「が、はっ……バカな……!?」
「逃げて、ください……カルカ、様……!」
「レメディオス! ケラルト! そんな……」
城塞都市カリンシャ。
聖王国において、敵を迎え撃つためのあらゆる設備が揃った、最も堅牢な都市として知られているそこで……聖王女カルカは、今まさに、絶体絶命の窮地に陥っていた。
聖王国に突如として出現した魔神『魔元帥ゼルドラド』。
王兄カスポンドをもその魔手にかけた恐るべき敵を迎え撃つため、聖王女カルカは、腹心である聖騎士団団長レメディオスと、神官団団長ケラルトと共にその都市に赴き、『国家総動員令』を発動して、総力でもって敵を迎え撃った。
しかし、全く歯が立たず……兵達は、ゼルドラドとその眷属達によってあっけなく蹴散らされていくばかり。
「ふん……これが聖王国の最大戦力とは。呆れてものも言えんな」
最大戦力であるレメディオスとケラルトも、ゼルドラドの体に傷一つつけることすらできず、叩き伏せられてしまっていた。身動きが取れないほどのダメージを受け、ゼルドラドの足元に2人とも倒れ伏している。
ゼルドラドはその手に禍々しい形の剣を持ち、恐るべき威力の剣技を繰り出し、それのみならず魔法も使ってくる。
加えて、ゼルドラドの周囲には、その手に持っているものと同じ見た目をした剣が何本も浮遊しており……独りでに動いてゼルドラドを援護してくる。その剣の一撃一撃も、並の兵士では受け止めることなどできず、全身を甲冑で守っていても容易く真っ二つにされてしまうほどの威力だ。
一歩一歩歩みを進めるゼルドラドからカルカを守ろうと、聖騎士達が前に出る。決死の覚悟で、刺し違えるつもりでゼルドラドに向かっていく。
しかし、ゼルドラド自身が何をすることもなく、周囲に浮遊している剣が切り捨てていく。
体中から血を噴出して倒れる聖騎士達の姿に、カルカが心を痛めた……その瞬間、目にもとまらぬ速さでゼルドラドが踏み込み、カルカの首をつかんで持ち上げた。
「あっ、ぐ……!?」
「貴様ぁっ……カルカ様を、放せ……!」
倒れたままのレメディオスの叫びなど耳に入っていないかのように、ゼルドラドはカルカの美貌が苦悶に歪むさまを見て、ニヤリと笑い、
「哀れなものだな。一丁前に鎧など着て、手下を率いて戦場に出て来て、あっという間に丸裸か。王としては滑稽の極みだが……思った通り、生贄としては上々そうだ」
「いけ……に、え……?」
「光栄に思うがいい。貴様はその矮小な命をもって、ヤルダバオト様の……ぬぅっ!?」
その時。
はるか遠くから放たれた魔力弾が、ゼルドラドの脳天めがけて、すさまじいスピードで飛来してきたのを……間一髪、ゼルドラドはその手の剣で防いだ。
が、それと同時に、転移魔法でゼルドラドのすぐそばに人影が出現し、手に持った剣を振るってゼルドラドの右腕を薙いだ。
刃は深々と食い込んだが、切断するまでには至らず……しかしその衝撃でゼルドラドはカルカを取り落とした。
直後、ゼルドラドは後ろに向けて大きく飛び退り、同時に、いま出現した男……ノアは、倒れこみそうになるカルカを抱きとめて抱え、その状態でこちらも後ろに飛んだ。
「ちっ、右腕貰うつもりで斬ったんだが……硬いな。で……」
そして、腕の中のカルカを軽くゆする。唖然として言葉が出ずにいる彼女が、はっとしたように目を見開いた。
「お怪我はありませんか、お姫様?」
「は……はい……」
―――ぽっ
効果音をつけるなら『コレ』だったと、その場面を見ていたラスト達は、後に語った。
☆☆☆
「そしてそのまま、私をかばいながら『魔元帥ゼルドラド』と戦って……あんなにも強くて、鮮やかで……あぁっ、今思い出しても、なんだか胸が……!」
(…………こりゃ重症ね……)
回想はここまでとする。
カルカの中でノアは、絶体絶命の自分を助けてくれた『白馬の王子様』的な存在に見事になってしまっていた。
率直に言って、完全にホの字である。自らの主君が見事に色ボケ状態になってしまっている様を見て、ケラルトはため息をつくしかない。
もっとも、そうなってもおかしくないくらいドラマチックな出会いだったとは思うし、1人の女として惚れてしまうのも無理はないほどに強かったのも事実だ。
