トウキョウ租界がフレイヤで消滅して一か月が経とうとする頃………ライル達はハワイに潜伏していた。より正確には、皇帝弑逆と言いながらも証拠が不明瞭或いはできすぎて逆に不自然という見解をする基地司令が匿ってくれていると言った方が良い。全く、随分と危ない橋を渡る。
「あの、全皇族にペンドラゴンへの招集が来ています。皇帝陛下からです。」
優衣が文書を手渡し、ライルが読む。
「どうします?私は自分から処刑台には上りたくありませんが。」
ライルだってそんなのごめんだ。せっかく助かったし、『ロンスヴォー』のおかげで物資なども融通できてこうして隠れていられるのに。それに……
「不自然だな……神根島で行方を断たれて一月経つところで皇族への招集など。」
シルヴィオの意見に集まった皇族全員がうなずく。
「ウェルナーも?」
「いや、ウェルナーはお前の件を聞いて体調を崩して、今はアラスカにあるトゥーリア様のご実家が所持する別荘で療養している。トゥーリア様も付き添われている。」
エルシリアの話を聞き、少し気がめいった。そうか、確かに元々身体が弱いウェルナーではあり得る。
「心配させてしまったな…せめて、私と雛の無事だけでも。」
「大丈夫です。蓬莱島を出てしばらくした後にこっそり連絡しておきました。」
セラフィナがフォローを入れてくれて、ライルは気を持ち直した。
「そうか、何とか会いたいものだ。」
しかし、気になるのは皇帝からの招集。あの男でないとしたなら、一体誰が?『ナイトオブラウンズ』でさえ動いている様子はない。
「シュナイゼル兄様は?」
「カンボジアにいるという事しか分からない。『グリンダ騎士団』と『ラウンズ』もそちらにいるという未確認情報もある。」
『グリンダ騎士団』と『ラウンズ』がシュナイゼルの元に…となると、この二つはシュナイゼルが抑えているも同じ。
「他は?」
「ルーカスも動く様子がない。後、エリスだな。」
エリス……エリス・デ・ブリタニアか。第22皇位継承権者でライルより二つほど年上。中性的な容姿…ウェルナーと比べれば男性と分かりやすい美男子で、既に何人か皇妃を娶っている。継承権は全体で見れば高い方で、才能はあるはずだが、本人はプロデュースが好きとのことで継承権争いに積極的ではなく、あくまで即位した人の裏方をやりたいと公言している。
加えて、ルーカスほどではないがかなりの好色。男色の趣味もあるという噂だが本人はあくまでも広く付き合えると言っているだけのようなもの。
「シュナイゼル兄様に加えて、エリス兄様が動かないのであれば、これは怪しいですね。」
エリスの才能はデスクワークだが、その恐ろしさは危険察知にある。もはや予言と言っても良いほどで、それによって暗殺をかわしたこともある。むしろ、負けたくない貴族の味方が多いタイプだ。危険察知だけならば、シュナイゼルより上と評価する声もある。誰が即位しても、母の実家への臣籍降下で仕えるつもりなのだろう。
「エリス様、本当によろしかったのですか?」
コバルトブルーの瞳に、アップスタイルのくすんだ金髪の美女に声をかけられた青年は「ああ。」と答える。紫を基調にした礼装に左肩から白のペリースを羽織り、肩まで伸ばしたダークグレーの髪をいじりながら答えたその青年は第22皇位継承権者エリス・デ・ブリタニア……侯爵家の母から生まれながらも、その母が早くに病死してしまい、母の実家が後援となる形で今の地位を維持してきた皇子だ。
ルーカスほどではないが女好きで、男にも手を出す性癖が実しやかにささやかれるが、それは分からない。だが、先見の妙とプロデュースの才能はシュナイゼルに迫る或いは匹敵すると評価されるようにKMFの第七世代機開発にも各方面を説得、枢木スザクやライルの名誉騎士団に着いてもエリア制度の維持及びその方針転換を視野に入れておくことこそが敗けない秘訣だと貴族を説得したこともある。諸外国では掴みどころはないが、話の通じるタイプと認知されている。
いずれも表沙汰にならないような立ち回りであるが、地味ながらも着々と実績を挙げた彼自身が皇帝になるべきと望む貴族もいる。しかし、本人が裏方やプロデューサーでいたいと公言している。が、そのバランス感覚故にたとえ継承権争いに負けても高級官僚必至と謳われる人材だ。ブリタニア皇族らしい傲慢な態度もあるが、それが悪意で捉えられることが少ないのが彼の魅力の一つでもあった。
「父上は『黒の騎士団』との戦争直前でも行方をくらまし、またくらました。そんな人の言うことを聞き続けたら、こちらの身が持たない。こうなると、陛下自身からの招集さえ疑わしい。」
エリスはほぼ確信していた。皇帝は何者かに弑逆された。それが誰なのかは分からないが、目下有力なのはゼロだ。
「いずれにしても、暫くは様子を見る。言い訳は考えておくさ。さて…」
「きゃ!」
ベッドに専任騎士で第一皇妃のミレイユ・ド・ジラルダンをベッドに抱き寄せ、唇を奪う。
「久しぶりに君一人を楽しみたいんでね。」
「もう……強引なんですから。」
ミレイユは頬を赤らめながら身体を起こし、スーツを脱いで豊かな肢体をさらして改めてエリスの唇を奪った。
ルーカスは十人ほど抱いても、まだ不足していた。ライルが皇帝弑逆を企てたからあの目障りな男を消す絶好の機会が来た、かと思えば『セント・ガーデンズ』を撃退した上にどこかへ消えてしまった。
「まったく、不愉快だぜ!!」
ロシアから調達した女の豊かな果実を揉む手を一旦休めて、同じロシアでもお気に入りのリーリャを抱き寄せる。
「ルーカス、様…素敵…」
