【異世界転移400年目 ▲日目】
モモンガさんが……違った、アインズさん……ああいや冒険者モモンだっけ? どれで呼べばいい……紛らわしいな。
とりあえず日記の上だしアインズさんでいいか。適宜モモンで。
今日からアインズさんは、冒険者モモン及びそのチームとして、『指名依頼』による往復数日かけての護衛依頼に旅立つことになった。
依頼人は、エ・ランテルの名士と名高い(らしい)、ンフィーレア・バレアレっていう薬師の人。目的は、ポーションの材料になる薬草を取りに行くこと。
そしてその目的地は、カルネ村という小さな村。
これがまた偶然なことに、アインズさん達がこの世界に来て初めて現地人と交流を持った場所だったらしい。法国が絡んだ陰謀みたいなのが現在進行形で展開されてたところにダイナミックエントリーして、ちょっと暴れつつ、村とか王国戦士長とか助けたんだっけか。
そこに行くってことは……そのンフィーレアさん、カルネ村と交流がある人なのかな?
……今のカルネ村、その法国の襲撃のせいで、大勢村人が殺されて、人口がだいぶ減ってしまってるって話だったけど……。
この世界、ネットが発達してるリアルと違って、情報が行き届くのはかなり遅い。あるいはそもそも届かないことすらある。開拓村が魔物に襲われて、人知れずひっそりと滅んでるなんてのは、よくある話だ。
となると、そのンフィーレアさん、カルネ村が襲われた事実を知らない可能性もあるんじゃないだろうか。かなり最近のことだって話だし。
もしかしたら、その村にいる彼の知り合いとかが亡くなってる可能性もあるわけで……ショックを受けないといいんだが。
アインズさんの依頼については、まあ、諸々無事で終わることを祈っておくとして……同時進行で別な調査計画も今日開始したので、それについても書いておこうかな。
アインズさんとは別口で計画されたもので、ソリュシャンとセバスが中心で行うものだ。
冒険者とは別の立場でこの世界に関する情報収集を行うために企画されていたらしい。
ソリュシャンがわがままなお嬢様で、セバスがそれに仕える執事……っていう設定。
ソリュシャンの実家は、マジックアイテムその他を扱う大手の商会で、その活動の一環として、この世界で一般的に流通しているマジックアイテムや魔法の
なおこれに際して、こちらも多少私の方でバックアップを出させてもらうことにした。
ソリュシャンの実家……ということになってる『大手の商会』について。こちらは元々、そんなものは当然ないので有名無実化する予定だったらしいが、そこに手を貸す。
実は私んとこで、以前からフロント企業として帝国に構えている『そこそこ大手』と言えるくらいの規模の商会があるので、ソリュシャンの実家はそこってことにした。
一人娘がそろそろ稼業を継ぐための修行ないし勉強のために、徐々に仕事を任される形で外に出て来ていて、その一環で王国に来てます、的な感じで。
それに加えて、例によってスポンサー的に活動資金をちょっと援助させてもらったり……って感じだな。色々なマジックアイテム他を買い込む関係上、お金が必要になる立場だし。
また、これもアインズさん達の冒険者活動と同様に、私達に委託すればナザリックでわざわざやらなくてもよかった仕事ではあるんだけど、例によって『何でもかんでも頼りきりになるのは…』っていう考えのもと、きちんとナザリック主体でやることになったそう。
加えて、この任務で外に出るセバスとソリュシャンは、ナザリックの中でも特に上手く人間の中に溶け込めると目されている2人だ。
ソリュシャンは演技力が抜群かつ、ナーベラルみたいに発作的に人間を罵倒したり殺そうとしたりしないし、セバスは元々カルマ値が『極善』なので、ナザリックの身分を明かさないようにだけ注意すれば素で人間社会の中でやっていけるくらいだ。
それを生かして人間の社会に、営みの中に触れさせて、情報収集しつつこの世界について勉強させ、理解を深めさせる、っていう目的もあるようだ。
どっちも上手くいくことを祈りつつ、こっちもできる限りのバックアップをさせてもらうことにしよう。がんばれー。
【追記】
アインズさん達がどんな様子なのか見るために、『遠隔視の鏡』でその任務の様子を見させてもらってた時に、気づいたことがあった。
……あ、もちろんあらかじめアインズさんに許可は取ってたよ? うちの子達の活躍も気になるので、時々覗き見ていいですか、って。
で、その時に、アインズさん達と一緒に依頼人の顔を見たんだが……私、このメカクレ男子知ってるわ。この子が『ンフィーレア・バレアレ』だったのか。
知ってるって言うか、ちょっと前に食べた子だったわ。
アインズさん達がこの世界に来る……半年くらい前かな?
