満を持して始まった『竜王』達との決戦だけども……もうなんか、終わりが見え始めている。
無論、私達『ナザリック×空中庭園』同盟の勝利で。
まあ……絶対勝てるように準備を整えた上で待ち構えてやったわけだから、当然と言えば当然なんだけども。
今現在、私やアインズさん、およびその側近クラスの者達は、最初の位置から全く動いていない。
玉座に座る王のごとく、堂々とその場にいて、戦場の推移を見続けている。見ながら、魔法とか飛ばして攻撃している。
『竜王』達の攻撃は、ろくすっぽ私達の方には届かない。
私達の前に布陣しているタンク部隊の防御に阻まれ、ブレス攻撃だろうが『始原の魔法』だろうが、何一つこっちに届かせてもらえない。
タンク部隊は全員カンスト級かそれに準ずるレベル。『神技』も習得済みなので、竜王の攻撃だろうと受け止められるし、『常闇』や『朽棺』が使ってきた即死ビームみたいなのですら止められる。
そのタンク部隊に守られながら、私達同様その後方にいるヒーラー部隊が、回復魔法と継続回復魔法の組み合わせで常時回復させている。
受け止めて消耗した端から回復していっているので、タンク部隊は崩れる気配全くなし。
ヒーラー部隊と同じく後方には魔法攻撃部隊もいて、第8~10位階の魔法をバカスカ撃ち込んで『竜王』やその眷属達を滅多打ちにしている。
『
相手は『
弾幕ゲームみたいな勢いで高火力の魔法が乱射されているっていうのは、なんかもう……すさまじい光景だ。
『ユグドラシル』でやってたらサーバダウンしてたんじゃないかってくらいの密度。絵面。
なお、そんな弾幕の中にいて半端なレベルの竜が無事でいられるわけもなく、一斉掃射が始まってからほどなくして、『真なる竜王』以外の竜は全滅した。
今は、『白金』を含む竜王計5体が、防御と回避にほぼ全力になりながら、どうにかしのいでいるところである。
たまに『始原の魔法』による超強力なバリアを張って、それが有効なうちに攻撃の弾幕を突っ切ってこっちを強襲しようとする者もいる。
しかしその場合、魔法による攻撃が一旦中止になり、オルガやシーナといった接近戦担当の部隊が前に出てタコ殴りにして止める。
『始原の魔法』による防御でも、こっちも『始原の魔法』や『神技』を使って攻撃するので普通に通るし、カンスト級の攻撃力+数の暴力は竜王達でもどうにもできず、止められ、さらに纏っていた防御の魔法も削り切られて解除されてしまう。
そしてまた始まる魔法弾幕。
あ、それと言うまでもないけど、今言った部門全部、他に設定してる支援部隊によってバフ山盛りにかけられて超強化されてるからね。
そして、今言った攻撃(物理も魔法も)、防御、治癒、支援、全部がとんでもない、国家戦争規模の大人数で行われている。
竜王達は、純粋な物量に負けそうになっているわけだ。まあ、量だけじゃなくてきちんと質も伴ってるんだけどね。
そしてとどめに、ここで攻撃の手をさらに凶悪にしているのが……私が使ったスキル『
『傾国の悪女』の到達点にして切り札であるこのスキルには、『HPとMPを一元管理できるようになる』という効果があるのだ。
具体的に言うと、魔力消費を伴う魔法とかスキルをバカスカ使ってMPが枯渇した際……HPが残っていれば、HPをMPに変換して魔法を使い続けられるのである。
そのまま、HPが残り1になるまで(0にはならない)使い続けられる。普段よりも大幅に、火力を保ったままの継戦能力が上がるのだ。
ただし、防御面を犠牲にね。HPがその分減るんだから、相手から攻撃を食らってしまえば、あっさり落とされてしまうかもしれない。
このへん、『始原の魔法』にも近いものを感じる。あっちも『魂』……もとい、生命力を燃料にして魔法を使うからね。
尤も私としては、このスキルこそまさに『悪女』の所業だと思っている。
魔力(MP)がないなら命(HP)を削ればいいじゃない、とばかりに、味方に対して最後の一滴まで力を絞り尽くした献身を強要するスキルだ。
