短めです。
これという共通の暦がないため、表現するのが難しいが……しいて言うならば、『六大神』の降臨から300年後、『八欲王』の出現から200年後。
そして、とある大妖怪の転移から100年後……そのくらいの時期に、ある一つの巨大な国家が崩壊した。
理由は様々あったとも言われているが、一番大きかったのは、価値観を異にする者達が多く在籍していたことによる不和と分裂によるものだった。
話し合いでどうにかなるレベルを超えた分裂・分断は、巨大な1つの国家の終焉と、それによる14の都市国家群の誕生という結果をもたらした。
そしてその後、その国家群や、さらに周辺にあったいくつもの小国群を巻き込んで、戦乱による統合や分裂を繰り返していくこととなる。
その中の1つ、とある国にて。
当時、比較的大きな国土と国力を持っていたその国は、しかし、政をつかさどる貴族達の深刻な腐敗により、大きく傾いており……数年後にはまた、内部崩壊により亡国となっているのではないか……とまで言われていた国だった。
しかしその国は、ある時中枢に現れた1人の『悪女』の手によって、痛みを伴いながらも奇跡の復活を遂げた。
わずか数年のうちに生まれ変わったその国は、周辺国から頭一つ抜け出た国力を持ち、稀代の名君が君臨し、心を入れ替えた貴族達の鉄血の絆の下に治められている強国として、都市国家群全体にその名を知らしめていた。
なお、その立役者である悪女(?)はというと、『なんでこうなったの……いや、まあ、皆幸せになってるみたいだし、それはそれでいっか』だそうです。
それから時は流れ……時は、『魔神戦争』終結からおよそ100年ほどが過ぎた頃。
メタっぽく言うならば、『原作』の約100年前。
その国に、1つの事件が起きた。
この世界において、六大神や八欲王、その従属神といった『異物』を除けば、最強の存在と言われているのは、『竜』である。
その頂点たる存在である『竜王』ほどではなくとも、竜と名のつく者達は皆、他種族の追随を許さない、きわめて強い力を持ち、尊敬や畏怖、あるいは恐怖の象徴となっていた。
その竜の系譜に連なる者のうちの1匹が、その国を襲った。
その竜は、一言で言えば、邪悪な気質を持つ者だった。
傲慢で強欲、力を持つ自分は何をしてもいい、自分より弱いものをどれだけ虐げてもいいし、何をどれだけ奪ってもいい、というような考え方を持っていた。
『竜王』ほどの力は持たないとはいえ、人間や亜人達にとっては十分に脅威。
止める者も、止めうる者もいない環境下でその竜は、人間達や亜人達が暮らす小国や集落を気まぐれに襲い、食料を、財宝を、命を奪い、周辺に暮らす者達を震え上がらせていた。
ちょうどその頃国家として新たに成立した『アーグランド評議国』には、『竜王』の評議員が名を連ねているものの、『その者は同じ竜ではあるが自分とは関係ないので、こちらは関知しない』と言って取り合わない。
そもそもその竜自身が、『竜王達は自分に危害や迷惑が及ばない限りはほとんど動かないし、同族である竜に関しては特に判断が鈍い』と知ってそれを行っていた。
実際、他の竜や竜王達も関わろうとはせず、実質野放しになっているような存在だった。
その凶牙がついに、かつて『悪女』に襲われたその国に及び……いつも通りの戯れの虐殺で、辺境の集落がいくつも襲われ、家畜が食い殺され、村人は家々もろとも焼き払われた。
そのまま竜は、もっと大きな都市に行って、小さき者達が震えあがって逃げ惑う姿を見てやろうと飛翔し、その国の王都にまで攻め込んで……
……そこで、1人の勇敢なる若者によって、打ち倒された。
周辺国でも名を知られ恐れられていた竜の襲来に、王都の民は、貴族達は絶望し、王は、この国が終わるかもしれないことを悔しく思っていたが……そこに颯爽と現れた、おそらくは人間であろう青年が、それを覆した。
王都に降り立つ直前まで来ていた竜を迎え撃ち、ただの1人も民を殺させることなく、圧倒的な力で返り討ちにして見せた。
