オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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一難去ってまた一難……がやっと去ったのにさらに一難

【異世界転移400年目 ☆日目】

 

 昨日、というか昨日の夕方から夜にかけて起こったことの顛末をそろっと書いていこうと思う。

 時間にすればほんの数時間だったし、私が直接絡んだのなんかその最後十数分くらいだったけど、いや、色々あったし濃い時間だったな……。

 

 アインズさんがエ・ランテルに帰ってきて、ンフィーレア君の護衛依頼が完了した……と思ったらその後すぐに、家に帰ったンフィーレア君が攫われて。

 さらにその後、そのンフィーレア君の『生まれながらの異能(タレント)』を悪用した、秘密結社ズーラーノーンとかいう連中の手で、墓地から大量のアンデッドが発生して町を襲った。

 

 数千体にも上るアンデッドが発生していた上、『アンデッドが集まるとより強いアンデッドが発生する』という法則のせいで、時間が経つほどさらに状況が悪くなっていっていた。

 実際、町の兵士達や冒険者達は割とマジで『もうダメだ、おしまいだぁ…』的に思ってたらしいし。

 

 けど、所詮下級アンデッドや中級アンデッドくらいしか出てこないわけなので、アインズさん達にしてみれば脅威でもなんでもない。

 町を守るためと、ンフィーレア君を救出するため、そして名声を高めるのにちょうどいいってことで、さっそうと現れてアンデッドの軍団相手に無双し始めた。

 

 そのまま、墓場の奥にいた首謀者達のところまで行って……その場面私見てないので詳しくは知らないんだけど、現地民にしてはちょっと強かった女戦士を含む、首謀者達数名を討伐、あるいは捕獲完了した。

 ……捕獲したのは、今言った女戦士1人なんだけどね。色々とあって、何か有用な情報がすっぱ抜けそうだからって、情報源として回収したってわけ。

 

 そして、私が呼ばれたのはこの後で……

 

(中略)

 

 そんな感じで、ンフィーレア君を発狂させずに『叡者の額冠』を取り外すことには成功したものの……直後に『魅了』の影響でンフィーレア君(半裸)が私に襲い掛かって来ちゃって。

 しかもその直後に、なぜかマーレ君が無表情+ハイライトの消えた目でンフィーレア君を撲殺。ぶっちゃけちょっと怖かったです。いつもの彼と違いすぎて。

 

 けど何というか……マーレ君自身も、その行動……というか、自分が何をしたのかわかってない風だったのが少し気になったな……。

 撲殺してンフィーレア君の頭がパーン!してから数秒経ってから、マーレ君の目に光が戻って……目の前の惨状と、周りの皆が自分を見てる状況を見て『えっ? えっ!?』ってめっちゃ混乱してたから。

 

 私が襲われたのを見て、咄嗟に、反射的に体が動いた……のかな? いや、それにしても何だか様子が変というか、違和感あるような気がしたんだけど……。

 

 結局その後マーレ君は、アインズさんに『ラストさんを心配する気持ちはわかるが、保護対象者であるンフィーレアを撲殺したのは軽率だ。反省しなさい』って軽く叱られてました。

 まあ、子供のいたずらや失敗に『めっ!』ってするくらいの軽い叱責だったと思うけど……マーレ君、すごく落ち込んでたな。

 

 まあ、ナザリックのしもべ達は、ちょっとした失敗でも『自害します』ってさらっと口から出てくるくらいのクレイジーな忠誠心を標準装備してるから、無理もないかもだけど。

 今回のコレ、明確に主が『助ける対象』だって言ってた人を、自分で殺しちゃったわけだし……反省点としては大きいだろうな。

 

 けどまあ、私を助けようとしてやってくれたわけなので、私から『あんまり怒らないで上げてください』って口添えした上で、マーレ君には『ありがとね』ってお礼言っておいた。

 赤くなって照れてるのがかわいかった。『えへへへ……』って、泣いたカラスがもう笑うってか。

 

 ……ただ、そんなマーレ君の様子を見て、デミウルゴスが『ふむ…』って何やら考え込んでたのが気になったんだが……何か気になることでもあったのかな?