そして、このスキルの影響を受けた者は、スキルの発動時間中、アイテムや魔法などによってHPを回復することができなくなる。まあ、HP回復しながらHPを消費して魔法を使うなんてことができたら、バランス崩壊どころじゃないからね。当然の副作用だ。
それを差し引いても、上限MPを実質大幅に強化して魔法をバカスカ撃てるっていうのは、強力極まりない効果だ。PVPやギルド防衛戦の時には、私のこのスキルはそりゃもう恐れられた。
……ただコレ、凶悪な使い方があってね……。
この『パンが(略)』を、攻撃役じゃなくて支援役に使うっていうやり方なんだけど。
前にも言ったと思うけど、ユグドラシルにおいてMPを回復する方法は限られている。アイテムによって回復する方法はない。時間経過か、特殊なスキルで敵から奪うか……味方から譲渡してもらうか。
実はその『譲渡』にも『パンが(略)』の効果は乗る。
例えば、魔法を打ちまくってMPが枯渇した味方に、『パンが(略)』を受けた別な味方がMPを譲渡するとして……MPだけでなくHPの限界まで『譲渡』して味方のMPを回復させられるんだよ。そしてそれを使ってまたバカスカ魔法を撃つ。
自分のHPMPに加えて、魔力タンク役の味方のHPとMPが枯渇するまで、攻撃役は高火力の魔法で攻撃し続けられるってわけだ。
そして最後には当然、HP残り1、MP残り0まで枯渇した状態になってしまうわけだが……この状態の味方(攻撃役)をさらに最後まで有効活用する方法がある。
よくあるスキルなんだが、『残りHPが少ないほど攻撃力が上がる』みたいなのってあるじゃん? 火事場の馬鹿力的なやつ。HP残り1の味方にそれを使わせて攻撃系のスキルとかで攻撃させると……それはもう凶悪なダメージソースになってくれるんだよね。
もちろんHP1しかないから、反撃食らうと当然すぐ死ぬんだけど、それを見越して、『一度だけ耐える』系のスキルや、死亡後即蘇生系の、『沙羅双樹の慈悲』みたいなのをあらかじめ使っておくと、もうちょっと長く耐えられるので、その間にボコボコに殴ってダメージ稼いでリタイア、みたいなやり方もできるわけよ。
ユグドラシル時代、私が好んで使っていた戦法の1つだ。
召喚したユニットに『パンが(略)』を使い、HP1になるまで魔法とか遠距離攻撃で攻撃させ、枯渇したら、『火事場力』状態で特攻させ、最後までダメージソースとして有効活用する。
そして、そのユニットが反撃食らって死ぬと、今度は『鬼子母神』の効果で私の火力が上がる。
ダメージがかさんだ相手に、最後に私が『大災厄』を叩き込んでシメ、というコンボ。
今回の戦いでもこれと同じやり方を使って、竜王をボッコボコにしてる。
戦場に現れた私の子供達に、召喚系の魔法やスキル――『
そのしもべ達に『パンが(略)』を使い、まずはHPMPの限界まで魔法や遠距離攻撃のスキルで攻撃させる。HPが1になったらバフ山盛り状態かつ『火事場力』状態で特攻させ、大ダメージを最後に与えて派手に散らせる……という感じで。
あ、でも当然だけど、子供達にはそれはやらせてないよ。今回私が『パンが(略)』を使ったのは、あくまで子供達が召喚したしもべ達にだけだ。
かわいい子供達に、蘇生させるとしても、使い捨て前提の特攻なんてさせるわけないじゃん。子供達は普通に、さっき言ったような堅実な戦い方だけでやってるよ。
十分だからね、それで。
……あ、とうとう『真なる竜王』が1匹落ちた。
防御力と攻撃力はありそうだけど、細身だからなんとなく撃たれ弱そう、体力なさそう(比較的)だと思ってた、銀色の金属質な体のドラゴンが、体力切れで身動きできなくなったところに『万雷の撃滅』を50発くらい食らって、動かなくなった。
魔法を使って確認してみても、もう生命力が欠片も残っていない。はい死亡確認。
『っ……『銀刃』の! おのれ……弱小種族がァッ……!』
