コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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かなり、みっともないライルが入ります。幻滅するかもしれません。


BERSERK-58『忠義と信頼』

意識を失ったライルはベディヴィエールのコクピットから引っ張り出され、ヴァルがおぶって医務室へ運んでいた。そこに……

 

「ライル様!」

 

ライルの妃達が飛んできた。有紗とリーザ、優衣、美水、エレーナは肩で息をしており、全速力で走ってきたのが分かる。

 

「あの、ライル様は!?」

 

「落ち着け。」

 

軍編成時からの古株の中年の女医が有紗達をなだめる。

 

「外傷は見られない、脳も特に異常はない。ただ、フェリクスとセヴィーナが死んだ精神的ショックの方が心配だ。」

 

「え?」

 

「精神的なショックからの防衛本能のようなもので、記憶喪失に陥るっていう症例があるんだ。」

 

ヴァルはその意味が分かった。

 

「つまり、今回の場合はフェリクスとセヴィーナが死んだのが自分のせいだと思い詰めてしまうということですか?」

 

「それもある。酷ければ、赤ん坊同然になっちまうか、二人が死んだことを受け入れられずにそこで止まっちまう可能性もある。クロヴィス殿下の母君も、それに近いもので心が壊れてしまわれたんだ。」

 

 

 

有紗は茫然と聞いていた。つまり、この女医の言う通りならば……

 

「つまり…ライル様が目を覚ましても、私達みんなのことを忘れてしまっているかも、ということですか?」

 

「あくまで可能性の一つだ。いずれにしても、まず目が覚めないことには始まらない。ということだから、殿下の尋問と拘束は目が覚めてからにしていただけませんか?これは、医師としての意見です。」

 

振り返ると、ゲイリーが数人の武装兵を連れて医務室に来ていた。

 

「将軍……ライル様を殺すんですか!?さっき、無実を信じているなら着いて来いなんて言っておいて!!」

 

「ライル様の考えを邪魔できるチャンスとでも思ってるの!?この裏切り者!!」

 

優衣も激高して、ゲイリーを罵る。

 

「私達を裏切り候補だとか言っておいて、自分達は何!?皇帝陛下への忠誠で正当化するのね!」

 

リーザも護身用の短剣を抜いて、ライルの前に出る。美水も有紗と一緒にベッドで眠るライルの側に着く。

 

「絶対に渡さない!渡すくらいなら、一緒に殺して!!」

 

「…分かった、落ち着け。目が覚めた後、問い質す。拷問や自白剤はしない。お前達、皇妃の中から一人立ち会ってもいい。」

 

 

 

レイシェフはビスマルクと通信をしていた。

 

〈そうか……〉

 

「容疑という形だ。計画が成るまでに抑えておけば、しかる後に釈放もできたのだが。」

 

想像以上に抵抗されてしまった。離反した部下達も真偽の確認や帝国への忠誠という形で最低限の名誉を守れるようにした。

 

〈……やはり、ライル殿下に甘いな。〉

 

「何?」

 

〈私の知るお前なら、躊躇なく命を奪っていた。なのに、殿下の部下や妃達まで守ろうとするとはな。〉

 

…確かに、随分と甘い。

 

自分と真逆だからだろうか?本当に愛する女性と添い遂げたくて、それを親に邪魔されながらも切り抜けられたのが。

 

あの頃、レイシェフに少しでも両親を裁こうとする意志があれば…………

 

「最悪、弑逆容疑で殺すことになるだろう。」

 

〈後悔だけはするな?〉

 

「ああ。」

 

 

 

ライルが目を開けると、そこは見覚えのある天井だ。

 

「ライル様?ライル様!」

 

誰かが呼んでいる。ぼやけた視界でよく見ると、そこにいたのは

 

「あり、さ?」

 

「はい。良かった…私のこと、分かるんですね?」

 

「…ぁあ、どうなったんだ?」

 

記憶が混乱している。何故、ここはケアウェントの医務室だ。どうしてここにいるんだ?

