今後、『黒の騎士団』は当初の目的である日本奪還を目指してエリア11に攻め込んでくる。誰もがそう考える状況下でライルは部下達のKMFの強化を要請し、それは受理された。同時に新型のKMFの受領及び搭乗者も決定していた。
「ねえ、本当に新入りの私達が乗っていいの?」
セルフィーの問いにゲイリーは頷く。
「殿下がお認めになった。それに、お前達二人がそれへの適性が最も高い。他の人間を乗せるよりも撃墜されにくいだろう。」
「言ってくれるな…しかし、ゼロに奪われたっていうガウェインにそっくりだな。こんなマイナスイメージよく使う気になる。」
「それで勝ったら世話はない…が、殿下のお考えだ。見どころのある人間は起用する、よさそうなKMFは使う。」
ライルの方針を聞いたヴァルはため息をついた。
「それって節操なしだな……まあ、俺達もストリート時代は必死だったからそういうのも分かるよ。」
「いつ、エリア11に赴くか分からない。今の内に実戦形式の訓練をしておけ。」
「イエス・マイ・ロード…で良いんですよね?」
「そうだ。」
ヴァルとセルフィーは頷き、受領された機体ガングランに搭乗した。
両肩のハドロン砲に腰には近接防御用としてダガータイプMVSを装備、更に胸にはガレスにも装備されているミサイルランチャーを搭載し、両腕のハーケンも健在。ドルイドシステムはない代わりに火力を強化し、近接防御用の装備もある。
ガングランと共に回されたギャラハッドの量産試作機…パラディンは幸也とノエルが搭乗した。
「いきなりグロースターからステップアップするのは嬉しいな。」
「アドルフ・ジョゼットは文句言いそうだけどね。」
ノエルは家族を壊した貴族の跡取りが文句を言ってくる展開が既に読めていた。
「それじゃあ、そいつが文句言えないくらいに乗りこなすか?」
「当然よ…殿下もだけど、ヴェルドとコローレにも難癖付けるんだもの。」
「………随分と懐いているな。」
「…兄さんに雰囲気が似てるのよ、あの人達。でも、恋愛対象じゃないから。」
「そこまで聞いてないって。」
二人は早速パラディンに搭乗し、同じ機体同士で訓練を始める。元々はギャラハッドのエクスカリバーよりパワーを抑えた専用大型剣コールブランドをフロートユニットと一体になった鞘に納めている。原型機との違いとして、両腕にブレイズルミナスと一緒にショートソードタイプのMVSを装備しており、武器の数ならばギャラハッドよりも上だ。
量産試作機である事に加え、ギャラハッドタイプというだけあり、単純な出力はヴィンセントより上でコストパフォーマンスも良くないために現在あるのは試作段階の二機のみ。ビスマルクの直属部隊の騎士でさえ乗りこなせない本機をシミュレーション搭乗させた結果、幸也とノエルが乗ることになった。
イレヴンと犯罪者の娘などが、と文句が出たがライルは耳を貸さず……
『イレヴンと犯罪者の娘は乗りこなせない、なんてプログラミング技術があるのか?私だって駄目だったんだ。これはどう説明する?』
いつもの現実論で言い負かしていた。結局、『ナイトオブワン』専用機というブランドにたかるハイエナだということだろう。
「この改良されたアストラット、まだ名前は決まってないんだよな?」
「ええ、何かご希望の名前は?」
秀作は強化されたアストラットを見上げていた。『グリンダ騎士団』のランスロット・グレイルやスザクのランスロット・コンクエスターのデータもフィードバックされているが、頭部は角が顔面を覆うような形状で騎士というより悪魔か鬼に近い。そうなるように希望したのだから当然だが……やはりそれを思わせる名前が良い。
「アベンジャー、復讐者で頼む。」
「…想像通りでつまらないと言いますか……分かりました。」
工廠のスタッフも納得し、秀作は早速アベンジャーに搭乗する。
元々トライアルを機動力と近接戦闘に重視したのがアストラットで、それに試作兵装を持たせ、より近接戦闘に改修したのがアベンジャーだ。
背部のソードユニットによって機動力が落ちているが、それは機体本体のパワーを上げてリカバリーしている。
ソードユニットには折り畳み式の長剣があり、刃の部分は少なめだがその分リーチは長い。更に本体にもノーマルタイプとショートソードのMVSを計四本装備し、腕と腰のハーケン、ブレイズルミナスも健在だ。しかも両腕のハーケンに限り、ルミナスコーンの機能を追加しており、徒手空拳の性能も向上している。そして試作兵装としてハドロン砲と実弾を分ける新型ヴァリスも装備しており、総合的な戦闘力ならばベディヴィエールに迫る。