「あんたらが一方的にやられてるこの状況下で、強いだの弱いだの言わない方がいいと思うなー」
「それwww 全部自分に返って来ちゃうもんね。オニウケるwww」
赤黒い体の、ひときわ大きい『竜王』が怒りと共にそう吠えるも、アカネとサンゴに笑い飛ばされていた。
まあ、口で何と言おうと……その『弱小種族』と見下している私達に、滅多打ちにされて防戦一方な有様じゃねえ……何言ったってカッコなんかつきやしない。
それに対して、こっちの被害はほぼ0。
負傷はいっぱいしてるけど、その都度回復してるから、タンク役ですら滅多に死なない。
たまに事故って死亡者が出ちゃうけど……その場合は即座に『
本当なら死者数も最初から最後まで完全0で通したかったけど……さすがに竜王、そう上手くはいかなかったか。
……それはそれとして私の子供を、蘇生可能とはいえ殺してくれた奴は許さん。
直後にカチンときて第10位階魔法を連発で叩き込んだりときっちり報復しております。なんだったら蘇生させたその子本人と一緒に。
『一体どうなっているのだ!? 我らの襲撃を予想して待ち構えていたのはいいとしても……これほどの数の手勢、しかも我らに刃を届かせる強さのそれを、一体どうやって揃えた!?』
(400年かけてちょっとずつねー。っていうか、戦力としてそろえたわけじゃなく、ただ家族がいっぱい増えて嬉しいなってなってただけだよ。揃いも揃って親孝行な子達で、こうして助けてくれてるけどね)
『それにっ……魔法の威力はいいとしても、まさか『始原の魔法』までも使ってくるとは……しかも、なぜこれだけ間断なく打ち続けてこられる!? 『魂』の量も大したことはないはずの劣等種族共が……なぜ『魂』を枯渇させることなく『始原の魔法』をこうも乱用できるのだ!? 明らかにおかしいぞ!?』
お、いいところに気が付いたね、えーと……名前知らないや。とりあえず、赤い竜王。
アイツの言う通り、『魂』を燃料として消費する『始原の魔法』は、膨大な『魂』をため込んでおける『竜王』であっても。何も考えずにバカスカ乱用できるものじゃない。
命を削って使うことになるその性質上、使いすぎれば比喩でもなんでもなく、死を招く。
『竜王』でさえそうなんだから、それよりも全然HPの少ない私達では、バカスカ撃つことなんてできるわけもない。
……普通ならね。
『…………やはり、おかしい』
それに気づいたのは、防戦一方ながら、冷静に戦場を見ていた『白金の竜王』だった。
『信じがたいことだが、彼らが使っているのは、まぎれもなく『始原の魔法』だ……『ぷれいやー』が、位階魔法だけではなく、『始原の魔法』までも手にしているとは……だがそれ以前に、なぜ彼らは……『始原の魔法』を使っているのに、『魂』が消費されている様子がないんだ?』
『『魂』の消費がないだと!? それはまるで、かつての……バカな! 我ら竜王を差し置いて、『ぷれいやー』共は消費なしでそれらの力を使えるようになったというのか!? まさか、こやつら……また世界の
『『白金』のが言っていた、アイテムを使ったのか!?』
『いや、それなら我々にもそれが……世界の理が書き換えられたのがわかるはず。そうなっていないということは、何か別の……いや、それならまさか……そうか、そういうことか……!』
おっと白金さん、何かに思い当った様子。
歯を食いしばって……表情筋ないのに、悔しそうな表情してるってわかるな。こちらを睨みつけながら……
『やられたな……どうやら私達は、想像以上に間抜けだったらしい。準備万端で幾重にも罠を用意されたところに、自分達の手でのこのこ首を差し出しに来てしまったようだ』
『どういうことだ……わかるように話せ、『白金』の! カラクリはわかったのか!?』
『ああ……おそらくね。彼らは『魂』を消費していないわけじゃない。消費した先から補充しているから、減っていないように見えているだけなんだ。恐らくは……私がその存在を感じ取った、強大な『アイテム』を使ってね……!』
