シルヴィオが海上艦を鎮めようとした時、一機の大型KMFが現れた。
「ゼラート!」
〈久しぶりだな、シルヴィオ!〉
『黒の騎士団』がガウェインをベースに開発した試作型アルプトラウムだ。以前の日本解放でシルヴィオを苦戦させ、ニコロスを殺した男の機体だ。
両腕のドラウプニルで剣を展開し、シルヴィオも刀を構える。
再び、歴戦の勇士同士が激突した。二機のスペックも、パイロットの技量もほぼ互角。シルヴィオの刀をゼラートの剣が受け流し、ゼラートの剣をシルヴィオは躱している。どちらのパイロットも機体も『ラウンズ』に相当するのは疑いようもなく、援護に入ろうとした部隊は逆にハエでも潰すかのようにあっさりと撃墜されている。
「全く、あたしたちはっと!!」
木宮のゲライントに月下タイプが襲ってきた。シュテルンというE.U.のカスタム仕様だ。
〈木宮ユウキ、中佐の戦いの邪魔はさせないわよ!〉
「あら、奇遇ね!あたしも可愛い弟の戦いを邪魔させる気はないわ!」
相手は分かっている。ゼラート・G・ヴァントレーンの副官ウェンディ・ミュラーだ。若い女とはいえ、元正規軍で今はたたき上げの外人部隊。間違いなく強い。
ゲライントはガウェインタイプで斧を装備しており、シュテルンは月下の基本に沿ったKMFだ。二本の剣以外に特筆する武器はないが、相手はエース級だ。
「それじゃあ、あたしのダンスしてもらえるのね!?」
〈生憎、ダンスもベッドも私は中佐一筋なの!〉
「じゃあサッサとお暇させてあげる!!」
エルシリアとセラフィナは近距離と遠距離の連携で戦っていたが、敵の編隊が現れた。見覚えのある機体、モーナットだ。
〈お久しぶりだね。〉
「海棠…」
〈単刀直入に行くよ。姫様、一曲お相手いただけますか?〉
「ええ、謹んでお受けいたします。」
まるで数年来の友人と出会うかのように二人はあっという間に戦いに入った。互いに癖をよく知っている相手でコンセプトも似ている。一気に膠着状態になってしまった。
「姉さん…!」
セラフィナもすぐに距離を置いた。相手は暁だ。
〈悪いが、大佐の邪魔はさせないぞ。〉
〈貴女一人だけなら私達二人でもやれるわ。〉
海棠大佐の部下達……本職か、それとも彼が保護した子供達か、いずれにしてもE.U.本隊よりは上なのは間違いない。
「二対一だからって、甘く見ないで!」
ライルはカルンウェナンで次々と暁を両断し、続けて海上艦にいるKMF隊をハドロン砲で撃ち落とす。
「どこだ…どこにいる!?」
センサーが反応し、赤い月下タイプが現れた。
〈ライル!〉
「浅海!」
間違いなく、浅海のソレイユだ。ソレイユは槍を抜き、ベディヴィエールの剣を攻め続ける。パワーではこちらに分がある。だが、浅海は流石にベテランだ。『四大騎士団』のエース級と渡り合っただけある。
「結局、こういう形でしか会えなかったわけか!」
〈残念よ、本当に!〉
ああ、本当に残念だ。気持ちを伝えたかった。あの時、エリア11で会った時にすでに心を奪われていたんだろう。
せめて一言、愛していると伝えたかった。
だけど、貴方を殺してのうのうと生きているつもりはないから。せめて、私もすぐに逝ってあげる。
ライルのいない世界なんて、ごめんだ。浅見は自分の生まれを呪った。なんで、私はブリタニア人じゃなかったんだろう?なんで、日本人としてこの人に会ってしまったんだろう?
