コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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ゼロと同じ展開がライルにも襲いかかります。


BERSERK-57『向けられた刃』

ライルはバルテリンク卿と連絡を取った。幸か不幸か、彼はナナリーの脱出艇とは別の脱出艇で政庁を離脱、運よくナナリーの脱出艇とは別の方向に飛んでいたために難を逃れており、現在はアッシュフォード学園で市民の避難活動に尽力していた。

 

「そうですか…ユリアナとリュウタも無事なんですね。」

 

〈ええ、先日ハコネに。屋敷はなくなってしまいましたが、生きてさえいれば。〉

 

「……そうですね、リュウタを本国へ連れて行く場合は私の方からも特例扱いで本国に掛け合います。」

 

いくら貴族が保護者になっているとはいえ、イレヴンのあの子を本国の連中が認めるとは思えない。むしろ、バルテリンク家を潰す方便にしかねない。

 

少しでも、その可能性を減らさないと。

 

〈ご無理はなさらぬように。〉

 

バルテリンク卿との連絡を切り、ライルは今度は皇帝につなぐ。

 

〈ライルか、何用だ?〉

 

何用?相変わらず、無関心と言わんばかりだ。

 

「……トウキョウ租界のことはご存知ですよね、陛下?」

 

〈全て、シュナイゼルに任せておる。〉

 

「……なら、せめて本国へお戻りになって皆に健在を知らしめるべきでは?」

 

しかし、皇帝の答えは変わらない。

 

〈それも全て、お前達に任せてある。わしは俗事にかまけておる暇などないのだ。〉

 

「俗事?『黒の騎士団』との戦争も、四千万もの民間人が犠牲になった事態を俗事だと仰るのですか?」

 

〈そうだ、俗事はお前達の役目だ。〉

 

ライルはひじ掛けを砕かんばかりに握った。

 

「では、貴方は何が大事なのですか!?」

 

〈通信を切れ。〉

 

「待て!まだ、話は」

 

ライルはひじ掛けを殴りつけた。

 

「殿下、皇帝陛下には何か…」

 

「どういう考えだ?これだけの事態を俗事と言ってのけ、本国に戻ろうともしない男にどんな考えがあるんだ!?言ってみろ!!」

 

ゲイリーは詰まった。皇帝には何か考えがある。そこで止まっているからだ。

 

もはや、ライルはあの男を皇帝と呼ぶ気にはなれなかった。そもそも、E.U.と中華連邦との戦争だって最低限のことはしても、それ以外は殆ど自分でしていない。度々、玉座を空ける噂と繋がるのはもはや決定的だ。

 

「こうなったら、実力行使だ…」

 

「殿下?」

 

「直接問い質して、力ずくでも本国へ連れ帰る。」

 

これ以上、あの男を野放しにしておけばどうなるか分かったものではない。下手をしたら、現在よりも酷い状況になっても無関心だ。

 

最悪の場合、シュナイゼルに譲位させて『黒の騎士団』と和平交渉に入る。それはそれで火種は残るが、あの男をのさばらせておくよりはマシだろう。

 

「念のため、シュナイゼル兄様に連絡を。」

 

 

 

シュナイゼルはライルからの連絡を受けた。皇帝に謁見を申し込み、帰国要請の直談判をするという。

 

「分かった、君に任せよう。気を付けるように。」

 

〈はい。〉

 

シュナイゼルは水を飲み、考えをボードに巡らせる。

 

おそらく、レイシェフがライルの元へ来たのは………ライル自身も薄々は警戒しているはず。

 

単体の強さならばレイシェフの方が上だ。しかし、思いもよらない形で事が運ぶやもしれない。

 

「まあ、いい。こちらもチェックをかけることにしよう。」

 

 

 

ライルは皇帝に確認したいことがある、という形で神根島へ向かった。行くのは貴下の艦隊のみ。ここの守りはレイシェフに任せていた。

 

レイシェフがいれば、ルーカスだって迂闊な真似はしない。

 

そうして、式根島に近づきつつあった時……

 

「あら?後ろから高速で近づく機影……KMF?」

 

涼子が異変に気付き、確認を取る。

 

「識別信号は、『セント・ガーデンズ』です。」

 

「何?」

 

何故『セント・ガーデンズ』が?

