オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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原作200年前(3) 研究の成果

 

 

【異世界転移211年目】

 

 ようやく双子が帰ってきた。

 宣言通り、嫁……と婿も連れて帰ってきた。

 ……この親にしてこの子あり、とでもいうんだろうか。派手に遊んできたもんだな……。

 

 一緒に来た者達は皆、『空中庭園』に骨を埋める覚悟でついてきてくれたらしいので、普通に住居を用意して受け入れるつもりだ。

 あいさつしに来てくれた時は、さすがに自分の義理の母が異形種だってことに驚かれる……かと思ったけど、あんまり驚いてなかったな。

 何でか聞いたら、事前に双子から聞いてたからと……普通に美人だったからだって。

 

 むしろ、自分達より若く見えることに驚いたり、敗北感を覚えてたらしいけど、そんなん言われても知らん。お義母さんがかわいくてごめんね♪

 

 なお、連れ帰ってきたのは、オルガが嫁2人に婿2人。シーナが嫁3人に婿1人である。

 子供はまだいないけど、それは、作るなら『空中庭園(ここ)』に帰って来てから、と思ってたかららしい。

 

 でも、こうして帰ってきたからには、我慢してた分これからどんどん作るって息巻いてたよ2人とも。産ませるし、自分でも産む、って。

 

 ……ホント、私の子供達だなってわかるわ……いい性格に育ったなあ。

 

 え? 姉のオルガは女性で、弟のシーナは男性なのに、なんで『2人とも、産ませるし産む』のかって? 女性が『産ませる』とか、男性が『産む』のはできないだろうって?

 前にもちらっと言った気がするんだけど、ほら……オルガは女だけど『両性具有』で、シーナは男だけど『オメガバース』だから……。

 言葉の意味については、各自検索でもして勉強してください。

 

 産んだ私をして、なんでそんな風に生まれたのかわからないんだけどさ……やっぱり『竜王』の血を取り入れて混ぜて生まれた結果、何か遺伝子がバグったのかな……?

 双子以降も、たまにそういう、性方面に色々とアレな生体を持った子が産まれることがあるし……うーむ、生命の神秘。

 

 なお、その双子から1つ頼まれた、というか懇願されたことがあるんだが……『私達の婿を寝取るのはやめてくれ』『お母さんが本気で誘惑したら僕らじゃ勝てないから』……っておいおい。

 

 さすがに私も子供のオトコ取るような真似はしないよ。安心しろ。

 ……たぶん。

 

 

 

【追記】

 

 双子だけど、きちっと私達のリクエスト通りに、新しい『空のギルド拠点(らしき遺跡)』を見つけて来てくれてた。しかも2つも。

 『魔神戦争』の頃、あちこち見て回ってた時は見つからなかったけど、ごく最近になって辺境で見つけたんだって。

 

 確認したところ、確かにどちらも『城』以上の規模のギルド拠点で、しかも占有者はなし。

 自然POPするモンスターは、片方が亜人系、もう片方がアンデッド系だった。

 

 カリンとデミアに相談して必要な調査や根回しをした上で、第二第三のクリスタル畑にしよう。よくやってくれたぞー、双子。いい子いい子。

 

 

 

【異世界転移215年目】

 

 デミアから、クリスタル強化の研究について、さらに進展があった旨報告が上がった。

 

 今までは、せいぜいレベル50〜60程度までしか育てられなかったんだけど、培養段階で『龍王』の血や、それを使って作った魔法薬を投与した場合、より短期間で、さらに強力に成長させることが可能になったらしい。収穫効率が上がるな。

 

 ただし問題点が2つ。1つは、同様の方法で毎回確実にそうなるわけじゃなく、上手くいけば成功する……っていう程度の確率らしい。

 失敗してもその素体がダメになるってことはないが、薬品が無駄になるのは損害ではある。

 

 もう1つの問題は、寿命が著しく縮む上に、最大限に強化した状態での成長は、ほんの数時間程度でピークを過ぎてしまうらしいので……そこを狙って速やかに屠殺してデータクリスタルを回収しなければならない、という点だ。

 このへんは……企業努力だな。管理担当者に、油断せず見張るよう頑張ってもらうしかないか。

 

