第99代皇帝ルルーシュは財閥の解体、貴族制の廃止、ナンバーズの解放、歴代皇帝陵の破壊を敢行した。
反対する勢力は多く存在したが、枢木スザクや『オレンジ』ことジェレミア・ゴッドバルトによってことごとく征伐された。
ルルーシュはこれまでのブリタニアを作り変えていく。否、破壊していった。オデュッセウスらも支持を表明しており、その大半が地位を追われることとなった。
その中、エリス・デ・ブリタニアはルルーシュに謁見した。
「まず、生きていてくれたことに感謝するよ。我が弟。」
「相変わらず、気取っていますね。エリス兄上…成人して余計に。」
「君こそ、大きくなってもそういう偉そうな態度は変わっていない。」
ルルーシュはこの兄にはやや苦手意識を持っていた。第五皇子ルーカスのように威張るわけではないのだが、傲岸不遜でも嫌いになれない。そんなものを抱いていた。
「で、思い出話をする暇はないのですよ?まだ謁見希望者が多いものですから。」
「そうですね。」
エリスが一息入れ、不敵な笑みから真剣な表情になる。
「では単刀直入に………陛下、我が皇妃の実家とその親戚筋の権利を貴方の名で保証していただきたいのです。」
「…他は?」
「我が皇妃と母の親戚筋の生活及び領民達の今後の安泰…それ以上は望みません。」
「ほう、貴方自身は?」
「酷いね、これでも私は官僚として君をプロデュースしているつもりだよ。少し強引で性急すぎる気もするけど………それでも、耳寄りな情報もある。ルーカス当たりが聞けば、喜ぶ話だよ。」
第五皇子ルーカス……クロヴィスの母に並んでルルーシュが嫌う義兄の名が出たことには驚いた。
「父上の弑逆容疑をかけられた私の弟にして君の兄、ライル・フェ・ブリタニアがシルヴィオ兄上達の元で匿われている。しかし君が父上を殺した以上、元々不明瞭だった彼の弑逆容疑もいよいよ疑わしい。」
「そうですね…」
「でも、ルーカスにとっては彼のお姫様達を取り上げることの方が優先順位は高い。それに、ライルならともかくルーカスが平民出身の母君を持つ君を認めると思うかい?」
なるほど、確かに……あいつの悪辣さは年齢を重ねてより分かりやすい悪しきブリタニア皇族となっている。それに、血統しか振りかざすもののない愚か者でもある。
「皇帝たる私を試すおつもりですか?」
「私は8歳か9歳までの君しか知らないからね……18歳の君とは初対面だ。」
「そう来ましたか……良いでしょう、貴方のお誘いに乗ります。」
エリスの狙いがルルーシュには読めた。つまり、ルーカスが最初からこちらに着くわけがないのを見抜いている。かといって、征伐させれば不興を買う。ならば立場が不明瞭なライルと共食いをさせてしまった方がいい、という事か。
シュナイゼルほどではないが、食えない性格だ。昔から、献策においては才能があった。シュナイゼルとは違う意味で宰相向きだ。
「さて、兄としての意見だけど…君さえよければ私の方から、立場を決めかねている或いは叛乱しようとしている貴族達の仲立ちをしてあげる。その上で、一定の権利や財産を保証する。少なくとも、事業を経営している貴族達ならば、完全な没落防止と叛乱の牽制くらいなら可能だけど……どうだい?」
「……良いだろう、やれるものならやってみるがいい。」
「イエス・ユア・マジェスティ。」
退室し、エリスは深いため息をつく。
「ふう……10年ぶりに会ったと思ったらすごい迫力だった。」
「大丈夫ですか?凄い汗です。」
第二皇妃と第三皇妃が歩み寄り、離宮のメイドで幼馴染の第二皇妃ミリアム・L・シレアがハンカチを出す。
「ああ、すまない。ところで、私は何かおかしなところあるか?」
「え?………特に、何も。」
「そうか……何だったんだろう、あれは?」
突然態度を変えたオデュッセウス達……自分も何かされるのを覚悟で会ってみたんだが………
「殿下?」
第三皇妃クラリッサ・レイランドが心配そうに見ている。平民の高校生だが、頭脳はあのフレイヤを開発したニーナ・アインシュタインに並ぶと称される。もっとも、彼女自身はKMFの民間用開発を希望しており、今後のKMFの民間転用を見据えたエリスが彼女の頭脳に眼を着け、それに伴い求婚した。尤も、貴族制の廃止によって彼女のために空けておいた第三皇妃の椅子も意味がなくなってしまったが。
