オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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いつもの時間にちょっと間に合わなかった……

『バイオハザードレクイエム』に続き『ぽこ あ ポケモン』も買ってしまいました。時間が……時間が溶ける……!


第10章 エルフの国への旅路

 

 

 王子・王女達にお礼を言ってムーンブルクを出発したクライム達。

 また『ローラの門』をくぐって戻ろうとした彼らだったが……なんと、ローラの門が悪魔達に襲撃されて崩されてしまい、通行不能になっていた。

 

 戦闘による破損自体はもう修繕されていたものの、その間に流入した水によって通路が水没してしまっており、排水設備を使っても、復旧までには何日も、あるいは何週間もかかる見通しだったのだ。

 

 これは、時間がかかるが迂回するしかないか、とクライム達が結論を出しかけた時だった。

 

「ごめんよ、ちょっとどいてくれ」

 

 そんな声と共に割って入った何者かが、手に持っていた小さな壺を水路に向けたかと思うと……その壺……『かわきのつぼ』が、すさまじい勢いで通路の水を吸い上げてしまい、あっという間に『ローラの門』が再び通れるようになった。

 驚きつつも『これで通れる!』と感謝を述べるクライム達に、その、黒に近い藍色の髪を短くそろえた、黒い瞳が特徴の青年は……『ラダトーム王国』の第三王子・ノアと名乗った。

 

 ラダトーム王国は、クライム達がここに来るまでにあった国の一つだが、急ぐ旅路であるがゆえに、滞在せずスルーしていた国だった。

 (ノア)もまた、ローレシアの王子達と同じように、冒険者をやっているらしい。彼の場合は、『第三王子』であり、王位を継ぐ立場でもないということで、ローレシアの王子達よりもさらに自由気ままにやっているようだ。

 その表れなのか、『もしよかったら一緒に行こう』という誘いを受けたため、クライム達は一時的にノアと行動を共にすることになった。

 

 そしてそのノアから、気になる情報も聞くことができた。

 クライムではなく……レイナースが、だが。

 

「呪いの解除? 生憎と俺は詳しくないんだが……『ラダトーム』には、その手の専門機関があるから、そこでならわかるかもしれないぞ。何百年間も研究を続けた成果たる技術を以て、呪いに悩まされてきた人々を幾度となく救ってきた実績があるという話だしな」

 

「そ、それは本当ですか!? もしそうなら、ぜひ……ぜひ見てもらいたいのですが……!」

 

「まあ、必要なら俺が紹介状でも書いてもいいけど……こんなんでも王子だから、多少は便宜を図ってくれると思うし」

 

 思わぬところで希望につながる情報を聞けたレイナースは、期待に胸を膨らませて、『ラダトーム王国』への到着を待つのだった。

 

 

 

 そして、ラダトーム王国に到着。

 

 王城に行き、そこでノアとは別れることになるかと思ったクライム達だったが……そこでまさかの、国王から『ノアをこの先も同行させてほしい』との申し出があった。

 なぜかというと、最近、このあたりでは見ないモンスターが出現することが増えて来ていて……しかもそれらが、リ・エスティーゼ王国やバハルス帝国がある、大陸西側から来ているため、その調査をさせたいというものだった。

 

 ノアの強さは、道中襲ってきたモンスター達との戦いの際にクライム達も目にして知っていたため、渡りに船とも言える。

 これまでほとんど国交のなかったラダトーム王国とリ・エスティーゼ王国との国交の足掛かりにもなるかもしれないと考え、ラナーの許可を得て、あらためてノアを仲間として受け入れることになった。

 

 その後、ラダトームの城下町で、ノアの案内で『呪いの研究機関』を訪れたクライム達。

 そこで、レイナースの顔を蝕んでいる呪いについて、解析してもらった。さほど時間は必要とはされず、解析は終了し……

 

「……結論から申し上げますと……レイナースさんの呪いは極めて特殊な状態になっているため、通常の方法では解呪は不可能です」

 

「それは……通常でない方法でなら可能だ、ということですか?」

 

 不可能、と聞いて絶望しかけたものの、含みを持たせた言い方に希望を託してそう問いかけるレイナース。

 その質問に、研究機関の職員は、

 

「というよりも、呪いの状態が極めて特殊な状態になっているがために、解呪するなら必然的に普通ではないやり方が必要になる……というべきかと。レイナースさんのそれは、魔物が死に際に放った呪いによるもの、なのですよね?」