 

「…覚えて、ませんか?皇帝陛下を連れ戻そうと、神根島に行こうとしたら『セント・ガーデンズ』に襲われたこと。」

 

……そうだ、トウキョウのあの惨状を俗事で片づけるから。あの男を連れ戻そうとしたら、『セント・ガーデンズ』が追ってきて皇帝弑逆の容疑を主張してきたんだ。親衛隊と『フォーリン・ナイツ』からも裏切りが出て、フェリクスと…セヴィーナ…………

 

「ぁ、ああ…フェ、フェリクスとセヴィーナは?あの二人は、追いついてきたんだろう?」

 

有紗は何も言わずに、顔を背ける。

 

なんで、そんな顔をするんだ。それじゃあ、あの二人が

 

「そんな……そんなはずないだろう。フェリクスが僕を置いて、セヴィーナだって僕を殺さないで勝手に死ぬなんてそんな、こと……ぁ、ああぁぁ!あぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

 

「ライル様…!」

 

有紗が何も言わずに抱きしめてきたが、その温もりさえ今のライルには届かず、慟哭だけが医務室に響いた。

 

 

 

シルヴィオは旗艦でライルが皇帝に反旗を翻したという未確認情報を掴んだが…

 

「唐突過ぎるな。」

 

「同感。」

 

木宮が紅茶を飲んで、一息つく。

 

「皇帝陛下も神根島に籠ったきりよ?」

 

先程、ライルの件で皇帝に問い詰めたが、門前払いを喰らってしまった。

 

「……兄上の方はどうなっているんだ?」

 

「『黒の騎士団』と何か交渉に入ったみたい。多分、停戦条約でしょうね。」

 

それは確かに間違っていない……シルヴィオも現場単位で戦闘停止を訴え、各ブロックから支援を行っている。

 

「『黒の騎士団』との戦争を、俗事だと言ったそうだな。」

 

「ええ……」

 

とても、皇帝が言うようなことではない。

 

「……直接陛下に掛け合うか、ライルを重要参考人として確保する。どちらにする?」

 

木宮が顎に手を当てて、考えるポーズをする。

 

「そうね、もしライル殿下の話がでっち上げなら、問い詰めに行ったあたし達もクルシェフスキー卿に攻撃されかねないわね。」

 

そう、皇帝の側には『ナイトオブトゥエルブ』モニカ・クルシェフスキーがいる。彼女の直属部隊と皇帝警護の『ロイヤルガード』もいる。確かに、相手にしたくない連中ばかりだ。

 

「……ライルを探す。レイシェフより先回りして、問い詰めるぞ。」

 

 

 

時間は少し先を取り、シュナイゼルは『黒の騎士団』との交渉が一区切りした後、アヴァロンに戻った。その途中で…

 

「ライルが陛下への弑逆…」

 

「…元々反感を抱いているような節はありましたが、本当でしょうか?」

 

カノンは半信半疑だ。そして、『黒の騎士団』旗艦で救助した第二皇女コーネリア・リ・ブリタニアも同じ意見だ。

 

「ライルがクーデターを行うのならば、『ブラック・リベリオン』で発生した名誉騎士団の叛乱に乗じるのが最も確率が高いはず。レイシェフがその程度のことも分からないとは思えません。」

 

そうだ。レイシェフがそれを分からないはずがない。もし、ビスマルクがいなければ彼が『ナイトオブワン』になっていたと評価する貴族は多い。そんな彼が……

 

これはもしや……

 

シュナイゼルの頭で一つの仮説が組み立てられた。その通りならば、ライルは皇帝に目を着けられ、それらしい罪状で殺すようにレイシェフが命令をされていたということになる。皇帝ともあろうものが、事実無根の罪で皇子を処断するなど……

 

俗事だから、ですか。

 

哀しいが、私にできることは君が生き延びてくれるように祈ることだけだよ。ライル。

 

先ほどスザクがもちかけた話において、これは僥倖だった。それを実行する上で障害はまずビスマルクだ。レイシェフまでいたとあっては、とも思ったがライルの方を担当しているならばそれは好都合だ。

 

最悪、相討ち。万が一にもライルがレイシェフを撃退すれば、こちらは無傷で障害を排除できる。

 

「何、彼が無事に生き延びてさえいれば手は打てる。私が皇帝になりさえすれば、ね。」

 

もっとも、ライルの性格からしてアレを支持するかは微妙なところだ。噛みついてくる可能性も高いだろう。

 

さて、その場合はどうするべきかな?