クリスタルのハリファクスもラヴァーズという名前を付けられ、改良されていた。元々がブラッドフォードだが、フォートレスモード時の火力と単独での戦闘能力を重点的に強化されている。
ブラッドフォードに先んじて変更されたフロートユニット、その内部にソードタイプMVSを搭載した。デュアルアームズは完全に廃止され、トリスタンと同じランドスピナーが付け加えられ、そのアーム内にエストックタイプのルミナスソードが搭載された。また、メギドハーケンにもルミナスコーンが搭載されて敵艦への体当たりやKMFモードでの打突兵装としての運用も可能、ハドロンスピアーの威力も向上してスピードはやや劣るが、近接戦闘能力だけならばトリスタンとブラッドフォードを超えるほどになった。
麾下の部隊はこれまで通り支援機としてサマセットが存在するが、他は全てフロートを装備したKMFで統一されることとなった。
ローレンスはグリードの名前を冠する形で改良された。両肩のシールドとハドロンバズーカ、腕のルミナスコーン搭載型ナックルダスターはそのままだが、それ以外はウァテスシステムの改良及びシールドの出力向上がなされ、射程距離もモルドレッドに迫るものとなった。近接防御用に、サザーランドの物を改良したルミナスコーン型のハンドアクスも両腕にマウントしている。
「まあ、これだけ火力と防御力が重視されてるんだから手持ちの武器がちょっとあるだけで充分よね。」
アストラットとハリファクス程派手な強化はないが、元々が砲撃に特化しているのだ。これでいいだろう。
「代わりにサザーランド・スナイパーやハドロン砲の携行火器部隊を用意したのは良いけど。」
雛はこれまでの実績を評価されて昇進、大尉にまで上り詰めた。それに伴い,『フォーリン・ナイツ』の分隊指揮も認められ、支援砲撃部隊の隊長だ。それに合わせ、艦上からザッテルバッフェやバズーカによる砲撃、或いはサザーランド・スナイパー部隊の砲撃部隊、またはブレイズルミナスやシュロッタ―鋼の外装を装備した重装備KMFが主な部隊編成になった。
ライルは編成を見て、ため息をついた。さながら『グリンダ騎士団』のような編成になっている。最も、こちらのKMFの多くはあちらで運用している機体から派生しているのだから当然と言えば当然だ。
KMFを用いた通常戦闘でこちらは一機の性能とそれを扱う人間の能力が重視する方針に転換した以上はそれでいい。
これまでレイと長野の分だけだったヴィンセントも親衛隊はフェリクス、セヴィーナ、ヴェルド、コローレ、デビーに『ユーロ・ブリタニア』の二人、『フォーリン・ナイツ』も良二が任された。
それ以外の古株のパイロット達にはランスロットの正式量産機のヴィンセント・ウォード及びガレスを回している。
特にヴィンセントはフェリクスとセヴィーナはOSやランドスピナーなどの改良を、ヴェルド、コローレ、デビー、良二はそれぞれが希望する武装強化のカスタマイズをした状態で配備され、レイと長野の機体はベディヴィエールのデータをフィードバックした新型機ヴィヴィアンに改修中だ。
ヴィンセントの改良でも充分で、そもそもヴィンセントは間に合わせなどという次元ではないが。
「無理を言って済まない、カンタベリーと雷光まで改良してほしいなどと。」
「いえ、後方支援及び対艦攻撃用としてはどちらも有用な兵器です。それに、そちらのイレヴンの女が張り切っておられますよ?」
涼子か…確かに、ヴィンセントのカスタマイズには興味を抱き、彼女もOSや各部モーターなどの調整で参加している。将来的には彼女にベディヴィエールの調整も頼みたいが、思ったより早く現実になりそうだ。
クレス・ローウィングとアリア・フローベルは任務内容を聞かされた。
「私、あの人嫌い。女の人なら誰でもよさそうで。」
「そういうタイプではないだろう?」
「………どうだか。」
「第五皇子と比べたら?」
意地悪な質問をする。人間性で言えば、第八皇子の方がずっとまともだ。
彼らは『セント・ガーデンズ』の若手でもトップクラスのパイロットだ。アリアは幼い頃には既に親がなく、孤児院にいた。その後、レイシェフが保護者になり、彼の背中を追うように入隊した。
身寄りがない境遇を利用して、レイシェフに取り入ったなどと揶揄する声などうんざりするほど聴いた。
