだぞ!受け継いだ殿下は悪くないだろうが!!」

 

「あ、そ…そうなんだが。」

 

「だったら、一番悪いのは息子に譲っておいて、自分が気に入らないから俺達を殺そうとしたあいつだ!殿下は俺達の命の恩人だぞ!!」

 

「そうよ…!それに軍だって騙された人もいたんだから!!」

 

領民達の意見は次第にライルが母親の不正から自分達を救ってくれたという方向性に落ち着いていき、シェールを処刑が無理ならば、二度と牢屋から出さないでほしい…事実上の終身刑を希望する旨を直接政府に求める文書が送られることになった。

 

 

 

ヴァルとセルフィーはライルを不機嫌な顔で睨んでいた。

 

「まあ、姉さんのあの態度と言動から覚悟はしていたよ。で、責任は取るんだろうな?」

 

「あ、当たり前だ……押し切られたところで責任は私にある。」

 

「……貴方と姉さんじゃ結婚は難しいけど、まあ男として一定の責任は取るのならいいわ。で、私たち三人が志願した件については?」

 

「ああ、父君には何とか話を通した。と言っても、エリア24からでは何もできないから…君たち三人の生命は私が及ばずながら預かるよ。」

 

ヴァルは軽くため息をついた。

 

前に会った時も思ったが、愚直だ。変なところで悪知恵を働かせ、狂暴なそぶりを見せる。と思えば、色恋沙汰は小学生のレベルで誠実だ。

 

「まあ、お前のおかげで俺達の安全が半分確保されるなら、俺もKMFでお前の援護射撃はするよ。死なれたら寝覚めも悪いし、姉さんが泣く。墓に花を添える手間が増える。」

 

「墓に花を添える程度には好感を持ってくれていたんだ。素直にうれしいよ。」

 

ライルは手を差し出し、ヴァルも唇を上げて力強くその手を取る。

 

「やるからには、手を抜かないぜ。お前の権力も使ってお抱えダンサーの仕事もOKだ。」

 

「はあ、兄さんったら随分と気に入ったのね…ま、今までのボンクラ共よりはマシだわ。私も姉さんが泣かないために、あんたを後ろから大砲で支援するから。」

 

「その姉さんは、艦で君達を見ているからね。私も、エレーナと一緒に君達の墓に花を添えるのはごめんだよ?添えるにしても、後六十年くらい先が良い。」

 

「お互いにね。」

 

 

 

翌日、ライルはノイエンドルフ家の屋敷をリーザとともに訪れた。まず、ノイエンドルフ家の不正や債務というのはシェールがでっち上げたものだった。

 

「母の愚かな振る舞い、息子の私が謝罪いたします。申し訳ございません。」

 

ライルは頭を深々と下げた。

 

「そのうえ、私はご息女からの求愛に…流されるような形で。重ね重ね、申し訳ございません。」

 

「……殿下、まず頭をお上げください。」

 

リーザの父ノイエンドルフ卿がこちらを穏やかに見つめる。リーザの父というだけあり、肌の色は東洋人らしくブリタニア人よりやや濃い。そして、髪と眼も有紗やレイに近い色だ。

 

「元をたどれば、私の親心が間違っていたのもありましょう。クォーターとして、娘は貴族達に虐められていました。交友関係も狭いこの子が気を許せる人を探し、そしてあなたや枢木卿に白羽の矢を立てた。娘が目を着けられる発端を作ったのは私です。殿下は娘を救ってくださった……それだけでも充分です。」

 

「で、ですが…!」

 

「娘のことで責任を感じるのはまた別の問題です。今日は、一度お引き取りください。」

 

 

 

ユウ・スズカ・フォン・ノイエンドルフは深いため息をついた。

 

「まさか、こんな展開になろうとは。」

 

ノイエンドルフ家の次期当主と言えど純血ではなく、日本のハーフである彼は後ろ指をさされた。そんな連中を見返そうと努力を重ね、後継者と認められた。妻も大貴族の縁戚を欲しがった父の紹介であったが、一目ぼれした彼は真摯に接し続けた。その結果、最初は難色を示した彼女も心を開き、正式な交際を経て結婚することとなった。

 

エリア11ができた後、妻は実家から離婚を求められたが既にリーザも大きくなっており、元々実家もノイエンドルフ家の財力は欲しかったゆえの結婚。正論を持ち出して実家を黙らせた。