竜は、『自分が人間などに!?』『こんなことがあっていいはずがない!』と、最後まで現実を受け入れられないといった様子で……しかし、言ってしまえば自業自得でしかない結末を迎え、民達の前にその骸をさらすことになった。
その、竜を打ち倒した青年は、その国の民達に、貴族達に、そして王によって勇者として讃えられ……住処を定めず、旅をしていた放浪の身であったことも相まって、『ぜひこの国に住んでくれ』と誘われ……それを受け入れて、王都に居を構えることとなった。
それ以降、数々の凶悪なモンスターや、人間を敵視する亜人部族の襲撃など――このくらいは特別なことではなく、たまに起こる災難のうちの1つだった――を、国の兵士達と協力して退け、王都のみならず国中の集落を救い続けた。
その『邪竜殺しの勇者』の伝説は、いつしか国内全体に、いや都市国家群全体に広がっていた。
やがて勇者は、その数多の功績により、その国の貴族となり、さらに王女と結婚して王族の末席に名を連ねることとなった。
それと時を同じくして、いくつかの国家が――戦争でではなく、平和的に――その国に統合された。
そしてこれを機会に、国の名前が変わることとなり……勇者がその名付け親に選ばれた。
悩んだ末に、彼は決断し……その国は以後……
『ラダトーム王国』を名乗り、都市国家群の中心国として……そして、その少し後に誕生する『アレフガルド都市国家連合』の中心国の1つとして、永く繫栄していくことになるのだった。
……なお、歴史の裏側で、
「ばあちゃーん、なんか随分前にばあちゃんが助けたっていう国が、野良のドラゴンに襲われてるっぽいんですけども……なんか調子乗ってる感じがムカつくし、駆除しとく?」
『(※
「んー……見た感じレベル50前後ってとこだし、まあ余裕だと思う。俺は『親衛隊』には入れなかったけど、70は一応越えてるし、なんとでもなるでしょ」
『ならいいんだけど。油断しないできちんと頑張りなよ。もしヤバそうだったら、渡してあるアイテム使っていいからね。持ってるでしょ、『封魔の絵巻物』』
「ありがたいけど、第9位階の妖怪なんて召喚したらそっちの方がやばいことになるってば。じゃ……行ってきます!」
「なんかすごい感謝されて、パーティーにお呼ばれしちゃった。結構おいしそうな料理並んでるし、歓待してくれるっていうからしばらくこの国で過ごすかも」
『まあ、国救ったらそりゃそうなるか。あんたの旅だし、あんたの自由にしたらいいよ。ボロは出さないようにね。外見含めてほぼ人間とは言え、一応4分の1妖怪の血入ってんだから』
「了解ー。にしても、『邪竜を討伐した勇者』だってさ、訓練で戦ってたドラゴンとか妖怪より全然弱くて、しかも油断しまくりの動揺しまくりだから楽勝だったんだけど」
『そりゃあんた、私やアカネが召喚するモンスターと比べたら可哀そうよ。こっちはスキル補正で強化入ってて、同じレベル帯の普通のモンスターより強いんだから』
「それと訓練させるばあちゃん達さあ……まあ、そのおかげで強くなれて助かってるけどもね……あ、なんか呼ばれたからもう行くね」
『はいはい、楽しんできな』
「この国居心地よくてさー……愛着も湧いちゃったし、このままここに住むかも。……いい?」
『帰ってこないかあ……寂しくなるけど、いいよ。あんたの人生だし、好きにしな。ただし、『空中庭園』その他の秘匿事項については、きちんと秘密にすること』
「もちろんわかってる。もし話すなら本当に信頼できるものだけにして、それも【契約】を使って絶対に漏れないように、だよね」
『そゆこと。それと、たまには帰ってきて顔見せてね。あなたのおばあちゃんは寂しがり屋だぞ』
「はいはいわかってるって。……実は、王女様との縁談の話も出て来ててさ、うけるつもりでいるんだ。子供ができたら……」
『見に行くね、絶対(強)』
「いやこっち来るの!? ばあちゃんが直々に!? 見せに来いじゃなくて!?」
『だって王女様と結婚するなら王族入りか、少なくとも貴族……王族の血筋だと公爵家でしょ? そうそう国外に出られないだろうし……あと嫁さんの顔も一緒に見たいから行く。はい決定』
「あ、はい」
『それと、そのレベルの立場なら妾ないし側室とるよね?』