ご明察! 鋭いじゃん、白金のトカゲさん。
その通り。さっきから私達が、『神技』やら『始原の魔法』やらをガンガン使いまくってて、それでも『魂』が枯渇して死んだりしないのは……使った端から『魂』を補充しているからだ。
というか、より正確に言えば、私達の『魂』の消費はごくわずかで、発動に要する魂のほとんどは、外部から供給される『魂』をそれに回して消費し、発動している。
私達の切り札……人造
ここまで散々引っ張ってきちゃったけど、『世界樹』について説明させてもらおうか。
『世界樹』は、アインズさんから提供してもらった『魔樹』ことザイトルクワエの種を材料に、私達が作り上げたもので……普通の植物と同じように、地面に植えて成長させれば、ザイトルクワエと同等かそれ以上の大きさになる、名前通りの巨大な木である。
この木は、周囲の地面や空間、そして生命体から少しずつ『魂』を吸い上げてその内部に蓄えるという性質を持っている。『朽棺の竜王』がやっていたのと同じ、周囲の生命体からの『魂の強奪』……もとい、徴収とでも言うべき機能を持っているわけだ。
ただし、奪いつくして殺してたあっちと違って、『世界樹』はほんの少しずつ継続的に吸い上げるので、吸われる本人への影響は全くない。吸われるペースよりも、回復するペースの方が早いから……気づくことすらないだろう。
そしてこの木の、アイテムとしての本領というか、竜王に警戒されるレベルの『機能』は2つ。
1つは、吸い上げた魂の一部を使って、このアイテム自体がオートで『始原の魔法』を常時発動させるというもの。
魂の徴収は、周囲半径数十キロメートルという広範囲から行われるんだが……同じ範囲に住んでいる民達、『魂』を供出した者達に対して、返礼がある。
『始原の魔法』によって発動する微弱な、しかし超広範囲の支援魔法のおかげで、範囲内で生活している者達は、疲労回復や病気予防、怪我や病気の治癒速度なんかにおいて常に微弱なバフをかけられている状態になる。普通の空間で普通に暮らすより、健康的で調子よく生活できる。
微弱なバフと言ってもバカにしちゃいけない。それが何年も何十年も絶え間なく受けられるとなれば、寿命以外で死ぬ確率だってぐっと減る。
健康寿命とか、8020運動とか、そういうのよく聞くでしょ? 1人の人間が幸福な人生を送る上で、決して小さくない恩恵を受けられるのだ。
……なんだったら、私達がいたリアルでは、そんなもんほぼ幻想と化してたからね……私達だって、健康なまま老いていくとか、80歳になっても20本の歯を保つとか、そんなのやってみたいと思ってたよ。……どう考えてもその前にブラック労働のせいで過労死する未来しかなかったけど。
とまあ、今言った1つ目は、『世界樹』の力が及ぶ範囲……すなわち、私達の支配領域に住む民達にとって嬉しい機能。
だが、本命は……私達にとって役立つのは、もう1つの方の機能だ。
この『世界樹』は、内部に膨大な『魂』をため込んでおくことができる。今言った『超広範囲に微弱なバフ』の魔法を使うのに使用する魂は、そのほんのほんの一部程度。率にして0.0001%程度のものだ。
残りの『魂』はそのまま蓄えられるわけだが……その魂を戦闘時など、任意のタイミングで引き出して、任意の用途に使えるのである。
今まさに私達がやってるのがそれだ。
本来、自分の『魂』を一定以上の量消費しなければならない『始原の魔法』や『神技』を使うに際して、私達は『世界樹』に蓄えられた『魂』を供給されることで、ほぼ自分の『魂』の消耗はなしでそれらの技を使うことができる。
だからこれだけバカスカ、それこそ『位階魔法』と同じかそれ以上の気軽さで『始原の魔法』を使えて、『竜王』を一方的にボッコボコにできているわけだ。
ん? 『世界樹』はまだ種とか苗木じゃないのかって?