 

何か、胸騒ぎがする。

 

「万が一のため、全軍に出撃を。」

 

命令に従い、全軍が出撃。

 

〈『セント・ガーデンズ』、一時停止をお願いします。貴官らは殿下の御命令に背いておられます。〉

 

親衛隊が呼びかけるが、相手は応じない。否、それに対する答えは。

 

砲撃だった。派遣された部隊のサザーランドが撃墜される。

 

「な!?」

 

ライルもこれには唖然とした。監視していることは想像していたが、まさか皇帝のお抱え騎士団があんな暴言に味方するのか!?

 

「ヴァリエール卿……まさか、初めから!?」

 

〈お察しの通りです。殿下がお会いした彼と契約しております。〉

 

契約!?まさか、V.V.と!

 

なんてことだ。レイシェフがあいつと契約していたなんて!こうなると、もしや………

 

〈ビスマルクもこちら側です。〉

 

こちらの考えを読んだかのようにレイシェフの答えが返ってきた。

 

「ヴァ、ヴァルトシュタイン様まで!?」

 

〈個人的には残念ですが、仕方ありません。皇帝弑逆の容疑で捕縛します。〉

 

皇帝弑逆?

 

「ふざけるな!そんな言い分が通ると思っているのか!?」

 

〈皇帝陛下が貴方を目障りだと判断したのですよ……好きな采配で貴方を殺せとね。〉

 

な!?皇帝ともあろう者が確たる証拠もないまま皇子を処断するだと!?

 

「あの男は、どこまで王の責務を蔑ろに!!」

 

ベディヴィエールを突進させ、ユーウェインに突っ込ませた。クラレントを抜き、こちらのカルンウェナンを受け止めた。

 

〈良い機体ですね。頭を叩けば、逃走するチャンスもある。しかし……〉

 

ベディヴィエールを押しのけ、ユーウェインは蹴り飛ばしてきた。

 

〈最悪の場合、貴方はご自分の妃達と特に目をかけている部下達だけは助けてもらおうと考えている…違いますか?〉

 

「な、なにを…!」

 

〈人間としてそれは間違った感情ではありませんよ。ただ…〉

 

機体を衝撃が襲った。周りを見ると、『フォーリン・ナイツ』と親衛隊のウォードがこちらをハーケンで抑えていた。

 

〈殿下…〉

 

〈残念だ、結局あんたも同じ穴の狢だっていうのか。〉

 

 

 

「貴方達、何をしているの!?それは反逆よ!」

 

レイはベディヴィエールを拘束しているKMF隊を攻撃しようとするが、親衛隊のグロースターが立ちふさがった。

 

〈隊長、申し訳ございません。真偽は別にして、皇帝弑逆の容疑があるのならば、殺害もやむを得ません。〉

 

「な!?あんな、口先を鵜呑みにする気なの!?」

 

〈レイ、なんか変な資料が送られてきてる!〉

 

優衣の報告を聞き、レイは寒気がした。

 

資料?まさか!!

 

「っ、そこまで徹底的に!」

 

 

 

〈…申し訳ございません、殿下!〉

 

〈せめて、投降を!例の農場で暮らすことだけは許していただけるように我々も談判します!!〉

 

〈あんたを信じた俺達が馬鹿だったよ!!〉

 

〈かくなるうえは、皇帝陛下と帝国への忠誠を優先します!!〉

 

親衛隊と『フォーリン・ナイツ』はライルを裏切り者として、或いは主君として命だけはという思いで裏切りにでた。

 

「やめろ!『セント・ガーデンズ』の罠だ!!」

 

ゲイリーは制止するが、既に混乱が広がって歯止めがかからない。

 

〈もう、いい……〉

 

ライルの声だ。まるで、全部諦めたかのような。

 

〈もう、良いですよ。ヴァリエール卿、私さえ殺せば全員の命は保証していただけるのですか?〉

 

「ライル様、待ってください!」

 

「早まらないでください!」

 

リーザと美水が制止するが、ライルは聞いていない。

 

〈ブリタニア人だけでなく、名誉ブリタニア人全員の命や今後の生活は?〉

 

〈戦死扱いにしますし、私の全権力を持って、補償いたします。ビスマルクにも協力させます。あなたの大切なお姫様達は特にね……名誉皇妃の方々も国元で租界の一般市民レベルの生活は保障します。皇帝陛下にも掛け合うし、ブリタニア系ひいては無事な国内大学卒業以後の身元引受人をヴァリエール家が引き受けても良い。〉

 

つまり、名誉ブリタニア人全員の命と生活を皇帝直々に保証させるということ。

 

〈…嘘ではありませんよね?〉

 

何を仰るのです、殿下。そんなの嘘に決まっているではありませんか!

