とれたて新鮮な肉や魚や野菜を、軽食と言いつつ割とガッツリ堪能したアインズ達。
食休みも済ませてゆったりしてから、『空中庭園』見学ツアーを再開した。
午後にまず訪れたのは、訓練・修行関係の施設や、闘技場などのバトル関係の施設が多く立ち並ぶ『練武郭』。
入ってすぐのところにある道場では、何百人もの若者達が稽古に励んでいた。
「おー……壮観ですね」
「すごいでしょ。『空中庭園』の中でも特に活気に満ちてる場所の1つですから」
一心不乱に剣を振る者もいれば、気合を込めて拳を突き出し続ける者もいる。
体力づくりのためにひたすら走り込みを行っている者もいれば、汗だくになって腕立て伏せ等の筋トレで自分を追い込んでいる者もいる。
二人一組で組み手を行うなど、より実戦に近い訓練を行っている者もいれば、中には、肉体のみならず精神の修行のため、座禅を組んで瞑想している者もいた。
それらの邪魔にならないようにルートを選びつつ見て回るアインズとラスト。
見ていてまず気付くのは、同じ道場で様々な種族が入り混じって訓練していることだ。
人間、エルフ、ドワーフ、獣人、
さらにそれらに加え、何かの混血種のような、種族名がパッと見ではわからない者も中には混じっていた。
(すごいな。種族的に身体能力に差があって、一緒に訓練するのが難しい種族もいるのに……皆、一緒になって一生懸命高め合ってるのがわかる)
「ラストさん。彼らはそのー……ここの正規軍、みたいな者達なんですか?」
「大体はそんな感じです。でも、ここは別に正規兵専用の道場ってわけでもないので、単に体を鍛えたい人とかも結構混ざってますよ」
趣味のサークル活動、というほど気軽な感じで来ている者はさすがにあまりいないが、体力づくりのためや、いざという時の備えとして戦う力を身につけておきたいという理由でここに来ている者も多い。
彼らのうち、『戦闘』を見据えている者達に対しては、この『道場』で行っている基礎的な訓練・鍛錬に加えて、実践を見据えた『戦闘訓練』も別に施される。
組み手以上に本格的な『戦い方』『殺し方』の指南に加え、個人個人、種族ごとに合ったものを選んでの武器選びや、その武器ごとの習熟訓練。さらに応用編として、『武技』の習得や『
また、肉体的・物理的な鍛錬だけでなく……人によっては、精神面の鍛錬によって魔力を伸ばしたり、『魔法』の習得を目指したり、それをさらに研ぎ澄まして『位階』を高めたりという訓練すらここでは行われている。
そしてそれら全てが、ユグドラシルに由来する知識やノウハウ、さらにこの400年間でラスト達が経験から培ってきた指導・育成のノウハウをフル活用して行われる。
(間違いなく。この周辺の国々のどこよりも効率的に、目に見える成果が出る形で兵士達を育ててるな、ここ。そりゃそうだ、プレイヤーであるラストさんが直々に音頭を取って、ノウハウも全力で生かしてビルド考えてユニットを育成してるんだもの。……おまけに……)
そこから少し歩いた先にあるのが……先ほどちらっと話題に上がった『闘技場』。
その中心で、武器を構えた数人の門下生達が、狂暴なモンスターを相手に、己の力を振り絞って必死で戦っていた。
何度か危うい場面がありつつも、互いにカバーし合って致命的な負傷を避けつつ、一撃一撃確実にモンスターに叩き込んで弱らせていき……ついには打ち倒して見せた。
(さっき『萌緑郭』で飼育されてたモンスターだ。こうしてモンスターとも戦わせることで、より密度の高い実戦経験を積ませると共に、『レベリング』にもなってる)
闘技場で敵役として使われるモンスターはバリエーションに富んでいる。
外から捕まえて来たモンスターや、繁殖させて増やしたモンスター、人工的に作り出したモンスターなどであるが、場合によってはそれ以外……空中庭園内に自動POPしたものや、スキルや魔法で作り出したものも使われている。
そのため、魔獣、亜人(友好的でないもの)、無生物、アンデッドなど、さまざまな種類のモンスターとの戦闘経験を積める上に、それらを倒し続けることで効率よく経験値を稼ぎ、レベルをどんどん上げていける。
(プレイヤーだからこそわかっている『効率よく強くなれる方法』を、兵卒レベルで推し進めてる。そりゃ強くもなるよな。さっき戦ってた彼らも、相手にしてたモンスターのレベルから逆算して、全員10レベル代後半くらいにはなってたみたいだし……その彼らも、この道場では、まだまだせいぜい中堅くらいだってラストさんは言ってた)
アインズからすれば、レベル20弱のユニットなど、一発殴れば倒せる程度でしかない。もちろんそれはラストや、その下僕達にとっても同様だ。
しかし、この世界の基準からすれば、それでも十分に強い方の部類に入る。
この世界独自の脅威度指標である『難度』に直せば、およそ50から60程度になる。それは、経験を積み重ねた熟練の兵士や、ベテランの冒険者やワーカーに匹敵か、それ以上の戦力と言える。
「もっとも、ここって基本は私が召喚した傭兵NPCや、サンゴやアカネの下僕のモンスター達が守ってるし、位置的に外敵が来ることなんてほぼないし、そもそも『蓬莱の玉の枝』による隠ぺいがあるしで、ぶっちゃけ正規軍の出番ってあんまないんですけどね」
「平和でいいじゃないですか。ところでラストさん。ここで修行してる人達……いや『人』以外もいますけど……だいたい最終的にはどのくらい強くなるんですか?」
「最終的にですか? ん~……個人差ありますから、一概に『こう』とは言えないんですけど……だいたいレベル20から25くらいですかね。才能ある人だと30とか、それ以上になったりもしますけど」