 

「ええ……そのため、極めて強力で、今まで誰も解呪できた者がいないのです」

 

「……実はそこに1つ勘違いがあります。確かに強力な呪いではありますが……解呪を妨げているのは、呪い自体の強さだけではないのです」

 

「…………?」

 

 

 

『カースドナイト』という職業(クラス)がある。

 これは、高い戦闘能力を持ち主に与える代わりに、常時ある一定の『呪い』を身に受けた状態になってしまうという、極端なメリットとデメリットがある職業である。

『職業』であるので、取得は通常、持ち主自身の意思でおこなわれるものであり……当然、呪いを身に受けるというデメリットも覚悟の上で取得することになる。本来は。

 

 レイナースは、死に際の魔物から呪いを受けた際……ただ呪われるだけにはならなかった。

 何かの不具合ゆえか、呪われると同時に、自動的かつ強制的に『カースドナイト』の職業を取得してしまった。

 

 そのせいで呪いが、『カースドナイト』の職業という形で彼女の身に根を張ってしまった。

 呪いを解除しようとしても、彼女が『カースドナイト』であり、職業と呪いがセットである以上は、呪いだけを取り除くことができない……そんな状態になってしまったのだ。

 

 さらに言えば、その『カースドナイト』自体、ラストやアインズの言い方を使えば、『バグっている』状態にあると思われた。

 

 本来、『カースドナイト』にはレベル制限があり、今の強化されたレイナースのレベルでさえ、取得することができないはずの『職業(クラス)』なのだ。

 この世界では、そういうことがしばしば起こる。レベル60にならないと取得不可能であるはずの『忍者』を、30レベルにも至っていない、『蒼の薔薇』のティアティナが持っていたりと。

 

 その『バグ』によるものなのか、あるいは、レイナース自身に特別に才能があったからなのか、彼女の身には『カースドナイト』が根付いてしまい、それが妨げとなって呪いを解くことができないでいるのだ。

 ゆえに、呪いを取り除きたければ、まずは『カースドナイト』をどうにかする必要がある。何らかの方法で職業そのものを切り離して捨て、その上で解呪を試みれば、取り除ける可能性はある。

 

 しかし、その為の方法は……残念ながら、今ここにはない。

 ゆえに、ここでその呪いを取り除くことはできない、というのが、解析結果だった。

 

 レイナースはそれを聞いて、呪いを解くことはできなかったことを残念がりつつも、その仕組みを知ることができただけでも大きな前進だったと捉え、研究機関に礼を言った。

 そして、明らかになったその事実を胸に収めた上で、この先もクライム達についていくことを決めた。

 

 アインズは『呪いをとけるかどうかはレイナースの覚悟次第』だと言っていた。決して不可能だとは言っていなかったし……それなら、まだ可能性があるのなら、それを求め続けるだけである。

 それに、この後『命の女神』への謁見も控えている。そこで活路が切り開ける可能性もある。

 

 未だ呪いはこの身を蝕んでいる。しかし、来る前までよりもだいぶ心が軽くなった気分で、レイナースはクライム達と共に、ラダトームを後にするのだった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

『武技……【飛翔剣】』

 

 ノアが横一文字に振り抜いた剣の軌跡から烈風が起こり、空を飛んでいる何体もの悪魔を切り裂いて墜落させる。

 

 小さい悪魔はそれだけで絶命。大きな体躯の悪魔は辛うじて息があるようだが、そこに軽戦士ゆえの素早さで飛び込むヴィヴィアンが、手に持ったブレードで喉を切り裂いて、あるいは首と胴体を泣き別れにしてとどめを刺す。

 

 そのヴィヴィアンを後ろから襲おうとする巨大な体躯の妖巨人(トロール)が迫るが、その棍棒の一撃を、ガキィン、という金属音と共にレイナースが止める。

 細身の人間、しかも女に止められてしまったことに驚く妖巨人だが、その直後、背後からすさまじい勢いで叩き込まれた連続攻撃で体がバラバラになる。

 と同時に、傷口から炎が燃え上がって全身を焼き尽くし……消し炭に変えた。

 

 それをやってのけたノアは、再生しない、確実に死んだことを確認して、剣を鞘に納める。

 