「なんで私は、名誉ブリタニア人に志願しなかったの!?」
会えるという保証があるわけでもない。だが、それでも……
「こんな運命、ひどいよ…!」
日本独立のためならばどんな非道も仕方のないこと。そう信じて疑わなかったのに……ブリタニア人、それもよりにもよって皇族にその負の面を諭されてしまった。仲間がそれをいいことだと信じて疑わない姿に疑念を抱いて『黒の騎士団』に入っても、看板に酔いしれたような連中ばかり。
E.U.も同じ。ブリタニア貴族を悪く言えないような富裕層のぼんくら息子に言い寄られて、摩耗する中……外人部隊の仲間だけが支えだった。しかし、フランスの講和で浅海はデルク達の残留を盾に貢物になるのを要求された。踊り子や娼婦のような格好で、貴族に弄ばれて捨てられる……と思ったのに、その相手がライルだった。
彼になら愛人のままでもいいと、外人部隊の仲間たちさえ投げ打ってしまいたいとさえ思った。だが、彼は抱いてくれなかった。浅海の身を案じて。
「あの時、あなたに一晩だけでも抱かれていたら…貴方に付いていったのに!」
〈そうか……本当に残念だ。お互いにこんな形で出会った不運が!〉
ソレイユの槍をべディヴィエールの剣が弾き飛ばし、そのままフロートごと右腕を切断した。ハーケンで反撃するが、バランスが崩れたところでさらに蹴り飛ばされて完全に狙いは外れてしまった。
〈……本当に、運がないね。お互いに。〉
追撃のハーケンで残った左の翼を破壊され、そのままソレイユはフロートを失いゆっくりと高度を落としていった。
べディヴィエールはそのまま次の敵を求めて飛び去り、浅海はそれを見届けた。
「っ、ぇぐ……ぅぅ……えぇ…ぅうえぁ…ぇぁあああああ。」
ライルは通信越しで…いや、あの蓬莱島かパリの時から浅海の気持ちには気づいていた。できることなら答えてあげたかった。だが、彼女は『黒の騎士団』。それはかなわない。同時に、彼女に心惹かれる自分にも気づいていた。
レイとは異なる戦士としての心に…それに付随する葛藤に惹かれた。
ああ、まったく!とんだ浮気性だ!!
ハリファクスとローランは激しく切り結ぶ。機体性能ではローランが上だが、クリスタル
は可変機の特性を活かして戦法を変えてくるために決め手をつかませない。
〈流石に経験値が上なだけあるわ!!〉
「こっちは負けないようにするのが手一杯よ!」
フォートレスモードで最大スピードを出しても振り切れない。ならば、と急旋回して突進した。このままいけば道連れにはできる。と思われたが、ローランはエナジーウィングのスピードで回避してショートソードでこちらの機種を切断。ハドロンスピアーもろともに封じてしまう。
次はKMFモードに変形して、近接戦闘を仕掛ける。ルミナスソードとMVSで攻めるが、相手も原型機からそのまま使用し続ける長剣で迎え撃つ。懐に飛び込めば勝てる装備であったが、武器も機体も相手がパワーで優っていた。単純なパワー負けをしてしまい、そのままフロートを破壊され、さらに頭を切り飛ばされた。
〈貴女、ライルほどじゃないけど本当に強かったわよ。〉
「ありがとう…」
ライルが拘るパイロットの一人に褒められるのは悪くない。だが、やはり……
「悔しいな…パイロットと女の両方で、負けたみたいで。」
雛はメリサンドの攻撃をシールドで受け続けていた。
〈受けてばかりでは勝てないぞ!!〉
「生憎、勝つのが目的じゃないのよ。もう気付いてるんじゃないの?」
相手のKMFが距離を置いた。そう、雛に注意を引き付けたことですでにこの部隊はほとんどが撃墜されていた。
「こっちはうちの皇子様がお目当てと遊ぶ時間稼ぎをしてればそれでよかったのよ。……で?ついさっき、おたくのオランダ外人部隊のエースさんも負けたわよ?死んではいないけどね。」
〈美奈川!?〉