 

こういう話に疑り深いライルらしくない。いや、もう悟ってしまったのだ。こうなってしまっては、助からないという事を。

 

〈皇帝陛下に誓います。と言いたいところですが…それでは貴方は信用しませんね。では、あなたの名誉ブリタニア人達の祖国とジュリア・ボネット……貴方の領民に誓います。〉

 

ライルは沈黙している。

 

〈クレヴィング将軍、スレイター卿、長野将軍……貴方達にも。もし、私が今の約束を違えるようであれば殺して構わない。〉

 

ゲイリーは戦慄した。何という自信だ。つまり、本気で約束を守る気だ。しかも、これではこちらは手が出せない。

 

もう、殿下は死を受け入れるしか……

 

「い、いやよそんなの!!まだ新婚旅行してないのに!!だったら、私も殺してよ!!」

 

優衣が反論した。

 

「私だって結婚して三か月も経っていません!だったら、新婚旅行先は地獄が良いです!!」

 

リーザも続いた。要するに、二人ともライルに置いて行かれるくらいなら死んだ方がマシだという事だ。

 

「私も、嫌です!こんなの出来すぎてる!!」

 

エレーナも異議を唱え、この証拠が余りによく出来すぎていると非難した。

 

「ライル様!いったん離れましょう!最悪、合衆国中華に逃れて事態の解決を図る手もあります!!私から父や星刻様を説得しますから!!」

 

美水が最も現実的な指摘をした。そう、普通に考えればそれが現実的だが……

 

〈もう、いい…〉

 

ダメだ。有紗達の安全が保障され、しかもライルに最も効きそうなもので誓われた。しかも、一度は取り戻した部下からの信頼をまた破壊されたことで、折れてしまった。

 

 

 

ライルは有紗達が言っていることが聞こえていなかった。聞こえているのは、離反した部下達の怨嗟。

 

結局、僕は信用されていなかった。いや、僕自身どこかで完全に信じていなかったんだ。自業自得かな?

 

どこかで、有紗にさえ抱いていた疑い。こういう事態になれば、みんな裏切る。皇子でなくなれば、嫌いになる。

 

ああ、結局みんなあの女なんだ。

 

この世界の誰も、自分自身を見てくれない。一度でいいから、地位などを抜きにした恋愛や友人関係が欲しい。そんな人いるわけないのに、ありもしないものに縋るとはなんと愚かな人生だったんだ。

 

最初からありもしないものを求め続け、そしてそれによって破滅する。似合いの末路だ……

 

ユーウェインが近づき、剣を振り下ろそうとした時……機体の拘束が緩んだ。

 

「え?」

 

コローレのヴィンセントが離反した機体のワイヤーを切り、更にフェリクスとセヴィーナが離反した部下の機体を攻撃した。脱出できるようにしたのは、手心だろう。

 

「フェリクス、セヴィーナ?」

 

なんで、二人が?ああ、そうか、フェリクスは分からないけど、セヴィーナは僕を殺すために親衛隊に入ったんだ。そうだな、こんな形でもジュリアの復讐ができるんだから。

 

〈おい、何をしている!早く、逃げろ!!〉

 

「…え?」

 

〈何、呆けてるんですか!?結婚早々有紗達を未亡人にしたいんですか!?〉

 

フェリクスがヴィンセントで殴り、その衝撃がライルを正気に戻した。

 

「え、あ……ぜ、全軍この場から離脱!!」

 

〈ケアウェントを目標に集結!殿下の潔白を信じている者だけでいい!他は『セント・ガーデンズ』に投降しろ!!〉

 

長野の指示で、全軍が正常な状態に戻った。離反したKMF隊はこちらを攻撃するが、ローレンスが前に出た。

 

〈ったく、あんたら同僚殺しさせて…絶対に死神に情状酌量してもらうから!!〉

 

オールレンジボマーを放ち、離反した正規軍のサザーランドが撃墜される。

 

が、側近四人のヴィンセントがこちらを狙ってきた。外観はオリジナルのままだが、それぞれにカスタマイズされているとみて間違いないだろう。

 

〈殿下、レイシェフの発言に嘘はないのでどうかお覚悟を!!〉

 

ドウェイン・ラン・デルヴィーニュ…『セント・ガーデンズ』、否レイシェフの相棒もしくは兄代わりとも言うべき男。実力、人格のどれをとってもダールトンやゲイリーと同格だ。

 

〈あなたのお妃様達はアールバリ家も責任をもって、今後の生活も補償いたしますから!〉

 

ヴィオラ・アールバリまで……レイシェフの再婚相手最有力候補だが、実力は専任騎士並……

 