これからスレイン法国に授与して植えさせて育てさせる予定だったはずなのに、何でもう『世界樹』を実践投入可能な体制が整ってるのかって?
一体いつから『世界樹』がまだどこにも植えられていないと錯覚していた?
『白金の竜王』がさっき言ってた通りだよ。
法国に対して言って見せた『世界樹の種』は……あくまで、法国にこれから渡す『世界樹』が、まだ種で、これから育てていくことになる、ってだけ。
とっくの昔に『世界樹』は各地に複数植えてあって、実践投入可能なレベルにまで育ててあったんだよ。半年以上前からね。
なんだったら色々な使い方のテストももう何回も済んでるし。
どうやら答えに行きついたようなので、隠蔽を解除して見えるようにしてやる。
ナザリック地下大墳墓がある場所のすぐ近くの大地に、巨大な……高さ数十mにもなる、大きく美しい大樹がそびえたっている光景が……『異天空間』の中からも見える。
今まであんな巨大な樹に気づけなかったのかと、竜王達は驚愕していた。
まあ無理もないよ。アレを隠蔽してたのも、『始原の魔法』だしね。
実は名前もついてる。あの木の名前は、『世界樹ユグドラシル』。名前の由来は、もちろん、私やアインズさんがかつて愛したあのゲームから。
ここら一帯……『エルヘヴン共栄圏』の支配領域ほぼ全体が効果範囲であり、そこから『魂』を吸い上げている。植えたのはもう半年以上も前なので、その間ずっと吸い続け……膨大な『魂』を蓄えている。
そしてそれを、この戦いの最中、私達に逐一供給してくれているわけだ。
あれだけじゃない、他にも世界各地に、既に『世界樹』は植えられている。
そして名前も個々についてる。
私達の拠点である『空中庭園』には、『神木コノハナサクヤ』と名付けられたそれがあって、城下町に暮らす民達や、私の子供達からも、ちょっとずつ魂を吸い上げていた。
ヘイムダール王国にある世界樹には、『大樹カーラーン』という名前がついている。
アレフガルド都市国家連合にある世界樹には、『聖樹ロトゼタシア』という名前が、
それぞれとっくの昔に稼働していて、影響範囲内にある生命体から『魂』を吸い上げ、蓄えていた。私達が必要な時に、どんどん供給するために。
もちろん、無尽蔵に『魂』があるわけじゃないから、いずれは枯渇はするよ。
でも、今でだいたい、貯蓄した魂の2割くらいを消費したところだから……残り8割。
もうすでに竜王達は満身創痍で、なんだったら1匹死んだし……この分なら、全体の半分も消費することなく、決着まで持っていけるだろう。
と、思っていたら……他の竜王達が、
『『白金』の! こうなれば『紫炎』を呼び戻すべきだ! 俺達だけでは、こいつらの相手は……』
『そうだ……奴ならもう、エルフの国の方は既に済んでいるはず! ここに呼んで加勢させれば、立て直すことも……』
そんなことを言い出した。
どうやら、
まあ、それも予想済みだったけど。
「おーい、竜王の皆さーん?」
緊張感のない声で私が呼びかけると、『白金』その他の竜王(残り4体)は、苛立ちを通り越して怒りをギラギラに滾らせた視線をこっちに向けて来た。
『何の用だ!?』とでも怒鳴り散らかしてきそうな怒り具合だけど、そんな余裕も多分今、ない。
なお、この後もっとなくなります。
「その『紫炎』とかいう……竜王かな? それってさ……
私がそう言うと同時に、私の隣に開く『
その向こうから、デミアに次ぐ私の腹心である、カリンが、完全武装の状態で姿を見せた。
その後に続く形で、『ヘイムダール王国』の女王の座についている、ユリーシャも一緒に来た。
そしてその後に続いて出てきたのは……ナザリックが誇る巨大な攻城ゴーレムであり、第四階層の領域守護者・ガルガンチュア。