メリサンドがソレイユの交戦ポイントへ背を向けるが、雛はそれを見逃さない。オールレンジボマーを発射した。パイロットのデルク・ドリーセンは流石に反応がいい。だが、第二撃には対応しきれなかった。足とフロートを破壊され、そのまま墜落していった。
「惚れたってわけじゃないんだろうけど……全く、ウチのお坊ちゃんみたいに部下に入れ込みすぎよ。あの人のそういうところ好きだけど。」
さて、次に備えないと。
「ハリファクスが撃墜されましたが、パイロットは無事!」
優衣の報告にこぶしを握り締めながら、ゲイリーは指示を飛ばす。
「ウィスティリア卿が抜けたポイントに砲撃部隊の火力を集中!残存のサマセット、飛行KMF隊は副官機が指揮をとれ!」
〈イエス・マイ・ロード!〉
撃墜したのはあのフランス軍の女パイロットだという。流石は『ロンスヴォー』。ハリボテ部隊と当初は侮っていたが、ブリタニアを撃退せしめた部隊を本当に編入しているだけのことはある。政治屋共のくだらない利権絡みの思惑優先でなければ、今でもE.U.は踏みとどまれただろうに。
クラリスがクリスタルを制したころ、フィリップ達四人はライルの部下四人を相手にてこずっていた。むしろ、押されていた。
機体性能はほぼ互角でも、KMF戦でのキャリアに差があるのだ。だが、ここでついに動いた、テレサの機体はハルバードを装備したオリヴィエに下半身を切りさかれ、マルセルの機体は槍を装備した機体と相打ちになり脱出、良二とデビーは互角に切り結びながらも、良二は二刀の小太刀で勝負を制し、デビーもまたクローで相手のフロートを破壊して脱出に追いやった。
「おい、二人とも無事か!?」
テレサもマルセルも脱出しており、通信はつながる。
〈なんとか!〉
〈お前たちは殿下の方へ行け!〉
デビーが一瞬だけ迷うが、良二は先ほどのハルバードを装備した機体をハーケンで腕を破壊し、小太刀で足を破壊した。
「デビー、行こう!」
〈…ああ!〉
幸い、パラシュートも機能して海に着水はできる。良二は僚機に連絡する。
「テレサとマルセルが脱出したから、回収してくれ!座標を送る!」
〈イエス・マイ・ロード!〉
クリスタルがすでに撃墜された報告は入っている。航空隊は流石に粘っているが、そちらの援護に回ってほしいとの指示もあった。
〈良二、気持ちは察するがヴィンセントでどうこうなる相手ではないぞ!?〉
「分かってるよ!」
あの機体のポテンシャルは異常だ。ハリファクスで勝てないのであれば、基本スペックが量産機のヴィンセントでは勝負にならない。元々がピーキーなローランを更にあの紅蓮聖天八極式と同じレベルにまで上げたのでは、乗れる人間も限られる。あのクラリス・ドゥ・ピエルスが乗っているのは疑いようもないが、想像以上だ。
「くそ!殿下の戦いの露払いさえ俺はできないのか!?」
〈ここで何もできなかったら、本物の足手まといだぞ!〉
それは嫌だ。ただでさえ、スザクの手伝いもできないのにこの上ライルの手伝いまでできないなんて良二のプライドとしても我慢ならなかった。
「意地でも殿下の邪魔をする雑魚共は掃除してやる!」
バルディーニは戦局が膠着状態となりつつある現状に腕を組んだ。ライルのエース達を何人か退けたという報告もあるが、同じくらいに優秀なパイロットたちがやられている。
死んでいないだけマシなのだが、彼らの能力を最大限に引き出せるKMFがもうない。E.U.が主要加盟国の人材育成を怠ったツケといっても良い。
いや、ここでいつまでも文句を言っても仕方のないことだ。私自身、それを止められなかったのだから。
「消耗戦になりつつある以上、エース級のKMFとの交戦を避けろ。随行機の数を減らしていけ。指揮官たちの負荷を増大させるのだ。」
セラフィナは二機の暁の連携に食い下がっていた。二対一とはいえ、簡単にやられない自信はあった。しかし、この二機は連携も実力も高い。姉に食い下がる海棠大佐が育てた孤児達……まさに戦いの年季が違うのだ。