「私もぉ…」
フィリアも対抗して唇を吸う。しかし、この女もそろそろ飽きてきた。リーリャはまだまだ楽しめるが、他も飽きてきている。ライルの女共なら、あいつの分を清めてもまだおつりがくるのに、全く。
まあ、良いか。もうしばらくはこいつらで我慢しよう。
「そう、ですか……兄上も雛も無事なんですね。」
「ええ、『黒の騎士団』の一部勢力と交渉してどこかに隠れているそうです。」
母の知らせにウェルナーは心から安堵した。ライルが父の弑逆を企てていると聞いて、心臓が止まるかと思った。そのショックで一時期体調を崩すが、思いのほか早く持ち直した。また、前のように歩くのもままならなくなるという事にもならなかった。
「雛がぶつぶつ言いながらも特訓に付き合ってくれたからですね。」
「……もし、無実が証明されたらあの子を騎士にしても良いですよ?」
「え…良いのですか?」
母は無言でうなずいた。
「ありがとうございます、母上。」
皇帝からの招集で、玉座の間には直系から傍流まで大勢の皇族その縁者も集っている。しかし、その中で最重要と目される第二皇子シュナイゼルは姿がない。エリア24総督のマリーベルや遠征任務が主のシルヴィオ、エルシリア、セラフィナもいない。ライルは弑逆容疑の噂がここにいる者達にも入っているが、不明瞭なままだ。その件でも話があるのだろうか?エリスは別件調査という名目で来ておらず、ルーカスも治安維持でいない。ウェルナーはライルのことがショックだったためか、名代も来ていない。
いくらなんでも皇子と皇女に不在が多すぎる事態に困惑する中、皇帝入来が告げられる。だが、現れたのは……
「私が神聖ブリタニア帝国第99代皇帝ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアです。」
「な…ルルーシュ!?」
「生きて、いたの?」
ライルが真っ先に驚愕し、セラフィナが呆然と呟く。
「ナナリーが生きていれば、もしやと思ったが…」
シルヴィオの分析にエルシリアも続く。
「…それにしても、あの制服は確かアッシュフォード学園の。」
そうか、アッシュフォード家が匿っていたのか。それならば、あの制服もうなずける。
シルヴィオ軍旗艦で中継を見ていた、親衛隊も言葉を失う。だが…
「ば、馬鹿な…キングスレイ卿?」
アーネスト・N・シェーリンの当惑に美恵は耳を疑う。
「え、キングスレイ卿ってあの!?」
『ユーロ・ブリタニア』に派遣された本国の軍師、『方舟の船団』の指揮官ではないか。シャイング卿に殺された、と報じられたがスザク共々監禁されていたことは聞いていた。
素性を隠して軍師として活動していた、という事なの?
「これは、いくら何でも予想外だよ。」
エリスはミレイユを抱き寄せながら、現れた少年に度肝を抜かれていた。
「この方、確かナナリー総督の…」
「ああ、第十一皇子だ。生きているのでは、と思っていたが…」
「あん?平民の皇子がなんで皇帝に?」
ルーカスは抱き終わった女達の身体をまだいじりながら、義弟の即位に疑念を抱いていていた。
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアは父シャルルの殺害を公言。更に枢木スザクを『ナイトオブワン』を超える騎士『ナイトオブゼロ』に任命して、帝位継承を宣言した。当然、皇族達は異議を唱えるがルルーシュが『我を認めよ』と命令した途端に180度態度を変えた。
「ルルーシュ……何を、したの?」
セラフィナが呆然とオデュッセウス達の変わりようを眺めた。その中で、ライルだけは違った。一人、顔が青ざめていた。
誰にも聞こえない声でつぶやいた。
「ギアス………!」
この、変わりよう……馬鹿な。いくら何でも、そんなことが。いや、しかしそう考えれば説明がつく。そして何より……一番信じたくない仮説が組み上がってしまった。動機も十分。
心臓の鼓動が速くなりながらも、顔色を失っていくライルはうなだれた。
嘘だ…そんなこと、あるはずがない!だって、ユフィにそんなことを!!
頭の中では既に最悪の仮説が組み立てられていた。だが、感情がそれを認めるのを拒否していた。しかし、いくら拒否しても、認めまいとしてももはや覆りようのない事実だった。
「ゼロ…!」
周りに聞こえないようにライルは、玉座に着いた男の名を口にした。
気を持ち直して、続けています。
終盤にちょっとだけ顔を出すタイプっていますね。
エリス・デ・ブリタニアは正にそれ。積極的に絡まない、自分の安全を確保することが第一なタイプ=シュナイゼル同様に負けないように立ち回るもしくはゼロのように保身に長けているといえますね。悪く言えば小心者だけど、よく言えば危険察知の能力が高いということで、いかにも皇族らしい高慢なところはあるけどルーカスや腐敗貴族と違い悪意で捉えられることはないです。ライルやウェルナーが腰が低すぎるところがあるとも言えます。
服としては記述通り、武器はシュナイゼルも持っていたタイプの銃に短剣です。といっても、並の一般兵止まりです。後ほど、キャラ設定を娶った皇妃共々出します。ただ、皇妃はいるだけですのでご了承を。
後、ごめんなさい。投稿直前になってミドルネームを再確認しましたが、AIで勝手に出力された分は見てないのでどうか。後になり、AIモードで勝手に出力される部分のカット方法をさっき調べたところです。元々フランス語のイントネーション違い意識だったから、ちょっとAIモードを意識しすぎたかもしれません。お騒がせしました