「戻ったら、各方面に直接出向こう。だから、英気を養うために君達にも。」
それを聞き、ミリアムとクラリッサは頬を赤らめて腕にしがみつく。
「はい。」
「あまり……激しく、しないで?」
嬉しそうなミリアムに対し、クラリッサはしどろもどろとしていた。
「無理だね。君達は君達で美味しいから。」
拘束衣を着た女…C.C.がぬいぐるみを抱きかかえながらルルーシュ皇帝に問う。
「良いのか?あの男、あの場にいなかった皇族だろう。」
「ああ、使えば皇妃達が怪しんだだろう。それに、昔からあの男は血統や地位には関心が薄い。裏方が性に合っていると口癖のように言っていた。なら、好きなようにやらせるさ。邪魔さえしなければな。」
「それならいいが、ルーカスとやらは?」
「…餌に食いつかせてやるさ。もっとも、自分が食われるとは微塵も思っていないだろうが。」
あれもいなかったが、あれは目的達成後の世界にいても碌なことにならない。なら、エリスの提案に乗ってやった方が良い。
ハワイでルルーシュ麾下のブリタニア軍が襲ってくることを考慮してKMFの調整を行っているライル軍。特にユーウェインとの戦闘で大破したベディヴィエールの修理が急務だった。蓬莱島にいる間に修理は検討されたが、涼子が日本の名前を取り戻したエリア11でロイドとセシルから受け取ったエナジーウィングのノウハウを受け取っていたため、エナジーウィングのテストを兼ねて強化する方針になった。強化の指揮は涼子が執っており、それに合わせて機体もさらに軽量化していた。
「OSの方は殿下のこれまでの操縦データをフィードバックして、改造前のリミッター解除のスピードで動くのを前提に。」
改造した紅蓮のデータもあるため、ハワイ基地の工廠で何とか間に合った。エナジーウィングには砲撃を行うシステムもあるが、それはオミットして徹底的にスピードを重視する仕様となった。
ライルがシミュレーターで本気の状態を確認して……
「凄いね……紅蓮でもあれくらいならば、ブラッドリー卿が勝てなかったのも無理はない。アレを乗りこなせる紅月カレンは化け物だね。」
「貴方だって、ヴァルトシュタイン卿並みに強い人に勝ったでしょう?」
「相討ちも良いところだったがな。」
謙遜だ。普通ならあれほどの相手に勝ったのなら舞い上がるかもしれないが、この人らしい。
「で、どうです?シミュレーターでの感想は。」
「ああ、対Gシステムもそれに合わせて組み直したようだね。試験段階はあれで頼む。」
「ロンゴミアントも注文通りに改造してあります。」
「助かるよ……最悪、本体は動けるようにしておいてくれ。」
「イエス・ユア・ハイネス。」
ルーカスはルルーシュに謁見していた。エリスからライルがハワイ方面に隠れているという情報が送られたのだ。あの男はいけ好かない。ライルほどではないが、ルーカスが目を付けた女をことごとく自分のものにしている。男色の気があるのだから、そっちだけにすればよいのに。
「皇帝陛下、先日の即位の場に参上できなかった不徳、お許しください。」
「よい…で、何用か?」
「は、我が愚弟ライル・フェ・ブリタニアは先帝シャルル陛下を弑逆しようとした大罪人。父の首を狙ったのであれば、今度は弟のお命を狙う可能性もございます。」
「忠誠の証として、討伐するというのだな?」
「は!どうか、その暁には私に皇族の地位と権力の保証を…」
「……よかろう。既にスペインの名に戻ったエリア24からE.U.への警戒を行う形でマリーベルが支持を表明している。お前も、我が義兄を討ち取れば我が覇道を共に進むことを許す。」
「は!つきましては、奴の元にいる女達は…」
「好きにするがよい。」
つまり、事実上の了承という事だ。ルーカスは再度敬礼をして謁見の間を出る。
「ち!平民のガキのくせして!!」
「本当ですね、可愛げのない。」
しかし、隣にいた拘束衣の女…あれは相当の上玉だ。愛人、にしては妙だが早々お目にかかれるものではない。丁度いい、ライルの女を手に入れるついでに奴の首をはね、あの女も俺のものにしよう。
フィリアはルルーシュを一目見て、気に入った。あの容姿をだ。あれはルーカスなどより上だ。あと十年もすれば相当なものになる。となれば、目の前にいるこの男ももういらないだろう。