〈いきなり、私達を未亡人にしないでいただける?〉

 

〈皇帝弑逆なんて、こっちは寝耳に水なんだ…〉

 

ハリファクスがヴィオラの、アストラットがデルヴィーニュのヴィンセントと斬り結んだ。

 

〈大体、そんなの唐突過ぎて逆に嘘くさいってのよ!!〉

 

〈少なくとも、納得いく答えが聞けるまでは信じないぞ!!〉

 

ヴァルとセルフィーのガングランが砲撃で『セント・ガーデンズ』の航空艦を一隻、沈めた。

 

「な、なんで…」

 

そこへデビーのヴィンセントがクローでサザーランドを斬り裂き、良二のヴィンセントも離反部隊のグロースターを戦闘不能にして、離脱に追いやる。

 

〈そんなの愚問でしょうが!!〉

 

〈殿下を信じているからですよ!!〉

 

しん、じる?僕を?

 

「何か、隠していたようですが少なくともクーデターじゃないでしょう!?」

 

〈ああ、それなら去年の時点でやっていた!!〉

 

フェリクスとセヴィーナは中でも派手に立ち回り、既に『セント・ガーデンズ』のKMF隊を何機も撃墜している。

 

「しんがりは我々が引き受けるから、早く殿下を連れて退避を!!」

 

〈クーデターじゃない何かを隠しているだろうから、それだけは聞きだすんだ!!〉

 

長い付き合いの中で、彼らはそれとなく察していた。ライルは何かを隠しているが、それはクーデターの類ではない。直観だが、確信していた。

 

となれば、有紗達に嫌われると思い隠していた。そう考えるべきだ。母親との関係も起因してか、中身は幼い部分が多いライルの精神ならあり得る。

 

〈ま、待て!まさか、死ぬ気か!?〉

 

ライルだ。流石に誰でも気づくか、この状況では。

 

〈ふん、余計な心配をするな。〉

 

〈何を言っているんだ!君は僕を殺すんじゃなかったのか!?〉

 

〈さて、何のことだ?〉

 

セヴィーナはまるで意に介していない。

 

 

 

「許したんですか?」

 

〈殺す気が失せた…あまりにもみっともないのでな。〉

 

「そういうことにしておきましょう。」

 

二人はユーウェインに突っ込んだ。途中でKMFが立ちはだかるが、それを退けてユーウェインに近づくが……

 

〈悪いが、邪魔はさせない。〉

 

〈恨みはないけど、死んでもらうわ。〉

 

クレス・ローウィングとアリア・フローベルのヴィンセントが間に入り、フェリクスは右腕を、セヴィーナは左腕を失う。

 

 

 

「やめろ!戻って来い!」

 

ベディヴィエールを二人の元へ向かわせようとするが、ヴェルドとコローレが二人がかりで抑えた。

 

〈無理だ、大将!!〉

 

〈ここで貴方が死んだら我々も終わりです!〉

 

「離せ!セヴィーナ、僕を殺す約束はどうしたんだ!?」

 

ジュリアが死ぬきっかけを作った自分を隙あらば殺す。そのために彼女が親衛隊に入ったのは周知の事実だ。なのに、ここでそれを投げ出すなど。

 

「フェリクス!君まで、どうして!?」

 

〈あなたがクーデターなんて考える度胸がないのは理解しているつもりですし、友人を助けるのに、他に理由がいりますか?〉

 

「な…!」

 

なんで、僕を信じているんだ?

 

〈貴方は自分で思っている以上に信頼されているんです。それに、流石に貴方のお守り役に疲れました。そろそろ後任が欲しいので。〉

 

 

 

二機のヴィンセントは腕を失いながらも奮戦し続けた。しかし、多勢に無勢。三機のウォードのMVSでセヴィーナは串刺しにされた。

 

「が……っ、ぁあ。」

 

ここまで、か。あの男を殺すつもりで親衛隊に入ったつもりだったのに、なんでこんなことをしたのだろう。

 

ああ、そうか。もう、許していたのか……黒幕の母親をライルが自ら逮捕した。その時点で既に許していたのだろう。それとも、初めから分かっていたことだったのだろうか。ライルが悪いわけじゃない。悪いのは、ジュリアをそういう方法でしか排除しようとしないあの女と、彼女を貶める貴族共だと。

 

今頃、ライルは泣きわめいているだろう。あのお人好しのガキのお守り役達はこれから苦労するかもしれない。自分もそうした苦労をしてきた。が……

 