 でもこのおかげで、上手くいけば『伝説級(レジェンド)』の装備もどうにか作れるようになったのは本当に大きい。

『伝説級』なら、100レベルのプレイヤーが使う装備としても十分通用するレベルだからだ。

 

 一応その上にはさらに『神話級(ゴッズ)』があるとはいえ……『神話級』は、100レベルプレイヤーでも1つもっていればいい方、ってくらいのレア度だ。ユグドラシルですら、作るのものすごく大変だし……この世界で作ろうとかは考えない方がいいまである。

 ……私は装備全て『神話級』で固めてるけどね! 廃人級ゲーマーなめんなよ、ふふふ。

 

 あと、双子が見つけて来てくれた2カ所のギルド拠点。ここも今ではクリスタル畑兼強化工場として稼働中である。

 

 この2カ所のうち、一カ所は人が立ち入らないような辺境にあったから、通常の隠蔽でよかったんだけど……もう1カ所はやや人里に近かったのでリスクあるかなって思って迷った。

 その解決策として、ちょっと時間はかかったけど、合法的にその土地を(まだ見つかっていない扱いのその遺跡ごと)私達のものにして管理してしまうことにした。

 

 手順としてはまず、その土地が属している国で、壊しても構わない、適当な悪徳貴族を選ぶ。

 そしてそこに、私が人間の女に化けて、妾として潜入し……(今度こそ)ガチ目に『傾国の悪女』ごっこをして適当に遊んで、その貴族をさらに堕落させ……事実上乗っ取った。

 邪魔な部下とかは手っ取り早く魅了するか、『事故死』してもらうか、始末してから『二重の影(ドッペルゲンガー)』に成り代わらせた。

 

 そして、その貴族をそそのかして色々な事業に手を出させ、裏から私達が色々と支援して成功させ、羽振りのいい大金持ちの貴族を作り出す。

 そのうちの利益のいくらかは国に献上とかして、覚えをめでたくする。

 

 あとは、その貴族が国に対して行った多大な功績・貢献(賄賂含む)の褒美として、問題の土地(現在は国有)を買い上げて私有地にして、開拓のために領民を投入する。

 なお、そのどこかからでてきた領民は、私達が『城下町』から選出した開拓民である。

 

 そして後は、いつも通りに『占有』して形を整えていくだけ。

 

 これで、私有地なんだから不法侵入者は『処分』しても誰にも何も言われず、表向きにも探られても何も痛くもない建前武装の上での管理体制の完成である。

 5年くらいかかったけど、その価値はあったと思う。

 

 ちなみに、妾として潜入した私がその貴族の子供を産んでおいたので、ゆくゆくはその貴族は私の血族が乗っ取って支配することになる。

 正妻は、こっちもいい具合に人間的に腐ってたので、いい感じに処分すればいいか……って思ってたんだけど、自分より先に子供を産んだ私に嫉妬して、果物ナイフで刺しに来たので、これ幸いと普通に正面から処断しました。手間が省けて助かったわ、ナイス愚か。

 

 

 

 それともう1つ。

 最近ようやく、私やカリン、その他NPC達も各自の得意分野を利用して協力して、100年以上続けてきた『始原の魔法』の研究が……ついにある程度の形になってね……。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 ニューコロロ空中庭園『錬武郭』

 その内部にある施設の1つ『スタジアム』にて……今、2対2の模擬戦が行われていた。

 

 対戦カードは、ヤマト&ミルコの最高幹部コンビと、オルガとシーナの双子である。

『六道輪廻』の中でも接近戦最強を誇る2人と、ラストの子供達の中では最強の実力を持つ双子の戦いは……一合ごとに空気を震わせ、衝撃波が迸る激戦だった。

 

 何も知らない者が見れば、神話に語られるようなとてつもない戦いに見えることだろう。当たり前のように、見えないほどの速さで動き回り、余波だけで地面が抉れている。

 

 その戦いを、スタジアムの貴賓席に座るラストと、その付き添い兼解説役のデミアが見下ろしている。子供達の成長を喜びつつ、頼もしい下僕達の力も確かめるように……満足そうに。