見たところ、慣れてなさそうだし。私がエスコートしてあげるわ。あわよくば、あの枢木スザクもいただいちゃおうかしら。
そうすれば、皇帝と皇帝の側近が纏めて自分のものになる。ホーリング家の貴族特権回復どころじゃない。皇室の仲間入りだ。その先には輝かしく、煌びやかな人生があるとフィリアは信じて疑わなかった。
「おい、あの男で本当に大丈夫なのか?」
「無理だな。数と力があっても、補給部隊や敗残兵、偵察部隊しか相手にしてこなかった。コーネリアどころか、一定の練度を積んだ相手と正面から戦えば、負けるのがオチだ。」
「なら、どうして?」
「簡単さ…ルーカスはライルを殺したら俺の首を取ろうとする。だが、ライルならどうだ?奴が俺を殺そうとしていると誘導尋問し、それを恩赦にして部下達の安全を求めるだろう。」
「……自分の分は?」
「勘定に入っていないだろうさ………」
ふと、ルルーシュは昔に想いを馳せる。
「今にして思えば……皇子だから、みんなが自分の側にいると思い込んでいる節もあったからな。」
ルーカスは女達を抱いていた。ようやく、あの目障りな弟とイレヴンかぶれの義兄を殺せると思うと十人では足りない。特別に設けられた寝室のベッドだけでなく、床でも女達を待機させている。全員に薬を飲ませ、羞恥と恐怖に怯えながらも薬で膨れ上がった快楽に呑まれかける。たまらない…
ま、お前らはこれが終われば用済みだからな。せいぜい、今生のいい思い出にするんだな。
ライルの皇妃になった女共の内、ルーカスは名誉皇妃の飯田有紗と木藤優衣、エレーナ・ガルデニアを、皇妃のリーザ・スズカ・フォン・ノイエンドルフ、張 美水を貰う手はずになる。レイ・コウガ・スレイターは親戚でもあるギースが、エイゼルはクリスタル・ウィスティリアを。他にも犯罪者の娘のノエル・アーデルハイトは親衛隊の隊員アドルフ・ジョゼットが欲しがっている。平民のくせに自分より取り立てられているのが気に入らないから、身体を貪って殺すのが目的だという。全く、勿体ない。あの娘もかなりの上玉なのに。
エルシリアとセラフィナはマクスタインが交渉次第で味方に付いてもらうべきだと進言し、手を付けられない。だが、『アマゾネスナイツ』をはじめあの軍は女の比率が高い。男共もそちらをいただくのには意欲的だ。
これでルルーシュを殺して、制度を元に戻せばブリタニアは俺様のもの。シュナイゼルだって殺せるさ。
「ひひひひ…いよいよ、俺様が世界を手に入れる時が来たぜ。」
少なくとも、父上を殺してくれたことにだけは感謝しよう。これで表だけ忠実な息子を演じれば、ブリタニアは……世界は俺様のものだ。
期せずして、ルーカスが女達を抱いているのと同じタイミングでエリスも皇妃達を抱いていた。
最初にミレイユを抱き、次に皇妃で最も豊かな果実を持つミリアムと、第四皇妃で離宮警護隊のルフィナ・アルスカヤの果実を堪能した。その後には更にクラリッサと四年前に引き取った没落貴族の娼婦、第五皇妃グレース・ハインドマンを唇と果実を堪能し、特にクラリッサは脳が溶けてしまうと思わせるほどに抱いていた。
最後に元孤児院出身で秘書の第六皇妃アイノ・オークランスが六人中、最も劣るといっても充分に豊かな果実を揺らしながら果てて、一周したエリスは皇達の膝枕や豊かな果実、唇を味わいながら、ルルーシュに持ち掛けた話の今後を予測した。
ルルーシュはこちらの意図に気づいているだろうし、ルーカスは元々ライルを目の敵にしている。自分より低い子爵家の皇子でありながら、内外の信用でライルに負けている上に、先にライルの元にいる女さえ自分が目を付けたというほどだ。その考えに気付くように、ルフィナが唇を離した。
「エリス様……また、悪いことを考えていますね?」
「分かるか、まあ…あの二人の仲の悪さ……ライルが母君とルーカスを特に嫌っているのは貴族界隈でも話の種にもなっていたから。」
と、ルフィナと入れ替わりで唇に吸い付いたグレースが問う。
「私も色々な男と寝たけど……ルーカス殿下は嫌です。ライル殿下はちょっと子供すぎますけど、あっちよりは良いですわ。」
夫の前で言うことではないが、娼婦という役柄の意見か。いずれにせよ、少し面白くない。
更に、正面に出たアイノがエリスの細身の胸板にキスをした。
「私は平民の孤児ですけど、資料だけ見てもルーカス殿下がライル殿下に勝てるとは思えませんわ。それでしょ?」
