コードギアス 戦場のライル B2   作:meitoken

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ルーカスとライルの決着です。


BERSERK-68『ルーカス・ズ・ブリタニア』

ライル軍の艦隊が基地と市街のあるビッグアイランドから離れた洋上に展開していた。市街と基地が巻き込まれるのをさけるためだろう。無駄なあがきを…

 

「さあ、獲物を狩る時間だ。」

 

〈殿下、残しておいてくださいよ?〉

 

「ああ、勿論だ。俺とギース、エイゼルが目を付けた女以外は全部くれてやる。」

 

と、ヴィンセントで出ていた将軍が舌なめずりをする。

 

〈ありがとうございます。あの坊ちゃんの女共はどれもうまそうなんですよね。〉

 

〈殿下、迎撃部隊です。〉

 

旗艦の報告を受け、見やるとデータベースにないKMFが展開していた。しかも一機。いや、随行が二機出てきた。二機は知っている。ヴィンセントをベースにしたヴィヴィアンだ。

 

それを確認した途端…中央の一機が消えた。いや、高速で動いた?

 

気付いた時には、親衛隊のグロースターが一機撃墜されていた。

 

〈な、なんだ!?〉

 

〈新型?で、殿下ぎゃあ!!〉

 

ガレスとウォードも追い切れず、エース部隊『アイギパーンナイツ』のヴィンセントも一機撃墜された。

 

「な、なんだ!?」

 

〈フロートユニット損傷!着水します!!〉

 

今度はカールレオン級がフロートをやられた。敵が速すぎて、追い切れない。

 

ど、どうなっていやがる!?誰が!

 

「え、えぇいどうせたかが一機だ!!何やってる!?サッサと捉えて」

 

〈無理です!相手が速すぎて追い切れません!!〉

 

ば、馬鹿な!?敵はたかが一機!しかも、ライルだぞ!第五皇子で伯爵家の皇子である俺様が押される等、あるはずがない!!

 

ルーカスはまだ理解していなかった。自分が勝って当たり前の相手にしか勝負を挑んでこなかったことを、本当に率先して前に出て戦ってこなかったことを。E.U.での戦闘で手痛い反撃を受けたことさえ、ルーカスの糧にはなっていなかった。

 

〈殿下!敵のKMF隊が進撃を開始しました!?〉

 

「何!?」

 

敵はヴィヴィアンが二機、ハーフとイレヴンの軍人の機体だ。

 

一機はルミナスコーンのランスでサザーランドを貫き、続けざまに接近してきたウォードをランスの回転で薙ぎ払う。もう一機は長刀でガレスを串刺しにして、更にハーケンでグロースターを捕らえたかと思えば、ワイヤーを掴んで隣の機体にぶつけて撃破する。

 

更にアストラット、ハリファクス、ローレンス、パラディン、ガングランといったエース機が前に出て機体性能に物を言わせるかのように手勢を次々と減らしていく。

 

 

 

マクスタインは翻弄されるKMF隊に指示を出す。

 

「損傷したKMF隊は後退!操縦が困難なら脱出して構わん!」

 

〈ナンバーズと平民相手に〉

 

「命とどちらが大事だ!」

 

〈っ、イエス・マイ・ロード!〉

 

一体、どんな機体だ!まさか『ナイトオブラウンズ』専用機の先を行く第九世代のKMFをライル殿下は持っているというのか!?