 失態を犯した守護者仲間を叱責する……という雰囲気ではなかったように見えたけど。

 

 ともあれ、私達『空中庭園』から来た4人は、そこでお役御免になったので、私が『転移門(ゲート)』を開いて退散しました。仕事は終わったからね。

 

 それともちろん。ンフィーレア君はきちんと蘇生しました。

蘇生の杖(ワンドオブリザレクション)』を使ったので、デスペナルティによるレベルダウンもなく、きちんと蘇った。

 

 在庫しこたまあるので、私がやりますか、ってアインズさんには申し出たんだけど、『こっちの守護者の落ち度なので』ってアインズさんが自前のを出して使ってた。

 それ聞いてまたマーレ君が落ち込んじゃってた。しまった、先に返せばよかった。

 

 さて、首謀者も倒したしンフィーレア君も救出したし、後はもう凱旋するだけかな……と思ったんだけど、どうせだからもう少しくらい演出を足すことにした。

 というのも、アインズさん達……もとい、モモン一行がアンデッド相手に無双する様子は、多くの兵士や冒険者の目に入りはしたものの、それでもまだ『前線にいた一部の面々』だけの目撃談にとどまっている。

 今のままでも十分大手柄にはなると思うけど、インパクトがまだちょっと弱いかなー、と。もうちょっと派手にやれれば、もっと上の冒険者ランクまで一気に昇給狙えるかなー、と思った。

 

 なので、アインズさん達と相談して……いっちょエキシビションマッチ的なのをやることに。

 町の入り口近く、新たなアンデッドが湧いてこなくなって『やっと終わりか!?』って気を抜きかけてる冒険者や兵士の皆さんの前に、ちょっくら『ラスボス』的なアンデッドを登場させ、暴れさせることにした。

 そしてそれを、さっそうと現れたモモン達が討伐することで、ダメ押しの功績にするというわけ。

 

 ただ、その『ラスボス』を何にするかで地味に悩んだ。

 この世界のレベルの低さは前に何度も言った通りなので、下手に強すぎるアンデッドを出しちゃうと、英雄誕生の瞬間を目の当たりにした熱狂よりも、死人の多さや悲劇の大きさのインパクトの方が勝ってしまいそうで。

 

魂食らい(ソウルイーター)』……論外。強すぎる。即死効果のあるスキルを発動してるから、目撃者になる兵士達や冒険者達が全滅しかねん。というか下手したらコレ1匹でエランテル滅ぶかもしれん。そのくらい場違いだ。

 

死の騎士(デス・ナイト)』……まだ強い。

 殺した相手もゾンビになるので、被害がシャレにならない規模になってしまう。この世界だと、こいつ『伝説のアンデッド』って呼ばれてるらしいんだわ……たかだかレベル35程度なのに。

 

 結局、『死者の大魔法使い(エルダーリッチ)』1体と、『骨の竜(スケリトルドラゴン)』3体を用意して差し向けることにした。

 私らカンスト勢からすれば、『ラスボスがこれって……ギャグ?』みたいな感想しか出てこないんだけど、普通の冒険者からしたら、これだけでも十分絶望的な布陣らしい。

 

 何せ、『骨の竜』の特殊能力として、『第6位階までの魔法の無効化』というのがある。この世界の魔法使いが使える魔法は、一流でも第3位階がせいぜい、それを超えるレベルはほんの一握り……いやそれ以上にレアな実力者のみだ。

 帝国にいる、『逸脱者』と呼ばれる魔法使いが人類最高の魔法使いで、第6位階を使えるらしいけど……その人もこいつには勝てないってことになる。

 

 そんなもん、第七でも第八でも、それ以上の位階の魔法使ってさっさと消し飛ばせばいいだけなんだけど……それができないこの世界では、『骨の竜』は『魔法に対する絶対耐性』を持つ、『魔法詠唱者の天敵』という立ち位置なんだって。

 ……たかだかレベル16(ユグドラシル基準)程度のモンスターに偉い評価ついてんな……。

 

 ともあれ、そんな怪物が3体も出たってだけで十分なインパクトだ。実際、『死者の大魔法使い』を含めた4体の出現に、冒険者や衛兵たちは恐慌状態に近くなって、恐怖と絶望から逃げ出す者も大勢出たそうで……。

 ……完全に弱い者いじめしてる気分になりつつも、そこに『俺に任せろ』とばかりにさっそうと現れたモモンチームがそれと戦った。強大な(笑)アンデッドを相手に一歩も引かない戦いを見せるモモン達に、声援を送って応援する兵士や冒険者達。……いやお前らも戦えよ。

 