 残る魔物は、空を飛んでいる数匹の悪魔だけ。

 形勢の不利を悟って逃走しようと背を向けたが……そこにヴィヴィアンが正確無比な軌道でナイフを投擲し、脳天を貫いて絶命させる。

 

 ナイフはマジックアイテムだったようで、悪魔の命を奪い去った直後、ヴィヴィアンの手元に全て戻ってきた。

 

「よし、これで終わりっと」

 

「増援もなし、だな」

 

「では馬車の皆に、障害がなくなったので出発する旨を伝えてまいります」

 

 そう言ってレイナースは駆けて行った。

 その足取りは、どこか……少し前までよりも軽やかになっている気がする、というのは、数か月(体感で)前から一緒にいるヴィヴィアンの弁である。

 

 

 

 馬車に戻ってクライム達と合流し、『ヘイムダール王国』への旅路を再開した一行は、地図を開いてこの先のルートについて話し合っていた。

 

「思えば、来るときはアインズ様に送ってもらいましたから、帝国を横断してはいないんですよね……しかし……」

 

都市国家連合(ここ)からエイヴァーシャー大森林に行くには、どうしたって帝国か、あるいは南にある竜王国を経由していかなきゃいけないぞ? 海でも渡らない限りはな」

 

「海路は現実的ではないですね……魔物も出ますし、船を手配する当てもないですし」

 

「じゃあ、帝国を横断していく?」

 

「……難しいと思います。誰にも見つからずにこっそり行けるならそれでもいいですが……」

 

「見つかった時のリスクが大きすぎる」

 

 そう言いながら、アルシェはラナーとクライム、それにレイナースを見る。

 

 敵国であるリ・エスティーゼ王国の王族であるラナーや、その家臣クライム。帝国内でその姿を目撃されれば間違いなく騒ぎになるし、帝国軍から捜索の手の者が派遣されてもおかしくない。

 場合によっては機動力を重視して、魔法省の魔法詠唱者(マジックキャスター)が動員されることすら考えられる。

 

 加えて、おそらく死んだことになっているであろうレイナースや……行方不明扱いだと思われているアルシェ自身が、目撃された際にどう反応されるかも不安である。

 

 先程も話に出たように、誰にも見つからずにこっそり通り抜けられるならそれでもいいだろうが……あまりに不安要素が大きすぎる。

 一刻の猶予もない、というほどではないにせよ、バルブロが『悪魔の儀式』やそれに準ずる何かろくでもないことを推し進めている可能性がある以上、早急に対処したい。面倒ごとに巻き込まれて時間を食うのは好ましくないし……時間を食うだけで済む保証もない。ことと次第によっては、四騎士であるレイナースのとりなしでもどうにもならない可能性もあるのだから。

 

 であれば、帝国領内は極力通るべきではない。そうなると……

 

「そのさらに南側……竜王国を通って行くのが無難だろうな。その後、カッツェ平野を突っ切って……そのまま王国領内、エ・ランテル周辺に出られれば、あとは南の国境沿いに移動して……」

 

「その先のアベリオン丘陵をわずかに通るルートで、エイヴァーシャー大森林に入り……『ヘイムダール王国』に入国できるかと。そこまで行ったら……」

 

「そこから先は僕が手配しますよ。こんなんでも一応『大公』ですから」

 

 と、ふとヴィヴィアンが、

 

「あのさ、それだったらいっそ、竜王国の女王様に相談してみるのはどう?」

 

「竜王国の? それは……どういう意味ですか?」

 

「あの国さ、国の南東の国境からたびたび『ビーストマン』っていう亜人種族が攻めて来て、それを都度撃退するために年がら年中戦ってるの。聖王国も似たような感じでしょ?」

 

「ああ、まあ……亜人がことあるごとにちょっかい出してくるって点ではそうだな」

 

「確かに、年がら年中気が抜けませんね……」

 

 色々と思い出しながら、ため息交じりに言うカルウィンとネイア。それに加えてイビルアイが、

 

「まあ、竜王国の襲撃頻度や被害規模は、聖王国よりもさらにきついという話だがな……噂に聞く限りでは、国軍の配備に加えて、傭兵や冒険者の協力でどうにか食い止めているらしいが、最近はさらに……ああ、そういうことか」

 

 何かを思いついて納得した様子のイビルアイ。

 ヴィヴィアンがその先の説明を引き継ぐ形で、

 

