オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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第2章 地下大墳墓と空中庭園
私と契約して同盟相手になってよ!


 

 

「いや~……長いプロローグでしたね」

 

「何ですいきなり?」

 

「あ、いやこっちの話です」

 

 400年。

 ラストにゃんにゃんがこの異世界に来てからのことを……詳しく話しているといくら時間があってもとても足りないので、適宜端折ってかいつまんで話して、それでもそれなりに長い時間になってしまっていた。

 

 しかしモモンガ……もとい、アインズからしてみれば、情報源として非常に優秀なのに加えて、臨場感たっぷりに、楽しそうに語るラストの話は、単純に聞いていて面白い冒険譚だった。

 故に、飽きることなく集中して最初から最後まで聞くことができた。

 

 

 

 その話の中でも色々な話を聞いたが、やはりこの世界、まだまだ知っておいた方がいいことが多そうである。

 各国に関するより詳細な情報や知識を、より詳細に聞かせてもらうには、改めて日取りを決めて打ち合わせをした方がいい……そう決めて、ひとまず今日はお開きとなった。

 

 後日改めて……その時には、説明に使えるような資料を色々と用意して来る、とラストは言って帰って行った。

 

 その後、アインズは玉座の間に下僕達を集め、今後の方針……謁見の際に語った通り、アインズ率いる『ナザリック地下大墳墓』と、ラスト率いる『ニューコロロ空中庭園』が、正式に同盟を組むこととなった旨を、改めて周知して聞かせた。

 

 そしてその際、アインズが特に重視して、下僕達全員に聞かせたことがある。

 それは……『ナザリック』と『空中庭園』は、あくまでも対等な関係での同盟である、という点だった。

 

 この世界で数日過ごし、また先日のカルネ村の一件を経て、アインズは気づいた……否、嫌でも気づかされたことがあった。

 

 ナザリックの者達のほとんどが、共通して持っている、排他的……を通り越して、ナザリック至上主義と言って過言ではない、その価値観。

 ナザリックの同胞以外を、種族問わず、ほぼ無条件で見下しており……いいように利用し、搾取し、傷つけ、奪い、虐げる……といったことに何のためらいもない。

 なんなら、進んでそれを楽しんでやる者の方が多数派であるくらいだ。特に、カルマ値が『悪』以上の者……『凶悪』や『極悪』に至っている者は全員そうだと言えた。

 

 アインズとしては、NPC達をそういう風に作ったのは自分達であるのだから、それを責める気はないし……自分を慕って、忠誠を誓って付いてきてくれるかわいい子供達だと思っている。

 人道的に問題がある考え方なのだろうとはわかってはいるが、それでも今、自分にとって最も優先し大切にするべきは、ナザリックとそのNPC達なのだ。その利益、そして何より安全の確保のためならば、手段は選んでいられない。

 ……そもそも『人道的』とはいっても、自分も既に『人』ではないのだし。

 

 ただ、そうだとしても例外はある。

 今回の相手……ラストにゃんにゃんと、その拠点『ニューコロロ空中庭園』の下僕達や子供達が、まさにそれだった。

 

「ゆえに……ないとは思うが、ラストさんとその拠点の者達を、いいように利用しようだとか、組織ごと服従させるべきだとか……そういったことは努々思わぬようにな。彼女は私にとって、未熟な頃の面倒を見てやった弟子のようなものだ。ゆえに私のことを立てて、一歩引いた位置に立つ形にしてくれてはいるが……同時に私にとっては、まぎれもなく『戦友』と言っていい存在であるし、また、ウルベルトさんやペロロンチーノさん、ヘロヘロさんやぶくぶく茶釜さんといった、至高の41人(ギルドメンバー)の多くとも仲が良く、互いにその力を認め合っていた女傑だ」

 

 その言葉を聞いて、ごくわずかにではあるが、ぴくりと体が震えたり、顔色がわずかに悪くなったりしたものが幾人かいた。

 恐らくはそれに近い……ないしは、少なくとも『ナザリックが上で向こうが下であるべき』といった考えをやはり持っていたのだろう。そこに、至高の御方々の名前まで出されて釘を刺されれば……主人の意思に背くところだった、自らの浅はかさ、愚かさを呪いたくもなっただろう。

 

 そしてアインズにとっては……今言った言葉のとおり、彼女は……『たった1人でギルドを、拠点を、NPC達を最後まで守り通す』という、それぞれに孤独な闘いを貫き通した『戦友』だ。