そして、カルカの懐刀でありながら、彼女を守れなかった自分達に、ノアのことをどうこう言う資格はないしそのつもりもない。感謝を言葉にしてもしてもしたりないくらいだ。
なお、この時の思い出話にケラルト達が付き合わされるのは、もう両手の指の回数である。
「ノア……だったか。確かに強かったと思うが、私としてはそれよりも、カルウィンの奴の新たな『鎧』の方がすさまじいと思ったな。元々の白と紫の鎧も十分強かったが、あの白と赤の鎧、そこにさらに一線を画す戦闘能力だったぞ」
こちらは特に何も考えていない様子のレメディオスである。
彼女の言うこともそれはそれでもっともで……彼女とケラルトが懇意にしている冒険者、カルウィンもまた、ゼルドラドとの戦いで活躍した1人だった。
カルウィン最大の武器である『鎧』。以前の『アーバレスト』のままでも十分に強かったそれは、『命の女神』なる存在によってその力を引き出され、赤と白のカラーリングに、まるでポニーテールのような房型の放熱用パーツを備え、『アーバレスト』と比較してなお別格の戦闘能力を発揮する姿『レーバテイン』に変わっていた。
それを纏ったカルウィンと、カルカとその部下達を守りながらゼルドラドの剣の全てをさばききって見せたノア、そして勇者の剣を携えたクライムによって、ゼルドラドは激闘の末に打倒された……というのが、今回の戦いの結末だった。
多くの兵士達――つまりは聖王国の民達である――が目撃したその決戦は、早くもカリンシャからその外の都市にまで、現代の英雄譚として広まり始めている。
(ま、まあ、格好よかったのは確かにそうだけど、それよりも……)
おほん、とわざとらしい咳払いをして2人の注目を集めるケラルト。
彼女自身の頬もほんのり赤いが、それに触れることはせず、話し始める。
「英雄譚も結構だけど、それよりも……あの、魔元帥ゼルドラドとかいう奴が言っていたことの方が気になります。確か……『生贄』と言っていたんですよね?」
「ええ。それに関してですが……ラナー様から、『もしかしたら』という仮説になりますが、話を聞くことができました」
色ボケは一旦休業。
ケラルト同様、真面目に話し合う態勢に入ったカルカが、数日前――まだケラルトとレメディオスが療養中だったため、カルカが1人で相手をした――会談の場で、ラナーに教えられたことについて語っていく。
「かつてはラナー様ご自身がその危機にあったとのことですが……バルブロ王は、あの魔王ヤルダバオトと手を結んでおり、その悪魔の儀式に使う『生贄』を求めているとのこと。そしてそれは、どうやら誰でもいいわけではなく……何かしらの資格を持つ者である必要があるようなのです」
「ゼルドラドが言っていた内容と一致しますね。そして、ラナー様とカルカ様が、その『条件』を満たす存在であったと……」
「ばかげた話だ! カルカ様を生贄に……しかも、かつて『南部』を混乱に叩き落したあのヤルダバオトの手先だと!? どこまでわが国を愚弄する気だ。……そういえば、パベル・バラハが言っていた話だと、バルブロはカルカ様に直接自分にあいさつに来るように言っていたはず……それも、単なる無礼な物言いではなく、だまし討ちでカルカ様を捕らえて、生贄にするためか!」
「ラナー様は、国の恥、身内の恥になると理解しつつも、その事実を教えてくださいました。野心のためにバルブロ王が悪魔と手を組み、その邪悪な儀式によって力を手にしていると。そしてその野心のままに、今度は大陸各国にまで手を伸ばそうとしていると」
「そして彼女はそれを阻止するために、信頼できる腹心や仲間と共に今、旅をしている……今回のゼルドラド討伐も、元をたどればそのためだったと聞きました。ほぼ成り行きでではありますが、カルウィンもそれに協力しているようです」
「いつまでも帰ってこないのはなぜかと思っていたが……そういうことだったか」
「ケラルト、レメディオス、わかっているとは思うけど……このことでカルウィン殿を責めることはしないであげてくださいね」
