ライルが立ち直った前後、ゼロの死亡と休戦条約の締結はライルの耳にも入った。
「本当にゼロは死んだのか?」
ライルはその話を信じられなかった。大体、あのゼロが死んだ後でもまた三人目のゼロが出てきたらどうなるのだ?
「あ、誰も素顔を知らないから…仮面さえあれば。」
そう、有紗の言う通り仮面とマントさえあればゼロを名乗れる。それに死んだという発表以外は何もない。逆に怪しい。
「まさか、兄様が何か仕込んだ?」
シュナイゼルならやりかねない。漠然とした考えだが、ライルはそう考えていた。
「とにかく、暫くブリタニア側とのコンタクトは避けよう。」
こちらは『セント・ガーデンズ』だ。現在、彼らは式根島から程遠い御蔵島にいた。ここは元々過疎化が進んでおり、ブリタニア当局でさえ基地化するにも値しないために放置し、戦前とほとんど変わらない状態だ。
皮肉なことに、トウキョウに属しながらもあまりに小さすぎて兵站拠点としても弱すぎたことがこの島の住民達を戦前の状態で守っていた。
「まさか、式根島の近くにいるとは思わないでしょう。」
普通ならそうだが、レイシェフやビスマルクとなれば見つかるのも時間の問題だろう。
「来たら、すぐに移動できるようにしておいてくれ。住民を巻き込みたくない。」
「イエス・ユア・ハイネス。」
住民達にはこちらがブリタニア軍の裏切り者に追われていることで話を通し、万が一に備えて屋内に非難するように伝えてある。
「殿下の動向は?」
レイシェフの問いにデルヴィーニュがパネルを操作する。
「普通に考えれば、エリア11を離れるだろう。だが、今彼らは皇帝弑逆の容疑で追われる身。下手に友軍に接触すれば、捕縛されることを警戒する。」
「エリア11内に留まっているという事ですね?」
クレスの問いにデルヴィーニュは無言でうなずき、ライルが潜伏するであろう島を広げる。
「太平洋側にある島で式根島から離れて、ホッカイドウかキュウシュウに近い島に逃れるのが定石だ。」
「でも、それだと広くて逆に探すのが大変ですよ?その間に証拠の捏造を突き止められたら、立場が逆転してしまいます。」
そう、アリアの言う通りあの計画が成るまでにライルを叩くのがこちらの条件でもある。ばれれば、こちらが終わりだ。我ながら危ない橋を渡る選択をしたものだが、潜在的な脅威だとV.V.が警戒していたライルを野放しにするのは危険だった。
「…レイシェフ様はどう思いますか?」
ヴィオラの問いに、レイシェフは式根島周辺の小島をいくつか拡大する。
「私ならば、式根島周辺の島に隠れる。式根島、より正確には神根島に近いこの小笠原諸島のどこかだ。」
敢えて、式根島近くに隠れる。しかも、式根島以外に基地は少ない上に住民のイレヴン達も数が少ない。無人島もいくつかあるから、離れてしまえば住民を巻き込む心配もない。
「なるほど、発想の転換だな。KMFや艦のエナジーを考えても可能性はある。」
「式根島基地との連絡は?」
「極秘行動故に見逃してほしいことは伝えてあります。」
「よし、偵察機を式根島周辺に展開させろ。」
シュナイゼルは『黒の騎士団』との会談を再度行うためにアヴァロンの応接室で一旦紅茶を飲んでいた。その中、スザクから持ち掛けられた話を極秘に進めており……
「スザク君は?」
「間もなく、神根島に到着します。」
「……兄上、今更ながら本気ですか?」
コーネリアはシュナイゼルの決断を再度問う。しかし、もうシュナイゼル自身止まる気もなかった。
「コーネリア、一つ聞くが王たる責務を果たすように追求した息子を濡れ衣で殺そうとするような男が皇帝に相応しいと思うのかい?」
ライルが皇帝弑逆の嫌疑をかけられているという未確認情報は既にこちらにも流れている。その追撃がレイシェフであることも。
「それならば、ライルを保護する方が先では?」
「それも考えたが、こちらにはそれだけの戦力はない。今この不安定な情勢下で行えば、せっかく締結された休戦条約も白紙になってしまう。悲しいことだがね。」
コーネリアはギョッとしたが、カノンは納得もしていた。
確かにそのとおりね……さらに考えれば、ライル殿下が相手ならば『セント・ガーデンズ』といえども只では済まない。
こちらの手勢を削ぐことなく、シュナイゼルはライルに『セント・ガーデンズ』の迎撃をやらせてしまった。恐ろしい人だ。
いや、この方のことだ。たとえ助けても、従順になる保証のないライルをレイシェフにやらせることも視野に入れているのだろう。あれは直情的ではあっても、愚鈍ではない。むしろ鼻が鋭く、こちらに噛みついてくる可能性の方が高い。
一方、星刻からの許可を得て合流した『ロンスヴォー』でも奇妙な情報を得ていた。
「ライルが皇帝弑逆を企てていた?」
「は、未確認ながら。ブリタニア内部でも公表はされておりません。」
バルディーニはしばし、沈黙した。この情勢下で、何故皇帝弑逆などと危険を冒す?
