オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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原作300年前(3) 成功と失敗

 

 

【異世界転移 113年目 〇日目】

 

 今日、定期的にやってる会議ないし報告会の場で、デミアとアカネからそれぞれ気になる報告が上がってきた。

 

 デミアは、『魔法やアイテムに関する研究者』という設定になっていて、技術力・知識量共にここのNPC達の中で随一だ。

 それを生かして、この空中庭園の利益になるアイテムや魔法の開発を日夜進めてもらっている。

 

 既にその成果はいくつも出ていて、ユグドラシル時代にはなかったアイテムや魔法をいくつか作り出すことに成功していた。

 

 現実になったんだからある意味当然かもしれないけど、アイテムはともかく、魔法も自作できるようになってたんだなって驚かされたよ。

 もちろん、そうだったらいいなとは思ってたから研究させてたんだけど……創造主ながら、デミアの優秀さには驚かされっぱなしだよ、この100年ちょっとの間、ずっとね。

 

 で、そのデミアからの……報告というか相談だったんだけど。

 魔法やアイテムの研究自体は順調なんだけど、それに使う素材ないし研究材料の補充について……特にデータクリスタル他の消耗品についての相談だった。

 

 一部の消耗品や素材アイテムは、金貨を消費することで作り出して取得することはできる。デミアには普段、そうやって作成・補充したアイテムと、この世界産のアイテムを主に用いて研究を進めてもらっている。

 しかし、それだとさすがにやれることに限界があるから……この世界では補充が効かないものであっても、宝物庫に在庫が十分あるものであれば、ある程度は研究に使うことを認めている。

 

 その筆頭は、やっぱりデータクリスタルだ。ユグドラシルで武器やアイテムを作ったり強化する際、絶対に必要になるアイテムだった。

 けれど、やはりこの世界では補充する方法がない。この世界のモンスターは、倒しても何もアイテムをドロップすることがないからだ。

 

 金貨なら、『税金』による収入が圧倒的黒字だから、どうにでもなる。というか、なっている。

 けど……こっちはどうしようもない。データクリスタルを生み出すアイテムなんて、存在しないからな。

 

 デミアからの相談は、『これ以上在庫のデータクリスタルを使うのは、何かあった時のことを考えると不安』だとのことだ。

 今後の研究でデータクリスタルを使うのを控えるか、何かしらの方法でデータクリスタルを入手可能にするべきだと。

 

 前者を選ぶなら、せっかく今までいい感じに進んでいた研究が滞ることになる。それでも、デミアならある程度は進めてくれるだろうけど……研究者であるデミアに中途半端なものを作るだけで満足させるのは……主君としても、創造主()としても、いい気分じゃないなあ。

 

 となると、後者ってことになるんだけど……それこそどうすりゃいいんだ、って話になる。

 さっきも言った通り、モンスターがドロップしてくれない以上、現状、データクリスタルを新たに手に入れる術はないんだもの。

 

 ただ、『もしかしたら』という程度の可能性ではあるんだけど、デミアがその解決策になるかもしれない案を既に用意してくれていた。

 今回の会議でこの話題を提起したのは、それを検討してもらうためだったそうだ。

 

 それについては、ちょっと書くのは後回しにさせてもらおう。

 先に、もう1つの話題……アカネが持ってきた報告の方に移る。

 

 召喚術師(サモナー)であるアカネには、その召喚獣達を使って、この周辺……よりもだいぶ離れたところまで、地理その他の調査を依頼していた。

 その調査の最中に、気になるものを見つけたらしい。

 

 曰く……おそらくは、ユグドラシルから来たギルドホームであると。

 しかも、その敷地の大きさからして、城レベルのダンジョン型ホーム。モンスターの自然POPも確認したらしいから、ほぼ間違いないだろう。

 

 ただし、そのホーム……まるで戦いがあって破壊された後のような感じで、ボロボロ……を通りこして、最早『残骸』とか『跡地』って言っていいようなレベルまで破壊されていたらしい。

 だからそれを見つけた時、アカネは最初、それが『ギルドホーム』だとは気づけなかった。昔の遺跡か何かだと思ってしまったそうだ。

 