「わかっています。ことはあの魔王すら絡んで、周辺国家全て、あるいはこの大陸全てを巻き込みかねない大事ですから……。……それにしたって、連絡の一つくらい寄越してくれてもいいと思いますけどね(ぼそっ)」
最後のほうだけ面白くなさそうに小声で付け足したケラルトに、苦笑するカルカ。
予定の期間を過ぎても帰還しないカルウィンに、彼女が日々心配しながら待っていたことを、カルカは知っている。
と、そこにレメディオスが、呆れたような顔をして、
「全くだ。仕事熱心なのはいいが……あいつ、ケラルトと付き合っている自覚があるのか」
「「ぶふぉっ!?」」
噴き出すケラルトとカルカ。
その反応に『?』な顔のレメディオス。
「け、ケラルト!? あ、あなたいつの間に……いやまあそうなってもおかしくないとは思ってたけど……も、もうお付き合いしてたの!?」
「ちょ、な、何言ってるんですか姉様!? べ、別に私とあいつは付き合ってなんか……というかカルカ様も、『そうなっても』って何ですかどういう意味ですか!?」
「ん? 何だお前達まだ付き合っていなかったのか? 私はてっきり……」
「てっきり何よ!? 事実無根よ!?」
大焦りするケラルト。普段の彼女からは想像もできない――主従を超えた顔なじみ3人しかいない空間だからこそ見れた景色である――その様子は、もし彼女の部下が見れば目を丸くすることだろう。
レメディオスとのやり取りを見て、『あ、何だ付き合ってはなかったのか』と思う一方、『事実無根ではないわよね……事実がなくても根っこくらいは張ってるわよね……』とも思っているカルカ。思っているが、ケラルトの心情を察して何も言わない。
「道理でお前の部下達が『じれったいよな』とか『早くくっつけばいいのに』とか噂してると思った……なるほど、まだ付き合ってはいなかったのか」
「待ってその噂何!? え、ちょ……私、彼とそんな風に思われてっていうか、噂立ってるの!?」
「そうみたいだぞ? まあさすがに、私達の周辺くらいでしか聞いたことはないが……お前あいつと会う時妙にうきうきしてるし、化粧もいつもの1.5倍くらい時間かけてするしな。あと最近料理とか勉強し始めたのとか、服屋やアクセサリーショップでよく見かけるようになったのも多分関係あるだろって」
「思ったより私のプライベートが姉様や部下達に把握されてて色々物申したいんですが!? ちょ……えぇ……そ、そんなにわかりやすかったですか、私……」
「まあ、自分で言うのもなんだが……私でも分かるくらいだからな。それと、余計なお世話かもしれんが……『そのつもり』があるならさっさと捕まえた方がいいぞ? カルウィンの奴、今かなり人気あって……冒険者仲間だけでなく、貴族の子女や女聖騎士とかからも人気で、結構アプローチかけられてるらしいしな」
「は? 何ですかそれ初耳なんですが」
途端に真顔になるケラルト。怖い。
「……いや、貴族の中で彼を取り込んでネームバリューをいらんことに使おうとしてる輩がいるのは知ってましたし、そっちはきちんと色々対処してるから大丈夫ですが……冒険者や聖騎士まで!? 聖騎士は姉様の管轄でしょ、ちゃんとシメといてくださいよ!?」
シメるってお前。
「ああ、だからそっちは私は『あいつはケラルトのだからダメだ』って聞かれるたびにちゃんと言ってたんだが……まだ付き合ってなかったとなると訂正の必要があるか」
「またここでも事実無こ……ああでもその結果あの人に悪い虫がつくのを防止してるならそれはそれで……いやでもそうすると事実との食い違いが……いっそそれなら『事実』にしてしまう方が私や彼にとっても……ぅぅ……」
(いつも冷静なケラルトがこんな風にわちゃついてるの初めて見るわ……恋愛って大変なのね)
そんな風に思うカルカだが、自分もまたその大変なフィールドに足を踏み入れんとしていることを思い出し……1人、窓の外を眺めながら、はぁ、とため息をつく。
ケラルトが落ち着くまでまだ少し時間が必要そうなので、さっき途中まで考えて中断していたことを再び頭の中に思い返した。