皇帝を殺すなら、一年前に発生した名誉騎士団の暴走に乗じる…それは無理でも、『タレイランの翼』に協力した方が確率は高い。
『狂戦士』などと呼ばれているが、実際の戦術眼や情勢を見る目は養われているはずだ。
「確証はないが、皇帝に陥れられたのかもしれない。」
「陥れられたって…」
マスカールが困惑するが、海棠は頷いた。
「まあ、それが妥当な線でしょうね。しかし……理由が分からん。今だって恭順派の根強い支持があるし、E.U.にだって、ライルを評価している国はある。」
そう、彼はあの暴走前のユーフェミアとナナリーに次ぐブリタニアの良識派として政治家から評価されている。
名誉ブリタニア人全員の処刑を主張された時も、シュナイゼルやオデュッセウスの助力もあったとはいえ彼らを庇い続け、ナンバーズ関連の政策緩和を今も主張している。
エリア24もマリーベルとルーカスに陥れられたという見方が強く、アンドラなどの小国も極力民間人の犠牲を出さない攻め方で攻略、略奪を行ったブリタニア軍の征伐さえ行っており、こちらの女達にはライルが解放した貢ぎ物がいる。加えて、不要の烙印を押された正規軍と外人部隊の軍籍回復にさえ助力して、E.U.側の綱紀の粛正さえ行った。
点数稼ぎでも、本来こちらがやるべきであることを放棄していた以上こちらは何も言えない。理想論や正論で動く傾向が強いが、ブリタニアではそれ自体貴重な存在だった。
「陥れられたのならば、彼を確保して事情を伺うのも一つの選択肢ではありませんか?組織内での我々の発言権強化につながるし、ブリタニアとの交渉材料にもなります。」
クラリスの発言は的を射ている。このまま外交ルートで皇帝の権限を削り、シュナイゼルあたりに譲位してもらえば外交ルートで各エリアの独立も適うだろう。時間はかかるが、実力行使よりは犠牲が少ない。
「ライルの動向は?」
「式根島方面で『セント・ガーデンズ』の追跡を逃れたとのこと。おそらく、まだ式根島の近辺に潜伏しているでしょう。」
なるほど、見え透いて遠くに行くよりはあえて近くに潜伏する。万が一に見つかっても、混戦や周辺住民を巻き込む恐れもない。
ゼラートがその問いに答え、バルディーニは意を決した。
「我々は式根島方面で、ブリタニア軍の動向を調査する。その名目でライル・フェ・ブリタニアと接触、事態の解明を行う。」
浅海はライルが皇帝弑逆の容疑で追われていると聞き、頭を鈍器で殴られたような衝撃に襲われた。
ライルがクーデターって、そんな。いくらなんでも。
どうしてだろう。彼が皇帝になってくれれば、ブリタニアのエリア政策の転換ができるはず。ひいては日本にとっても損がないのに、ライルの命の方が心配だった。
「ライル、お願い…死なないで。」
ソレイユの足にもたれかかり、浅海は祈っていた。
その様子を後ろでデルクが見ていたが、彼は何も言わずにただ黙って見守っていた。
鈴維はライルが襲われた事態を星刻に報告、ライルが本当に皇帝弑逆を企てているのならば情勢の混乱を避けるため、濡れ衣であればそれを外交のカードに使うべく『ロンスヴォー』に協力する旨を、斬莉を通して星刻に伝えた。
星刻からは許可が下り、二人は合衆国中華の派遣という名目で同行が許された。
「ライル、本当にクーデターを考えていたなんて……そんなことないわよね?」
クラリスは執務室に戻り、ため息をついた。
「ねぇ、ライルがはめられたって思うのは私の贔屓?」
「いや、海棠大佐やバルディーニ将軍が疑うようにむしろできすぎている。」
「となれば、父親にはめられたって考えるのが無難か。」
どっちがマシなんだろう?親の権力獲得のために振り回されたクラリスとその親の気まぐれで陥れられたライル。
「母親を逮捕したから…なんて、理由で嵌められるわけないわよね。」
「それなら、その時点でライルが逮捕されているさ。」
それはそうだ。自分でもそうする。
「私、最悪だわ。このまま助ければ、そのままチャンスがあるかも。なんて思った。KMFよりもベッドで。」
「完全に惚れたな、どこに惚れた?」
「……さあ、顔は良いと思ったけど。あえて言えば、シンパシーかしら?親の道具にされていた辺り。」
彼は本国で騎士にしようとした女性を殺し、今の妃達と部下を…そして領民達を殺そうとした母を逮捕した。父と母が既に持っていない革命前の高潔な貴族の精神をそこに見た。そう、もしピエルス家の栄光や権威を主張するなら、ああいう振る舞いこそが相応しい。
「ブリタニアの貴族に生まれていたら、迷わず彼に結婚を申し込んでいたわ。」
「相当なほれ込みようだ。今までがろくでもないのばかりだった反動だな。」
〈ヴァリエール卿、御蔵島近海にライル殿下貴下の偵察ヘリを発見しました。〉
「よし、撃ち落とすな。こちらを補足させるのだ。」