アリアはそうした声が何故か無性に腹がたち、行ってくる手合いは全て言い負かしてやった。
クレスはブリタニア人とイレヴンのハーフだ。といっても、貴族ではなく一般家庭同士だ。『極東事変』の頃には既に両親はなく、施設暮らしだった。就学助成プログラムは受けられたものの、エリア11が成立したことで施設の外からのクレスへの視線は敵だらけになった。
外部からは半分イレヴンの分際で、等と日常茶飯事。挙げ句にクレスを言い訳に施設に嫌がらせをする者もいて、警察までも『イレヴンのハーフを引き取った施設が悪い』などと言って取り合わなかった。
そんな不条理を憎み、クレスは入隊した。ハーフのマイナスをばねに抗い、軍学校の成績も不正疑惑をでっちあげられてもそれを実力で跳ね返した。卒業時には教官達も渋々認め、貴族が幅を利かせる中でもクレスの軍規違反をでっちあげる貴族がいた。その状況下で事件の調査を担当したレイシェフが彼の潔白を証明するどころか、クレスを陥れようとした貴族達を逆に失脚させた。
出自を問わず、貴族といえど容赦しない高潔な姿にクレスは心酔した。
そして、二人はレイシェフから過去を聞かされた。それに伴う超常の力も……
「私はそんなものに興味はない。私を取り立ててくれたヴァリエール卿のために剣を振る。それだけだ。」
「正直、半信半疑だけどそれが現実なら…お父さんとお母さんがどんな人か知りたい。」
ヴィオラ・アールバリは侯爵家の一人娘だ。家柄も申し分なく、その財力も権力もブリタニア屈指だ。
それだけの家に生まれたヴィオラは両親に愛された、といえば愛されたが自信はなかった。両親は家を大きくすることしか頭にない。そのための人形として愛でているのではないか?
そんな疑惑を抱いたまま成長したヴィオラに結婚の話が来た。十代で結婚し、妻と幼い娘を喪った若い当主だ。ヴァリエール公爵家の息子……現皇帝の覚えも良いどころか、親子近く歳が離れながらも友誼を結んで、『ナイトオブスリー』の地位についていた男。
いかにも両親が好みそうな経歴だった。渋々出会ったが、ヴィオラは一目見て彼に、レイシェフに心を奪われた。整った容姿に貴族の当主に相応しい振る舞い、部下達の人望…どれも一流だった。しかし、その眼は虚ろだ。無理もない。妻子を亡くしたのだ。しかも、亡くなって一月で再婚など無神経にも程がある。そんなことがあれば、誰でもこう考える。『レイシェフの妻子は両親の陰謀で殺されたのではないか?』と。
結婚は保留という形になり、既に軍属だったヴィオラはレイシェフの部下への転属を希望した。両親が軍に働きかけ、それは意外にも早く適った。家の力で、と揶揄されるがそれ以後は努力を重ね、戦場で武勲を立てた。今では、レイシェフの片腕と称されるほどの騎士で、勝てるのはレイシェフと同じ『ラウンズ』か、コーネリアくらいだと自負していた。
でも、いくら腕を磨いても…いくら尽くしても…レイシェフ様は私を見てくれない。未だにエルザ様しかレイシェフ様の心にはいない。
こんなにも、愛しているのに……
ドウェイン・ラン・デルヴィーニュはレイシェフとは年の離れた友人だ。といっても、それほど遠くはないが……幼いころから家同士で付き合いがあり、どちらかといえばデルヴィーニュは家臣だった。
しかし、年上のデルヴィーニュをレイシェフが対等な関係でいたいと希望したため、軍属になってからもレイシェフのことを呼び捨てにしており、デルヴィーニュにとっても弟同然。ビスマルクでさえも、それを好ましく思っていた。
彼の妻と娘のこともよく知っており、妻の生まれは下級貴族で雇われのメイドだった。当時、既に家を取り巻く貴族達の欲望や謀略にレイシェフは疲弊しきっており、両親はそれを全く理解しようとしなかった。デルヴィーニュが労わることさえ許さないほどだった。そんな中、メイドのエルザは彼を労わり続けた。パーティーや望まぬ結婚相手に愛想よくすることに疲れた彼に寄り添い続け、レイシェフは彼女を妻に迎えた。デルヴィーニュはそれを誰よりも祝福し、娘の誕生を我が事のように喜んだ。しかし、そんな幸せは長く続かなかった。
貴族の謀略がレイシェフの妻子を襲い、妻は殺されて娘は行方不明になった。以来、レイシェフは現実も、未来も見なくなってしまった。見ているのは過去…妻と娘と幸せに暮らしたあの頃だけだ。
ヴィオラがレイシェフをいくら真剣に愛していても、レイシェフはそれに答えない。妻への愛を貫こうとしている、とも取れるが見えていないのでは?とさえ思った。