(はぁ……ノア殿、許嫁とかいらっしゃるのかしら……? 『ラダトーム王国』の王子だし、いてもおかしくないわよね……でも、王位継承権は下の方だって言うし、そ、それなら、他国に嫁ぎにいく選択肢も……あ、男だから嫁ぐとは言わないけど……ええととにかく、お婿さんに来てくれる可能性も、な、なくはない……わよね! 私
「私から言っても正直じれったいと思うぞお前……もしいらないなら私がカルウィンもらってもいいか?」
「ダメに決まってるでしょうが! というか、え!? ね、姉様までまさか、彼のこと……」
「いや、まあ、そこまで欲しいって感じではない。けど、そこらの軟弱な貴族とか、力も根性も足りない聖騎士とかよりは全然見どころあるし、アリかナシかで言えばアリだなと思ってるぞ。自分で言うのもなんだが、私がこれだけ好意的に接することができる男ってそういないと思う」
「……それは……確かに」
「だからぶっちゃけ、私はあいつにならケラルトを任せられるし、ケラルトがいらないなら自分でもらうか、ってくらいには気に入ってるんだ。……逆に、ケラルトを任せられないような奴にお前がもらわれるのは、政略結婚でも断固お断りだからな」
「今日いちいち姉様のセリフが刺さる……ああもう、どうすればいいの……?」
(ま、まずは国と国で正式に国交を結ぶことから始めて、それから徐々に色々と探っていって……ああ、でもあんまり時間はかけていられないわ。私もう25だし……というか、ノア殿っていくつなのかしら? すごく若く見えるけど、も、もしあまり年の差があるようだったら、そ、それこそ急がないと……でも今はまだ国内が色々大変で……ああもう、どうすればいいの……?)
聖王国のトップと、それを支える腹心2人。
彼女達が色恋ごとで悶々と悩んだり笑ったりできるくらいには、少なくとも今のところ、『聖王国』は平和であった。
一方その頃、
☆☆☆
「それで、どうだったノア? 『お見合い』上手くいった?」
『感触は上々……だと思う。ここからさらにカルカさんと仲良くなっていけるように頑張るっす』
「おー、がんばれ」
というわけで、うちの子――子供じゃないけど、子孫――であり、『ラダトーム王国』の王子であり、今回の計画の『キャスト』の1人であるノアと、聖王国の聖王女カルカちゃんとは、出会いは上手いこと演出できたようだ。
絶体絶命のピンチのところを助けてくれる王子様とくれば、これ以上ないくらいのテンプレな恋の導入だからね。ああいう純情で、恋愛そのものに免疫がない子には、このくらいシンプルなやり方が一番効くと見た。
『魔元帥ゼルドラド』もいい仕事をしてくれた。ありがと。倒しちゃったけど。
まあ召喚モンスターだからいくらでも復活させられるけど。
今回、『勇者の剣の試練』にかこつけて聖王女様をピンチに追い込んで、それをノアが助けることで2人のドラマチックな『出会い』にするっていうのは、最初からシナリオで決まってたことだ。
というか、そもそもノアがこの計画に参加した目的、そこなんだもの。
ちょっと前の『ヤルダバオトin聖王国』の終盤、カルカちゃんが結婚願望あって、けど高嶺の花過ぎて誰も近寄ってこなくて焦ってる、ってことが明らかになった。
そして私達としては、王兄であるカスポンドを骨抜きにする計画+血統全員を私の血筋にする予定であるとはいえ、できればもうちょっと聖王国に私達側の影響力をしみ込ませたいと思っていた。
あと私が、カルカちゃんに似たかわいい赤ちゃんを抱っこしたかった。
というわけで計略ON。
私の子供達及び子孫達に『聖王国の聖王女カルカとお見合い(婉曲表現)したい人募集します。なおいっぱいいた場合は選考して最終的に1人に絞ります』と通達したところ、応募が殺到。
そこからまず、性別的に無理なのを省いて……いや、女同士の愛情とかそのへんにもちゃんと私は理解あるけどさ、今回は相手の立場上ノーマルなラブにしないといけないから。心も体も男の人に限られるのよ。
そして異形種よりの子供が生まれちゃっても困るから、人間、あるいは人間に限りなく近い子に限定して……と、こんな感じで候補者を絞っていった。
で、最後に残った10人のうち、バトルロイヤル形式で戦わせて最後まで立っていたのがノア。見事、カルカちゃんにアタックする権利を勝ち取りました。