 

 

 

時間を戻し……セラフィナは会議室で机をたたいた。

 

「何かの間違いに決まっています!兄さんが陛下を殺そうとするなんて!!」

 

そのまま立ち上がり、出ようとするがウィンスレットが腕をつかんだ。

 

「セラフィナ様、どちらへ行かれるのですか?」

 

「兄さんの所に決まってるでしょう!?式根島近くの島に隠れているはず!すぐに向かって、助けないと!」

 

「お気持ちはお察ししますが、皇帝陛下弑逆を企てるのは皇族といえど死罪を免れません。それを匿ったとあっては。」

 

「無実だったら、どうするんですか!?秀作だって殺されるのに!!」

 

セラフィナにとって、秀作が第一だった。ライルの無実は間違いない。なのに、レイシェフほどの男が不確かな情報でライルを陥れようとするなんて。

 

「これが陰謀なら、犯人は父上です!」

 

セラフィナが皇帝の陰謀だと言い切った態度に全員がギョッとした。

 

「セラ!」

 

エルシリアが窘めるが、セラフィナはこちらを睨む。

 

「姉さん、父上が玉座を離れている噂はご存知でしょう?もし、兄さんがそれで何かを掴んでいたなら?」

 

「…口封じのために、濡れ衣で殺そうとした。と言いたいの?」

 

セラフィナは無言で頷く。

 

 

 

ライルはゲイリー達の尋問を受けていた。

 

「では、陛下への弑逆という意志はないのですね?」

 

「ああ、反感があったのは認める。」

 

「反感、とは?」

 

「…君だって、聞いただろう?トウキョウ租界のことを何と言った?」

 

『俗事』と切り捨てた。あの態度がライルの皇帝への、父への反感を決定的にした。

 

「E.U.と中華連邦の件だって無関心、今回の件も無関心。そんな男をのさばらせたらどうなるか分からない。だから、どうしてもと言うのならば連れ戻してシュナイゼル兄様に譲位していただく。それを視野に入れていた。」

 

「……ご自分が、とは考えないのですね?」

 

「今の私がなったところでシュナイゼル兄様を皇帝に推挙する連中が敵になる。勝てるわけないだろう。」

 

ゲイリーは沈黙した。だが、ライルは……

 

「でも、どうせ僕は陛下に楯突いたんだ。さっさと殺せよ。誰でもいいから僕を殺せよ!!首を持って帰れば、陛下がブラッドリー卿の後釜で『ナイトオブテン』にしてくれるかもしれないだろう!?」

 

もう、どうでもいい。

 

「殿下、少し落ち着いて!」

 

「何を落ち着けと?最初から、有紗達との結婚も僕を油断させる罠だったんだよ!その可能性を考えて警戒していたさ。だが、結果は御覧の通りだ!」

 

「そ、それは…!」

 

「もう、どうでもいいよ!皇族でなくなった僕に価値なんかない!本心ではいい気味だ、とでも思ってるんだろう!?異端児らしい末路だと!!」

 

全員の肩がこわばるが、ライルはそれさえ目に映らない。

 

「どうせ、みんな僕が皇族だからついてきてるんだろう!?皇族じゃなかったら、僕のようなワガママ小僧に付き合う義理なんかないじゃないか!!」

 

そうだ。どうせみんな、僕の皇族のブランドが好きなだけ。あの女が代表例じゃないか。

 