俺に…あいつの眼を払う力がない。
自分でも情けない……間違いなのも分かっている。だが、それでも過去さえ見ようともしなかったあの頃よりもマシだったからせめて過去を見られるようにとこの道を選んだ。
そして、分かっている。レイシェフは第八皇子に不思議と甘い。それは自分と似ているからだ。片や下級貴族のメイドと結婚し、片や平民の娘に想いを寄せていた。
その想い人を貴族に殺されたこと……しかも、その首謀者が親という共通点まであるのだ。しかも、その死を喜ぶ輩が群がったという後の展開までもが同じ。シンパシーを抱くのも無理はない。
決定的に違うとすれば、レイシェフは未だに過去に囚われたまま……ライル殿下は己が復讐を果たして愛する人と今度こそ結ばれたこと、か………
暫くして、レイシェフからライルにある提案が持ち掛けられた。
「……本気で仰っているんですか?」
「本気です。母君の暴挙を正したとはいえ、貴方の信頼はまたも揺らいでいる。母君と一致した見解を持たず、被害に遭った女性への皇室からの謝意。既に生活面で一定の補償がされた彼女達には物品や金銭など通じません。それに植民エリア政策の範疇では、ありふれた手段ではありませんか?」
「私にそのモデルケースになれと?」
ライルがこちらを疑う態度をとる。当然と言えば、当然だろう。だが……
「貴方はご自分の部下達をエリア政策の方針転換のモデルケースにするつもりだった。ならば、貴方自身もモデルケースになれば頑迷な貴族共も首を縦に振るしかありません。何より、最大の邪魔者が消えた今が絶好のチャンスですよ?」
だが、それでもライルはこちらを疑っている。直情的ではあるが、愚かではない。むしろ、警戒心は強い。それがライルに抱いていたレイシェフの印象だ。
「お聞きしますが、そんなことをして本国の貴族や陛下に何のメリットがあるのですか?今更ゼロの活動抑止なんて効果は期待できませんよ?」
痛いところをついてきた。確かに、以前なら効果はあったが今ではそんな効果はない。いずれ中華連邦とE.U.を纏め上げて攻めてくることが目に見えている。
「あえて申し上げれば、これ以上増やさないためです。エリア11だけならば、ナナリー総督の融和路線で衛星エリア昇格が認められつつあります。ならば、特例ながら皇族にお仕えしている女性が皇子に見初められて、結婚することにも無理はありません。元々、貴方とナナリー様のお考えは近いし、いまだ根付くユーフェミア様の同類という疑念を払拭するために打てそうな手は全て打つべきではありませんか?」
「…なんの後ろ盾もなく?」
「おられるではありませんか。今回の事件、フィリドール家とクラウザー家をはじめ取り潰しだけは免れた家があります。彼女達の後ろ盾とまではいかずとも身元引受人になることを条件に協力を取り付けるのです。まして、クラウザー家ならば尚のことでしょう。」
ライルは歯ぎしりした。うまく、こちらが食いつく餌を用意してくれている。エリア11の和平路線だけではない。エレーナと結婚すれば、エリア24の強硬路線を牽制する足掛かりになる。オルドリン達が離れているとはいえ、今エリア24は安定しているとはいいがたい。エレーナとの結婚は、マリーベルの暴走を止めるのにうってつけだ。何しろ政略といえども、皇妃の出身国……これまで以上のことはできなくなってしまう。
更に、有紗達をフィリドール家やクラウザー家が裏切らないようにする首輪にしろと言っている。何より、本国貴族のメリットはそんな物ではない。大方、有紗達との仲を認めることで貴族の幅を確保するのが狙いだ。
「……それは貴方お一人のお考えでは?」
「いいえ、シュナイゼル殿下はご了承してくださり、ビスマルクも概ね好意的。それに、今回は皇族や貴族が大々的に植民地政策の妨害や停滞を引き起こしたも同じ。その首謀者の息子が止めたとあっては、保守派が強く出られるとお思いで?」
そう来るか……皇妃があれだけのことをしでかした。一番の被害者である息子が止めた以上、連中も文句を言えない。
「要するに、今のうちに固めてしまえと?」
「ええ、万が一の場合は私が引き受けますよ。嘘は申しません。公文書として提出しても良い。」
公文書と来た。要するに、もうライルには選択の余地はない。皇帝が非公式に抱える大騎士の好意を無碍にするなど、いくら皇族でも皇帝への叛意と捉えられかねない。
「当然、発表するのでしょうね。」