暇つぶしにエ・ランテルの周辺に散歩に出た時に、女傭兵っぽい姿に化けてその辺を散策してて……その時、移動のために相乗り馬車に乗ったんだよね。
行先はカルネ村ではなく、別の都市だったんだが、その中にンフィーレア君もいた。ポーションの材料か器材あたりの買い付けにでも行くところだったのかな?
軽薄で尻軽、気分やな傭兵、って感じのロールプレイでやってた私は、露出多めの服装で、途中出てきたモンスターを、護衛に協力して適当に倒しつつ進んでたんだけど、夜、野営する時になって……同行してたガラの悪い傭兵にナンパされた。
丁度ムラムラしてたし、タイプではないけど別にいいかと思って、茂みの中でそのままヤっちゃったんだけど……それをンフィーレア君が、茂みの陰からずっと隠れて見てたんだよね。
もっとも、狙って見に来たんじゃなく、トイレに起きたら偶然、私達がかくれて夜のプロレスをしてるのを見つけちゃった……って感じだったけど。
いけないことだとはわかりつつ、興味津々で『うわぁ…』って目が放せなくなってた。もちろん私は気づいてたけど……いやあ、かわいいなぁ、ってその時思ってね?
……で、その翌日の夜、同じように野営したわけだが、前日に誘ってきたガラの悪い傭兵は魔法でさっさと眠らせた。
そして、ンフィーレア君がトイレに起きたところで――それも実は私の仕業。夕食の時に彼の飲み物に、利尿作用のある魔法薬を混ぜた――『何か出ると悪いし、危ないからついていってあげる』って近くまで同行して……そのまま誘惑して、食べちゃいました。
なんか好きな子がいたみたいで、中々首を縦に振らなかったので、ちょっと強めに『魅了』かけて発情させたら、そのまま私の上にのしかかってきて、必死でカクカク腰をふって……あ~~あの慣れてなくて初々しい感じ、最高だった……めっちゃ楽しかったし美味しかったわぁ……♪
しかし、ふと思ったんだけど……『遠隔視の鏡』越しに見たンフィーレア君、なんだかちょっと浮かれてるように見えるのは気のせいだろうか?
ひょっとしたら、彼の思い人って、これから向かうカルネ村にいる……とか?
もしそうだとしたら……先の一件で亡くなってしまった人の中に、それがいないことを祈る。
けど、もし、不幸なことになってたりしたら……お姉さんがもう1回体で慰めに行ってあげちゃおうかな……。
……こんな不謹慎なことが頭に浮かんでしまう私は、ホントにもう、人間じゃなくて『九尾の狐』になっちゃったんだなあ、と、ふと思った。
【異世界転移400年目 //日目】
アインズさんより連絡あり。
いいニュースと悪いニュースの両方があったらしい。
ちな内訳、いいニュース2つ、悪いニュース1つ。
まずじゃあいいニュースの1つ目。
順調にいっているンフィーレア君の護衛中に、彼とかなり仲良くなることができたらしい。
今日の午前中というか、朝早いうちにカルネ村にはついたんだけど、やはりンフィーレア君は村が襲われたことについて知らなかったんだそうだ。その襲撃で、村人の半数近くが死んでしまったことも。
ただ、不幸中の幸いというべきか、彼の思い人については無事だった。
エンリちゃんって言うらしいけど……なんとその子、アインズさんが助けた子で、もしあと数秒遅れてたらその子も妹――こっちはネムちゃんって言うらしい――共々殺されてたって。
……ごめんねエンリちゃん。君の彼氏(仮)、お姉さんがちょっと前に食べちゃったんだ。
まあ、心までは奪ってない、行きずりの一夜限りだから許してね。
そのことを知ってンフィーレア君、『エンリを、村を助けてくれてありがとうございました!』ってアインズさんにお礼を言った。
そこから仲良くなったってわけだ。
……さて、ここで1つおかしなことに気づいた人も多いんじゃないかな?