「甘く見ていたつもりはないけど、ここまでやるなんて!」
〈そりゃ、伊達に大佐に鍛えられていないさ!!〉
〈経験だけなら貴女より上だもの!〉
橋本裕太とナカタ・クレシェント・セーラ。情報にもあったが、海棠が保護した孤児達の中でも特に海棠に心酔した……テロリストに洗脳された哀れなイレヴン。と、教条主義の当局ならそう言うのだろうが、セラフィナはむしろ敵ながら筋が通った軍人と見ている海棠がよく教えている、とさえ感心していた。そう考えるのは、ライルや秀作の影響なのも何となく気付いていた。
「秀作と会えば、気が合うんじゃないの?」
〈会ったけど、嫌われたわ!!〉
〈魔物の一味呼ばわりだよ!身の上聞けば、納得だがな!〉
機関銃を躱し、刀をMVSで受け止めてセラフィナは問い返す。
「それじゃあ、私は何!?畑方将軍の孫を『洗脳皇子』と一緒に誑かした魔女!?」
ハドロンブラスターで反撃するが、輻射障壁で受け流された。
〈占領直後の俺達ならそう言っていたが!〉
〈私達に彼の在り方を決める権利なんてないもの!勝手な都合で決めつける本物の魔物と一緒にしないで!!〉
二機の暁が刀を手に斬りかかる。セラフィナもベイランのMVSとハドロンブラスターを構え、交差した。
最初の一機をMVSで上半身と下半身に両断してそのまま脱出、更にもう一機をハドロンブラスターで攻撃した。回避が間に合わず、右半身がえぐられて脱出装置が作動した。
だが、ベイランも脱出直前の最後のハーケンの攻撃でハドロンブラスターごと右腕を失っていた。
お互いにこれ以上は無理だと判断して、離脱した。何より、セラフィナは秀作が気がかりであった。
幸也は相手の力量に舌を巻いた。中華連邦でクーデター派についていたのならば当然であるが、やはり強い。ハーケンでこちらに攻撃をしてくるところを幸也はシールドと剣で受け流す。データでは見ている。回転されたときの攻撃力も高いが、電撃攻撃も馬鹿にならない。
〈お前の経歴は聞いている、哀沢幸也!母と姉を日本軍人に殺されたらしいな!〉
「だったら、なんだ!?」
〈女を殺すのに躊躇があるのではないか!?〉
剣で槍を受け流し、間合いを詰めて蹴り上げるも体勢を立て直される。
「お前くらい強いと、そんな余裕ないよ!!それに、自分を正義だとのたまうクズなら女でも子供でも俺の敵だ!!」
〈そうか!ならこちらも遠慮なく行くぞ!〉
槍で剣を受け止めるのではなく、あえて受け流して体勢を崩した。パワーで勝るギャラハッドタイプの長所を逆手に取った。拳法で言えば受け身の技だ。
そのまま柄で頭部を殴りつけて体勢を崩し、フロートも兼ねている鞘を破壊した。そして、間髪入れずに右腕を破壊した。主兵装のコールブランドは左腕に持っているが、両腕で持つのが前提になっている。これでは使うことが出来ない。
「ちっ、後退するしかないか!」
コールブランドをしまい、相手を見ながら幸也はパラディンを交代させた。
秀作のアストラットは蒼天と切り結んでいた。武器のパワーでは勝るが、基本スペックではエナジーウィングに換装された蒼天の方が上だ。それでも、元々がランスロットの上にトライアルのころより大幅にスペックを上げたアストラットで秀作も食い下がっていた。
〈君といい、枢木スザクといいなぜブリタニアにこれほど猶予な人材が流れるのだろうな!〉
「知るか!!」
左腕が掴みに来た。距離を取ろうとするが、今回は無理だった。左手の指がハーケンとなってアストラットを捕え、引き寄せられた。しかし、ならばと距離を詰めた。が、相手が先に反応した。ハーケンで逆に攻撃をしてきて、剣を一本奪われた。
「ぐっ…まだだ!」
せめて左腕だけでも、至近距離でヴァリスを撃つ。この距離なら撃ち落とせなくても左腕を持って行くことは!!