 

カールレオン級を二隻航行不能に追いやられ、KMF隊も正体不明機、それ一機のために二十機以上が撃墜された。殆どが接近戦でやられるが、とにかく早い。

 

ルーカスの直属軍だけではない。主君が考えていそうなことに便乗を企て、既得権益損失を防ぐ貴族達の軍隊もいる。だが……

 

「安全な本国でぬくぬくしていた者達が、敵う道理などなかった!」

 

同じ貴族でも、ライルの軍にいる貴族達は立身出世や家の再興を目指す下級貴族…中には責務を全うすべく前線へ出る大貴族…更に平民やナンバーズまでも取り立てている。差異はあっても、前線で戦った猛者だ。本国で訓練は詰んでいても、本物の命のやり取りをしたことがない……ただ馬を走らせることはできても、障害物競走などしたことがない騎手が勝てるわけがない。

 

こうなってしまった以上、今側近のマクスタインにできるのは一人でも多くの将兵を生き延びさせることだった。

 

「フロートを損傷した艦は海に着水することを最優先!万が一に備え、退艦もできるようにしろ!!」

 

こう言っては何だが、ルーカスのお抱えも含め女達を脱出させておいて正解だった。あの女達には何の罪もない。これ以上、自分達の暴挙に巻き込むわけにはいかない。

 

 

 

クルークハルトは『ウリエル騎士団』の銀とブラウンに塗られたヴィンセントでライル軍のグロースターを撃墜した。更にニードルブレイザーでサザーランドのコクピットを破壊する。

 

「ち!エース機とやりあおうとするな!まず、随行機を減らし…!」

 

ライフルの銃撃をかわした。ファクトスフィアで確認すると、二機のヴィンセントが現れた。その色は……銀を基調に赤と緑をパーソナルカラーにしたヴィンセントだ。

 

「まさか、『四大騎士団』!?」

 

〈ええ、『ミカエル騎士団』のテレサ・スクラーリよ!〉

 

〈同じく『ガブリエル騎士団』のマルセル・コヴァリョフ!〉

 

赤のヴィンセントが二丁のライフルを持ち、緑のヴィンセントがMVSを連結させずにソードモードで襲い来る。ライフルの攻撃と近接戦闘の連携、流石に『四大騎士団』から引き抜かれただけあって二人とも強い。だが、クルークハルトとて平民から『ウリエル騎士団』の部隊長に上り詰め、ルーカス軍では今や最高位の実力者。簡単に負ける気はなかった。

 

それにその二人はライル軍の情報にもあった。

 

「無駄に歳を重ねて生きてきたわけじゃないんでな!!」

 

取り回しの悪いランスを捨てて、MVSとライフルでとにかく守りに徹した。テレサがニードルブレイザーを突き出すと、MVSでそれを受け止めてその間隙を突いたマルセルに部下のグロースターが援護射撃をした。

 

〈クルークハルト卿、ご無事ですか!?〉

 

「すまない、助かる!撃ち落とせなくていい!エナジー切れに追い込んで後退させる!」

 

〈イエス・マイ・ロード!〉

 

クルークハルトもこのまま死ぬつもりはない。あの女達の元に帰る……まだ『ユーロ・ブリタニア』の騎士としての務めを果たしていないのだから。

 

 

 

「テレサとマルセルさんが『ウリエル騎士団』の部隊と交戦中!膠着状態です!」

 

「仕方ない。二人にはそのまま足止めに専念させろ!相手には本物の熟練もいることを忘れるな!」

 

「イエス・マイ・ロード!」

 

優衣がゲイリーの戦術指揮を伝達し、エレーナは艦の操舵。リーザと涼子も二人のフォローに回る。

 

 

 

ノエルはコールブランドでグロースターを両断した直後、一機のヴィンセントと交戦する。

 

〈ノエル・アーデルハイトぉぉ!!〉

 

「その声、アドルフ・ジョゼット!!」

 

兄を陥れて死に追いやり、父と母も死に追いやって家族を壊した貴族の当主!!奴がルーカス軍にいるのは知っていたが、自分を狙ってきた。いや、想像は着いていたが……

 

〈貴様のような卑しい娘がその機体に乗るなど、『ラウンズ』への冒涜と知れ!!〉

 

「この前会った時のようなことをまだ言うの!?」

 

MVSで斬りかかられ、コールブランドで押し返す。パワーは劣るが小回りの利くヴィンセントと小回りが利かないがパワーで勝るパラディン、互いに一長一短とも言える状態であった。

