オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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第11章 その覚悟を問う

 

 

 クライム達の旅の様子、見させてもらってるけど……順調だねえ、よきかなよきかな。

 

 ヴィヴィアンに加えて、ノアも問題なく仲間に加わってなじんだし。着々と『キャスト』はそろってイベントを1つ1つ進めつつある。

 この後加入することになる最後の1人も問題なく加わることができれば、いよいよクライマックスまで駆け抜けるだけだ。

 

 まあ、その前にもういくつか成長用イベントあるけどね。

 

 

 

 さて、竜王国を経由して『ヘイムダール王国』に行くことに決めたクライム達は、ヴィヴィアンとエオンの提案(という名の誘導)に従って、竜王国のドラウディロン女王に謁見した。

 同盟国の大公であるエオンがいたおかげで、その辺はスムーズにいったみたいでよかった。

 

『神』云々はさすがに疑いの目で見られちゃうと思うので、『急を要する案件で早急に国に戻りたいので、今度防衛部隊からヘイムダール王国に帰還する者達に同行したい』と申し出た。

 面子が面子だったので、ドラウディロン女王も色々と気になりはしたみたいだったけど……逆にあまり関わらない方がいいと思ったのか、特に何も聞かれずにOKをもらった。

 ヘイムダール王国との国交に何か影響があってもいけないと思ったのかも。今、絶賛助けられてる最中だしね。

 

 それに……こないだドロニアが言ってた内容を思い出して、今後もヘイムダール王国と上手くやっていくためにはどうすべきか、素早く頭の中でそろばんを弾いて導き出した結論かも。

 単にエオンに協力しただけじゃなく、『何か訳ありな事態』だとわかっていてあえてスルーしてあげた、という実績を作ることで、恩を売ったのに近い形にもできると思ったかな。

 

 別にそんなことしなくたって、うちの子と仲良くしてくれるなら、私や子供達だってきちんと身内扱いして助けてあげるってのにね。

『竜王国』は、この後の計画の一端を担ってもらう、重要な協力者の1人なんだから……ね。

 

 

 

 そんなわけで、女王様から許可をもらって、『今派遣されているヘイムダール王国の軍が、交代で撤退する時に同行して一緒に帰っていいよ』ということになったクライム達。

 その部隊と合流するために、ビーストマンと戦っている彼らがいる前線基地に向かった。

 

 しかし着いてみると、やたら激しいビーストマン達の攻撃にさらされていて、重傷者も多数出ていてそこそこ大変そうだった。

 急遽クライム達もその戦いに加わり、ビーストマン達を撃退する。

 

 エルフの兵士達は、大公であるエオンがやってきたことに驚きつつも、『跪かなくていいので聞いてください』と制したエオンに話を聞かされ、事情を把握。

 窮地を救ってくれたことにあらためて礼を言いつつ、頼みを聞いて『ちょうど明後日我々が交代で戻りますので、一緒に戻りましょう』と言うことになった。

 

 早々と話がまとまったのはよかったけど、『よかったー』と安心する空気の中で……ただ1人、ザリュースだけが、不穏というか不安そうな気配を漂わせながら、ビーストマン達が逃げて行った方の地平線をにらんでいた。

 

 曰く、

 

 

「あのビーストマン達の目には、見覚えがある。かつて、部族間の抗争が起こった時に、他の集落の蜥蜴人(リザードマン)やトードマンがしていた目と同じだ。住む場を追われ、あるいは食べるものをなくして、もう後がない状況で必死に未来を求めて抗う者達の目だった」

 

「そりゃあ、どういうことだ? あのビーストマン達は……何かから逃げてここまでやってきた、ってことか?」

 

「一体、何から……? ビーストマン達には、そういう、生存競争に発展するような天敵的な種族は特にいないはずですが……」

 

「そこまではわからん……が、嫌な予感がする。道中、警戒をいつもより密にすべきだろうな」

 

 

 ……いやあ、ザリュースすげえ。

 

 シナリオ知らないはずなのに、割と言い当ててるよ……観察力とか発想力が鋭すぎて怖い。

 これが、コキュートスをして『蜥蜴人の勇者』とまで言わしめた男の実力か。

 

 諸々バレちゃうんじゃないかって、見ててちょっと焦っちゃったわ。たぶん、現場にいたエオンとかもドキッとしたと思うし。

 

 

 