「あの女の手下の十人か二十人どうせ、いるんだ!!主君の仇討ちをしろよ!」

 

既に艦内にこの放送は流れている。誰でもいいから、殺しに来てほしい。

 

「僕が自決したって、意味ないからね!みんなで一斉に裏切れば、助かるんだから!!」

 

そこへ、誰かが入ってきた。雛だ。後ろに秀作もいる。

 

「……いい加減にしなさいってのよ、この大バカ野郎――――!!!」

 

 

 

雛は思いっきり、ライルを殴り飛ばした。

 

「か、川村?貴様、殿下に」

 

「うっさい!今、この腑抜けに用があるのよ!」

 

自分でもよく分からないくらいに腹が立ち、ライルの胸ぐらをつかむ。

 

「さっきから黙って聞いてれば……ビイビイ、ギャアギャア泣き言ばっか!んなこと言う暇あれば、あたしらお抱え組に思い当たること全部吐け!」

 

「ぁ…な、なんで…僕を、殺せば、出世…」

 

「ぁぁぁぁぁ、もうかんっぜんに腑抜けてる!!!寝返ってあんたの首持って帰るなら、あそこでやっとるわ!!あんたが常々言っていた特区の事件と同じだ!!皇帝弑逆やるなら、去年の反乱か『タレイラン』と一緒にやるのが普通でしょうが!!」

 

大体、なんでこんな大変な時期に皇帝を殺す?余計混乱が大きくなるだけではないか。

 

「あと、ヴェルドとコローレからの伝言。『ケツまくって逃げるなら、今頃ここにいない』だって。」

 

あの二人の名前が出て、ようやくライルは少し落ち着きを取り戻したようだ。

 

「あたし個人としても、あんた裏切ったら助かってもウェルナーに嫌われるだろうから。もう少し付き合ってあげる。はい、秀作タッチ。」

 

秀作にライルを押し付け、秀作も胸ぐらをつかむ。

 

「おい、お前俺が魔物どもの英雄になるのが一番堪えられないってのを忘れてないか?」

 

「え?」

 

「確かに、魔物共の敵で居続けたい。逆にお前を殺して、セラとクレヴィング将軍を一度に敵に回す。そっちの方が耐えられない。」

 

「しゅう、さく……」

 

「だから、魔物共の方は暫く除外して、将軍とセラのためにもうしばらく付き合ってやるから。喚くのは後にしろ。」

 

そして、数回深呼吸して……

 

「あと、俺からも……一発くれてやる!」

 

鳩尾に想いきり、蹴りを入れられて息が詰まった。

 

「っは…!っか、…!」

 

「貴様ら、黙って聞いていれば殿下に」

 

「それじゃあ、追手が来るまでずっと喚かせるのか?こいつが動けないなら、お前らが代理でやるって発想がなんでできない?」

 

「ぁ、そ、それは…!」

 

「残った連中で、少なくともこいつがシロだと思ってるのも多い。お前らも、親衛隊と正規軍をまとめるくらいできるだろうが。」

 

一介の親衛隊パイロットに正論を次々とぶつけられ、幕僚達は黙るしかなかった。

 

「ちなみに、こいつの妃達は衛生班の手伝いや情報の分析を自主的にやってる。他も似たり寄ったりだ。アマチュア未満か、お前ら?」

 

そして、ゲイリーがそれに答えた。

 

「秀作、確かにお前の言う通りだ。殿下の方は飯田達にもうしばらく任せ、我らは追撃に備える。」

 

「…ったく、シャキッとしろ親父。」

 

「…今、何か言ったか?」

 

「え?」

 

今、なんて言った?