 

だが、二人には決定的な違いがあった。

 

「大体、そんなものでKMFに乗れたなら苦労はないって前も言わなかった!?」

 

〈KMFは貴族にのみ乗ることが許された物!それを貴様ら平民とナンバーズが乗るなど、我ら貴族の尊厳を汚すようなもの!!〉

 

「全く進歩してないのね、あんた!」

 

指のハーケンでMVSを持った腕を絡め取り、そのままヴィンセントを投げ飛ばす。

 

〈いずれ、KMFは貴族だけのものになる!〉

 

呆れた。実のない精神論と特権思想ばかり……精神論を否定するつもりはないが、こいつはKMFを貴族のリムジンと同列にしか認識できていない。

 

「そうやって、何でもかんでも自分のもの。自分だけは特別だって!!」

 

あの頃、ナンバーズが何をされていたかノエルはまるで関心がなかった。だが、軍に入隊して無抵抗のイレヴンを手にかけることもあった。その時は良心の呵責はあったが、深く考えなかった。

 

しかし、ユーフェミアの日本人虐殺とライルとの出会いでノエルは思い知った。自分がやっていることは矛盾だと。貴族が平民に何をしても良い社会を変えるために、イレヴンを大勢殺してイレヴンなら何をしても良い社会を助長していることに。

 

ライルはその助長の矛盾を背負っていた……どれほど心をすり減らしたのだろう?母にも愛されなかった幼い子供のような主君…自分と同じような目に遭い、自分が同じことをした有紗達と。

 

「この世に特別な人間なんていない!不平等は事実でも、それが免罪符になりはしないのよ!ゼロの正義の味方だって、同じ事!!」

 

〈ほざけ、平民!〉

 

ヴィンセントがMVSを連結して斬りかかる。ノエルも両腕のMVSを抜いて迎え撃った。二機が交差し、パラディンのパワーが勝った。ヴィンセントのMVSを打ち払い、そのまま間髪入れずに腕を斬りおとして左手の剣でヴィンセントを貫いた。

 

「殿下ならこう言うんでしょうね……血統でギャラハッドに乗れると思い込んだ時点で、貴方は負けていたと。」

 

 

 

レイはヴィヴィアンを飛ばした。元々ヴィンセント以上に機動力を上げたスピードはウォードとガレスも寄せ付けず、ルミナスコーンランスでの攻撃を更に強化する。

 

ランスでガレスを粉砕して更に腰のハーケンでサザーランドに肉薄して頭を蹴り飛ばし、その勢いで更に胸のハーケンで別のKMFを捕まえて同じ先方で今度はランスでコクピットを貫く。

 

サザーランドとグロースターがバズーカを撃ってきた。その砲撃をバックラーで防御してそのまま肉薄、一機をニードルブレイザーで破壊して離脱。

 

〈良い機体に乗っているじゃないか?麗しの従妹殿。〉

 

「ギース・スタッカート……」

 

〈イレヴンの分際でそんな良い機体とは。いい女には良い機体ってか?〉

 

相変わらず、口の減らない男だ。

 

「ちょうどいいわ……都合のいい時だけ、同胞扱いしない点だけはよかったけど………父と母をバカにし続ける貴方にいい加減うんざりしてきたの。」

 

〈は!イレヴンがこの俺をやれると思うのか?お前はイレヴンのハーフで、俺様はブリタニアの貴族。最初から勝負は決まってるんだよ!弱肉強食だ!!〉

 

ヴィンセントがランスを手に突っ込んだ。

 

「それ、そっくり返してあげるわ!」

 

ヴィンセントのランスを粉砕するが、相手はそれより先に手を離してMVSを抜く。レイもランスを捨ててMVSを抜く。二機はMVSで唾ぜりあうかに見えた。しかし、レイの方が押していた。

 

 

 

「ば、馬鹿な!なんでイレヴンのKMFに俺が!?」

 

武器の性能?機体の性能?馬鹿な、そんなことある物か!