 

しかし、それでもナンバーズ系のハーフが当主であるマイナスは大きく、勢いは衰えた。『ユーロ・ブリタニア』に出向した長男は『ミカエル騎士団』の事件で戦死してしまった以上、当主としては娘を大貴族と結婚させるしかなかった。娘の今後のためにも他に選択肢はなかったが、イレヴンのクォーターなど貰ってくれる物好きなどそうはいない。

 

そんな中で、保険として候補になったシン・ヒュウガ・シャイングは戦死。ならば、と純血のイレヴンながら後ろ盾も実績も申し分ない枢木スザクが候補に挙がった。

 

四分の一だけだが、同国人の彼らならば娘も接しやすいと考えたが、スザクはまだ結婚する気がないと断られ、最後の賭けがライルだった。せめて、休暇に会う軽い友人関係でもよかった。

 

それが、シェールに目を着けられて嘘の借金問題などをでっちあげられて帳消しのためにと娘を奪われた。かと思えばシェールの暴挙の被害に遭った女達を救う過程でリーザも救われ、しかもその場面でライルに完全に心を奪われ、そのまま同じく助けられた他の女達と共に肌を合わせた。

 

「気まぐれな賽の目にも、限度がある。」

 

シェールがでっち上げた借金問題は解決し、それどころか逆にその話を持ちだした貴族の闇金融事業が暴露されてノイエンドルフ家にその借金の数十倍が慰謝料として支払われ、その貴族は完全に破産、闇金融の業者も軒並み逮捕され、同様の被害に遭った貴族や平民に賠償を一族郎党で支払わされて会社は倒産した。

 

親としてはライルに責任を求めたいのだが、元をたどれば父親である自分の行いが発端。結果として息子は母親の不正を正し、自分の娘を助けた。しかも、娘がその皇子に心を寄せており、結婚を前提に交際を申し込んでいる。結果として傾いている事業を立て直すだけの資金が手に入り、政略結婚の必要がなくなった後と本末転倒とか言いようのない状況だ。

 

「親とは、難儀な生き物だ…」

 

 

 

「休暇、ですか?」

 

シュナイゼルに呼ばれたライルは全員の処遇で何か問題があるかと気になったが、内容は違った。

 

「中華連邦のクーデターで緊張状態が続くだろうが、君達はE.U.から戻ったばかりの上に先日の母君の事件だ。少し、休んだ方が良い。」

 

「……エリア24のガルデニアオーナーは?」

 

「彼については、私からマリーに働きかける。御息女方が君の部下として働く以上、マリーも迂闊なことはできない。」

 

「正直、今のマリーは信用できませんね。自分が見落としたのを棚に上げ、私が本国を内側から転覆させるべく、父君と結託してエレーナたちを引き込んだなどと言ってきそうだ。母の手下と一緒にね。」

 

シュナイゼルは軽くため息をついた。

 

「ライル、今のマリーと反りが合わないのは分かるが邪推が過ぎる。あまりやり過ぎると、本当に本国とエリア24を巻き込んだ君とマリーの戦争になる。」

 

「…失礼しました。」

 

 

 

ライルが退室した後、カノンがシュナイゼルに紅茶と軽食のスナックを出す。

 

「例のカジノを経営していたマフィアは確かに検挙し、癒着のあった軍、警察、役人も捕らえました。」

 

結果だけ見れば、ライルは綱紀の粛正に貢献して母の不正も正した。婚約最有力候補であったクラウザー家は父の暴走で、娘が救出に協力したために傷は少なかった物の、今回の事件に加担していた衝撃は大きく、事件の発端がライルの部下や女と文句を言う貴族は少なくなっていたし、ライルは二年前に母親に最悪の形で裏切られた事実も判明している。

 

ライルがここまで徹底的にやったのは……

 

「大事なものに危害を加えられたからこそ、だろうね。あの子はそういう人間だ。大事なものに害をなすものには絶対に容赦しない。シェール様は完全に息子が自分で作っていた巣穴に手を突っ込んだ。その結果、噛みつかれてしまった。」

 

いや、噛みつかれたというよりは食い殺されたと言った方が良いだろう。正に自らの縄張りを荒らす外敵には容赦しない猛獣だ。

 