「あ、うん、多分……っていうか、国内の貴族だけじゃなく、国外……ないし、別な都市国家からも縁談の話来てる。政略結婚だけど……『勇者』の評判聞いて、普通に慕ってというか、憧れてくれてる子も多いみたい。あと、打算的なところで……なるべく『勇者の血筋』を増やしたい、ってのもあるみたいで」
『まあ、そうなるか。その子達とも子供ができたら見せてもらうとして……竜を倒すくらいに強い『勇者』の血筋が増える……か。トカゲ共がちょっかいだしてこないといいけど』
「うん? 何か言った?」
『いや、何でもないよ。頑張ってね。ああ、必要だったらデミアに頼んで『元気になるお薬』用意して送るから言ってね。朝までぶっ続けでやれるくらいの』
「いらないよ!? ていうかいきなりその……エッチな話題ブッこんで来るのやめて!? びっくりするじゃん!」
『何言ってんの子供じゃあるまいし。ヤることヤらないことには子供だってできないんだから、変に苦手意識なんか……ああ、あんたまだ未経験だっけ? だーから旅に出る前に『サキュバス街』で童貞捨てとけって言ったのに……今からでもちょっとこっち戻ってきて経験しとく? その方が色々余裕出来ると思うけど』
「だからやめてってば!? 実の祖母と孫でそういう話したくないんだけど! てかこれから結婚するって言ってんのに不倫勧めないでよ!」
『でもさあ……実際のところ、人生一発目が夫婦の初夜って地味にリスク高いのよ? 私、何度も子供達から相談されてるから知ってるんだけど、緊張して硬くならなかったとか、慣れてなかったせいで三擦り半でフィニッシュしちゃったとか、女の扱いに慣れてなかったがゆえの悲しい失敗談なんていくらでも……それこそあんたのお父さんやお爺ちゃんだってそれはもう―――』
「やめろー! 生々しい! 聞きたくない! 怖い! ていうか叔父さん達、ばあちゃんにそんなことの相談とか愚痴とかしてんの!? どんなメンタルしてるんだよ……母親だろ仮にも」
『私がこんな感じだから今更その手の話題とか避けてもしょうがないってわかってるのよ。ああ、どうしてもっていうなら止めないけど、それでもし何かあったら……記憶操作の魔法使える下僕をそっちに派遣するから、いざって時は遠慮せずに…………あ、
※ その後、初夜はきちんと上手くいったそうです。
『へー、新しい国の名付け親にねえ……』
「うん。でも、いいのが思いつかなくてさ……何か案とかある?」
『あなたが任されたんだから、私が名付け親になっても仕方ないでしょ。でもそうだなあ……アドバイスするとしたら……思い入れのある単語ないし名前にするのがいいかもね。これからあんたの終の棲家になる国なんだから。名前を聞くたびに『うーん』ってなるのは嫌でしょ?』
「そうだね……うん……思い入れのある国名、かあ……」
(しばらく経過)
「……よし、決まった!」
『お、決まったか。何にするの?』
「うん、『ラダトーム』にする」
『え゛っ……!? その名前は……ち、ちなみに、何で?』
「『空中庭園』にいた頃、『遊享郭』のシアタールームで見たんだけど、ええと……『れとろげーむじっきょうどうが』とか言うのがあって、その中の1つに出てきた名前なんだよ。そこからもらった。あとほら、俺、ドラゴン討伐して王女様と結婚する勇者だし、偶然だけど王女様の名前『ローラ』だし、ちょうどいいかなって」
『(そんなんあったっけ!?)いや、まあ……うん。あんたがそれでいいなら止めないけども。てか、奥さんローラ姫なんだ……すげえ偶然もあったもんだ』
「それとさ、他に娶ることになった側室が3人いるんだけど、それらも周辺の小国を併合して名前変える予定なんだって。もしそれも俺に名付け頼まれたら……ふふふ」
『………………』
後世のどんな歴史書にも語られない、邪竜討伐の勇者と、その祖母である大妖怪の雑談である。
カルサナス都市国家連合、消滅。
そして伝説へ……
というわけで、なんかどっかの国民的RPGを思わせる国が誕生してしまいました。
これもきっとラストにゃんにゃんって奴の仕業なんだ。