 そしてその表情がさらに喜びを持ったものに変わる瞬間が、この後訪れた。

 

 各々スキルや武技で強化(バフ)をかけ、攻撃力と共に速度も大幅に上げている4人。

 

 ミルコがすさまじい勢いで繰り出す蹴りの豪雨を、シーナは左右の手に持った2本の剣でいなして防ぐ。合間を見つけて切り込もうとするが、恐ろしいまでの速さと反射神経で回避される。

 真剣と脚……生身の肉体を打ち合わせているにもかかわらず、その鋼の肉体をさらにスキルその他で強化しているため、傷一つ負わずに刃を蹴り返している。

 

 一方、オルガは、手にした大剣をヤマトの金棒とぶつかり合わせていた。

 スキルを使って強化・保護しているため、鈍器と刃物をぶつけているにもかかわらず刃こぼれはないが……ヤマトの文字通りの鬼の腕力に、力負けして押されている。

 

 しかしそんな中……偶然かどうかわからないが、双子の姉弟はほぼ同時に、ふぅ、と息をついて集中を高め……“それ”を発動した。

 

「「【武装硬化】!」」

 

 その瞬間……オルガとシーナの持つ武器の刀身が黒く染まり、発する空気が明らかに代わる。

 直後に振るわれたそれぞれの一撃は、それまで押されていたヤマトの金棒を逆に押し返し、ミルコの脚にわずかだが傷をつける威力を発揮した。

 

 貴賓席にいたラストが、『おぉ!』と嬉しそうに声を出し、身を乗り出した。

 横にいるデミアは、それを微笑ましいものを見るような目で見つつ、『一応私、解説役だから仕事するわね?』と話し出す。

 

「聞いてるとは思うけど、あれは……解析が進んで使えるようになった『始原の魔法(ワイルド・マジック)』の応用で作った強化技法よ。名前は、【武装硬化】」

 

 双子をはじめとした、『始原の魔法』を使える者達の協力を経て、100年近くの時間をかけて研究を進めてきたデミア。

 そのかいあって、ついに『竜王』の血を受け継ぐ者以外にも、『始原の魔法』の門戸を開くことに成功したばかりか、オリジナルの技をも作り上げた。

 

 その1つが、今双子が使った『武装硬化』である。

 これは、今デミアが言った通りで……『始原の魔法』ではあるのだが、純粋なそれではなく……より使いやすくなるよう改良して作ったもの。

 

 『魂』の力を単体で使うのではなく、個々に持つスキルや、強化系の位階魔法、さらにこの世界特有の技術『武技』のシステム――『集中力』や『精神力』を消費するというもの――を組み合わせて開発した戦闘技法。

 単純な『始原の魔法』と比べて、消耗はより少なく、効果はより大きい。それまではっきりとあった、能力面での実力差を覆せるレベルの強化をもたらす。

 

 加えて、障壁系の魔法や、威力軽減や無効化系のスキルなどを相手が使っていても、力量次第では貫通して攻撃を叩き込めるという性質まである。

 小細工や戦略をあざ笑うかのように暴力でねじ伏せる強者の力、とでも言うべき業だった。

 

 ただし、消耗は『少ない』とはいえゼロではなく、さらに『魂』『体力』『魔力』『精神力』を一度に全て、僅かずつとはいえ消費するため、無計画に乱発していいものでは決してない。

 とはいえ、たいていの敵であれば、これを発動して一発殴るだけでほぼ決着がつくほどの威力を誇るため、よほどの相手でもない限りは持久戦になってしまうことはないだろう。

 

 ただ……今回双子が相手をしている2人は、残念ながらそれに『なってしまう』相手だった。

 

 ミルコは自分の負傷を見て、にやりと戦闘狂らしい狂暴な笑みを浮かべ。ヤマトは冷静に目の前の敵の強化を見定めて……

 

「「【武装硬化】!」」

 

 各々、同じように【武装硬化】を発動する。ミルコの両足が黒く染まり、ヤマトの金棒は……元々黒かったが、より黒くきらめくような色を帯びた。

 それを見て、双子の頬に冷や汗が伝う。

 