 

俺は、この男を…なんと。

 

「はいはい、あんたも早く行く。それと殿下、あんたもサッサと正気に戻る。これ切り抜けたら、皇妃様と好きなだけ楽しんでいいから。」

 

 

 

一時間後、会議室に主だったメンバーが集まった。

 

「……すまない、みっともない姿を見せてしまった。幻滅したなら、降りて良い。」

 

が、そこでヴェルドがげんこつを食らわせた。

 

「アホか、常日頃煩悩ばらまいてる俺と兄者と比べりゃあんたのは若いトップのストレス爆発みたいなもんだ。」

 

「た、確かに……付き合いが短い私でもこの二人の趣味に比べればライル様のあれは今まで溜まったものが破裂したようなものですね。」

 

リーザがやや引きつりながら、同調する。

 

「だ、そうです。それに、フェリクスとセヴィーナはもういないんです。あの二人に甘えられない殿下のお守り役は引き継いであげるからしゃきっとする。」

 

コローレが厳しい現実を突きつけながら、ライルを激励した。

 

「…そうだな。まず、どこから話そう。」

 

レイが根本的な質問をする。

 

「皇帝弑逆についてお願いします。身に覚えはないんですね。」

 

「……ない、と言えばない。ただ、陛下が今回のことを『俗事』と言っただろう?」

 

「ええ、つい数時間前です。それにシマネでの戦闘中にもライル様は陛下が戦場に来ないと言い切っていましたから。」

 

同席した美水もうなずいた。他のメンバーもうなるだけだ。

 

デビーがライルの意志について問う。

 

「殿下、貴方は神根島で陛下に謁見し、本国へ連れ戻すつもりだった。それは確かですね?」

 

「ああ、『俗事』について問い詰めるつもりだった。どうしても取り合わないなら実力行使で連れて帰る。最悪シュナイゼル兄様に譲位させ、『黒の騎士団』との休戦条約の締結を行うことも考えていた。」

 

「それ、殆どクーデターじゃない。」

 

「これがE.U.ならば皇帝としての不信任決議案を取れたのだろうがな。」

 

セルフィーとヴァルの意見にライルはつまる。

 

「だが、あの男を殺そうとまでは考えていない。」

 

秀作は静かに分析する。

 

「まるっきり冤罪でもなかった。が、物証もないからとぼけることはできる。」

 

「……この共犯者達のリスト。みんなライル様の知り合いばっかり。」

 

優衣が見せた証拠は、協力者のリスト。アルバートフ家、ヴィオレット家、クレヴィング家、ウィスティリア家……

 

先日の事件で当主が失脚したクラウザー家や没落した家は含まれていない。だが…却って見え透いている。

 

「裏を取っている最中だけど、やっぱりそれといったものはまだ出てこないわ。」

 

涼子も同調し、リーザもうなずいた。

 

「父やヴェランス大公閣下にも助力をお願いしています。この証拠の正統性を覆せれば。」

 

「皇帝自らが事実無根の罪をでっちあげて、皇子を排斥しようとした。『セント・ガーデンズ』の撃退も正当防衛にできるか。」

 

良二の分析通り、それならばいまするべきは時間稼ぎ。相手も入念にでっちあげたのだろうが、どうにかして時間を稼げば覆せる。

 

「その前に、陛下がこんな強引な手を使ってまで何故貴方を排除するのか。」

 

レイが根本的な疑念を口にして、見つめる。

 

「伊達に貴方に抱かれていません。前々から、貴方が皇帝に反感を抱いていたことはここにいる人は大なり小なり察しています。」

 

レイに詰め寄られ、ライルは即答できずにいた。

 

「教えてください。いったい、何があったのですか?」

 

横から、有紗も手を重ねてきた。

 

「お願いします。」

 

ここにいる者は皆、私を信じている。だからこそ、真相を知りたいのだろうか……

 

最期に聞いた、フェリクスの言葉が蘇る。

 

どこかで、信じていなかったのだ。彼女達を……だが、今は心から信じようとしている。足元にあるトランクがその証拠。

 

「…分かった。ただ、最初に言っておきたい。」

 

「なんです?」

 

幸也が訝る態度を取る。

 

「……この中に入っている物は私自身も半信半疑で、荒唐無稽な話。だが、そう考えれば今まで私が抱いていた疑念に説明がつくものでもある。それと、他の者には口外しないでほしい。」