そしてその手には……知らない『竜王』の首を抱えて持っていた。
……お、『白金の竜王』達のリアクションからして……やっぱりこいつが『紫炎』か。
さっき言った通り、別口で『ヘイムダール王国』が――あそこに『アイテム』があると思われてただろうから――襲われる可能性は最初から考えてた。
だから、そっちに別動隊が行ってもいいように……戦力の一部をそこに配置した上で、そこでの戦闘の指揮をカリンに任せてたんだ。
で、さっき既に『伝言』で連絡が来てた。
襲ってきた『竜王』と思しき竜と、その眷属達の処分を完了したって。首取ったから、今からそっちに持っていくって。
どうせだから演出のためにもうちょっと工夫するかってことで、アインズさんからガルガンチュア借りて、こうして持ってこさせたってわけです。
『根源の地精霊』でもよかったんだけど、ちょっとサイズ的に物足りなかったもんで。
はい、これで『今頃はエルフの国を滅ぼし終えてるだろう』と思っていた仲間は死んでいて、援軍の望みも絶たれましたよ、っと。
さて、この後どうする、竜王諸君。
『っ……こうなれば……『白金』の! ここは我らが何とかする! 貴様だけでも逃げろ!』
『なっ……何を言うんだ!?』
『最早この戦い……我らに勝ちの目はない……しかし、お前さえ無事なら……各地に散らばる龍達や、ここにいない『竜王』を束ねて抵抗は続けられる! いつの日かこ奴らに裁きを下すためにも……竜の血を、力を絶やすわけにはいかん!』
(おお……すごい。見ましたかラストさん、伝説の『ここは俺に任せて行け!』ムーブですよ!)
(いやあ、追い詰められたヒーロー?にはお決まりですけど、
最早自分達は助からないと、この戦いには勝てないと悟ってしまって……しかしそれで絶望するなんてことはせず、次につなげるために『白金の竜王』1人だけでも逃がそうとしてる。
そのために、残る3体の竜王は命を捨てる覚悟のようだ。
3体とも、『白金』に向かって、こくりとうなずいて……意思を託す的な感じの素振りを見せる。やだ、カッコいい。
そしてその覚悟を決めた視線3つを受けて止めて……『白金の竜王』も、こくりと頷いた。
彼らの思いを受け取って、屈辱的な敗戦でも、仲間を置いてでも、ここは撤退することを決意したとみた。
180度旋回して後ろを向き、口の中に『始原の魔法』のブレス攻撃をチャージし始めた。超威力の攻撃で『異天空間』を破り、突破するつもりらしい。
そして、残る3体は、自分の体とか防御性能を強化する『始原の魔法』を全力で使い、『白金の竜王』と私達の間に立ちはだかった。自分達が盾になって時間を稼ぎ、なんとしても『白金』を外に逃がすつもりのようだ。
どれだけ刃を、魔法を、その身に受けようとも、絶対にここは通さない。そんな、鋼どころじゃない強靭な意思を感じる。敵ながらあっぱれだ。
……ま、それはそれとして……逃がすつもりなんかないけど。
『来るがいい『ぷれいやー』共! ここより後ろへは、一歩たりとも我らが……』
「はーい、じゃあ遠慮なく…………『
瞬間、私が発動した極大規模の破壊がその場を席巻。
立ちはだかって盾になる覚悟の竜王×3をあざ笑うかのように……そもそも超広範囲、普通に『白金』が今いる位置も巻き込まれる破壊の奔流が巻き起こり、空間ごとぶち壊す勢いで吹き荒れる。
『おっ……が、ぁ……!』
余りの威力に、飛び去ろうとしていた『白金』も思わず体勢を崩す。
しかしなんとも見上げた根性で……口の中にチャージしていたブレスは霧散させずにどうにかこらえていた。仲間の覚悟を何としても無駄にしない、という決意の表れだろうか。