 

ライルが取り立てる平民やイレヴンの技術者が組み立てたカスタム機だろうが、こちらも調整は万全だ。なのに、何故!?

 

「俺様は貴族だ!生まれながらの強者だ!!」

 

MVSを連結させ、リーチで勝負した。ヴィヴィアンのバックラーを破壊してそのまま機体を真っ二つにする。

ギースは勝利を確信した。しかし……

 

バックラーがニードルブレイザーを展開していた。それによる干渉でMVSをはじき返して、大きな隙ができた。相手の剣が機体ごと自分を貫いた。

 

え?何故?俺様は貴族。選ばれた人間。

 

この世は弱肉強食。俺様は生まれながらの強者……この女は弱者。俺のものになって、捨てられるのが決まっている。

 

なのに、何故?

 

〈人種と爵位で勝てたら、苦労はしないわよ。〉

 

 

 

長野はヴィヴィアンでKMF隊を次々と両断する。武器の関係から小回りはレイよりやや利かないが、それでも十分だった。長刀のリーチでKMFを次々と両断していき、距離を取ったKMF隊のライフルをハーケンで破壊する。懐に飛び込んできた敵も背中の小太刀で撃退している。

 

〈イレヴンのくせにやるではないか?〉

 

「エイゼル・A・ランディス卿…」

 

〈今からでも、殿下の軍門に下らないか?〉

 

「辞退させていただく…我が君はライル・フェ・ブリタニア様だ。」

 

〈そうか、では死んでもらうぞ。安心しろ、主君もすぐに後を追わせる。地獄で妃のクリスタル・ウィスティリアが俺に抱かれるのを歯ぎしりしてもらおう。〉

 

他人の妻を奪う…いかにも奪え、争えのブリタニア。いや、これはそれ以前か?

 

「自分が目を付けたものは全てが自分のもの。まるで、ワガママな子供の言い草だな。」

 

〈敗戦国の将がいっぱしの口をほざくな!〉

 

ヴィンセントの射撃をかわし続け、腰のハーケンを撃つ。相手もハーケンで迎撃し、はじかれる。ハーケンを使った勝負はほぼ互角。

 

ヴィンセントがライフルを撃ち続けるが、長野はブレイズルミナスを展開してそれを防いでかわし続ける。

 

〈くそ!ちょこまかと!!〉

 

スピードとシールドで間合いを詰め、長刀でヴィンセントの首を飛ばした。衝撃で体勢が崩れ、その隙を逃さずに蹴り飛ばすと同時にハーケンでフロートの翼を全て破壊した。

 

〈え?…え?え、えぇぇえぇあああああ!?〉

 

そのままヴィンセントは海に落下し、衝撃で爆発した。あれでは助かるまい。

 

「脱出装置を使えば、助かっただろうに。」

 

長野は一瞬だけ敵の死に哀悼を示し、指示に戻る。

 

「畑方、釘づけにされているテレサとマルセルの援護に回れ。川村は後方の敵艦に砲撃。」

 

 

 

「え?な、なんだ?これ?なんで、貴族で構成された俺達が?」

 

〈まだ、生まれで勝った気になっているのか?〉

 

先程からハドロン砲で砲撃した相手はライルの機体だった。『キャメロット』のエナジーウィングという新型のフロートを装備しているが、間違いなくベディヴィエールだ。

 

「あ、な、馬鹿な…俺は伯爵家の母から生まれた皇子だ!田舎貴族のお前に後れを取るわけがない!!」

 

〈……チェスで言えば自分は生まれながらのクイーン、ポーカーなら自分はAだと言いたいのか?〉

 

「ああ?そうに決まってるだろうが!俺達貴族は絵札とAだ!!お前らのような数字札やポーンに負けるわけがないんだ!!」

 

ライルが小さなため息をついた。

 