 注目がピークに達したところで、ここでアインズさん達にも秘密にしていたサプライズを決行。

 ひそかに呼び寄せていたテレサに、自前のスキルに『始原の魔法(ワイルド・マジック)』を組み合わせたちょっと特殊なスキルを使わせて……スケリトルドラゴンを強化した。

 

 あともう一歩で倒せる、ってところで、死者の大魔法使い(エルダーリッチ)が『こうなれば最後の手段よ……見るがいい、わが切り札を!』ってわざとらしく叫んだかと思うと、なんかすごそうな感じで力を解放(したように見えた)。

 

 その瞬間……なんと、3体の『骨の竜(スケリトルドラゴン)』が……合体した。

 

 『何じゃこりゃ?』って感じになって呆気に取られてるアインズさん達の目の前で、大量の骨が集まってさらに巨大化して……3つの首と大きな翼を持つ、超強化版アンデッドが爆誕。

 

 本邦初公開。名付けて『呪骨の三ツ首竜(トライヘッド・スケリトルギドラ)』。

 見た目のインパクトは十分いや十二分。アンデッドだらけの災厄の夜のラスボスにふさわしい怪物に仕上がった。

 

『骨の竜』に倍するパワーやタフネスを持つだけでなく、リジェネ程度に自動回復が発動していて、攻撃しても徐々に再生してしまう。

 さらに、ただでさえ重い通常攻撃に、確率で『呪い』の状態異常が付与される特性を持っており、運が悪いと防御の上からでもそれを食らって。動けなくなってそのままひき潰されたりする。

 

 最大の武器は、ドラゴンらしく放ってくるブレスだ。

『骨の竜』の時は使ってこなかった攻撃だけど、毒や呪い、麻痺などの状態異常効果のある黒炎のブレスを放ってくる。しかも、3つの首からそれぞれに放ってくるので、前方広範囲を埋め尽くすように広がって……という、中々に絶望的な攻撃に仕上がっている。

 

 ……まあ、今言ったもの全部、アインズさんには効かないんだけどね。耐性持ってるし、アンデッドとしてはるか高みにいる種族だから。

 さらに言えば、爪とか尻尾とか、普通の物理攻撃でさえ『上位物理無効化』で無効化される範囲内なので、多少ノックバックくらう程度のアクションにはなっても、ダメージにはならない。

 

 そこらの冒険者や兵士の方々には絶望も絶望なモンスターだが、アインズさんにとっては完全な接待モンスターとして仕上がっております。さあご存分にどうぞ。

 

 見たことも聞いたこともない凶悪なアンデッドを前にして、多くの兵士達が本日二度目、あるいはそれ以上に感じたであろう『もうダメだ、おしまいだぁ…』になってる中でも、一歩も引かずに立ち向かうモモン達。

 激闘を繰り広げ(演技)、ついにその骨の巨竜と、その奥に控えていたエルダーリッチも、どちらも観衆の目の前で倒して……その力を、功績を見せつけた。

 

 粉々に砕けて崩れ去っていく骨の巨体の向こうから、夜明けとともに朝日が差し込んできたその光景を見て……冒険者達や兵士達は、この長い夜がようやく終わったことを悟り、安堵と感激で涙を流す者が後を絶たなかった。

 同時に……悪夢の夜を終わらせてくれた『漆黒の英雄』の誕生を、皆、喜んだ。

 

 ……よし。これなら、モモンチームのランクアップも期待できそうだ。誰の目にも明らかな形で、すごく大きな功績を上げたわけだからね。疑いようもあるまい。うん、楽しみだ。

 

 いやー、終わった終わった。うん、なんとも濃い1日だったね。

 

 

 

【異世界転移400年目 ★日目】

 

 一難去ってまた一難。

 せっかくアインズさん達が、超飛び級出世で『アダマンタイト級』になったので、じゃあお祝いにお食事会でも企画しようかなー、なんて思ってたところに、とんでもない話題が飛び込んできた。

 

 その時ちょうど、アインズさんと今後の打ち合わせしてたところだったんだけど……よっぽどの緊急の用件でない限り入ってくるな、って言っておいたのに、アルベドが気持ち早足で入ってきたので、何事だと思って聞いたら、

 

 ……なんか、シャルティアが反逆しましたとか何とか。

 

 思わず、私もアインズさんもそろって『はぁ!?』って聞き返しちゃった。

 反逆!? シャルティアが!?

 シャルティア……に限った話じゃないけど、アインズさんが『ちょっと重い』って感じるくらいにガチの忠誠心持ってる、ナザリックのNPCであるシャルティアが、何、謀反!?