 自分がそうであったように、彼女にとっても、ギルドが、NPC達が、どれだけ大切な存在であるか……わからないわけもなかった。

 

 ましてや彼女は、自分よりも400年も早くこの世界に来て……それからずっと、NPC達と協力してとはいえ、その拠点を守ってきたのだ。その思いは計り知れない。

 

「もちろん、過度にラストさん達を立てる必要も持ち上げる必要もない。今言ったように、基本的に『ニューコロロ空中庭園』とは、対等の同盟である。なんなら、気さくに接する程度に考えてもいいだろうし、向こうもそれを悪く思うことはあるまい」

 

 自分とラストにゃんにゃんは、師匠と弟子。それも、ラストがユグドラシルを理解し、自分らしく遊び始める力をつけるまでの、ほんの一時だけの師弟関係だった。

 だからこそ、『気持ちアインズの方が上』程度でいいと思っているし――なんなら完全に対等でも全く構わなかったのだが――その上下関係をそのまま拡大解釈して、彼女のギルドを下に見て虐げるような真似を許すはずもなかった。

 

「私にとってお前達が無二の宝であるように、彼女にとって『暗黒桃源郷』の下僕達は宝なのだ。それを私もよくわかっているし、お前達もまた理解してくれるだろうと信じる。重ねて言うが……ないとは思うが、もし彼女の宝物をないがしろにするような真似をし、私と彼女の友情に汚泥を塗りたくるようなことがあれば……温厚な私とて、どうなるか……正直わかりかねるな……

 

 その言葉に、今度こそゾッとする守護者達。

 

 主人の怒りを買い、叱責され、罰を受けることを恐れている……のではない。

 自分であろうと他人であろうと、誰であろうとアインズの機嫌を損ね、不快にさせたのならば、その命を持って償うのは当たり前だ。それから逃れようなどとは思わない。

 

 最も恐ろしいのは……アインズが自分達に失望し、ここを去ってしまうこと。

 最後に残った慈悲深き御方が、このナザリックを捨て、『リアル』なる世界へ……自分達には絶対に手の届かない場所にお隠れになってしまうことだ。

 それだけが、どうしようもなく恐ろしい。考えたくもないほどに。

 

 実のところ、アインズとしては『違反したものは厳しく処罰する!』という程度の意図だったのだが、それを知らないNPC達は……ラストにゃんにゃんとその部下達に関してだけは、何があってもそれらを下に見て、粗雑に扱うようなことをしてはいけないと、魂に刻んだのだった。

 

 

 ☆☆☆

 

 

 いやあ……超びっくりした。

 

 そろそろ『揺り返し』の時期だってのはわかってたから、色々備えて警戒とかは始めてたんだよ……どんなのが来るかわからないから。

 それこそ……ええと、今からだともう『500年前』になるのか、その時来た『八欲王』みたいな迷惑なのが来るかもしれないし。その時は、巻き込まれないようにじっとしてるか……あるいは、殺られる前に殺る、みたいなのが必要にならないとも限らんし。

 

 だから、王国と帝国の国境付近に、なんか見覚えのない遺跡っぽいのがある……って聞いた時には、『来たんじゃね?』って思った。

 プレイヤーの拠点だったとしてもいいように、行って帰って来れるだけの戦力を……『親衛隊』から3人、オルガ、シーナそしてテレサを行かせた。

 

 オルガとシーナは、前にも話してあるように……私と『常闇の竜王(ディープダークネス・ドラゴンロード)』との間にできた子。

 

 そしてテレサは……今から約100年前、私と『朽棺の竜王(エルダーコフィン・ドラゴンロード)』との間にできた子だ。

 種族は『半妖半竜』かつアンデッドという特殊極まる感じ。しかし、兄・姉達に負けないくらいの素質を持っており、おそらく同じ『朽棺の竜王』の血をひく者の中では最強だと思う。

 

 そんな3人に見に行かせたわけだし、何かあっても離脱して戻ってくるくらいはできるだろ……と思ってたのだが、まさか来てたのが『ナザリック』だとは思ってなかった。

 そして、モモンガさんが来ていたとは……。

 

 いや、そりゃモモンガさんも間違いなく、最終日に最後までログインしてたプレイヤーの1人だったから、来ていてもおかしくない、むしろ来ていてほしかった人ではあったよ?