 そして、その2日後。

 クライム達は、予定通り、交代する舞台と一緒に『エイヴァーシャー大森林』に、そして『ヘイムダール王国』に帰るためにその基地を出発した。

 

 しかし、出発からしばらくして……それは、襲ってきた。

 

 

 

「本当に生きていたとはな……偵察用に各地に放っている悪魔から報告が上がってきたときは、まさかと思ったが……」

 

「っ……バルブロ、お兄様……!」

 

 

 

 馬車で移動していた一行を、悪魔の軍勢と、それを率いているバルブロが襲ってきた。

 もう全く悪魔と組んでいることを隠すつもりのない――あるいは、目撃者全員消すつもりだからかもしれないが――バルブロは、さらにゲゲルを重ねて力を増していた。

 

 その体には、不気味な赤黒いオーラが纏わりついており、最早ただの人間ではないことが見た目からもまるわかりだった。

 ……ただのフレーバー用エフェクトなんだけどね。有償ガチャのはずれで出てくる奴で、宝物庫にまだまだしこたま放置されてる。

 

 アインズさんも、その光景を見た後『うぼぁー……ガチャ爆死の思い出がよみがえる……』って微妙な表情になってたし……いや、表情筋はないんだけど雰囲気がね?

 

 ともあれ、ここで三度目の襲撃となるバルブロ。

 以前よりはクライム達もレベルが上がってるし、ノアやヴィヴィアンといった大戦力も加わっているので、十分戦えるはずだと思いきや……戦ってみてびっくりの事態に。

 

 なんと、エオンやクレマンティーヌ、ヴィヴィアンにノアといった高レベルな面々のそれも含めて……攻撃がほとんど通用しない。

 

 バルブロが伴って現れた、悪魔の手下達はまだよかった。その4人じゃなくても、普通にクライム達でも戦えて、倒せたから。

 

 けど、バルブロ本人は、物理も魔法も効果がほとんどない。

 何もかも、バルブロがまとっている『闇の衣』とかいうバリアに阻まれてしまい、痛打にならないし、苦労して傷をつけてもすぐ再生されてしまう。

 

 そのまま、攻撃力と防御力にものを言わせて強引にクライム達を突破し……バルブロは今度こそラナーを生贄にするために、彼女を狙う。

 前よりも強くなったはずの……実際強くなっている力で、彼女を守るため、必死で抵抗するクライムをあざ笑うように蹴散らして。

 

 しかし、それでも力及ばず、バルブロの手がラナーに伸びようとした……その時だった。

 

 空のかなたから、『何か』が……すごい勢いで、戦場めがけて……いや、バルブロ目掛けて飛んでくる。

 バルブロやクライム、その他、そこにいた面々は、太陽の光を背に受けて飛んでくるそれに気づいて空を見上げて……それが、人1人を軽々と乗せられるくらいに巨大な鳥だと気づいた。

 

 というか、実際にその鳥の背中に人が1人乗っていた。

 白と黒のツートンカラーの髪の毛と、同じく白と黒のオッドアイ、長くとがった耳が特徴的な、1人の少女が。

 

 そう。まさかの……アンティリーネである。

 

 アンティリーネは、その明るい紫色の羽毛を持つ巨鳥……『神鳥レティス』に乗って飛来するやいなや、バルブロ目掛けてとびかかり……手に持っていた巨大で禍々しい剣を振るう。

 すると、その剣の一撃と共に、『パキィン!』と音が響いて、バルブロを守っていた『闇の衣』がはぎとられ……るまではいかなかったけど、一時的に大きく弱まって、バルブロ本人の体がむき出しになった。

 

 そのまま着地し、剣を構えて、

 

「ぼさっとしてないで。今がチャンスよ、手伝いなさいあなた達も」

 

「えっ!? は……はい!」

 

 唐突にもほどがある指示だったけれど、慌てて彼女の言う通り戦いを再開するクライム達。

 

闇の衣(バリア)』が剝ぎ取られたバルブロには、無事に攻撃が通用するようになっていて……まあそれにしたって防御力は高いし再生もするけど、それでもクライム達でもダメージを与えられるようになっていた。

 追加で悪魔を呼び出しながら戦うバルブロを、少しずつだけど追い詰めることができていた。

 

 バルブロは何度も『闇の衣』を張り直そうとしてたけど、そのたびにアンティリーネがその手に持った巨大で禍々しい剣……『魔王の剣』で引っぺがしてた。

 