 そして、これも召喚獣を使って調べたけれど、その内部にプレイヤーやNPCの姿はなかった。

 トラップなどの迎撃設備が機能している様子もなかったそうだ。つまり……現在、ギルド拠点として機能はしていないし、そこを支配している者も特にいないということになる。

 

 1つのギルドが一度に2つ以上のギルドホームを持つことはできない。

 私は、というか『暗黒桃源郷』は、既にこの『ニューコロロ空中庭園』をギルドホームとしているので、その、新しく見つかったギルド拠点(の残骸)を手に入れることはできない。

 

 けど、『無限にモンスターがPOPする場所』というのは、それだけで利用価値が十分ある。

 

 例えば……私の子供達のレベリングに使う、とか。

 私が産んだ子供達は、種族や父親の強さを問わず、皆、最初はレベル1だ。だから、私の下僕として強く育てたい場合は、たくさんモンスターを倒して経験値を得てレベルを上げる必要がある。

 

 しかし、モンスターが正真正銘の『生物』として存在しているこの世界では、いくら狩ってもモンスターが枯渇しない狩場なんてものはないし、生息しているモンスターも対して強くない。

 だから、効率のいいレベリングってものがなかなか難しく……せっかく才能を持って生まれてきた子供達も、なかなか育たずにいたのだ。

 

 まあ……私は別にそれでも構わなかったんだけど、子供達の方が気にしてるんだよ。これじゃあいつまで経っても私の役に立てない、って。

 あの子達、もうすでに立派に私の下僕としての自覚があるんだもんな……私が産んだ子供って、NPCと一緒で、デフォルトで私に対して忠誠心インプットされてるんだろうか。

 

 そんな子供達にとっても、比較的効率よくレベリングが行える場所になりそうだ。POPするにも一定のペースがあるとはいえ、狩っても狩ってもモンスターが枯渇しない、無限に湧いて出る狩場があれば……数をこなして経験値を稼ぎ、レベルを上げることはできる。

 

 まあ、自然POPするモンスターって、強くてもせいぜいレベル20に届くか届かないか、ってところだから、それほど高いレベルまでレベリングできるわけじゃないだろうけどね。

 それでも、根気強くやれば、レベル30~40くらいには育てられるんじゃないかと思う。

 

 レベル30とか40だと……一応この世界では『英雄の領域』って呼ばれるレベルだな。

 ユグドラシル基準なら、レベル30なんてとても戦力に数えられない、問題外もいいところだけど、取得する職業や種族を慎重に吟味すれば、それなりに戦えるようには育つ……はずだ。

 

 やはり、その『ギルド拠点の残骸』、押さえておくべきだな。

 

 さて、ここで……さっき一旦後回しにした、デミアから上がってきた相談の話に戻ろうと思う。

 どうにかしてデータクリスタルその他の消耗品アイテムを補充可能にできないか、って話だ。デミアには一応、それを可能にする(かもしれない)案があるって話。

 

 その案っていうのは、超位魔法『星に願いを(ウィッシュ・アボン・ア・スター)』を使うというもの。

 これは、『超位魔法』の中でも特に変わり種の魔法で、経験値を消費することでいくつかの選択肢が出現し、その中から選択したことを実際に引き起こす……すなわち『願いをかなえる』魔法だ。

 

 そしてこの魔法、この転移後の世界ではさらに強力になっていて、消費する経験値の最大量が増え、選択肢とか関係なく『プレイヤーの望む願いをかなえる(ただしできる限界はある)』魔法に変わっていた。これも、デミアが調査して確認してくれたことだ。

 

 デミアの案は、この魔法によって、『モンスターがデータクリスタルその他のアイテムをドロップするようにする』という、とんでもない力技だった。

 逆転の発想だ。ゲームが現実になった結果として、ドロップの仕様が失われてしまったのなら、その現実の方をゲームに近づけてしまえ、という……よく思いつけたなこんなこと。

 

 しかし、さすがにそんな、世界の法則そのものを書き換えてしまうような真似は、超位魔法でも無理というか、力の及ぶ範疇を超えてしまうと思われたため、デミアも『成功率は高くないかも』と思ってたそうだ。

 

 加えて、仮に成功したとしても、そんな大規模な物理法則そのものの改変、確実に世界中で大騒ぎになる。ある日突然、モンスターを倒したら、金貨や、得体のしれないクリスタルを落とすようになるんだから。