「でなければ、意味がありません。民は明るいニュースを求めるもの……テロリストの大義名分に亀裂を入れる意味でも必要なのですよ。何より……貴方の政治方針と個人的な感情の両立を出来るまたとない機会。これを逃したら、もう二度とないかもしれませんよ?」
「……分かりました。ただし、こちらからも落とし所の条件を提示させて頂きますよ…」
「ええ、承知しております。まあ、指輪とウェディングドレスくらいはプレゼントしてあげませんとね。」
抜け目がない。なさすぎて、逆に恐ろしい。
レイシェフが退室した後、ライルは事の次第を伝えた。
「既に逃げられないということですか……」
「素直におめでとうございます、と言いたくても言えませんね。」
ゲイリーと長野の言う通りだ。絶対に裏に何かある。
「有紗達の守りを今まで以上に強化した方が良いな。」
「ですね、本人は窮屈だと思うでしょうが。親衛隊と『フォーリン・ナイツ』から一人ずつ守りに着いた方が良いでしょう。」
ビスマルクは事の次第をレイシェフから聞いた。
「奮発したものだな…」
「計画がなってからでも良いのだが、な。それにこれで恩を売ったと思えるような相手でないことは分かる。」
「ならば、何故?」
「……今ならば、貴族達も母君の暴挙の記憶が濃い。そのうちに結ばれれば、後になったところで文句を言えまい。共謀して母親を排除した、という言い訳だって今ならば通用しない。」
「なるほど……実際に母親が先に手を出したわけだからな。母君を泳がせていた、と今喚いても旗色が悪いだろう。謝意も早いに越したことはない。」
が、レイシェフは冷たい笑みを浮かべた。
「殿下にとっても、これは母君へのこの上ない復讐だろう。」
「確かに……下手な処刑よりも効果がある。今頃、怒り狂っているだろうな。」
最も、そうしたら見張りの兵士や世話役の従者達は気の毒だが。
案の定で、シェールに事の次第が伝わった際には怒り狂っていた。
「おのれ、ナンバーズ共!おのれ、平民共!おのれ、ヴァリエール卿!!おのれ、シュナイゼル!!」
部屋の備品を手当たり次第に投げたり、倒したり、カーテンを引き裂いたり、まるで獣さながらだった。
「ああ、可哀想なライル!この母の愛を理解できないばかりか、卑しいメイドと結婚したヴァリエール卿などに唆され、ナンバーズ共に骨抜きにされるなど。あのナンバーズ共はゼロの手先なのです!皇帝陛下にお伝えなさい!!」
「何度もお話ししておりますが、既にあなたにはそのような権限はありません。この塔と敷地内に限れば出歩くことを許されたのも殿下がシュナイゼル殿下に諫められ、譲歩されたことです。」
「息子ならば、私を無罪放免にしてあの虫どもを皆殺しになさい!!」
従者は呆れ果ててしまった。そもそも、親子でも皇族の権限は独立している。皇帝でも地位を剥奪しない限りは介入できないのに、それが分かっていない。
いつものようにあしらい、ため息をついた。
「……あのお方の中でライル殿下は自分の言う通りに動いて、自分を皇太后にする人形になっている。」
『ナンバーズを娶る等言語道断』と言いたいが、母親があれでは反抗も含めてそうしたい気持ちも沸くのだろう。何せ、ライルがこれまで紹介された結婚相手もあれに近いタイプばかりだったと聞く。生まれも育ちも正確も真逆のあのメイドに惹かれるのは無理からぬことなのだろう。
セントガーデンズに触れました。
クレスとアリア、レイシェフは元々掲示板時代に頂いたメンバー。デルヴィーニュとヴィオラは私が追加したメンバーです。
歪な友情と一途な愛です。
新型はそれぞれ『グリンダ騎士団』の機体のようにランクアップしました。
そして、シェールの暴挙に対するライルへのこの対応。つぎでも言いますが、有り体に言えば餌付けです。シュナイゼルにしてみれば、ゼロとの戦争で落とし所とその具体例及びモデルケースを探させるのも込みでしょう。
特にライルとエレーナの仲……現地の財界人と皇族或いは有力貴族との結婚は植民地政策ではアリだと思います。中華連邦のアレの延長ですから。
あの事件から間がないのに、という考え方も分かりますけどライルの感情とあの女にとどめを刺すのはこの時しかないとも思います。
踏みとどまった貴族に身元引受人や生活保障をさせて……恩を売ることも出来ますし。文句言って家全員の首が飛ぶか、それとも我慢してナンバーズの女に傅くか。サラはそんなの関係なく有紗達のためにがんばるでしょうが