〈イエス・マイ・ロード。〉
ヘリから報告を受けた涼子がライルを見る。
「殿下、『セント・ガーデンズ』のサザーランドを確認しました。」
「見つかったか。」
この程度は想定の範囲内だ。見つからないなどと高をくくれる相手ではない。
「急速離脱、島を離れるんだ。」
「イエス・ユア・ハイネス。」
艦が浮上し、随行艦も後に続く。
「全艦隊に通信回線を開いてくれ。」
「え、はい。」
優衣が応じて操作する。
「繋がりました。」
ライルは立ち上がり、何回か深呼吸をする。
「全将兵に告げる。知っての通り、私は皇帝弑逆の容疑をかけられて追われる身となってしまった。」
各艦で作業をするクルー達がライルの演説を聞く。
「私が皇帝陛下のお言葉に疑念を抱いてしまったがために、皆を巻き込んでしまったことには謝罪の仕様もない。だが、それでも私には君達の命を預かる責任があるし、冤罪で殺されるわけにはいかない。真相を明らかにするためにも、まずはこの戦いに勝って生き残らなければならない。そのために、皆の力を貸してほしい。」
こんな形ではあるが、改めて巻き込んでしまったことを謝罪したかった。そして、ライルは宣言する。
「勝って、生き残るぞ!!」
〈イエス・ユア・ハイネス!!〉
ブリッジにいた有紗達も答え、士気を高めることはできた。
「各員に告げる。敵は賊軍となれども、皇族軍では屈指の力を持つ。たかが平民、たかがナンバーズ共などと侮れば我々が負ける。」
『セント・ガーデンズ』でもレイシェフが演説を行っていた。
「彼らは我がブリタニアの下層に位置する。だが、それ故に強い。しかし、恐れることはない。勝利は我が剣に、皇帝陛下と共にある!!」
〈イエス・マイ・ロード!〉
レイシェフは演説を終え、ため息をつく。
「我ながら白々しい……事実無根だというのにな。」
作った証拠も可能な限り精巧だが、却って怪しまれるだろう。
「デルヴィーニュ……」
「縁起でもないことを言うな。俺にそんなことをさせろと?」
「君にしか頼めない…」
旧友は目を閉じ、ため息をつく。
「お前のお守り役になったのが俺の運の尽きだな。」
「かもしれない……」
「嘘でも、そう言うなくらいは欲しいぞ。」
「私は嘘のない世界を求めているのだぞ。」
「…………分かっているのか?既にお前は嘘をついていることを。」
それは『セント・ガーデンズ』で計画とあの力の存在を知っている者の中でも、ヴィオラとデルヴィーニュの二人しか知らないことだ。
「分かっている……」
そう、『嘘のない世界を作る』などと言っておいて既に最低な嘘をついている。今回も嘘だ。
これで最後の嘘にしたいものだが……
「ヴィオラ、君に頼んでおいたことだが…」
「やめてください、そんなこと。」
ヴィオラはその美貌を曇らせ、首を横に振った。案の定、答えは同じだったが…
「すまない…君の気持ちにこたえてあげられなくて。」
「ぁ、そんなつもりじゃあ。」
「ヴァリエール卿、そろそろです。」
「荒唐無稽でも、賭けている私のためにもまず勝つ事でしょう?」
クレスとアリアにせかされ、レイシェフは頷いた。
「艦の守りは任せたぞ。」
「ああ…」
「承知いたしました。」
〈殿下、敵は通常戦闘の構えのようです。〉
定石通り、か。基本的に数は相手の方が上だからそれで勝てる。
「よし……ここまでは想定通りだ。」
後は、こちらの狙い通りに相手が動いてくれるかどうか。
艦が後退していき、徐々にKMF隊との距離が詰まっていく。それに合わせて、艦隊がスモークを噴出する。
「スモーク?今更、目くらましをしたところで…」
いや、待てよ?だとしたら!
スモークを展開するのはブラフ。煙幕を盾に砲撃で戦力を削り、その混乱から攻めに転じる?
なるほど、悪くない手だ。守っても勝てないのを分かっているからこそ、か。
「だが、そうはさせない。全軍、スモークを突破して敵艦に肉薄せよ!砲撃される前に母艦を叩く!!フロートを破壊するだけでも良い!!」
〈イエス・マイ・ロード!!〉
スモークは広範囲に散布されている。ならば、飛び込んだ方が良い。
KMF隊が一斉にスモークに飛び込んだ。次の瞬間……
外野からスモーク内へ向けて砲撃が行われた。それも一方向からではない。複数の方向からだ。上からもだ。
な!?しまった、スモークに飛び込ませること自体が罠だったんだ!!
「索敵班!砲撃位置を特定しろ!!」
〈南西500にローレンス!北北東300にガングラン二機!西南西800にカンタベリーを二機!!〉
〈ヴァリエール卿!て、敵艦上に砲撃部隊〉
やられた!!相手を甘く見ていたつもりはない。むしろ、逆転を狙って最大の攻撃で攻めてくると読んでいた。しかし、その攻撃の仕方を読み違えた。深読みしすぎたか!?