 このまま倒せるか、と思ってたところだけど……あと一歩のところで、どうやらヤルダバオトが救援に差し向けて来た強力な悪魔が到着。

 それがバルブロの盾になり、時間を稼ぐ間に、バルブロには逃げられてしまった。

 

 去り際に、バルブロは忌々しさと怒りをわかりやすく張り付けた表情になって、

 

『俺に忠誠を誓えば生かしてやると言ったが、撤回だ! 次に会った時は……ラナーはもちろん、貴様ら全員、絶対に殺してやる!』

 

 そう、捨て台詞を残して去って行った。

 

 

 

 バルブロが去った後、ケガ人の手当なんかの後始末をしながら……クライムとラナーは、助けに来てくれたリーネにお礼を言ってた。

 その上で、割と今更だけど『あなた誰?』と質問……したところで、

 

「あなたが来るとは思ってませんでしたよ……助かりました、姉さん」

 

「ユリーシャに言われてね……手間取ってるようだから、迎えに来てあげたの。まさかあんなことになってるとは思わなかったけど」

 

「…………『姉さん』?」

 

 エオンが言ったその台詞に、きょとんとするクライム他、リーネの身元を知らない人達。

 

 エオンがエルフの国の『大公』であり、女王の弟であるということは、ここに来るまでに説明済みだから、仲間達皆知ってる。

 その『姉』ってことで、『まさか』って驚いた表情になった人が何人かいたものの……『違うからね?』って先回りする形で、リーネがそれを否定。

 

 自分はエルフの国の女王じゃなく、そのさらに姉であり……エオンと違い、別に公的な地位なんかは持っていないこと。

 その女王・ユリーシャの頼みで、この神鳥・レティス――ユリーシャから預かってきた、彼女の使役モンスターの1つ――に乗ってクライム達を迎えに来たことを告げる。

 

 そしてレティスは、クライム達が乗る馬車をつかんで飛び上がり……大幅ショートカットする形で、エルフの国『ヘイムダール王国』を目指して飛んでいった。

 

 ちなみに、一緒に行動していてバルブロに襲われ、ケガ人も出てしまった『交代でヘイムダールに帰る派遣部隊』の皆さんについては、『何か用事があるみたいだし、自分達のことは気にせず先に行ってください』って快く送り出してくれてました。

 あ、きちんと彼らのフォローのために支援部隊とか手配してあるから、もう数時間もすれば合流して助けてもらえるから大丈夫だよ。だいたいレティスが飛び立ったのと同時に、ヘイムダールからグリフォンや飛竜に乗って助けに向かったから。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 それからしばらく飛んで……あっという間に『ヘイムダール王国』に到着。

 既に女王に話が通っていたので、クライム達はその足で城に行き、女王・ユリーシャに謁見することができた。

 

「ここ最近、いろんな国の王様にしょっちゅう会いすぎじゃねえか、俺達?」

 

 とは、なんか短期間で経験した『謁見』が多すぎて疲れて来たっぽいブレインの、呆れ交じりの愚痴っぽい何かである。

 

 ……いや確かにそうかもね。バルブロは除くとしても……ラダトーム、サマルトリア、ローレシア、ムーンブルク、竜王国、そしてここヘイムダールと……あと、王様じゃなくて神様枠だけど、アインズさんにも謁見したし。

 外交官とかの公人でも、数週間の間にこんだけの数の国の国家元首に会うことなんてないよな……過労死するわ。

 

 クライムやラナー達も『確かに……』って苦笑することしかできない様子だった。

 

 まあでも、RPGってそういう感じで怒涛の勢いでイベントが畳みかけてくるもんだし、その過程でさらっと権力者への謁見とか挟んでくるもんだから。

 この後の展開を考えると、なるべく多くの国の偉い人と、浅くでも繋がりを持っておくことが重要なもんでね……もうちょっと頑張ってね。

 

 ……この後さらに、聖王国と……あともう1人、()への謁見も予定されてるから。

 

 

 ☆☆☆

 

 

「……なるほど、『命の女神』……ラスト様への謁見を希望する、というのですね」

 

 場所は、エルフの国『ヘイムダール王国』。その王城は、玉座の間。

 女王・ユリーシャとの謁見の場で、一行を代表して、その弟であるエオンが、ここに来た目的を話し……それを聞いたユリーシャは、ふむ、と考え込む素振りを見せた。

 