 

 一体どういうことだと思って、詳しく聞くなり調べたりしたところ……言い方が悪いよアルベド、裏切ったわけじゃないじゃん。

 ただ、魅了ないしは何かしらの精神支配によって、ナザリックから味方判定が外れてるっていう、『状態異常』の類のようだ。アインズさんが、ギルドの管理画面からシャルティアの状態を確認したら、そうなってた。

 

 けど、これはこれでおかしな状態だよね。

 シャルティアは吸血鬼……アンデッドだ。それも、真祖(トゥルーバンパイア)っていう、特に強力な種族の1つ。

 当然、種族特性として、精神支配系への完全耐性を持ってるわけだけど……それを突破して支配されてるってことだ。

 

 そんな方法はごく限られている。完全耐性を突破するような、ごく一部の超強力なマジックアイテムやスキルを使うくらいしかない。

 例えば……私の『傾国の悪女』のような。

 

 ああ、当たり前だけど、私は犯人じゃないからね? アリバイあるし。

 シャルティアが精神支配(多分)されたと思しき時間帯、私、マーレやデミウルゴスと一緒にいたから。彼らが証人です。

 

 そもそも私、その時シャルティアがどこで何してたのかも知らないしね。ソリュシャンとセバスの手伝いしてたみたいな話は聞いてるけど、それだけだ。

 そのソリュシャン達も、何があってシャルティアが洗脳されるような事態になったのかは知らなかったし。途中までは一緒にいたみたいなんだけど……。

 

 聞けばシャルティアは、部下の『吸血鬼の花嫁(ヴァンパイア・ブライド)』達と一緒に、なんとかっていう盗賊のアジトにカチコミかけに行ったらしい。

 目的は、『攫ったり殺してもいい』『武技を使える人材』の確保のため。そこにいる用心棒みたいな男がそこそこ強くて、ナザリックに持ち帰れば、情報なり技術なり死体なり、有効活用できそうだからって、盗賊団ごと壊滅・回収しようとしてたらしい。

 

 しかし、盗賊程度楽勝で蹴散らせるはずのシャルティアが、いつになっても帰還せず……しかもなんだか森自体が騒がしくなってきた。

 気になったセバスが『伝言(メッセージ)』を飛ばしても、応答はなし。シャルティアだけでなく、ついていった部下達も含めて、誰も帰ってこない。

 

 さすがにおかしいと思い、しかし自分達には今表の立場があるからうかつには動けず、どうすべきかアルベドに相談したところ……シャルティアの状態が発覚した、というわけだ。

 

 まあ、確実に『何か』はあったんだろうけど……くわしいことは、実際にシャルティアの状態を見て見ないことにはわからない。

 なので、明日にでもアインズさんが、相応の準備をした上で、現地に行って見てくるそうだ。

 

 当のシャルティアは、相変わらず『伝言』による呼びかけにも反応しないけど、現在地はずっと変わっておらず、同じ場所に居続けているらしいので。

 

『私も何か手伝いますか?』って聞いたら、ひとまず大丈夫だってさ。

 対処する時、何かあった時は相談するかも、とは言ってたけど。

 

 

 

【異世界転移400年目 ■日目】

 

 シャルティアの件、思ったより面倒なことになって来たかもしんない。

 

 今日、アインズさんがシャルティアの様子を見に行ったんだけど、やはり彼女は何らかの精神支配を受けているようだった。

 

 アインズさんが目の前に現れても、話しかけても、命令口調で何か言っても一切反応せず、うつむいて黙ったまま。

 おそらく、『精神支配を受けたものの、何をしろとかいう命令が出されずに放置されている』という状態だと思われ、自分では何もできずにぼーっと突っ立ってるしかない、というのが今のシャルティアだ……というのが、アインズさんの見解だった。

 

 近づいても何も反応がないのをいいことに、アインズさんは状態異常解除の手段をあらかた試してみたが、どれも反応はなし。

 シャルティアの完全耐性を貫通して洗脳してるわけだから、それなりに強力な精神支配だっていうのは予想してたことではあるけどね……。

 

 そして、試せるものはほぼ全部試したアインズさんから、私に声がかかった。シャルティアを助けたいから協力してほしい、って。

 

 やることは単純。ンフィーレア君の時と同じだ。

 シャルティアにかかってる精神支配を、私の『魅了』で上書きする。そしてその上で、私が魅了を解除すれば、元通りだ。

 