〈チェスだってポーンやナイトでクイーンを取れる。シュナイゼル兄様ならそう言うだろう。人間だってそれと同じだ…生まれで能力が決まるわけではない。〉

 

〈あ、あら…良いこと言うのね。〉

 

フィリアだ。どうやら、彼女は無事だったようだ。

 

〈いつもの余裕はどうした?〉

 

〈あ、あ……この小生意気なガキが!!〉

 

ヴィンセントがMVSを二本抜き、二刀流でベディヴィエールに斬りかかる。だが、ベディヴィエールはそれを難なくかわし、ハドロン砲でフィリアをヴィンセント諸共消し飛ばした。

 

「あ、は、ははははははは!!!やるではないか、ライル!!」

 

〈褒めても何も出ないぞ?〉

 

妙に落ち着いているが、ルーカスはそれに気づく余裕がない。何もかもが予定と狂った。楽勝だったはずなのに、何故?どうして?

 

「おい、冷たいことを言うな。俺と手を組んで、あの生意気な平民のガキを殺そうぜ。」

 

〈そして、お前が皇帝になるんだろう?〉

 

「なんだ、分かっているじゃないか。父上への弑逆容疑は俺がなかったことにしてやる。お前の女達を俺に渡せば、更に良い想いをさせてやるぞ。」

 

だが、ベディヴィエールが剣を抜いた。

 

〈悪いが、お前では平民の部下全員を騎士階級にしてやると言われても信用できない。大体、皇妃を寄越せなんて無茶が通るわけないだろうが。〉

 

「な…!」

 

〈そもそも……最初から私を殺して、隙をついてルルーシュを殺すのが狙いだろう?〉

 

「は…ははは!そうだとも!!この俺様が平民のガキに忠誠を誓うものか!!皇帝は俺様にこそふさわしい!!弱肉強食だからな!!!」

 

だが、ライルはまたもため息をついた。

 

〈あの男の弱肉強食や不平等の全ては否定しない。〉

 

ルーカスは何も答えない。

 

〈それで、今のは自供という事だな。〉

 

「え?」

 

〈既にルルーシュにリークできるようにしてある……こんな初歩的な誘導尋問に引っかかるな。〉

 

さっきから上から物を言うような口ぶり。子爵家のくせに、田舎貴族のくせに。

 

「こぉの、クソガキがぁぁぁぁあぁああ!!!!」

 

ハドロン砲を展開して、発射する。だが、捉えられない。ベディヴィエールのスピードが桁違いだ。目の前にベディヴィエールの顔が出た。

 

馬鹿め!近づけば、勝てると思ったか!

 

この距離でなら外さない!

 

ハドロン砲のトリガーを引こうとした瞬間、衝撃が走った。モニターに両肩のハドロン砲の損傷警告が出た。ベディヴィエールの腰の大型ハーケンが肩を貫いているのが分かった。

 

〈この距離なら外さないぞ。〉

 

今、ルーカスが考えていたことがそのままライルの口から来た。

 

〈………残念だったな、クレー射撃の選手なら成功したのに。〉

 

「あ、ああ……ま、待て!そうだ、お前がルルーシュを殺して皇帝になればいい!俺様が支持してやる!!」

 

〈お前の支持では、勝てる勝負も勝てないよ。〉

 

次の瞬間、胸のハドロン砲でルーカスはラモラックごと焼き尽くされた。

 

 

 

エナジーウィング搭載型に強化されたベディヴィエール・ソウキュウのコクピットでライルは愚兄の末路に心底呆れかえった。射撃の才能は確かにあった。クレー射撃のような競技射撃の選手にでもなっていれば、皇帝になれなくても安泰だっただろうに。だが、奴自身の自惚れがそれをさせなかった。

 

「Aがあったって、役がなければ負けるのに。」

 

深呼吸をした後、ライルは宣言する。

 