「私も同意見だよ。」
実際、シルヴィオやエルシリアの正規軍が近くにいる。ライルが消耗していても、この二人まで相手にしたら単純な数の計算で勝てない。実戦経験が少ないエリスでも分かることだ。
それにしても、母親同士の不和があそこまで発展するとは。もっとも、ルーカスとライルに限って言えばライルは単純にルーカス本人を嫌っているのだろう。あれは貴族でも平民でも普通はそうなる。
あのままにしておいたら、僕の妃達にも何をしてくるか分からないからな。悪いけど、ライル。僕の代わりにあいつを退治してくれよ。
それに、ライルだっていつまでも隠れていられない。少なくとも、領民を人質にでもされる前に支持か命乞いはしなければならなくなる。
自分がさほど才能に恵まれていない意識をエリスは幼いころから抱いていた。シュナイゼル、コーネリア…正にあの二人はその最たる例。ルルーシュはその頭脳、ライルもナンバーズにも寛容な器。
自分にあるのは、危険をかぎ分ける鼻とそれを分析する頭だけ。その鼻で生き残ることがエリスのやり方。そのために話術も身に着け、先を見据える目も磨いた。結果、下級ながらも政府の官僚として席を置いている。シュナイゼルが皇帝になれば、宰相の後釜も夢ではないと称する声もあるが、そこまでうぬぼれていない。
女遊びもその現実逃避や気分転換だ。その中で、本気で愛して信頼できる皇妃を得たのは僥倖だが。あの女達に相応しい男、皇子であろうと考えると不思議とやる気を維持できた。
これが惚れた弱み、という奴なのだろうね。皇族でなくなっても、男としてこの子達を愛してみせないと。
再度皇妃達にたっぷりと吐き出して今夜はミレイユを上に、グレースとルフィナを左右に抱き寄せて眠りについた。
ライルは久しぶりに有紗の夜食のおにぎりとお澄ましを食べていた。おにぎりはカレー粉で炒めた鶏肉と混ぜたスパイス風味と普通の塩むすびだが、シンプルで旨い。お澄ましもキノコがいくつかある程度だが、このくらいがちょうどいい。
冷たい緑茶を一口飲んで、ブリタニアの動向を再度確認する。
オデュッセウス兄様はともかく、ギネヴィア姉様とカリーヌまでがルルーシュを支持。
ギネヴィアとカリーヌは母親が平民出のマリアンヌを嫌う影響でルルーシュとナナリーをひどく嫌っていた。それが皇帝など、認めるはずがない。なのに、今は支持している。
やはり、ルルーシュは持っている。どうやって、いつ、どこで?そもそも、何故あの男は『ブラック・リベリオン』で都合良くナナリーだけを連れ戻せた?
シルヴィオ、エルシリア、セラフィナの三人にこの事は話していない。あまりに荒唐無稽だし、こちらまで疑われでもしたら目も当てられない。
だが、何よりも……
ルルーシュ、本当に君がそうだというのなら…どうしてユフィにあんなことをさせて。
ライルの中でルルーシュはポーカーやチェスをして、騎士ごっこで遊んだ9歳で止まっている。ライルがたまには悪者役をやりたいと言ったら、ルルーシュが「ライルが悪者役になったらセラフィナが助けられたくないって言い出す」なんて言っていた。
18歳になった今のルルーシュを知るには機会がない。今の立場では下手に出てしまえば、殺されるからだ。
「大将、ちょっといいか。面倒なことになっちまった。」
ヴェルドが入ってきたことに気づき、ライルは思考を切り替える。
「分かった…すぐに行く。」
早速、ルルーシュに着いたエリス。まあ、本心からの支持というよりも平民や下級貴族の職業軍人も多いだろう正規軍を掌握している上にスザクがいるルルーシュと喧嘩しても、経験が浅い自分が率いる軍では勝てない上に、シュナイゼルの動きが不明瞭。なら、勢い任せに叛乱しても絶対に勝てないと貴族達を窘めて立ち回っています。
要は皇族の特権どうこうより今ある立場や権力をこれ以上失わないためのリスクヘッジ…でいいでしょうか?尚、皇妃とはビジネスと本気半分ずつの間柄ですが、皇妃の身分がライルばりにカオス(ブリタニア人限定なのに)。
対照的にルーカスとフィリアは最悪、マリーでさえ(拗れてしまったとはいえ)オルドリン、ライアーと主従の信頼があったのに。シュナイゼルとカノンの相互依存未満です。
尚、原稿段階ではルーカスとエリスで露骨なベッドシーンが二つもあったので、大幅削除です。コレでもダメかも。