 その結果何が起こるかとか、想像もできん……できんけど、少なくとも世界中が色々な意味でめちゃくちゃになることは確かだ。……そんなの怖すぎて実行できん。

 

 それに、大パニックになるだけならまだしも、やらかし度合が大きすぎて『龍王』とかに目を付けられることになるかも……いや、確実に目を付けられるだろう。さすがにそれはナシだ。

 

 なのでデミアも……そもそもデミアは、割と前からこの案を思いついていたらしいんだけど、成功するとは思えないし、成功したとしても副作用的な懸念材料が山ほど発生することから、取れる手段として元々カウントせず、論外として見ていたらしい。

 

 しかし今回、アカネがさっきの『ギルド拠点の残骸』を発見した。

 それにより、デミアが今まで没にしてきたこの『超位魔法による世界のルールの改編』という選択肢が現実味を帯び始めたのだという。

 

 デミア曰く、『世界の法則そのものを変えるのはさすがに無理だろうが、限られた範囲のみ、法則を書き換えるくらいならいけるんじゃないか』とのこと。

 

 つまり、アカネの報告にあった『ギルド拠点の残骸』。これを私達で押さえたうえで、『星に願いを』を使い、そのギルド拠点内部に絞って『モンスターを倒すと金貨やアイテムをドロップする』という法則を適用させる。

 そうすれば、そこに無限POPするモンスターを倒し続けることで、レベリングと同時にデータクリスタルの回収も可能になるんじゃないか、ということだ。

 

 それだって十分ぶっとんだアイデアな気もするが……もしそれが可能なら、メリットは相当大きい。正直、迷う……。

 

 ユグドラシルにおいて、武器にせよ防具にせよアイテムにせよ、何かを作る際、データクリスタルは素材として必要不可欠レベルのものだった。

 私が今身に着けている神話級(ゴッズ)装備一式を作る時も、試行錯誤を繰り返す中で湯水のように消費しまくって、納得いくまでとことんやったもんだ。その『やりこみ』はそのまま、最終的に出来上がる武器やアイテムの品質に直結する。

 

 そこまで一品物をハイエンドに仕上げるわけじゃなくとも……数打ちの『そこそこの品質』のものを作る際にしたって、データクリスタルがあるとないとでは、地の品質やらスキルの有無やらで相当大きな差が生まれる。

 

 それにデミアも言っていた通り、何かを作る前の段階、研究ないしトライアンドエラーの段階でだって、データクリスタルを実際に使って実験を行えれば、その分、研究自体が高いレベルで進むわけだし……やっぱり、補充手段、欲しいよなあ……。

 

 

 

【異世界転移 113年目 ×日目】

 

 昨日の会議では、話し合ってても結局決まらなかったので、実際に現場を見て決める、ないし考えてみることにした。

 

 アカネの配下のモンスター達に案内してもらい、私、デミア、アカネ、ミルコ、そして雑務担当としてトールを含めた計5人が現場の視察に向かった。

 全員100レベルのプレイヤーまたはNPC。贅沢な視察団だ。

 

 移動は『転移門(ゲート)』を使ったので一瞬だった。

 空中庭園からはかなり離れてる場所だったので、徒歩や浮遊魔法で移動するのは時間かかるし非効率的だと思ったから、私がさっさと開いた。

 

遠隔視の鏡(ミラーオブリモートビューイング)』を使えば、行ったことない場所でも目視確認して『転移門』を開ける……っていうこの世界の仕様がありがたかった。

 

 で、来てみた結果だが……既に色々ぶっ壊れて『跡地』になっちゃってることを差し引いても、見覚えはないな。

 確かに、『城』か、それに匹敵する大きな建物があったんだろうな……って感じの痕跡がそこにはあった。けど、聞いていた通り既に大部分が崩壊している上、プレイヤーもNPCもいないようだ。

 

 いるのは、自然POPを続けていると思しき雑魚モンスター達のみ。

 そして、湧き出しているのは……どうやら、『無生物系』のモンスターっぽいな? ゴーレムや、浮遊する武器(リビングウェポン)動く鎧(リビングアーマー)なんかが主に出てくる。そしてそいつらは。元あった城の敷地内から出てくる様子はなく、見回り的に徘徊しているだけ。

 