全身を襲っているであろうとんでもない衝撃と激痛に耐えながらも、その炎で『異天空間』の壁をぶち破ろうと放つ―――
「はい、次!」
「では私が行きます! 『
―――放つ前に、『次』が炸裂。
私の子供の1人であり、『親衛隊』の総隊長……そして私から『ワールドディザスター』を受け継いで生まれた、マリーローズが前に進み出て……私のが終わると同時、間髪入れずに『大災厄』を発動。2回目、戦場全体を席巻する大破壊を叩きつけた。
『がはぁ……っ……!?』
これにはさすがに『白金』も耐えかねたのか、口の中にため込んで後は吐き出すだけだったブレスを暴発させ、雑にまき散らして無駄にしてしまっていた。
体勢も大きく崩し……大ダメージのあまり、一瞬、墜落しそうに見えたほどだ。
それでも落ちないし……盾になるつもりの3人も、まだ落ちず、立ちはだかり続けている。
……普通に後ろの方まで全部攻撃届いてるから、『盾になる』のは全然失敗してるけどね。
……じゃ、次行こうか。
「つ……次! 私行きます! 『
3番手、ダムストー。
同じように破壊の奔流が……うん、同じなんだよなさっきと。すごい光景ではあるけど、起こってることは同じだから感想もだいたい同じになる。
『…………っ……』
今度は声も出ないか、竜王諸君。
次。
「四番手は私ですっ! 『
今度はトガヒミコだ。
コピー能力でダムストーに変身し、その上で『ワールドディザスター』を異能で極めて……ん? ドッペルゲンガーのコピー能力では『ワールドディザスター』はコピーできないんじゃなかったのかって?
うん、普通はできないはずなんだけど……私が産んで遺伝した『ワールドディザスター』だとコピーできるみたいなんだよね。なぜか。
だからトガヒミコでも、『大災厄』を撃てる。
これに続けて、
「5人目は……私!」
『っっ……君は!?』
「やられた分、返しに来てやったわよトカゲ野郎! 『
5人目はアンティリーネ。かつて自分を殺してくれた『白金の竜王』へのお礼参りってことできてくれました。
彼女は『装備している武具の持ち主の『切り札』を使えるようになる』というとんでもない異能を持っているので……私の鉄扇を貸してあげてる。それによって『大災厄』が使えるようになったわけだ。
その後も、
「『
「『
「『
「『
「『
……(続く)
「戦術もへったくれもない光景」
「もうなんか可哀そうになってきましたね」
アインズさんと一緒に、思わずこんな風に呟いてしまうほど……まあ、すごい光景だった。
何発も連続で叩き込まれる『大災厄』。
私から『ワールドディザスター』を受け継いで生まれた子供達に加えて、トガヒミコやアンティリーネみたいに、その異能ゆえに『大災厄』を使える子達による、『大災厄』の乱れ撃ち。
『盾になる? 何としても逃がす? 知るか』とばかりに、その攻撃範囲の広さゆえに、当然のように『白金』も全部巻き込んでバカスカ連射される。
まあ……最初からこいつら誰1人生かして帰すつもりもなかったわけだから、何も間違っちゃいないし、ためらう理由も何一つないんだけどね。
たっぷり10分くらい経過。
その戦場には、もう……立っている者も、動く者もいなくなっていた。
盾になるはずだった『竜王』は、『竜王だったもの』になってそのへんに転がっている。
頑丈さでは他の追随を許さない『竜王』と言えど、あんだけの暴力的な破壊に巻き込まれてしまっては……原形を保つことすらできず、ちょっと無惨な姿になってその辺に……散らばっている。
後で回収して再利用するけどね。
ただ1匹、『白金の竜王』だけは……まだ息があった。