「今色々あってあの国、その『ヘイムダール王国』と『スレイン法国』から軍事的な支援をしてもらって、ビーストマンの侵攻を食い止めてるんだよ。けど、その派遣されてきてる防衛部隊が交代のために定期的に国に戻るらしいんだよね。だから、ヘイムダール王国に戻るその人達に同行することができれば……」

 

「そうか……何もトラブルなく一直線にヘイムダール王国に行けますね!」

 

「だがそのためには、さすがに竜王国の女王陛下に一言くらい声かけないといけないだろうな。まあそれも……」

 

「ええ、友好国であるヘイムダール王国の大公である僕なら、渡りをつけられると思います。後で多少お礼みたいなことをする必要はあるでしょうが……」

 

「もしこの旅が終わって、大陸に平和が戻ってきたら……それについては王国から責任もって対応させていただきます。私の、第三王女としての立場や知名度も、少しは役に立つといいのですが」

 

「それに加えて今は、姫さんは『神の使徒』っていう特大のステータスもあるしな」

 

「ダメだ、それはさすがにむやみやたらに吹聴するわけにはいかんだろうが」

 

 

 

「ところで、ヴィヴィアンさんって……前にも聞いたけど、『竜の血』が入ってるんですよね? アインズ様も言っていましたし」

 

 ネイアからの、ふと思いついたような質問に。『うん』と返すヴィヴィアン。

 

「うん、そうだよ。と言っても、『そういう言い伝えだって聞いてる』ってだけなんだけどね。私自身が竜のご先祖様に会ったことあるわけじゃないよ?」

 

「なるほど……じゃあ、ふと思ったんですが……」

 

「うん?」

 

「これから会うことになった、竜王国の女王様も……『竜王』の血を引いているお方で、それ以前に竜王国自体が『竜王』によって建国された国なんですよね。そのあたり……ヴィヴィアンさんのご実家も、何か関わりあったりとかは……例えば、女王陛下の縁戚だとか……」

 

「そういうのは聞いたことないかなあ……私の場合は、エルフとか一部の亜人みたいに、別な竜の氏族?っていうの?の末裔が住んでる隠れ里みたいなところで育ったってだけだし」

 

 窮屈だから出奔しちゃったけどね、と語るヴィヴィアン。

 ネイアからすれは、『竜の血を引く人間』など、ただの貴族など及びもつかないような特別な身の上にしか聞こえないし……その裏付けとなるように、ヴィヴィアンの戦闘能力は、この一行の中でも屈指の高さであるし。

 

 しかしヴィヴィアンは、それを単なる個性か何かの1つに過ぎないとでもいうように、何でもないことのように話す。ネイアのような普通の人間と、差を作ってみている気配が僅かもない。

 

「それに、女王様は……こう言っちゃなんだけど、あんまり強くはなさそうだったしね」

 

「え、会ったことがあるんですか?」

 

「うん。まさにネイアが言ってたように、『自分以外に『竜』の血を引いている者に会ってみたい』って言ってたらしくてさ。それで、ドロニアおばちゃんの仲介で実際会って見たんだけど……普通の人間の女の子、って感じだったよ」

 

「そうなんですか……血筋が違うと、やっぱり能力とか体質みたいなものも違ってくるんでしょうかね……」

 

「人間でもそういうのあるしね。親子でも価値観や体質、その他いろんな向き不向きが違ってたりすることもあるし……あんまり難しく考えても仕方ないんだよきっと」

 

「なるほど……」

 

「ま、こんな風に言ったら、前にドロニアおばちゃんからは『お前は考えなさすぎだ』って言われちゃったんだけどね、あはははは!」

 

「…………(苦笑)」

 

 

 

 けらけらと笑うヴィヴィアンに苦笑を返しつつ、ネイアは『ドロニアおばちゃんって誰だろ』などと考えていた。

 それを遠目で見て、同じように苦笑したり、あきれていたり、『楽しそうで何よりだ』というような感じで思っている仲間達。

 

 シリアスで重苦しいものになってもおかしくない旅路だが、程よく弛緩した空気でリラックスしていられるのは、底抜けに明るい彼女のおかげでもあるだろうな、と、皆、思っていた。

 

 

 

 そんな居心地のいい旅路に、冷水が浴びせられるかのごとき事態が、この後待ち受けていることを……まだ、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘘である。

 それこそヴィヴィアンを含め、何人かはそれ(シナリオ)を知っている。

 

 演出上、『知らない』。言わない。

 

 

 

 

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