「スモークを突破してくるKMF隊は8割以上撃墜。残りはスモーク内への砲撃で混乱している模様です。」
優衣の報告を受け、ゲイリーが次の指示を出す。
「よし、艦隊はこのまま後退。艦上のKMF隊、雷光は支援砲撃を続行せよ。艦のシールドはブリッジとフロートに張れ。」
「イエス・マイ・ロード。」
リーザが応え、涼子とエレーナと共にゲイリーの指示を伝えていく。
「ここまでは作戦通りだな。」
ライルの立てた作戦は博打に等しかった。煙幕を展開し、そこに誘い込むというもの。相手は熟練の騎士。下手な小細工で勝てる相手ではない。ならば、あえて博打に出ることにした。
煙幕を張れば、それを隠れ蓑に砲撃して後退しながらの防御重視と考える。だが、ライルがそこから攻撃に転じるために考えた手は、敵の索敵範囲ギリギリに展開させたKMF部隊によって相手が煙幕に飛び込んだタイミングでその煙幕に向かってありったけの砲撃を叩きこむというもの。万が一にスモークと距離を取られたら、その時はその外に向かって撃ちまくるというもの。
『下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる』とはよく言ったものだ。敵の状況は随行させたサザーランド・アイ部隊を砲撃隊に着けてある程度狙いを着けられるとはいえ、躱される可能性も高い。
そのリスクを考慮し、一撃の威力が高く砲撃の範囲も広いローレンスとガングラン、カンタベリーを煙幕の中に攻撃させ、艦の上には球数と範囲で優れる雷光を一機ずつ乗せた。雷光だけならば、艦の上空を守るためだと錯覚させられるし、実際に相手はそれを見ているからだ。
それによって、数の差を埋めて各個撃破。
単純な戦術だが、正面から戦っても勝てない以上は他にない。不安があるとすれば、離反した部下達に気づかれないか。彼らの意見具申にレイシェフが耳を傾ければ終わりだった。
しかし、どうやら彼らは気付かなかったようだ。
「全く、心臓に悪い。」
とはいうものの、確かに今回は賭けに出なければ勝てない勝負だった。
「索敵及び砲撃部隊からの報告、敵のKMF隊はおよそ3割撃墜されました。」
リーザの報告の成果は、KMF部隊だけで3割となれば上々だ。
「待機させたKMF隊も全機発進させよ!!各個撃破に移行する!」
「はい。全KMF部隊、出撃。レイ、長野隊長、発進してください!!」
エレーナが応え、KMF隊に出撃を通達する。
「よし、二機から三機で一機仕留めろ!!一対一でやろうと思うな!!」
〈イエス・ユア・ハイネス!!〉
「砲撃部隊は引き続き支援砲撃を続行!!肉薄されようものなら、機体は乗り捨てて良い!!後で必ず助ける!!」
指示を受け、島に陣取ったカンタベリーは再び砲撃を開始。今度は通常弾頭だが、それでもその破壊力と射程は凄まじく、巻き込まれたグロースターが二機、サザーランドが三機撃墜された。
〈カンタベリーは今の攻撃を最後に陣地の守りに集中!味方を巻き込む!〉
長野はカンタベリーに攻撃を中止させ、ヴィヴィアンの長刀でガレスを一機両断する。続けざまにハーケンでグロースターを捉え、その巻き戻しとフロートのスピードで加速をつけ、膝蹴りを叩きこんだ。
膝蹴りで頭部を破壊されたグロースターはコクピットブロックが射出された。こちらを脅威と見た敵が攻撃するが、ニードルブレイザーを展開してやり過ごすがそこへ一機のヴィンセントがランスで襲ってきた。
「誰だ!?」
〈『セント・ガーデンズ』のアリア・フローベル……〉
あの顔合わせで会った娘か!
ランスで薙ぎ払われるが、それを躱してアサルトライフルを撃つが相手もニードルブレイザーでそれを防御する。こちらのような武装強化の類はされていないが、スピードを重点的に上げたようなカスタマイズをしているようだ。
「『フォーリン・ナイツ』隊長の長野五竜……!殿下の御身のために、負けるわけにはいかぬぞ!」
娘の絵里より三つか四つ歳上に見える娘を相手にするのは気が引けるが、この娘はライルを陥れた『セント・ガーデンズ』の隊員!まして、レイシェフの側近なら腕も立つ!