 

「…どういうことですか?」

 

デビーが当惑するが、ライルはトランクケースを開ける。

 

「口で言うより、見てもらった方が早い。」

 

 

 

ライルが事の真相を明かしていた頃………シュナイゼルと『黒の騎士団』の間での停戦条約の締結及びエリア11を戦闘禁止区域に指定する。

 

それは当然だ。こんな状況下で日本を奪還しても、超合集国は一千万以上の難民を抱え込むことになる。なら、ブリタニアとの合同で人道的支援をした方が良い。

 

そして、『黒の騎士団』からはゼロの死亡が発表された。ゼロはトウキョウの戦闘で負傷し、治療の甲斐なく息を引き取ったとのことだ。

 

海棠はこの放送を聞き、腕を組む。

 

「どうも、臭い。」

 

「ああ…死んだという発表以外何もない。」

 

合流したバルディーニも同意見だ。

 

これはまるで、『ブラック・リベリオン』での処刑のような状況だ。

 

 

 

クラリスはこの状況を見て、首をかしげる。

 

「なんか、出来過ぎてませんか?」

 

池田がその問いについて…

 

「ええ、何かがおかしい。トウキョウ租界がああなった以上、停戦は致し方ない。」

 

そう、停戦自体はおかしくない。だが、問題はゼロの死亡だ。

 

組織の運営自体は星刻や藤堂もいるから、なんとかなる。だが、肝心のCEOはどうする?

何より、ゼロは精神的にも実質的にも『黒の騎士団』の支柱だ。それを失うのは、致命的だ。そして、CEOの後任はどうするのだ?

 

 

 

ゼラートはゼロの死亡に懐疑的だった。奴自身も相当に胡散臭い。だが、妙だ。先ほど、扇達に確認を取ったがはぐらかされてしまった。

 

「中佐…」

 

「何かあるな。」

 

ゼロ自身に何か後ろめたいことがある。ゼラートはそれを疑っていた。だが、扇達もそれをはぐらかそうとするとなると。

 

シュナイゼルあたりが、何かしたのか?

 

 

 

斬莉の部隊に同行していたラルフは扇に確認をしていた。

 

「扇さん、ゼロの死亡は本当なんですか?」

 

〈ラルフ…ああ、本当だ。〉

 

何か、様子がおかしい。本当に死んだのか?

 

「なら、せめて遺体を見せてください。」

 

〈すまない、それはまた後にしてくれ。これからシュナイゼルと改めて会談を行うんだ。〉

 

通信を一方的に切られた。

 

「扇さん…いったい。」

 

本当にゼロは死んだのか?この状況、まるで『ブラック・リベリオン』後の処刑の発表みたいじゃないか。

 

 

 

「なんなの、これ?超能力?」

 

ライルから一連の話を聞き、資料を見た優衣の第一声がそれだった。

 

「だから、最初に言っただろうが…」

 

リーザも半信半疑で問う。

 

「仰った意味が分かりました。けど……」

 

「みなまで言わないでくれ………本当に私も半信半疑だし、当たってほしくないんだ。」

 

「ですが、そう考えれば辻褄が合うのも事実ですね。何より、多すぎる。」

 

長野の分析は的を射ていた。

 

「シンジュク事変とオレンジ事件……この2つだけでも、確かにおかしいですよね。」

 

クリスタルの分析通り、この2つだけでもライルが見せた資料…ギアスと呼ばれる超常の力の存在を前提に話を進めると辻褄があう。

 

「殿下は、ホテルジャックもそうだと?」

 

良二の疑問はもっともだ。彼らもゼロと接触している。

 

「……決起自体なのか、自決だけなのかは分からない。ナリタも、先行して構成員にギアスを使って操れば、包囲網の中で待ち伏せることはできる。」

 

その後の片瀬の自決、そちらがギアスか本当に自決か…或いはゼロが前もって仕掛けた罠でタンカーを爆破されたのか、こちらはその三択だろう。

 