「番犬とするには、ライルはやはり獰猛すぎるし我が強すぎる。餌をあげれば懐く保証などない。だが、鞭を振るったところでいずれその腕をかみ切りに来る。」

 

仲間に銃を突きつければどうなるかは今回の件で立証済み。たとえシュナイゼルでも噛みついてくるだろう。

 

身内を大事にするのが強みであると同時に弱点。よく言われることだが、その弱点の突き方を間違えればそれは逆鱗になる。

 

飼いならそうとした結果、親にさえ噛みついてくるほどの猛獣。さて、こちらはそれができるかどうか。

 

 

 

エレーナ達の入隊は父の方も事後承諾で納得してくれた。理由は長野と同じ、有力者が忠誠を示す半分人質だ。三人は現役のダンサーであったため、結果三人はライルがエリア24で預かったお抱えのダンサーになった。

 

現役のダンサーが軍人、という点は難色を示されたが既に現役のアイドルがいる『グリンダ騎士団』を引き合いに出され、周囲は妥協した。

 

元々学力はあって、ダンサー故に体力もある。更にストリートでマフィアの子飼い程度ならば撃退したこともあるために、今から鍛えればセミプロは行けるだろう。

 

エレーナは優衣と同じ管制を担当、ヴァルとセルフィーはKMFパイロットを希望し、既にグラスゴーでよい成果を挙げた。むしろ、グラスゴーが着いていけない様子さえあった。

 

「全く、殿下の人材マニアぶりもだが見つける運も相当だ。」

 

ゲイリーは呆れと称賛が混じった感想を口にした。どうも、ライルが気に入る人間はアクが強い。だが、不思議とライルと気が合う上に能力も優秀。獣に例えれば、群れから独立した獣を自分の群れに引き入れる才能がある。が、やはり………

 

「王としてはお優しすぎる……軍の指揮官としてもな。だが、人材を引き付けるカリスマ性はある。性格を考慮すれば、地方領主向きだな。」

 

それこそ、今回被害に遭った農場で有紗達と静かに暮らし、自身も農作業を手伝いながら農場経営を行う。そのほうがライルにとっては良いのではないだろうか?

 

 

 

ライル軍はまた交代で休暇が下りた。

 

「新人との交流も図れるいい機会だろう。」

 

「そりゃいいけど…どこでどうやるの?昨日の今日であたしら悪目立ちしてるわよ?」

 

「…あの女の固有財産でハワイのプライベートビーチを貸切った。費用は全部、あの女の財産だ。この際だから徹底的に搾り取ってやる。」

 

「うわ、母親の財布を勝手に自分の財布にする不良息子。」

 

雛の指摘に

 

「息子の友人たちを殺そうとした女なんて母親じゃない。まして、あの女はジュリアも殺した。我が軍の敵だ。」

 

「なるほど、筋は通ってるわ。」

 

「それと紹介したい人がいる。入って。」

 

入ってきたのは、先日の事件で助けた二人だ。

 

「『ユーロ・ブリタニア』貴族のリーザ・スズカ・フォン・ノイエンドルフ。大学で経理学を専攻していたから、管制と兼任で補給などの後方を担当してもらう。」

 

優衣が発表を聞くが…

 

「うぅ……この間も思ったけど、やっぱり私より大きい。…じゃなくて、経理なら秘書の私も吸収できるものがあるかも。」

 

「まあ、そうだね……お互いに吸収できるものは吸収してほしい。そして、張 美水は引き続き私の客人として預かり、私的な政治アドバイザーとして軍にいてもらう。」

 

その決定にゲイリーが確認する。

 

「…異論はありませんが、中華連邦の方は。」

 

「ブリタニア打倒に動く流れで、たかが将軍一人動かせないなんて、ゼロがその程度だと思うか?彼女の父はおそらく流れに逆らえない。送り返しても、娘経由で離反を疑われかねない。」

 

「こちらはあくまで大宦官が派遣した客人、私的なアドバイザーで通すわけですね。」

 

優衣の回答にライルは頷いた。

 

 

 

美水は少なくとも、それならば父が叛意を疑われないと考えていた。自分でも言ったが、今戻ったところで『洗脳皇子』の噂を鵜呑みにする誰かが洗脳されて内通していると騒ぐのが関の山だ。

 