「娘に近い歳の少女を相手にするのは不本意だが…こちらは主君のためにも負けられないのだ!悪く思うなよ!?」
〈それはお互い様です。〉
高速回転させたランスでレイはウォードを一機、中の人間をミンチにして撃破して続けざまにガレスへ向かう。ハドロン砲の砲撃をニードルバックラーでそらして肉薄し、串刺しにした。
〈流石だな、スレイター卿!〉
一機のヴィンセントがアサルトライフルを撃ってきた。正確な射撃だ。レイを外しても、随行した親衛隊のグロースターが一機撃墜された。
「っ!貴方、確かヴァリエール卿の側近!」
〈クレス・ローウィング……〉
「よくも、フェリクスとセヴィーナを…!ライル様を陥れてくれたわね!」
高速回転するランスを突き出し、相手もグロースターのランスで受け止めるが相手のランスが逆に破壊された。
〈殺された仲間…主君のための怒り。まして、ハーフとして迫害された貴女なら猶のことか?〉
ハーフの生まれを詰るその物言いにレイは頭に血が上っていくのが分かった。
「何を知ったふうな口を!」
バックラーのハーケンを発射するが、クレスのヴィンセントはそれを巧みにかわしていく。
幸也はパラディンのMVSでサザーランドを一機両断した。しかし、ウォードが二機MVSで襲い掛かり、それをこちらも二本のMVSで受け止め、それをパワーで押し切って二機を両断する。
「くそ!本当になんて連中だ!」
さっき襲われた時も感じたが、こいつらはまさに精鋭。コーネリアの親衛隊や『ラウンズ』の直属部隊と良い勝負だ。機体性能で言えばパラディンはオリジナルのランスロット並だ。しかし、経験値が上の相手が多いので苦戦している。
二機を両断した直後、後ろからグロースターがランスで突進してくるのに気付いた。
「しまっ…!」
ここまで、か。復讐を果たして最後はブリタニアの謀略で死ぬ…は、似合いの末路か?
が、幸也は死ななかった。ガングランの砲撃が幸也を救った。セルフィーの機体だ。
「セルフィー?」
〈何やってるの!一人で暴れないで!!〉
「あ、ああ!」
〈経験ならあんたは上なんだから、私を守ってよ!〉
彼女を、守る……そうだ。復讐を果たしたからって終わりじゃない。俺はまだこの子に何も言っていない!!それに、殿下が俺達に罪を擦り付けて皇帝弑逆なんて、とても信じられない!!
むしろ、ギアスとかいうおかしな力であの虐殺が起こされたのならば確かめねば!もし、ゼロが生きているのならばなおのことだ!!
「幸也、とにかくタッグで行くわよ!?」
〈ああ!〉
ガングランが胸のミサイルを発射し、パラディンがコールブランドで突っ込んだ。同じタイプならば試作段階のガングランの方が射程は勝る。相手も同じ武器で迎撃するが、その爆炎からパラディンが飛び出してガレスを両断した。そして、同じように援護に来たグロースターをハーケンで捕らえ、ガングランの方へ投げる。
「ナイスプレイ!」
近接防御用のショートソードを抜き、そのまま斬りつけた。続けざまに両肩のハドロン砲を撃ち、サザーランド二機を撃墜する。
〈こっちに来ていいのか!?〉
「あんたが暴れたら手綱を握る人が必要でしょ!?」
自分でもなぜ、幸也のフォローを名乗り出たのかは分からないが……あのまま死なれたら後悔する気がした。
「とにかく、二人で一機ずつやるわよ!」
〈ああ!〉
雛はハドロンバズーカで敵の母艦を狙った。が、流石に相手もそれを分かってシールドを張っている。エナジーをかなり回しているのだろう。だが、それでいい。少しでも注意が逸れれば、仲間が有利になる。しかし、母艦を守るべく艦の守りに着いていたKMF隊がこちらにやってきた。
しかも、二機ともヴィンセントだ。
「ったく、あたし一人にヴィンセント二機なんて豪勢にもほどがあるわよ!」
二機のヴィンセントがランスで突っ込み、全方位シールドで防いだ。いくらヴィンセントでも武器はグロースターの物。パワー負けしたランスが逆に破壊されてしまった。
〈流石は川村雛の機体だ!〉
〈でも、これならどうかしら!?〉
二機がニードルブレイザーを展開した。二機分のエネルギーが干渉するが、本体のパワーで貫通は避けられた。しかし、その衝撃でこちらの体制が崩された。
「っ、同じエネルギーじゃあ苦しいか!」
オールレンジボマーで二機を牽制し、再び距離を取る。更に右手にハンドアックスをもって左手にバズーカを持つ。ハドロンバズーカの砲撃はヴィンセントだって破壊できるが、機動力ではやはり元々のコンセプトで差がある。オールレンジボマーでも追い切れない。二機のうち、一機のヴィンセントのMVSをシールドで受けてハンドアックスでMVSと斬り結ぶ。
そこへ、一機のヴィンセントをハリファクスが蹴り飛ばした。