その中、話を聞いていた涼子が強張りながら、声を上げる。

 

「ちょっと、待ってください……このクロヴィス総督とバトレー将軍が裏で研究していたギアスっていう魔法みたいな力が本当にあるとして、ゼロが何かの方法でこれを手に入れたと仮定して進めると…まさか。」

 

涼子の言っていることの意味に、全員の顔が青ざめていく。

 

「…ああ、おそらくユフィもやられたんだ。」

 

そう、最大の謎であるユーフェミアの日本人虐殺。それがこのギアスという力によるもので、ゼロが使ったとするならば説明がついてしまう。

 

ライルはテーブルを殴りつける。

 

「確かに効果的だよ…!ユフィの信頼を根本から破壊して、自分は『正義の味方』として支持を得られる!!物証だって残らないんだからな!」

 

卑劣にも程がある。そればかりか………

 

ゲイリーがエリア11以外で起きた事件の資料を見る。それらは全て、ライルが疑念を抱いた事例の数々だ。

 

「『タレイラン・チルドレン』のアルハヌス卿の自決、『ミカエル騎士団』総帥マンフレディ卿の自決、シャイング家の心中事件。殿下はこれらもギアスとやらの仕業だとお考えなのですか?」

 

「………ああ、アルハヌス卿の自決はジヴォン卿から行動と言動の不一致という証言を得ている。マンフレディ卿も自決は考えにくい。シャイング卿がギアスで自決させた、という前提が入らなければ。」

 

「おいおい……十年近く鍛えてくれた恩人をそんな形で。しかもシャイング家の奥方とお嬢様まで?噂じゃ、仲良かったっていうぞ?」

 

ヴェルドのいう通り、殆ど面識はなかったがマンフレディはシンと良好な関係で、シャイング家など、シンは義妹アリスと結婚する予定でもあった。

 

「お待ちを。まさか、ヴィヨン卿とサン・ジル卿も?」

 

マンフレディの部下だったテレサ、ゴドフロアの部下だったマルセルも似たような顔をする。当然だろう。

 

「あのお二方は分からない。直接殺した可能性もある。」

 

「そう、ですか…」

 

テレサは一応の落ち着きを取り戻して、引き下がった。

 

「私もシャイング卿とはパーティーでちょっと会うくらいでしたけど、母君のマリア様とご息女のアリス様との仲も、血縁がなくても本当の家族のように仲が良いように見えました。そんな人達を…」

 

流石に結婚か側室が考えられていたリーザはシンと面識があったために困惑している。

 

「……俺は家族とやらを理解できないからわからん。まあ、家族や恩人だからこそってやつなんじゃないのか?」

 

「何よ、それ…つまり、好きだから死んでってやつ?」

 

「あてずっぽうだよ。」

 

秀作の分析を雛が相槌を入れるが…

 

「はぁ、まあ確かにこのオカルトがあるって前提で行けば、使った人間に都合のいい展開ばかりね。」

 

「仮にこの力が実在して、何か条件があるのなら多分ゼロとシャイング卿は眼か耳を経由して、脳に作用するのだろうね。いずれも直接顔を合わせているような場面だ。」

 

「……その分析ならアルハヌス卿は?ジヴォン卿が使ったという線も出てきますが。」

 

コローレの問いにライルは詰まった。そう、あの場面で実はオルドリンが使ったという線も捨てきれないのだ。

 

「…そうであってほしくないのが本音だ。もう一つは、陛下に通じているギアス能力者がジヴォン卿の死角からアルハヌス卿に使った。多分、アルハヌス卿の眼か耳で脳の身体を動かす機能にのみ働きかける、そんなところだろう。」

 

そう考えれば、言動と行動の不一致に説明がつく。そして、シュバルツァーも。

 

「そして、マリーもおそらく。例えば、自分の奴隷にするような。シュバルツァー将軍がそれにやられており…ジヴォン卿達はそれに気づいて、マリーの元を離れた。」

 