 ただ……ごめん、正直もうそろそろ『無理かなー』って諦め始めてたんだ。この世界で知り合いに会うのは、さすがに厳しいのかなー、って。

 

 だからこうしてモモンガさんと、400年ぶりに再会できたのはすごく嬉しい。

 ……あの人は『数日ぶり』だと思ってたけど。

 

 そしてだからこそ、できる限りの協力していくつもりだよ、モモンガさん……もとい、アインズさんに。

 この世界のこと、まだほとんど何も知らないだろうからね。

 

 さっき言ったとおり、アインズさんがこの世界に来てからまだ数日しか経っていなかった。

 ただ、数日間にしてはすごい濃いイベントを既にこなしてたようだったけどね……。

 

 なんでもこの近くの……リ・エスティーゼ王国の所属になってる村で、バハルス帝国の軍……に扮したスレイン法国の襲撃を退けて、精鋭部隊である『陽光聖典』を全滅させて、さらには王国の戦士長ガゼフ・ストロノーフとも知り合いになったと。

 イベント盛りだくさんだったんだな……大変だったでしょ。難易度はともかく、しがらみとか全力で襲い掛かってくるじゃん。それ。多分。

 

 まあ、ナザリックの基本方針や下僕達の考え方を見る限り、そういうのあっても『知るか、滅べ』って感じでなぎ倒していきそうではあるけども。

 あのギルド確か、NPCのほとんどがカルマ値『悪』側なんだよな……。

 

 けど、そんな辺境の小さな村で聞けたであろう情報なんてたかが知れている。

 

 ガゼフ戦士長にも多少は聞いてるだろうけど、大差はないだろう。

 もちろん彼は公人だからその気になれば多くのことを知っているし話せるだろうけど、だからこそ見ず知らずの他人にむやみやたらに話すことはないだろうし。

 

 ゆえにアインズさん、この世界について調べるために、今後の動き方なんかを色々と考えていたようだ。外の世界……ないし、この世界についての情報収集の方法を。

 

 けど、そこに私達っていう、異世界歴400年の……自分で言うのもなんだけど大ベテランがそれを手伝えることになったので、モモンガさん達が必要とする労力も大幅に減るはずだ。今現在既に私達が握ってる情報を片っ端から教えてあげるだけでもだいぶ違うだろうし。

 

 今後どうしていくかについて、きちんと打ち合わせしないとな。

 ……ざっくり『協力関係で』ってだけしか決めてないからな、今のところ。

 

 そのへんを詰めるため、って理由も込みで……今度、久々にアインズさんを『ニューコロロ空中庭園』に招待することになった。

『遊びに行くの久々だから楽しみですよ!』って嬉しいこと言ってくれたから、全力でおもてなしするつもりでいるよ。

 

 もちろん、今の彼の立場を鑑みて、護衛も何人か連れてくるようだけど……その護衛の子達にもきちんと満足してもらえるようなおもてなしを見せてやろうじゃないかと、私、今非常に張り切っております。

 アインズさんを喜ばせたいのももちろんあるけど……それ以上に、今私が住んでる『ニューコロロ空中庭園』を自慢したい、ってのもあるので(笑)。

 

 ……ああそれと、その『おもてなし』に関して……こんなやり取り、というか一コマがあった。

 

 

『期待していてくださいね? 色々と面白いものを見て、美味しいもの食べて、たくさんお土産買って、めいっぱい楽しんで帰ってもらえるようにがんばりますから!』

 

『もう宣伝の仕方がどっかの観光地みたいですね。でも……見たり聞いたりはともかく、俺、このとおりアンデッドですから……食べるのは無理ですよ、ははは』

 

 

 そう言ってアインズさんが苦笑していた(骨フェイスで表情はわかんなかったけど多分)。

 同時に、そばにいて控えていたアルベドが、少し責めるような目つきになって私の方を見た。

 多分、種族柄、飲食ができないアインズさんのことを思って『何を配慮に欠けることを言っているんですか?』ってさすがに不快に思ったんだと思う。

 

 ……しかし、それに私は……こう返した。

 

 

 

「できますよ? 飲食」

 

「え?」

 

 

 

「アンデッドだろうと関係ありません。食べたり飲んだり、眠ったり……なんだったらエッチなことだってできます。『できない』から我慢する必要なんてないです。……この私の拠点……『ニューコロロ空中庭園』でなら、ね」

 

 

 

 それを聞いて、アインズさんはもちろん、アルベドもきょとんとして不思議そうにしていた。

 

 さーて……実際に彼らを『空中庭園』に招待する時が楽しみだ♪

 

 

 

 

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