ああ、悪くなかった。ジュリアもそういう気持ちで騎士になる話を受けたんだろうか。

機体と共に焼かれながら、セヴィーナはジュリアがライルの騎士になると決めた答えに自分なりの物を見つけたことに満足した。

 

 

 

フェリクスのヴィンセントもグロースターのランスで四方から貫かれた。

 

「あ…ぐ……」

 

全く、数奇な人生だ。大貴族の妾腹の息子として生まれ、どこかの貴族との結婚程度しか期待されなかった。それが、ライルの親衛隊として抜擢された途端に父達は態度を180度変えた。

 

腸が煮えくり返った。それ以来、殆ど実家に戻るのを避けていた。その中で、ライルの側にいるのは幸せだった。妾腹の息子と馬鹿にされてきた中、ライルはそこに関心を持たなかった。

 

皇子でありながら、自分の不足を素直に認めて頼るその姿勢を好ましく思い、自分が面倒を見ようと思いたって、ここまで来た。

 

大変だった…ああ、でも充実していたな。

 

口ではああは言ったが、お守り役がこれでお役御免というのは残念だな。

 

 

 

二機のヴィンセントの爆散をライルは目の当たりにした。

 

「あ、あ、ぁあ…うぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

絶叫と共にライルは意識を手放した。

 

なんで!?なんで!?なんで、あの二人が死ぬ!?僕が死ぬべきだったのに!なんで!?

 

なんで、ジュリアに続いてエクトルが!フェリクスとセヴィーナまで!?

 

僕のせい!?僕がいなければ、こんなことには!?

 

ライルの絶叫は全軍に響いた。KMFや航空艦のブリッジにいた人間はその意味が痛いほどに分かった。ライルの軍学校時代の親友で正に女房役とも言うべきフェリクスと、歪ながらも親衛隊の平民出身者の中では特に信頼されていたセヴィーナが命を落としたのだ。

 

絶叫後、ライルが意識を失ったためにベディヴィエールはそのまま落下していく。

 

「ちょっと待ってよ!」

 

セルフィーはガングランの両手のハーケンでベディヴィエールを絡め取り、ヴァルのガングランもそれを支える。

 

〈おい、しっかりしろ!〉

 

だが、ライルは答えない。完全に意識を失っている。

 

「駄目よ、完全に気絶してる!!」

 

〈砲撃部隊!ありったけの火力を敵に叩き込め!!カンタベリー、雷光は砲撃後に煙幕弾に切り替え!離脱する!〉

 

〈離脱するって、どこへ!?〉

 

部下の問いにゲイリーは怒鳴りながら答える。

 

〈追って伝える!とにかく、合流が先だ!〉

 

〈イエス・マイ・ロード!〉

 

〈全軍、ユーウェインを目標に一斉砲撃!撃墜できなくてもいい!時間を稼ぐんだ!!〉

 

長野からの命令も来て、離反しなかった全員が一斉に砲撃。艦底部から顔を出した雷光とカンタベリーも砲撃し、『セント・ガーデンズ』のKMF隊を何機か撃墜、更にハドロン砲を撃てるKMFはありったけのパワーで海面を撃って更にスモークを展開して全軍は撤退していった。

 

 

 

レイシェフは相手側の撤退に全力を出す姿勢を高評価した。あれだけ徹底的に撃っておけば、しばらくこちらは追跡できない。スモークと水蒸気で視界が悪く、追えないのも事実だ。

 

「それにしても、こちらも随分と派手にやられたな。」

 

相手の被害の方もかなり大きいが、こちらも航空艦を二隻やられ、KMFも3割近くがやられてしまった。

 

「しかも、離反した者はKMFだけでも二割弱。殿下、貴方はご自分で築いた信頼を甘く見ておられたようですね。」

 

〈ヴァリエール卿、負傷したパイロットの救助も終わりました。〉

 

〈潜水艦が一隻、援軍として向かっております。〉

 

「よし、その潜水艦には負傷者の収容を専任させろ。我が隊はライル殿下を追撃する。」

 

〈イエス・マイ・ロード!〉

 

 

 




皇帝嗜虐の容疑をかけられたライル、一部ですがKMF隊も離反してしまいました。

流石にライルもこれには折れてしまいました。何より、エクトルと同じくらい大きな存在のフェリクスとセヴィーナが死んでしまいました。

実は二人共、最初から死ぬ予定でした。レイシェフは頂いた設定で、それでスザクにとってのビスマルクというイメージで行かせて貰いました。

掲示板時代から、『セントガーデンズ』戦はやってます。
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