そして……セルフィーがもう一つの資料を見る。

 

「で、この女と…殿下がE.U.で買った本にあった『森の魔女』が同一人物だと思っているのね?」

 

「大昔の文献の挿絵だから確証はないが、仮に『森の魔女』が実在しているならば、兄様はその秘密を解き明かして継承権争いで優位に立とうとしたんだろう。」

 

「そりゃ、そうだ。不老不死なんて、人類の夢だ。」

 

ヴァルの言う通り、誰でも食いつくだろう。

 

「…………彼女とギアスという力、そして神根島を始めとした天領、竜門石窟などの類似した遺跡…おそらく、各国への侵攻はこれが目当てだとバトレーも考えていた。」

 

「そんな……そんな、訳の分からない力と遺跡のために、私達は?」

 

有紗の言葉が震え、ナンバーズ出身者は顔を伏せる。その姿に、ライルは何も言えなかった。それでも……

 

「すまない、調べれば調べるほど疑わしくなり、こんなことに巻き込んでしまって。」

 

「……殿下に責任は」

 

「あるよ……こんな訳の分からないオカルトのための戦争の片棒を担いだんだぞ?」

 

長野が擁護しようとするが、ライルは聞かなかった。そして……

 

「……この力がブリタニアをおかしくして、あの男がかなり深く絡んでいると私は睨んでいる。」

 

「口封じってことか。」

 

「いずれにしても、ヴァリエール卿達は我々を逃がさないでしょうね。」

 

「……こんな話、本気で信じるのか?」

 

ライルは自分で明かしておいて、改めて荒唐無稽だと思ったのに既にレイシェフを迎え撃つ構えになっているレイ達を見る。

 

「ライル様が皇帝弑逆を企てていなかった。それが分かっただけで充分ですから。」

 

「ええ、だったら今度はあいつらを追い払って全部巻き上げてやりましょう。」

 

レイに続いて、優衣が立った。そして、雛がいい加減に手を振る。

 

「大体、真っ先に寝返りそうなあたしがあんたを信じてるんだから。」

 

「はめられた仕返しだけでも、やる価値がある。」

 

秀作までが同調し、ゲイリーは苦笑した。

 

「やれやれ、本当に団結力だけはブリタニア随一だ。その分、不良集団だが。」

 

「ならば、我々年長はその保護者ですか?」

 

長野の冗談に会議室内に軽い笑いが溢れた。

 

「…………ありがとう。」

 

「ライル様、何か?」

 

有紗が問うが、ライルは「何でもない」と返した。

 




フェリクスとセヴィーナの死を経て、ある意味で自分がちゃんと信頼されていたのを実感したというライル。皇子様だから、じゃなくて…これまでの愚直で不格好なやり方で有紗やレイの信頼を得ていました。ここは愚直さで信頼を得ていたスザクやレイラに近いかもしれませんね。

少なくとも『使い捨ての駒』とか『結果さえ出せばそれで良い』ゼロとは違い、『恨まれる身の上だから信用されるために手を惜しまなかった』ライル…信用と信頼は得ていたが自分の身の上から相手にそれを向け切れていなかったのは未熟の証?

ゼロも、扇と藤堂にだけは特区含めて打ち明けていればと思う時があります。それはそれでシュナイゼルに別の手を打たれて、負けていた可能性も高いけど。

イメージとしてライルはゼロとスザクの間の半端者。半端であるが故に名誉や平民の信頼を得ています。ただし、精神の話をすれば『みんなが好きなのは僕の地位』、『僕が皇子様だから付いてくる』といういじけた子供です。母親という身近な存在がアレだったからね。

ライルは信頼できるメンバーにのみ、ギアスのことを明かしました。

只、ゼロの件についてはロンスヴォーは疑っており、扇達はゼロとは別種の爆弾を抱える羽目になっています。



そして、シュナイゼルはスザクに持ちかけられたあの話の上で、レイシェフがいないのが好都合。そのまま潰し合ってもらってます。
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