〈雛、手伝うわ!〉
「そっちは良いの!?」
〈ウチの空戦部隊は優秀だからね!良二に預けてきたわ!!〉
「ったく、もう!まあ、良いわ!一機お願い!」
ハリファクスは先ほどシールドでMVSを受け止めたヴィンセントに向かった。確か、あれからは若い女の声が聞こえていたが……
「あたしの相手はあんたってわけね。」
「ドウェイン・ラン・デルヴィーニュ…レイシェフの旧友だ。」
「特選名誉騎士団の川村雛、まあ今夜のダンスの相手をよろしく!」
ハリファクスのルミナスソードでヴィンセントのMVSと斬り結び、クリスタルは相手に呼び掛ける。
「貴女、ヴィオラ・アールバリよね!?ヴァリエール卿の再婚相手候補の!」
〈そういう貴女はウィスティリア家の一人娘ね!〉
二機は距離を取り、睨みあう。
「よくも、うちの亭主をはめてくれたわね。妻として、仕返しをさせてもらうわ!」
〈レイシェフ様が貴方のご主人様を油断させるための罠だったのに、随分と真に受けるのね。〉
「生憎、そんなの最初から想定済みよ。でも、結婚で意中の人なら罠でも飛び込みたくなるものでしょう!?」
ハーケンを発射した。ヴィンセントはニードルブレイザーで受け止めるが、ハーケンのブースターで押し切られて体勢を崩す。その隙を逃さずに今度は右腕のハーケンを撃つが、先に相手が体勢を立て直してMVSで受け止めた。
「やるわね!」
〈貴方と同じよ。愛する人のために負けられないのよ!〉
愛する人…彼女は社交界の独身女性では人気が高く、連れ合いを無くした年配の貴族だって再婚相手にしたがるほどの美女だ。そんな彼女の心はレイシェフに釘付け、だが…
「亡くなった奥様に挑み続けるっていうその心意気、分かるわよ!私だって殺された友達に負けまいって頑張ってるんだから!!」
〈もし、謝れたらどうする?〉
「は?何よ、それ。」
〈どんな形でも、その人に殿下と結婚したことを謝りたかったらどうする?〉
ジュリアに謝る?死を哀しんだ一方、わずかに喜んだことを。
「そうね、謝れるものなら謝りたいわ。その上で、誓いたいもの。親友として彼女の分まで、殿下を支えるって!これが私の女としての意地よ!」
〈私もね、亡くなった奥様に宣誓する機会があればしたいのよ!レイシェフ様と結婚するのを許してほしいくらい!〉
奇しくも、愛する女性を亡くした男を想い続けた女達はKMFでそれをぶつけ合うことになった。
秀作やノエル達も必死にKMFの迎撃を行っていた。どちらも負けられない戦いだが、主君の涙と叫びを聞いたライル軍の方に形成は傾いていた。そんな中……彼らの主君はKMFで対峙していたが…………
〈殿下、神根島の方で異変が!〉
「なんなんだ、この非常時に!」
涼子の問いに答えながら、カルンウェナンでユーウェインのクラレントを受け止めた。
〈神根島の方で反乱が勃発!式根島の部隊がグレート・ブリタニアに攻撃をしていると!?〉
「なに!」
この状況で神根島にいる皇帝を式根島部隊が襲う!?反乱にしては…まさか!
クラレントを受け流したライルはユーウェイン越しにレイシェフを睨む。
「よろしいのですか、ヴァリエール卿。私のような雑魚よりももっと大物が陛下を襲っていますが?」
〈ゼロだと仰りたいのですね?〉
ライルは答えない。
〈そうして、背中を向けたら私達は貴方に撃たれる。今貴方はなりふり構っていられる状況ではない。そうでしょう、そして貴方も我々に背中を向けられない。〉
ちっ、やはりこの程度通じないか!
〈ご心配には及びません。向こうにはビスマルクも『ナイトオブトゥエルブ』もいる。貴方は今しばらく、私とここで踊っていただければよいのですよ。〉
「………やはり、貴方も陛下もV.V.やギアスと。」
〈ええ、おそらく貴方の考えていることの半分以上は当たっていますよ?〉
「V.V.が言っていた嘘だらけの世界を壊す契約ですか!」
「ご名答、重ねて申し上げます。私も『セント・ガーデンズ』もその共犯者です。」
『セント・ガーデンズ』そのものが!なんということだ!!だが、そうなると………
「では、貴方は契約をしたんですか。」
レイシェフは何も答えない。その時……リーザから通信が来た。
〈ライル様!〉
「今度は何だ!?」
〈空を見てください!〉
空?一体、何が…!?
モニター越しで空を見ると、オーロラが出現していた。
「な、馬鹿な!?日本でオーロラなんてありえない!!」
続いて優衣とエレーナが報告をする。
〈オーロラだけじゃありません!地震も発生しています!〉
〈それも……エリア11だけではなく、世界中で地震とオーロラが同時に発生しています!!〉
バカな!世界中でオーロラと地震が一度に!!