 試しに何体か戦って倒してみたけど、ユグドラシルにいた同じ系統のモンスターと同程度の強さしかなく、使ってくる魔法やスキルも同じだった。

 レベル的には、強いものでも20にもならないくらいしかなかった。……まあ、自然POPのモンスターだからな……このくらいが関の山だろうとは思ってたよ。

 

 ……このレベルでさえ、この世界の人達からしたら、十分に脅威ないし絶望的なんだけどね。

 今わかってる範囲だと、正規軍の兵士でさえ10レベルかそこらあればいい方。

 しかも、専業の兵士でそれなんだ。戦争とかに際して、農民を徴兵して使ってるような国家だともっとアベレージが低くなる。

 そういう国家は、ここに自然湧きするモンスターだけが相手でも、かなり一方的にやられちゃうことになるな……色々な意味でひどいなそれ。

 

 ちなみに、その倒した『動く鎧』その他のモンスターについてなんだけど、無から湧いて出ているらしいにも拘らず、倒すとその体……鎧や武器がそのまま残った。

 もちろん、戦闘後だから破損してるし、そもそもそんなに材質もよくはないんだが……溶かして鉄その他の金属資源として再利用することはできそうだった。ないよりはましなリターンかな。

 

 魔法生物系は、レベルが高い種族でもない限りは、アンデッドと同じように知能が低く、単純な動きでの攻撃しかしてこない。

 また、物理防御力が高いものが多いため、魔法を主軸にして攻めるか、弱点を的確に攻撃して倒す必要がある。

 

 なので、経験値の取得、戦闘技能の向上、魔法の訓練……そういった意味でも、レベルが低い者の訓練相手としては割と持ってこいなモンスターだったりする。

 ……本格的に、この場所、利用価値があると言える。

 

 デミアに確認したところ、宝物庫にあるいくつかのアイテムを組み合わせて使えば、外からこの城跡地を隔離・隠蔽することは可能だとのこと。

 もちろん、『蓬莱の玉の枝』を使った隠蔽とは完成度は比べ物にならないけど、そこらの野良モンスターや野盗の類に発見されない、寄せ付けない程度の効力は十分にあるそうだ。

 

 

 

 視察を終えて帰った後は、カリン達『六道輪廻』を再度集めて再度会議を開き、再度そこの場所の利用方法と……デミアの案についても検討。

 結果……ダメ元で、やってみることになった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 視察の時と同じように、ラストはアカネやデミア達を伴って、その謎のギルド拠点……の、跡地に来ていた。

 先に来た時と同じように、ゴーレムやリビングアーマー系のモンスターが自然に湧き出し、巡回するように敷地内をうろうろと回っている。

 

 そこにきちんと『城』があればまだ多少は様になったのかもしれないが、何もない場所や瓦礫の山の周囲をふわふわ、うろうろと場違いなモンスター達が徘徊しているのは、ややアンバランス、ないし違和感や滑稽さを思い起こさせる光景だ。

 

 そこでラストは、デミアに指示して複数のマジックアイテムを使わせ、『城跡地』とその周囲一帯を外部から認識できないようにする。

 それにより、今そこにいるラスト達の姿も、これから彼女達が何をするのかも、誰にも認識できなくなった。

 

 続けてデミアは、ラストの命令で宝物庫から持ち出してきた、あるアイテムを彼女に手渡した。

 

 それは、小さな銀色の指輪で……3つの流れ星の模様が刻まれている、シンプルながらも神秘的なデザインをしていた。

 そのアイテムの名は『流れ星の指輪(シューティングスター)』。願いをかなえる超位魔法『星に願いを(ウィッシュ・アボン・ア・スター)』を、3回、経験値消費なしで発動することができるという、超がつくほど強力かつ希少な秘宝である。

 

 それもそのはず、このアイテムは、ユグドラシルにおいて、期間限定の『課金ガチャ』で実装されていたアイテムで……多くのプレイヤーをガチャの沼に沈めてきた恐ろしいアイテムなのだ。

 

 ラストの場合、そのガチャで手に入れたわけではなく……例によって『ギルドホーム強盗』で、それも複数個入手していた。

 中には1回か2回既に使われているものもあったが、それでもゆうに10回以上、ノーコストで『星に願いを』を使えるだけの蓄えがあった。

 