村を助けたのは、確かに、間違いなくアインズさんだ。
けど、ンフィーレア君は今、『冒険者モモン』と一緒にこのカルネ村に来てる。アインズとしての名前も身分も、職業も隠している『モモン』と一緒に。
なのになぜ、『アインズ』さんにお礼を言うことができたのか。
まあ、普通にモモン=アインズだってバレたからなんだけどね。これが悪いニュース。
もっとも、その後きちんといい関係を築けたわけなので、実質は解決してて、悪いニュースではなくなったっていうのが正確なところかもしれないけど。
なぜそうなったのかというと……『
そこにいくつか偶然や不運が重なって、最終的には特定されてしまった、みたいな。
少し前にモモンチームが引き受けた以来の中で、他のいくつかのチームと協力してやることになった者があったそうだ。
鉄級冒険者のチーム――名前は知らない――と共同で当たったんだけど、その最中に戦闘が発生し、協力相手のチームの方に、結構重症なケガ人が出た。
ナーベラルが『あの程度の相手に傷を負うなんて、やはり惰じ…』と、ここまで言ったところでアインズさんがチョップして強制的に止めつつ、『仕方ないから治療してやるか』と思ってポーションを取り出した。
そのまま放っとくと死ぬ傷だった上に、そのチームはポーションを使い切ってて、さらに神官の回復魔法ももう使えなかったそうで。
しかしその前にうちのトガヒミコが駆けつけて、いつもの回復ナイフでさくっと(擬音語表現)刺して回復させた。
それを見て『ならこれはいらないか』ってアインズさんはポーションをしまったらしいんだが……そのポーションを、相手チームに目撃されていたのだ。
咄嗟に取り出してしまった、ユグドラシル産の赤いポーションを。
そしてその後、こんなやり取りがあった。
モブ1「すまない、うちのチームはもう回復手段が残っていなくて……ポーションを余らせていたら買い取らせてもらえないか? もちろん代金は支払う」
モブ2「そういえばさっきのポーション、赤かったわね? 普通ポーションって青いのに」
モモン「(ぎくっ)あ、あれはその……売るわけにはいかなくて」
ナーベ「そうです。
キリト「あーすいません、あれ、知人が試験的に作ったハンドメイドのポーションなので、余所様に売るわけにはいかないというか、売れるようなもんじゃないんですよ」
トガ「市販品の青いポーションならいくつかあるので、そっち売りますね?」
うちの2人がカバーして、その場は何とかコレで収まったらしい。
その後、例によって自害しようとするナーベをなだめつつ、無事依頼は完了したらしいんだが……一応口止めしていたにもかかわらず、相手チームの口の軽い誰かが、『赤いポーション』のことを漏らしてしまったらしいのだ。
ポーションを補充するために買い物に行った、バレアレ薬品店で。
そこから、『神の血』と呼ばれる赤いポーションについて興味を持ったンフィーレア君が、持ち主であるモモンことアインズさんに繋がりを作るために今回の『指名依頼』を行った……というのが今回の真相だったのだ。
そして今回、カルネ村に着いたンフィーレア君は、エンリちゃんに『アインズ様が赤いポーションをくれたんだよ。すごい効き目だった!』と言ったのを聞いて……同じ『赤いポーション』を持っていた、冒険者モモンと魔法詠唱者アインズが、同一人物じゃないかと気づいた、というわけ。
もっとも、何度も言うようにアインズさんとは友好的な関係を築けたらしいし、このことも秘密にしてくれるそうなので、問題はないけどね。
そして、いいニュースのもう1つは、アインズさんが、薬草採取の護衛中に『森の賢王』なるモンスターをしもべにできたことだ。
名前の通りに賢いだけでなく、強靭な肉体を持ち、魔法をも使いこなし、数百年の長きを生きているという伝説の魔獣……って噂だったんだけど、実際見てみたらそいつ、大型車くらいの大きさがあるジャンガリアンハムスターだったっていうね……。
しかもそんなに強くない。せいぜい40レベル前後ってところかな。
まあ例によって、この世界でなら、そのくらい強ければ十分『伝説』扱いされるんだろうけど。
騎獣ないし使役獣としてはそれなりに使えるので、アインズさんが『勝負に勝って従えた』ってことにして、今後の名声づくりに役立てるそうだ。
なお、名前も付けたらしい。ハムスケ、だって。うーん、そのまんま。
『鏡』越しに私も見てみたけど、普通にかわいかったな……ペットとしてありだと思うくらい。
でもその見た目が、現地の人達には『なんて立派な魔獣なんだ!』って思えるらしい。ンフィーレア君とか、カルネ村の人達とかも。……価値観って複雑だよね。
ともあれ、こんな感じで色々あったらしいけど、
今日はカルネ村に一泊して、明日の朝出発して帰るってさ。
『帰るまでが遠足です』とはよく言うものの、ここまできちんと済ませられたんなら、もうほぼクエスト達成、と言っていいんじゃないかな。お疲れ様、アインズさん。
…………今のなんか、自分で言っといてなんだけど、フラグっぽかったな……。