だが、この人はそんなことはしない。洗脳だというが、彼は自分ができる限りのことで嘘はついていない。長野を筆頭にした名誉ブリタニア人達の家族にしても、協力企業や政府に要請して安全を確保してもらっている。そうすることで自分の味方をさせている。

 

それは政治であり、部下に対する上官の務めの範疇だ。洗脳など、ブリタニアの皇子が悪と決めつけ、その方が好都合だから馬鹿な連中が喚いているだけの言いがかりだ。

 

それに、今更彼の敵になれない。大宦官と真逆の民を軽んじない高潔な皇子の姿に美水は惹かれた。彼はナンバーズも民として扱い、その怒りの原因が何なのかを理解しようとしている。大宦官やその手下共では絶対にありえない。それに、あの密約で割譲した土地を統治するのがライルだったら少なくとも、大宦官より良い政策をしてくれるという期待も美水にあった。

 

身体を差し出した事など、些細な問題だ。

 

 

 

「まあ、あんだけごたごたあったから休暇は良いが部下としてあんたに進言する。」

 

ヴェルドがライルを指さした。

 

「な、なんだ?」

 

「あんたはお妃様達とセット。これは絶対条件。」

 

「……その理由は?」

 

「護衛対象をバラバラにするより、一か所にした方が守りやすい。」

 

フェリクスが要点だけを言った。つまり、自分で自分を守れるライル、レイ、クリスタル以外は自衛能力を殆ど持たない。だから、全員で一か所に固まった方が守りやすい。

 

「あの女の手下…その生き残りが私諸共一網打尽にしようとする、ということだな?」

 

「ええ。護衛は私以外にヴェルドとコローレ、セヴィーナ、デビー。これくらいでいいでしょう?有紗は特に、貴方がいるんだし。」

 

嫌味がこもった言い方だ。しかし…

 

「分かった……」

 

「じゃあ、二番目で私も守って?」

 

優衣が胸でライルの腕を挟むと、リーザが

 

「私もお願いします。」

 

「ずるいわよ!私も!!」

 

美水が張り合い、更にクリスタルも。

 

「私も守って?」

 

「ちょっと、貴女は現役軍人でしょ!?」

 

「そういうレイだって現役じゃない!」

 

「じゃあ、私も。所詮はストリートのアマチュアだから。」

 

「抜け駆けしないで!」

 

エレーナが便乗しようとしたところで有紗が怒鳴った。もはやライルの取り合いだ。

 

殺されるかもしれない、というのに呑気だ。

 

「ったく、何やってんのよこの女たらし。」

 

「ああ、本人にその手の邪念がないから余計に質が悪い。」

 

セルフィーとヴァルが呆れ果てていた。耳が痛いが、ライルも言い返せなかった。と、涼子が割り込む。

 

「私は着いていけないの?優衣が絶対に悪いことしそうだけど。」

 

「お姉ちゃん、自分が彼氏いないからって僻まないでよ。」

 

「僻んでない!」

 

 

 

ヴァルは深いため息をついて、フェリクスに問う。

 

「おい、ここはいつもああなのか?」

 

まあ、E.U.の正規軍よりはマシだ。あいつらときたら、エレーナとセルフィーのダンスなど興味が泣く二人の身体が目当ての手合いが9割を超えていた。中には家柄自慢から無理やり結婚しようとする奴もいた。それに比べればここはマシだろうが。

 

「ええ、ヴェルドとコローレが来てからは。まあ、ナンバーズとブリタニア人の垣根がだいぶ解消されたとは思います。垣根を超える話題は酷いのが大半だけど。」

 

「あれだけ美人がいりゃそうなるな。」

 

「貴方だって、言い寄られそうな顔でしょう?」

 

「冗談、碌な女に言い寄られた試しがない。」

 

言い寄るのは、一夜の関係が欲しいお嬢様。或いはその母親クラスだ。いくらなんでもうんざりする。

 

「まあ、当面は姉さんとセルフィーがうまくいくかが心配だ。女の方がこういう話題は面倒だ。」

 

 

 

ゲイリーは長野と久しぶりに酒を飲んでいた。片手間にチェスを打っており、ゲイリーがやや圧している。

 

「最近、私は殿下のお側で思うことがある。」

 

ゲイリーの黒のナイトが進んだ。

 

「何がですか?」

 