『最強の竜王』の面目躍如ってとこだろうか。あの『大災厄』祭にさらされておいて……大したもんだ。
まあでも、もう何もできないけどね。
息はあるけど、無事だとはとても言えない状態……というか、こいつも他と同様に原型はなくなっちゃってるし。部位破壊されまくってて。
両腕、両脚、翼、尻尾、全部吹き飛んでなくなってて、胴体も半分くらい削れてるというか抉れてて、内臓がこぼれ出てる。
トカゲですらなく、寸胴な蛇みたいな見た目になっちゃってる。
頭だけはどうにか無事……でもないな。片目潰れてるし、角も、牙もほとんど全部砕けてるし。
自慢だっただろう白金の体は、焼け焦げ、ひび割れ、くすみ、砕け……見るも無残な有様。
もちろん『魂』もほぼほぼ枯渇状態。『始原の魔法』も使えないだろう。
使おうとしたら多分、その前に自分が死ぬ。
満身創痍なんてレベルじゃない。ほっといても数分後には勝手に、確実に死ぬ。
……ここまで来ると、介錯してやるのがせめてもの情けだな、とか思える。
もう寝がえり一つできない、眼球を動かすのすらしんどそうな『白金の竜王』の隣に、私とアインズさんが降り立った。
視線は感じるから、こっちを見てる……気はするけど、リアクションはない。できない。
「よくある悪の大魔王なら、ここで『助けてほしければ我が軍門に降れ』とか言うんだろうが……」
『言わないのかい?』
うお、びっくりした! まだ喋れたの!?
……いや、違うな。聞こえ方がちょっと不自然だ。……魔法で声だけ届けてるのか。
「ん、言ってほしいのか? というか、言ったとしてうなずいてくれるのか?」
『まさか。散っていった戦友たちに顔向けできないような真似は……死んでもごめんさ。君達だって、いつ裏切るかもわからない手駒なんていらないだろう?』
「まあな。ぶっちゃけると、命乞いされたところで聞き届けるつもりもないしな」
勝者と敗者、これから死ぬ者とこれからも生き続ける者の間の会話だとは思えないくらい、竜王とアインズさんの話は、すごく軽い感じでおこなわれていた。
……そこ、『これからも生き続けるってアインズさんアンデッドじゃん』とか言わない。
「勝者の立場からの傲慢だと自覚しつつ言わせてもらうが……お前はよく戦ったと思うぞ。色々とツッコミ所はあるし、正直今もって『世界の覇者』だの『調停者』だのとは思えやしないが……それでも、己の信じる道を貫き通すその覚悟だけは、割とすごいと思ったよ。……出会い方が違えば……酒でも酌み交わしながら雑談とかできる未来もあったのかな、とか思えるくらいには」
『そうだったらよかったのかも知れないな。君達も……全く話が分からない『ぷれいやー』では、なかったのだろうし……いや、それでもやはり、私と君達の道は交わらないんだと思うよ。……見ている世界も、背負っているものも……何もかも違いすぎるからね。きっと、どういう道を歩んでも……最後にはこうして敵対することになっただろう。君達の存在を、認められずに』
「………………」
『我々には……『竜』には、それ以外の生き方は無理なのさ。君達が生きたがっている、今までとは違う、『新しい世界』を認められないから。だから……
「……やれやれ、俺がこの世界でちょっとでもカッコいいと思う奴って、どうしてこう……どいつもこいつも頑固なんだかな」
言いながら、魔力を練り上げるアインズさん。
完成させた魔法を……何も言わず、その首に放つ。
「
ボロボロだった『白金の竜王』の首が絶たれ……胴体と泣き別れになる。
こうして、『竜』と『神』の戦争は、たった1日……どころか数時間で終わった。
この日は、この世界にとっての……歴史の大転換点になったのだった。