「ヴァリエール卿…!皇帝とV.V.が何かをしたんですか!?」
レイシェフは唇を上げた。
「ええ、もう実行段階です。我々が神と呼ぶものを滅ぼす計画が実行に移されつつあるのです。」
〈V.V.の契約か!〉
「そう、こんな話を聞いたことはありませんか?全人類の意識は繋がっている、と。」
〈シンクロニシティ、集合無意識と呼ばれる心理学の用語ですよね?〉
流石に皇族だから、そうした用語を学ぶ機会はあったか。
〈まさか、神根島や天領はギアスでそれに干渉することができるなんて言うのではありませんよね?〉
「そのまさかです……これがなれば、全ての人々の意識は繋げられる。死んだ人間もね。そう、貴方の大切なお姫様達の家族や、先刻我々に討たれたあなたの部下と……あのお嬢さん、ジュリア・ボネットとも意識という形で会えるのですよ。」
ライルは何も言わない。
〈……………そんな…………そんな荒唐無稽な計画のために世界中に戦争を仕掛けたんですか!?〉
レイシェフは答えない。
〈仮に、それら全てが事実だとして…そんなことになったら世界中がパニックになる!いや、意識がつながるのであれば、コミュニティが破綻して凄惨な殺し合いにも発展する!!〉
もう一度ベディヴィエールを突っ込ませ、カルンウェナンで斬りかかる。今度はユーウェインが受け止める側になり、二機はつばぜりあう。が、元々ギャラハッドタイプだったユーウェインとランスロットの派生型のベディヴィエールでは機体のパワーが違う。
スペックだけは見たが、ユーウェインは胸部にハドロン砲がある分接近戦ではギャラハッドに劣る。だが、それでも10が8か9になった程度。スピードを重視したベディヴィエールが押し切れる相手ではない。パワーではじき返され、指のハーケンがこちらを狙った。左腕を捉えられ、引き寄せられながら胸のハドロン砲が開くのを見た。
「くぅ!」
フロートをフルパワーにして、相手の引き寄せを逆に接近に利用した。蹴りを入れてハドロン砲の砲撃を上空にそらし、更に斬りかかるが相手も急降下してそれを躱す。
「はぁ、はぁ…危なかった。」
〈よく言いますよ……私も今のは危なかった。ビスマルクならば品位が足りないと言いそうだ。〉
「それで勝てたら世話はないし、なりふり構っていられませんから。」
レイシェフは微笑した。
「なるほど、それに敬意を表してこちらも全力を出すしかありませんね。」
レイシェフの左眼が輝き、不死鳥の紋章が浮かび上がる。
ユーウェインがクラレントを振りかぶり、ベディヴィエールが後退する。だが、レイシェフはその動きがスローモーションに見える。その先を見据え、正確に砲撃する。
〈…挙動が変わった!?まるで未来予知…まさか!〉
「ええ、私のギアスです。私のギアスは自分に作用する、体感時間を倍にするギアス。慣れるのに時間がかかりましたよ。」
左眼を通して、レイシェフの眼にはベディヴィエールの動きが先程までの半分に見える。
〈く!〉
「この力…ビスマルクとマリアンヌ様にしか使ったことがないのですから、貴方はその対戦相手第一号です!」
ビスマルクの未来を読むギアスとは似て非なる能力。ビスマルクは既にオン・オフができなくなっており、ピアスで左目ごと封じている。だが、レイシェフはV.Vと契約した上で更にあの組織で調整を受けた結果、能力の問題が判明して使っていなかった。
それを覚悟でレイシェフはこの左目の封印を解いた。そうしないと、勝てない相手だからだ。
〈能力の詳細を明かすなんて…明かしても問題にならないという事か。〉
ライルは舌を巻いていた。
〈だが、貴方自身が倍速で動けても、KMF自体が速くなるわけじゃない!!〉
ベディヴィエールが肉薄し、クローを展開する。だが、レイシェフの左眼はそれが手に取るようにわかる。右腕のシールドでクローを受け止め、更に左手の拳を胸に叩き込んだ。胸の装甲がひしゃげるが、ベディヴィエールの胸部が開き、ハドロン砲が顔を出す。レイシェフもハドロン砲を展開して、発射する。体勢を崩したベディヴィエールの方が僅かに遅かったが、エネルギーの激突で二機は弾き飛ばされる。
しかし、瞬間的なスピードならばベディヴィエールに分がある。体勢を立て直すのはライルが僅かに早く、ベディヴィエールがこちらのギアスでも追い切れないスピードで肉薄した。
「何!?」
右腕のクローがハドロン砲を抉った。爆発することはなかったが、今ので発射はできなくなってしまった。
「ぐ…!ギアスでも追い切れない。まさか、貴方は!?」
ライルは思わず、胃の中の物が逆流しそうになるがそれをこらえる。
「…っ、ええそうですよ。リミッターを外しました。」
元々こちらでリミッターを任意で外せるようにしてはもらっていた。シミュレーターで試してもいた。しかし、実物はやはり違った。
〈なぜ、そこまで?〉
「貴方は言いましたよね…ギアスと天領、おそらくバトレー達の研究していた『コードR』を使って人々の意識をつなげると。」
長野のヴィンセントがアリアのヴィンセントの左腕を斬り裂いた。
〈何が悪いのよ!私は物心ついた時から親が既に死んでいた!!意識だけでも触れてみたいと思う事の何がいけないの!?〉
顔も知らない両親、だからせめてその意識に当たる部分でもいいから触れ合いたい。
「それ自体は悪いとは思わない。だが、だからと言って今生をないがしろにしていい理由にはならないだろう?」
そう、長野とて死んだ同僚達の事を思い出すことはある。しかし、それが今もトウキョウにいる妻と娘を無視していい理由にはならない。
レイはランスとバックラーを捨ててMVSを二刀流で構える。
「貴方に何が分かるっていうのよ…!日本人であることも、ブリタニア人であることも認められなかった私の苦しみが!」
〈半分だけなら分かるよ。〉
「半分?」
〈…私もハーフだ。母は日本人、父はブリタニア人。〉
なんですって!?彼も私やカレンと同じハーフ!?