「お前は怒るだろうが、私はブリタニアの不平等は間違っていないと思う。陛下のお言葉は現実論でもある。」

 

「…ええ、生まれも育ちも才能も違う。それは私も認めます。ひいては個性というものでしょう。」

 

個性、か。確かにそういうとらえ方もある。

 

「殿下はその中で不平等や差別を軽んじている、と感じていたが最近は違う。お前たちを見て感じたが、『殿下は最も不平等に忠実』なのでは、と。」

 

「忠実と仰いますと?」

 

「殿下は才能や能力のある平民やナンバーズを取り立てていた。周りはそれをナンバーズとの差別に背いている、というがウィスティリア卿のような大貴族、ホーネット兄弟のような没落貴族も取り立てている。これもまた差別ではないか?」

 

実際のところ、ライルが見込んだ人間は能力なり才能なりに恵まれている。有紗だって料理や家事系の能力、メイドとしての才能がある。クリスタルやホーネット兄弟だって、ライルの士官学校時代の付き合いを差し引いても優秀だ。

 

「つまるところ、殿下は最も不平等に忠実。だが、それは人種や身分を問わない。ある意味で公正だということだ。殿下ご自身は貴族共へ対抗する方便にしかしてないだろうがな。」

 

 

 

長野は内心でうなった。

 

なるほど……考えてみれば、皇帝はブリタニアだけが進化していると言っているが『ブリタニア人』とは一言も言っていない。ライルは無意識のうちにその落とし穴に気づいているのだろう。

 

「言われてみれば、ブリタニアだけが進化しているとは仰っても、ブリタニア人がとは一言も仰っていませんな。」

 

「ああ、ブリタニア人特に貴族を信用しないのもそこがルーツなのだろう………皮肉だな、父親にも反感を匂わせるのに、やっていることは父親の掲げた大義に最も忠実だ。」

 

長野は駒を進めてライルを擁護する。

 

「…『毒を以て毒を制す』、とも言いますよ。この場合、制する毒とは殿下がお嫌いなブリタニア人全般でしょうな。何しろ、彼らが自己正当化の方便に用いる皇帝の言葉を殿下は活用しているのですから。」

 

ゲイリーもそれを言われ、頷いた。

 

「なるほど……連中はそこでお前達を取り立てるのが理不尽だと言うだろうが、その理不尽もまた不平等。連中の論理は破綻するわけだ。」

 

「そうですな……おそらく、殿下もフェリクスやヴェルドの助言と自分でそう言うでしょう。…チェックメイト。」

 

しまった……油断した。

 

ゲイリーは取られたキングを手に取り、残った酒をあおった。

 

「……チェスまでナンバーズに負けるわけないと言い出す輩がいたら、流石に私も部下にはいらんぞ。」

 

「私だって、いりませんよ。」

 

 

 

 




シュナイゼルから見たライルの分析。飼い慣らすのが難しい獰猛な狼、或いはライオンです。あの計画で消してしまうことも視野に入れているでしょう。

書いてませんが、他にもつれてこられたナンバーズ系は送り返すまたは本国で特別に居住を許す方針です。普通なら送り返すだけど……総督の責任問題ですからね。エリア24じゃ送り返してもその場で殺される可能性の方が高いと思います。エリア11はナナリーの性格からして、絶対にないでしょう。

名誉ブリタニア人採用試験の配慮及び政庁から当面の生活費を賠償として払うくらいしそうです。



最後にあの女…田舎貴族にコンプレックスがあるのはお分かり頂いたでしょうが、それ故に宮廷の豪華な暮らししか目に映ってません。対照的にライルは宮廷の策謀などが嫌になり、ゆったり出来る農場や祖父母の領地の方がお気に入りです。

ライルの場合、あの農場で暮らせる一般庶民より少し大きめの家で有紗達と暮らすのが将来の設計図かも。あの女の場合、連日連夜、最高級のワインと美食に舌鼓を打ち、パーティーで多くの貴族から巻き上げ頂点に君臨する。ルーカスならば、それに毎晩美女をたっぷり可愛がるが付くでしょう。

銀河英雄伝説でいえば、ライルはラインハルトより(女性関係でいえばロイエンタールかも)。ルーカスとあの女は正にベーネミュンデ侯爵夫人やフレーゲルでしょうね。

フェリクスもオーベルシュタインに片足突っ込んでる感じでしょう。
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