だが、またも相手の方が早かった。ライフルを左腕で力任せに破壊されてしまった。そして、追撃で右足を破壊された。
〈秀作!〉
セラフィナだ。ベイランも腕を失っているが、ボディでこちらを受け止めてライフルを撃つ。
〈良き人に巡り会えたようだな。君の両親は地獄で歯ぎしりをするだろう。〉
蒼天はこちらに背を向け、飛び去った。もうアストラットはまともに戦えない。艦に帰投して、グロースターで再度出撃だ。
「ケアウェントまで、頼めるか?」
〈ええ。〉
池田は冷や汗をかいた。今のは危なかった。もし、翼式でなければ間違いなくやられていた。
本人は気づいていないだろうが、既に彼の力はもはや『ラウンズ』に迫る。あと一年早く、ライルが彼を見いだしていれば彼が今の枢木スザクの立場になっていたやもしれぬ。
それにしても、アレは日本人そのものを憎悪する野獣で『純血派』さえ持て余していたと聞く……その野獣と信頼関係を築くライルも、逸材だろう。こと、人材の発掘とその人材との信頼の築き方だけならばブリタニア皇族で随一か?蓬莱島で会い、何度か話したときに感じたがライルは愚直だ。自分の至らなさは認めて、そこが自分より上の人間に頼ることに迷いがない。本人は格上が大勢いるから自惚れずにすんだと言っている。
それが陥れられても尚、ライルが多くの部下に信頼される所以だろう。皇族の責任感は自覚し、名誉騎士団の発端は幼稚な善意や疑念でもそれを現実にしようとする。他人から教えられた論理を自分で考えて、自分の塗り方で塗る。
そして、人種や爵位を戦場では役に立たないと断じ、それよりも能力を重視する現場重視の考え方。日本人の魂や誇りばかりを持ち出す教条主義の『日本解放戦線』では、彼が相手でも勝てなかった。もう断言できる。
秀作が脱落したが、健在であることは伝わった。しかし、こちらの強力なKMFは確実に減ってきている。艦隊の援護に回したローレンスとガングランは比較的消耗が少ないが、『フォーリン・ナイツ』と親衛隊のエース機が相手のジョーカー並の相手に落とされるか、同じくエース部隊と相打ちになりつつある。
シルヴィオとエルシリアはまだ相手の隊長と交戦している。ドイツの外人部隊指揮官に、旧日本軍人……いずれもE.U.侵攻の際に遭遇しているという。不思議な巡り合わせだ。
そして……
「本当、殺し合うのが悲しいくらいだ。こんなにいい戦場なのに。」
ただの我が儘…喧嘩のつもりで来た。相手が応じてくれたことへの嬉しさはあるし、高揚もあった。だが、相手の強さを知れば知るほど惜しくなった。殺すのが惜しい……
一度腹を割って語り合いたい。そんな感傷さえ大きくなる。
「本当に、惜しいよ!」
赤い中華連邦製のKMFが現れた。炎鳥というあの神虎の系列機だ。
流石にベースがベースなだけあり、第九世代相当にまで回収されたベディヴィエールにも食い下がる。
〈ライル…残念だ。こんな形でまた会うなんて!〉
「鈴維か…!」
槍を受け止め、押し返す。そのとき、後ろから暁が三機やってきたが…
「邪魔をするな!」
胸のハドロン砲を開いて全て撃ち落としてやった。
〈随分とぞんざいだな。〉
槍を剣で受け止め、つばぜりあう。
「せっかく君とまたデートが出来るんだ!邪魔されたくない!!」
〈なら、奪ってきたブリタニアの皇子らしく私をベッドへ連れて行ってほしいね!!〉
「お望みとあらばといえばいいのか!?」
二機は槍を抜いて、せめぎ合った。
優衣は通信を聞いて、小さな嫉妬があった。
「もしやと思ってたけど……捕まえたら、絶対にベッドで泣かせてやる!」
「いいわね、それ。私も乗るわ。」
「ええ、先輩として。」
エレーナが最初に乗り、リーザも便乗した。
「で、ライル様の一番は?」
「え?わ、私……えぇと………ちょっと、いじめたい?」
「よし、決まりね。」
聞こえていたゲイリーがわざとらしくため息をついた。
「殿下がお帰りになったら、好きにしていいから今は集中しろ。」
ブリッジとスピーカーから笑い声が響き、緊張が少しだけ和らいだ。
ベディヴィエールと炎鳥は互角…否、ベディヴィエールの方が押していた。機体性能で単純に勝っているからだ。ライルと鈴維の実力に大きな差はない。ならば、単純な機体性能差で勝負が決まる。普通であれば。
相手の性能が格上であることがわかっている鈴維はベディヴィエールのパワーを受け流していた。しかし、それは長く続かなかった。
受け流したところでベディヴィエールが受け流された勢いを逆に利用して蹴りをたたき込んだ。体勢を崩された炎鳥はそのままハーケンでフロートユニットを破壊され、追い打ちの剣で右腕と頭部を破壊されて、空中にとどまり続けることが出来なくなった。
「流石に幸也に勝っただけあるよ……だが、私の勝ちだ。」
〈ああ…このままベッドインしてくれたらうれしいのに……残念だわ。〉
全く、とんでもない女に惚れられたものだ。いや、それに揺らいでいた自分も大概か?
フロートと武器を失い、名前通り怪我をした鳥のごとく高度を落としていく炎鳥を見届け、ライルは次の敵へ向かう。
浅海は殺そうと思えば殺せたはずなのに、結局殺せなかった。日本よりも女の感情が勝ってしまった。そしてライルも、反動かとんだ浮気性になっています。