ノアなら、『ラダトーム王国』の第三王子っていう肩書もあるし、立場的にも釣り合うからちょうどいいしね。
結婚するとなったらどうするか聞いたら、『聖王国に婿入りする』ってさ。ラダトームには兄貴達がいるから国は任せるって。うーん、フットワーク軽いし思い切りもいいな。
『でも、今更ですけど……ラスト様がこういう『演出』用意してまで、部外者の女の子と血族をくっつけようとするのって珍しいっすね』
と、ノア。
確かに……私、敵対した相手とかならともかく、好意的に思ってる相手に、今回みたいな……出口の決まったマッチポンプ的なのを仕掛けて、しかもそれを利用して恋愛とか婚姻とかに持っていくこと、あまりないからね。
何だったら、どっちかって言うとよく思っていない。『正面から自力で、自分の気持ちをぶつけなさい!』っていうタイプだから。
「んー、まあね。もしかして嫌だった?」
『いやいや、全然そんなことは。全部承知の上で立候補したんすから。ただちょっと気になっただけで……気にさわったとかでしたらすいません』
「いやまあ、自分でもちょっとらしくないとは思うんだよ。……ただ彼女の場合、きちんとここで
『?』
……参考までに、2つの事実を伝える。
1つは、聖王国内にはまだ一定程度、カルカちゃんを女系の『聖王』としてトップに据えておくことに懐疑的な勢力がいて、カルカちゃんにきちんとした後ろ盾がないと政権が盤石とは言えないかもしれないこと。
主だったクレーマーだった南部は、数か月前の『ヤルダバオトin聖王国』で大体黙らせたけど……まだいるんだよなあ。
簡単に抑え込める程度ではあるけど、そいつらをきちんと納得させて黙らせるためには、カルカちゃんが聖王だからこそ輝く、彼女自身の価値ってものを上げる必要がある。
ノアとの結婚でラダトーム王家と繋がりができる(しかもノアが婿入り)っていうのは、十分にその条件を満たすはずだ。
今後のことを考えると、聖王女の力はいくらでも強い方がいいからね……。
もちろん、私らの制御下にあることが大前提だけど。
……そしてもう1つ。
今回の一件――『ドラゴンクエスト作戦』及び、その前の『ヤルダバオトin聖王国』――がなかった場合に、カルカちゃんが、というか聖王国がどんな目に遭っていたかについて聞かせた。
宗教観及び亜人その他への敵対感情を鑑みると、そうなっていた可能性がある……という程度ではあるし、今はもう回避できた未来ではある。
けど、デミウルゴスが立てていた『聖王国乗っ取り計画』は、裏を返せば『聖王国を押さえるためにこのくらいは痛めつけてもいいだろう』と彼らが思っている、聖王国をその程度の価値だと思っていることの表れなわけで……
今後、万が一にも聖王国が私達に対して非協力的になり、デミウルゴスが『ちょっと身の程をわからせましょうか』的に考えちゃった場合……
「……という最悪の可能性をね?」
『カルカさんは俺が守ります! 無論、ラスト様達と敵対しないような形で!』
「うん、よろしくね。……この作戦が終わった後、大なり小なり聖王国にも混乱が起こると思うから……その時に、きちんとカルカちゃんたちを支えてあげて。信仰を捨てろとは言わないけど……今後は『多様性』をきちんと受け入れられる国にしていかないと、苦しい時代が来るから」
『わかりました……全力を尽くします!』
「よろしい。がんばってね。それと、連絡だけど……もうすぐ作戦を『最終章』に移行させるから、準備しておくように」
『はい。エオン達には?』
「一応、ノアからも伝えておいて。それじゃあね」
……通話終了。
さて……ノアにも言ったけど、『ドラゴンクエスト作戦』いよいよクライマックスだ。
アインズさん達と一緒に準備しないと。
あと……テレサ達アンデッド組や、『モンスターズ』の子達にも召集かけないとな。
さあ……大陸の勢力図を、一気に塗り替えよう。
☆☆☆
その2日後。
首都ホバンスの王宮に、急報が飛び込んできた。
リ・エスティーゼ王国が、バハルス帝国に対して宣戦布告。
近日中に、カッツェ平野にて両軍が激突する模様……と。