 噂に聞いていた者も多かったが、ユリーシャのその、『黄金』の姫・ラナーや、『聖王女』カルカに匹敵すると言われる美貌。それが何事かを思案する知的な、あるいは神秘的な雰囲気に、その場の緊張感が高まるのをクライム達は感じていた。

 

 ……なお実際。

 

(真面目な顔して、口調も知的な女王っぽくするの疲れるわね……お母さんもうちょっとシナリオいじってセリフ短くしてくれればよかったのに……)

 

 たぶんそんなことを思ってるんだろうなと思えているのは、彼女の普段を知るエオンとかそのあたりである。知らぬが仏。

 

「あなた達の懸念はもっともです。話に聞いた通りなら、悪魔との契約で人の道を外れたバルブロ王は、このままでは大陸全てに災厄をまき散らす存在となるでしょう。それを止めるために、神の力が必要である、と……わかりました。私が、ラスト様への渡りをつけましょう」

 

 ユリーシャがそう言ったのを聞いて、クライム達の顔に安堵や喜色が差し込むが……その直後、ユリーシャは『しかし』と付け加えるように口を開いた。

 

「2つほど、確認しなければならないことがあります。まず……ラナー王女」

 

「! はい、何でしょうか」

 

「あなたにとって……バルブロは、悪の権化となったとはいえ、同時にまぎれもなく、血のつながった兄でもあります。その兄を……手にかける覚悟を、あなたは持っていますか?」

 

「…………」

 

 少し、言いよどむラナー。

 怯んだような、あるいは迷うような様子こそ見せないものの……すぐに答えを返すということはできなかったようだ。

 

「すぐに答えを出せないのを恥じる必要はありません。あなたの気持ちは、私も分かりますから」

 

「ユリーシャ様も……?」

 

「ええ。私も、前の王である父を、クーデターによって追い落とし、この王位を……言ってしまえば『簒奪』した身ですから。暗君にして暴君というしかなかった父を追い落とし、処刑して死に追いやったこと……後悔こそしていませんが、背負ったものは、決して小さくはありませんでした」

 

「…………」

 

「あなたに、それを背負う覚悟が……ありますか?」

 

「お気遣い、ありがとうございます、ユリーシャ様。確かに私も……叶うならば、お兄様に、こんなバカなことはもうやめてほしいと……まっとうな道に戻ってほしいと、もう何度も思いました。いえ、正直に言って、今でも心のどこかでそう思ってしまうことが……ないわけではありません」

 

「ラナー様……」

 

 クライムが、思わず、といった様子でこぼしてしまった声。

 それが聞こえたかどうかはわからないが、ラナーは『でも』と続けながら……自分を案じてくれている、クライムの顔を見て、

 

「もうそれがかなわないこともわかっています。先に謁見させていただいた、『死の神』アインズ・ウール・ゴウン様より、聞かせていただきました。おそらくもう、悪魔の力に浸かり切ったお兄様を元の人間に戻すことはできないだろうと。そのお兄様を、討ち取ることでしか止められないのは、悲しいです。けれど……それでも……」

 

 一拍。

 

「悲しさと悔しさで押しつぶされてしまいそうな、そんな時でも……私を信じて、支えてくれる者、仲間達がいます。だから私は……覚悟を決めました。覚悟を決めることが、できました」

 

 そして、視線を前に戻し……ユリーシャの目をまっすぐ見て、

 

「私は、リ・エスティーゼ王国の王族として……そして、『命の女神』ラスト様に新たな命をいただいた使徒として、バルブロを……倒します。その先にある、全てを背負うことになっても」

 

「……その覚悟、確かに聞き届けました。あなたの正義が、気高き心が、成就することを祈ります」

 

 

 

(……こんだけどっちも嘘しか言ってないド茶番なやり取りもなかなかないよなあ……)

 

(どっちも声音や表情の制御まで完璧。裏を知ってる私達でも信じそうになるくらい、演技力が神がかってる……)

 

(いやホント、笑いをこらえるのが大変なんですけど……っ……)

 

(ちょっ、笑っちゃダメだよリーネちゃん! 今大事なとこなんだから! 気持ちはわかるけど!)