(強力ではあるけど、叶える願いの選択肢がランダムで、博打要素のある魔法だったから……最初からコレを主軸にして何かの作戦を立てる、って感じに使える魔法じゃなかったからな。手に入れたはいいけど使う機会が無くて余ってたのかな……あるいは、ただ単に『エリクサー症候群』か)

 

「アカネ。この城跡地の正式名称は? 調べておいてくれた?」

 

「うん。『ロヴォスの空虚なる古城』って名前だった。主のいないギルドホーム化が可能なダンジョンとして放置状態になってたから、第三者の私でも参照できたよ」

 

「なるほど……よし、正式名称がわかれば好都合」

 

 それを聞いたラストは、右手の人差し指にその指輪をはめる。

 そして、指輪をはめた指で城跡地の中心を指さすようにし……魔法を発動させる。

 

我は願う(I wish)! 『ロヴォスの空虚なる古城』に湧き出るモンスター達を、倒すとアイテムをドロップする仕様にせよ!」

 

 瞬間、指輪が青白い光を放ち……それが周囲に広がっていく。

 眩しいくらいの輝きの中で、その空間の『何か』が書き換わっていくような感覚を、その場にいた者達は味わっていた。

 

 光は、ほんの数秒ほどで収まった。

 見た目には……目の前の景色は、どこも何も変わっていないように見える。

 

 すると、どうやら今の指輪の発光のせいで、何体かのモンスター達がこちらに気づいてしまったようだった。

 近くにいた動く鎧(リビングアーマー)が数体、ガチャンガチャンと金属がぶつかり合う音を立てて、こちらに向かってくる。

 

 言うまでもないが、10レベル代のモンスターなど、ラストたちにとっては脅威でもなんでもないため、危機感を覚える者は皆無。

 一応この中では護衛の役割を担っているミルコが、鬱陶しそうに、面倒くさそうに、相手をしようとしたが……それを制して、ラストが自分から前に出た。

 

「ちょうどいい、試してみよう」

 

 そう言ってラストは、詠唱なし、ノータイムで発動可能な攻撃スキル『狐火』を使い、『動く鎧』達を瞬殺した。一撃でバラバラになり、ガラクタと化してその場に崩れ落ちる。

 その瞬間……狐火のそれとは別な『光』が、モンスター達を倒した瞬間にふわりと広がったように見えたのを……ラストはもちろん、そこに居たメンバーのいずれも、見逃さなかった。

 

 それが見えた場所に、ラストとデミアが一緒に歩いていき……黒焦げの鉄くずの中から、金属ではない『何か』を拾い上げた。

 

 手で持てるくらいの大きさの、整った形で透明感のある水晶の塊を。

 

「……『道具上位鑑定(オール・アプレーザル・マジックアイテム)』」

 

 手に持ったラストが、すぐさまアイテム鑑定の魔法を発動。

 すると、見る見るうちにその表情が笑顔になり……水晶を持っていない方の腕で『よしッ!』とばかりにガッツポーズを決めた。

 

 そのままデミアにそれを渡すと……念のために、デミアも同じ魔法を使ってダブルチェックを行う。その結果は……同じだった。

 

「「イェーイ!!」」

 

 パァン、と快音を響かせてハイタッチを決める、ラストとデミア。

 その上機嫌この上ない様子を見て、残りの面々は、その手にある水晶が何だったのかを察し……同時に、今回のこの実験が、理想的な形で成功したことを悟った。

 

「データクリスタル、ゲットだぜ!」

 

 この日……この『転移後の世界』に、初めて『モンスターがアイテムをドロップする』仕組みが生まれた。

 ごく限られた範囲のみに起こるようになった奇跡だったが、そこで生み出されるものの価値を知っている者達からすれば、これは途方もない吉報であり……これからの自分達の躍進を大いに後押ししてくれるものに違いなかった。

 

 ゆえに……喜びに沸いている彼女達は、気づく、ないし思い至ることができなかった。

 

 その偉大な『成功』の裏で、表裏一体とばかりに起こってしまっていた、ある『失敗』に。

 

 

 

 

 

「……なんだ、この気配は? わずかに、世界が……何か、変わった? この感覚、まさか、あの時と同じ……であるならば、見逃すわけにはいかん……!」

 

 

 

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