「第五皇子ルーカスは倒れた。これ以上の戦闘継続は無意味だ。直ちに降伏せよ。命は保証する。」

 

五分ほど経過したあと、ウィルフレド・K・マクスタイン将軍の顔がモニターに映った。

 

〈ウィルフレド・K・マクスタイン将軍の元で、ライル殿下に降伏いたします。〉

 

 

 

ルーカスが敗れた報告はルルーシュに届いた。

 

「案の定だな……勝って当たり前の勝負しかしなかったあいつが勝てる道理などない。」

 

「辛辣だな、散々嫌がらせされた恨みを代わりに晴らしてもらって清々したか?」

 

「さぁな。」

 

昔から、奴はクロヴィスの母と同じようにルルーシュに因縁をつけてきた。ポーカーでもチェスでも、負けそうになればすぐにボードをひっくり返すような奴だった。負け越していても、最後まで勝負をしていたクロヴィスの方がまだまともに勝負をする気概があった。

 

「ひっくり返せるボードがない……いや、ボードをひっくり返せないような勝負だということも分からない奴が、最後までゲームをする奴に勝てる道理などないさ。」

 

ポーカーでは直感で負けていたが、チェスでの勝率はルルーシュはライルに勝っていた。シルヴィオにも何度か勝っていた。相手がシルヴィオとエルシリアでも結果は同じだっただろう。

 

 

 

エリスはルーカスの敗北を聞いても「ああ、やはり。」程度の感想だった。

 

「生まれた時から、自分が勝者だと思っているから負けたんだ。」

 

そんなものいるわけがない。誰だって、最初はどちらでもないのだ。生まれた時からの勝ち負けがあるとすれば、せいぜい貧富の差と才能だ。

 

「不平等だからといって、その天秤が不変という事はない。思い返せば、父上も不変とは一言も言っていなかったな。」

 

速い足も、美しさも磨くのを忘れれば駄目になる。シャルル皇帝は何もしなくても勝てるなどとは一言も言っていなかった。

 

皇妃達の報告書を読みながら、エリスは義弟の勝利を分析し、称賛した。

 

「ま、ライルのことだからあとで私を殴るだろう…それは覚悟しておかないと。」

 

「悪い人…でも、私達そんなエリス様だから愛しているんです。」

 

ミレイユが後ろから頬にキスをする。

 

嬉しい言葉だ。とはいえ、今度はルルーシュとライルをどう切り抜けるか。

 

 

 




改良されたベディヴィエールの名前はソウキュウ。ご存じ、あのロボットアニメのサブタイトルと同じですが、ベディヴィエールの色と掲示板時代の蒼天の対としてこれしか出てきませんでした。

ちなみに名付け親は改良に関わった涼子。



ルーカスの負け方は、掲示板時代から何度か練り直して今の形です。

そして、ライルとルーカスの違い………同じ『不平等』でも、ライルは「生まれつき足が速くても、練習しなければ抜かれる」、ルーカスは「負ける訳ないから、練習しなくて良い」でした。



ここでも、2017年編や2018年編でも散々私が言及していた皇帝の言葉が出てきました。実際、ライルやエリスが考えていたとおりだと思うし、ルーカスは勝って当たり前の勝負ばかり。

チェスなら最初から相手がポーンしかない勝負でプロモーションは相手は認めないまたは自分の駒が全部クイーン、ポーカーなら自分だけ最初からロイヤルか5カードでなければ勝負しない……です。行村も似たり寄ったり………

ブリタニアの弱肉強食ひいては勝者至上主義の弱点ってここかも。勝って当たり前の勝負しかしない手合いが出てくる=E.U.でライルも言っていたモラルの低い輩が増える。

ある意味、ライルは自由競争?を健全にやっているタイプかもしれません。



射撃の才能だけは嫌っていたライルも認めていた。だが、ふんぞり返っていてそれさえ磨かないで、このざま。そして、ライルからの評価は遂に死んだ後で無関心になりました
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