 

 エオン達の……この芝居の『裏』を知っている面々からすると……今のエオンの言葉通り、ここまで見事に嘘で塗り固められたやりとりも珍しいというのが共通の思いだった。

 

 ラナーにとって、肉親であるバルブロを殺そうが殺すまいが、わずかでも心が動くことなどないし……なんなら邪魔だから、計画上死ぬ必要がなくても死なせる方に動くだろう。

 それどころか、必要であれば、今バルブロがやっている以上に、無関係な者が大勢犠牲になろうとも、何も思わないし、躊躇いもしないだろう。デミウルゴスをして『精神の異形種』とまで言わせた虚無の価値観は伊達ではない。

 ……そもそも今の彼女は、『堕天使』に転生して正真正銘の異形種になっているのだが。

 

 ユリーシャの方も、父である前王デケム・ホウガンを、『あんないい笑顔でボッコボコにしといて何を今さら……』というのが、当時を知っている面々に共通の思いである。

 そもそも尊敬するところが何一つない、国民からもクソ認識されていたあの王に、何を『背負うもの』があったというのか。

 なんなら蘇生して二回殺してるし、それを法国相手の外交カードにしてるんだがこの女王。

 

(まあ、身内を断罪しなければならない、っていう点は……確かに『普通なら』相応の覚悟を持って臨むべき業ですから、物語的には盛り上げポイントなのはわかりますけど……全部知ってる僕らからすると、むしろギャグにしか見えないんですよねえ……笑い堪えるのが大変だ……)

 

(腹筋に効くわよね、この茶番……)

 

 

 

 気を取り直して。

 

「そして、私が確認したいこと……もう1つは、あなた方の『力』です。謁見して『命の女神』の力を借りるとしても、相応の力がなければ、悪魔の力を得たバルブロと戦うことはできないでしょう。ですから……あなた達がそれに足る力も持っているのだということを、私に証明しなさい」

 

「……それは……あなたと戦うということか?」

 

 イビルアイが、わずかに震える声でそう尋ねた。

 

 様子がおかしいことに気づいた面々が視線を向ける中、イビルアイは、恐る恐る、といった様子でユリーシャに尋ねる。

 

「実のところ、先程から気になっていたのだが……あなたは、『(ぷれいやー)』ではないのか? 今まで会ってきた者達の中で、アインズ様を除けば、あなたからは、突出して大きな力を感じる。それこそ……あのヤルダバオト以上だ」

 

 あの恐ろしい魔王以上だと聞いて驚くクライム達。

 しかし、ユリーシャは首を横に振った。

 

「いいえ、私は『神』ではありませんよ。ただ……あなた達の知る言葉で言うならば……『神人』という存在に該当しますが」

 

「『神人』……神の血を覚醒させた存在か。では、あなたはかつてこの世界に降り立った『(ぷれいやー)』の子孫なのか」

 

「そういうことです。……それと、1つ訂正しておきますが……あなた達の力を試すのは、私ではありません。私のしもべの1体が務めます……おいで、レティス」

 

 そう、一声呼ぶと……玉座の間につけられた天窓から、一行をここまで運んできた神鳥・レティスが飛来して、ユリーシャの横に降り立った。先ほどまでよりもだいぶ小さくなっているものの、それでも大の大人が見上げるほどに大きい。

 

「場所を、この城の練兵場に移し……このレティスと戦ってもらいます。その戦いぶりを見て……あなた方に、魔の者となったバルブロと戦えるだけの資格が、それを託す者として『命の女神』に謁見する資格が、本当にあるかどうか……見極めさせていただきます……!」

 

 

 

 ……なお、この数十分後。

 クライム達はどうにかその試練を突破し……その様子を見ていたユリーシャから、ラストに連絡が入ったわけだが、

 

「お母さん、どうにかクライム君達、レティスの試練を突破したわ。したけど…………さすがにちょっとこの子の相手させるのは可哀そうだったんじゃない? レベル的に無茶だと思ったんだけど見てて……」

 

『まあ……元ネタというか原産地のゲームでも、『コイツ試すんじゃなくて本気で殺しに来てない!?』ってプレイヤーから総ツッコミ食らってたトラウマボスだからね……強すぎて負けイベントだと思ってた人も多いって話だし』

 

「なんでそんなのテスト役に選んだのよ……」

 

 

 途中、何度かマジで全滅しそうになってハラハラした、という苦情と共に、ラストへの報告がなされたのだった。

 

 ともあれ、資格を示したということで……いよいよ次は、『命の女神』ラストにゃんにゃんとの『謁見』である。

 

 

 

 

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