 シャルティアはペロロンチーノさんの子だ。ペロロンさんとも仲が良かった私としては、助けるのに何もためらうことなんかない。即決でOKさせてもらって、転移魔法で現地に飛んだ。

 そして、聞いてた通りぼーっとして何も反応しないシャルティアに、『傾国の悪女』の職業効果で耐性貫通かつ最大出力まで効力を高めた魅了を放って……

 

 …………しかし、失敗した。

 私の魅了で、シャルティアを操ることができなかった。

 

 驚いて『え、嘘!?』なんて声が出ちゃいつつ……2度、3度と繰り返したが、何度やっても弾かれる。シャルティアを魅了できない。

 

 ……いや、一応確かに、私の『魅了』でも、アンデッドとかの完全耐性持ちの種族に対しては、100%洗脳できるってわけでは……ないといえばそうだ。

 ただそれでも、使えるスキルをフルで使って強化し、さらに張り切って課金アイテムまで使って強化したので、完全耐性相手だろうと成功確率は、90%を超えていたはずだ。

 

 現役時代にも、『お前『傾世傾国』要らねーやつじゃん』とか言われて、ギルメンにすら褒められつつも引かれていた私の魅了スキル。

 

 それを今、計5回連続でやって、全て失敗した。

 単純計算で……成功率9割としても、5回連続で失敗する確率は……0.001%。ちょっと考えられない数値だ。有償ガチャの超大当たりより確率が低い。

 

 こうなると、9割じゃなくて0%だと考えた方がよさそうだ。私の魅了でも解除、ないし上書きできないレベルの『何か』をシャルティアは受けた、ということになる。

 ……自慢させてもらうけど私の魅了って、確率の問題こそあれど、複数のスキルでブーストしてるから、優先度的には超位魔法クラスなんだけど……これより優先度で上ってなると、本当に世界級(ワールド)アイテムくらいしか残ってないぞ。

 

 それをアインズさんに話すと、彼も最大レベルにまで警戒感を引き上げていた。

 直ちにナザリックに戻って、今後どうするかを考えるそうだ。

 

 ひとまずは解散らしいので、私も拠点に戻って、デミアとカリンを呼び出して相談した。

 

 そしたら、デミアから1つ可能性として、世界級アイテムの他に『始原の魔法(ワイルド・マジック)』の可能性もあるんじゃないかって。

 ああ……確かに。アレも、ものによっては、耐性とかガン無視して問答無用で色々してくるからなあ……。

 

 プリキュアの竜王……じゃなくて、『朽棺の竜王(エルダーコフィン・ドラゴンロード)』が使ってきた、触れたものを問答無用で消滅させる黒いビームブレスとか。

 耐性貫通する魅了みたいな『始原の魔法』があってもおかしくはない……のか。一応コレも、後でアインズさんに教えておいた方がいいかな。

 

 

 

【追記】

 

 アインズさん、今回の件についての対処法を決めたようだった。

 ……よくそれ決めたな、って思わざるを得ないような内容だった。確かに理にはかなってるけど……NPC達を家族同然だと思ってるアインズさんが、よく決断したな……と。

 

 やることは単純。

 一回シャルティアを殺してから蘇生させる。これだけ。

 

 ユグドラシルにおいて、『死亡』は言ってみれば、最も強力な『状態異常』である。

 たしかにゲーム内では、これで上書きできない状態異常は存在しなかった。どんな状態異常を食らったとしても、1回死ねば全てが解除される。それを利用して『めんどくさいから1回殺して蘇生させる』『自爆技使って攻撃しつつ全部チャラにするから蘇生頼む』なんて戦法すらあったくらいだ。

 

 だから、言われてみれば合理的かつ確率の高いやり方ではあるんだけど……この、NPC達が現実に生きて、動いているこの異世界で……本当によくそれを、覚悟して、決断したな……。

 

 手伝いましょうか、って一応聞いた。

 シャルティアは、ナザリックの中でも、戦闘能力が特に高いNPCの1人だ。殺すとなれば……つまり、戦闘になれば全力で抵抗して来るだろうし、被害は決して小さくないだろう。

 

 けど……なんとなくアインズさんには、断られそうな気はしていた。

 

 実際、断られた。

 

 

『ラストさんを邪険にしてるわけでも、信頼してないわけでもないんです。でもこれは……シャルティアの相手は、俺の役目です。手は借りません』

 

 

 …………だってさ。

 

 かっこいいなホント、私の師匠は。

 

 

 

 

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