 ミルコとヤマトも当然使えるようになっていた【武装硬化】。それを使ったということは、模擬戦とはいえ今の自分達が、使うに値する強者だと認められたことを意味している。

 

 しかし同時に……同じ技法を使ったことで、元々あった実力差がさらにひどいことになりつつある……というのもまた、直視しなければならない現実である。

 

 

 ―――ちらっ

 

 

 双子の片割れ、オルガの方の視線が、貴賓席にいる母親の方に向いた。

 きちんとヤマトの方を警戒しつつ向けられるその視線は、別に、助けてほしいというようなものではなかったが……

 

「あのさ……母さん? 【魂殻変化】は……」

 

「おいこら姉さん、それは……」

 

「ダメだよ、オルガ。『そっち』はまだダメだって、最初に言ったでしょ?」

 

 弟の指摘と同時に、ラストはぴしゃりと、オルガの懇願を却下した。

 続けてデミアも、

 

「【武装硬化】と違って、【魂殻変化】はまだ改良・検証の途中だからね。強力だけど消耗も大きいし、まだまだ不安定な部分が多い。私とカリン、そしてラストの連名でGOサインが出るまでは、訓練だろうと使用禁止です。専門家としての意見ね」

 

「『始原の魔法』については私達だって専門家なんだけどなー……」

 

「つべこべ言わないの。ほら、さっさと再開しないと、バフの制限時間が無駄になるばかりよ?」

 

 正真正銘の『切り札』の使用をあえなく却下されたオルガは、視線を前に戻すと、『やれやれ』とでも言いたそうな様子のヤマトが、わざわざ待ってくれていた。

 目が合った瞬間に『もうこれ以上は待たないぞ』とばかりに構えなおしたのを見て、オルガもこのまま戦う覚悟を決める。

 

 その隣では、同じようにシーナとミルコが互いに構えなおし……一足先に戦い始めていた。

 というか、我慢できなくてミルコがさっさと襲い掛かった。

 

 直撃すれば首から上が持っていかれそうな勢いの蹴りを、2本の剣でガードして防ぎ……しかしやけに感触が軽かった。

 

(フェイント!?)

 

 どう考えてもフェイントの威力ではなかったが、それでもその予想は当たっていた。

 そのまま振りぬかれると思っていた足は急速に切り返され、大きく外れた位置から腹を狙う。

 

 剣での防御が間に合わないと悟ったシーナは、

 

(っ! スキルと武技で防ぐしか……でも、ミルコさんの蹴り相手に『要塞』じゃだめだ、『不落要塞』……いや、【武装硬化】ならそれも貫かれる! なら!)

 

「【不朽の竜鱗】!!」

 

 蹴りが腹に叩き込まれる瞬間、その位置に黒いオーラが出現し、黒く染まったミルコの足の一撃を受け止めた。

 完全に衝撃を殺すには至らなかったようだが、それでも大きく威力を減じ……次の瞬間すぐにシーナが動き出す。

 

 自分の蹴りを耐えてすぐさま反撃に転じてみせたシーナを『おぉ』と感心した表情で見るミルコめがけて、黒く染まった刃を振りかぶり……

 

「―――残念だけど、まだ遅ェな」

 

「ぐごっ!?」

 

 それが振りぬかれるより先に再び一閃したミルコの蹴りが、その顎を打ち抜いた。

 盛大に脳を揺らされ、ふらりと意識が遠のくシーナ。

 

 暗転する刹那、その視界の端には……

 

「“雷鳴八卦”!!」

 

「ぐふぉあぁっ!?」

 

 おそらく真っ向からの力比べで負けたのだろう。金棒を振り抜いたヤマトに吹き飛ばされる姉の姿が映っていた。

 

 

 

「はい、勝負あり……と。んー、やっぱまだまだ双子じゃミルコ達には勝てないか」

 

「でも、ほんと強くなったわよねぇ……少しずつだけどまだまだ力は伸びてるし、今日は使わなかった【魂殻変化】、アレが完成すれば……ひょっとするかもよ?」

 

「それは楽しみだねえ、親として期待しちゃうな。さて……クリム呼んで治療して、『お疲れ様』って言ってあげなくちゃね」

 

 

 

 

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