〈両親が死んで、孤児院に引き取られた私の環境はエリア11ができて周りは全て敵になった。孤児院に嫌がらせをする輩もいた。だから、軍に入隊した。孤児院を守り、奴らを見返してやろうとな。〉
「……認められなかった。ヴァリエール卿以外には。」
〈流石に分かるか…〉
「でも、だからと言ってこんなやり方認められないわよ!!いくら私もお父さんの意識と繋がれるからなんて!!あいつらとも繋がるなんざ、まっぴらごめんよ!!」
あいつらは政庁に収監されていた。だが、フレイヤで政庁ごと消し飛んだ。ざまあみろ、だった。
そんな奴らの意識と繋がれる?今更、そんなのごめんだ!
ローレンスのハンドアックスを二本抜き、デルヴィーニュと斬りあう雛は敵機を睨む。
〈あんたらのその妄想が現実になるとして…あんたはそれが正しいって思ってるの!?どこかであの人の娘が生きていて、そうしてくれと頼んだの!?〉
デルヴィーニュは一瞬、操縦する手が止まってしまった。その隙を逃さずにローレンスがバズーカで右腕と右足を吹き飛ばした。
分かっているさ…!レイシェフが間違っていることくらい。だが、それでも!!
「間違っていることなど分かっている。だが、過去に縋らないと生きられなくなった男の苦しみがお前にわかるか!!」
〈分からないわよ!!死にたくなくて必死だった私には!!〉
「どんなに愛しても愛しても、レイシェフ様は私の気持ちに応えてくれない!亡くなった奥様しか見ていない!!報われないなら、せめて奥様にもう一度お会いしてほしいのよ!!」
〈私もわかるわよ!!だって、叶わない恋だと諦めかけて…それがあの子が死んだことがきっかけで本当に成就したんだから!!〉
ヴィオラはクリスタルの主張がなんとなくわかった。彼女はライルに惹かれていた。おそらく、あの事件で死んだ平民の娘が殺される以前から。諦めようとしていたのに、シェールの陰謀が彼女を助けたのだ。
〈僅かでも喜んだことを謝りたいって思ったけど、だからと言って殿下を今陥れて余計泣かせていい理由にならないでしょう!!あんた達の言い分はシェール様と全く同じよ!!〉
ハリファクスがフォートレスモードで突っ込み、ルミナスコーンを展開した。ニードルブレイザーを展開するが、反らしきれずに左腕を失った。
過去に縋る者と、未来を目指す者……戦いは次第に未来へと傾いていった。
「貴方の言う通りなら、日本とブリタニアの戦争もその一環だったのでしょう?」
〈ええ、そうです。〉
「だから、ルルーシュとナナリーを見捨てたんだ。そうですよね、死んだ人間の意識とも繋がれるなら、あの男にとっては二人が生きていようと死んでいようと関係ない!現実なんか見ていないんだ!!」
レイシェフが詰まったのがスピーカー越しでもわかった。あの『極東事変』でシャルルは自分の子供達を見捨てた。
「だから、『ブラック・リベリオン』も『方舟の船団』も『紅巾党』も興味がなかったんだ!!最後はみんな一つだから!!」
〈何が仰りたいのですか?〉
「あの男はただ、過去にしがみついているだけだ!!リフレインと何ら変わらない!!」
〈その過去に…リフレインに縋る人間を作っている貴方が言うのですか?〉
ライルは言い返せなかった。そうだ、ライル自身も各国の侵攻に協力した。その結果、リフレインに縋って滅びる人を大勢作った。
「ええ、そうですよ!!しかし、貴方達はどうなんですか!?目の前にある現実を、そこにいる人間を無視していいものか!!未来は自分の目の前にしかないんだ!!どんなにつらくても……苦しくても…怖くても………それでも未来はそこにしかないんだ!!」
そう、立ち止まって振り返ることは悪いことじゃない。それも今に、先につながるからだ。だが、あの男は違う。計画が成就すれば、それでいい。ブリタニアという国にも、自らの子にも興味がないのだ。現実も、今も、未来も興味がないのだから。
〈貴方はご自分が部下達を未来に導いたと陶酔されたいのか!?〉
妙に感情的になってきた。しかし…
「そこまで思い上がっていませんよ、有紗にしろ、レイにしろ……自分で踏み出そうとしたんだ。私がやったとすれば、多分それはきっかけを作ったくらいじゃないんですか?」
勝手な期待を押し付けられた秀作も……イデオロギーに振り回された雛も…そうだ。セラやウェルナーと出会って、ライルと知り合ったころより少し変わった。
ライルの中で大きなウェイトを占める者達は、大なり小なり変わった。そう、フェリクスとセヴィーナももしかしたら………
「だから、負けられないし負けたくない!今もどこかで生きているかもしれない、娘を探そうとすらしない貴方には!!」
〈ぐ…貴方に、貴方に何が分かるというのだ!!〉
ベディヴィエールがロンゴミアントを構え、ユーウェインが再度クラレントを構えて二機は斬り結んだ。
レイシェフのギアスは掲示板時代にアイデアを貰ったものです。
恐らく、考えた人の元ネタはギアス本編ではロロ…他は、次で。
無様にあがいてでも、未来を求めるライル。皇帝同様に過去にしがみつくレイシェフ。
どちらも正しいし、一概に間違っているとは言えませんね。
そして、この前のレイに取り入ろうとして返り討ちに遭った連中。政庁の中にいたから、当然………です