それを聞いて、ふむ、とアインズは考える。
(この世界、レベル30超えると『英雄の領域』って言われるんだっけな。ガゼフもだいたいそのくらいだったはずだ。その基準で考えると……ここで育っていく兵士達はほぼ全員、精鋭以上、英雄ちょっと手前、って感じになるわけか。中にはその『英雄の領域』や、それ以上にまで手が届く者もちらほらいると……ガゼフあたりが見たら驚くだろうなあ)
ははは、とアインズやラストは軽い感じで笑いながら言っているが、実際にガゼフがそのことを知ったら、間違いなく『驚く』どころではないだろう。
王国最強の戦士として知られるガゼフや、その直属の部下達であり、王国全体でも指折りの精鋭部隊として知られる『王国戦士団』。
あるいは、王国と敵対している帝国において、日々訓練を積んで鍛えられている帝国軍の専業兵士達や、それを束ねる『帝国四騎士』。
あるいは、スレイン法国における人類を守護する精鋭無頼である『六色聖典』。
いずれも、この世界においては精鋭ないし強者と位置付けられていい者達だが、数でも質でも比較にならないほどの『英雄の軍団』とでも呼ぶべき者達が、ここでは育っている。
周辺国家最強の名で知られ、王国はおろか帝国や法国にもその名が轟いているガゼフ(王国の『五宝物』全て着用時)ですら、ここでは一兵卒の枠内を出ないのだ。
ここにいる者達もまた、有事の際には、ユグドラシルの技術で作られた『最上級』や『
もっとも、アインズやラストからすれば、『このくらいの戦力で褒められたり絶望されても……』というのが正直な感想であり、言われたところで苦笑することになるのだろうが。
何せ、
「で、ラストさん。ここにいる彼らよりさらに強い下僕達もいるんですよね?」
「ええ。このへんはあくまで、目安的にレベル40以下の子達を鍛えるための施設ですから。それ以上の子達は、もっと奥で頑張ってますよ」
そっちも案内するのでどうぞ、と言って先行するラストについて、アインズも施設の奥へ進んでいく。
歩いている途中にアインズはふと、先ほどラストが『それ以上の
単に下僕ないし部下達のことをそう呼んでいるのかと最初は思ったが、そうではないとすれば、この先にいるのは……
(やっぱりね。それにしても……こりゃわかりやすい)
行きついた先の施設で訓練に励んでいたのは、そのほぼ全員が、まだ年若い少年や少女たちだった。外見から見れば、年の頃は20歳にもなっていないであろう者がほとんどで、20代後半から中ごろに見える者がいくらか混ざっているか、という分布に見える。
そして、そこにいる者達のほとんどに当てはまる共通点として……
「なんという狐耳率」
「そりゃここにいるの、大半が私の子供や孫達ですからねえ」
修業している者達のほとんどが、頭には狐耳、腰のあたりからは狐の尻尾を生やしている。すなわち……ラストの血を引いている。
彼女が発情期のたびに、あるいは発情期とか関係なく気が向いた時に『ヤった』結果として生まれた子供達、あるいはその次以降の世代の者達が、ここにいる。
理由は単純で、カンストプレイヤーであるラストの血を引いている彼ら彼女らは、そうでない者達よりも、圧倒的に強いからだ。強くなれるからだ。
「どうもこの世界の人達って、成長限界というか、レベルキャップ的なものが存在してるみたいで……いくら効率よくレベリングさせていても、割と早いうちに頭打ちになっちゃうんですよ。それ以上はいくら鍛えても、筋力とか技術的なものはともかく、レベルは上がらないんです」
「新たに
「そもそも職業に割り振れるレベルがないから取得できないか、あるいは、今既にある職業のレベルが代わりに下がっちゃうので、トータルのレベルはやっぱり変わりませんでした。例外として、アイテムを使って異形種とかに転生させると、いくらか伸びしろができることもありましたけど……それでもしばらく育てると、また止まりましたね」
「それはまた……言っちゃなんですけど、夢のない話ですね。生まれつきの才能が重要で、後天的に伸ばす方法はほとんどない感じか……人間種の立場が弱くなるわけだなあ」
「まあでも、人間には人間でメリットが全然ないわけでもないんですよ、一応。この世界にはほら、『
「それは確かにそうですね。もっとも、ニニャ達が言っていた感じだと、『
そこまで言ってアインズは、あらためて眼下に広がる訓練風景を見る。
狐耳に狐尻尾の『子供達』は、ばらつきこそあるものの、いずれもレベル50は軽く超えているであろう存在感を放っている。
その時点で、この世界基準で言えば、英雄をさらに超えた『逸脱者』とまで呼ばれる領域なのだが、中にはさらに上、レベル70や80に届いているであろう者達もちらほら見受けられた。
(プレイヤーの血を引く子孫たちは、現地の人間よりも大幅に強くなる……それが仮に、現地人との混血であっても、レベルキャップが取っ払われてずっと上のレベルまで上がるんだったな)
さらに、彼ら彼女らが訓練相手にしているモンスターは、どれもユグドラシルで見覚えのある、高レベルの召喚モンスターだった。
ユグドラシル金貨を消費して呼び出すため、使うにはコストが大きいのだが、この拠点を『黒字経営』しているラスト達には、痛くもかゆくもない出費である。
子供達を強く育てるためだと思えばなおさら、惜しくもなんともないのだろう。
そして、この訓練場にはいないため話題にはならなかったが……この空中庭園にいる『子供達』の中には、今訓練している者達よりもさらに上……カンスト級の力を持つ者もいる。
特に、ラストの身の回りで警護を担当したり、ラスト直々に命令を下して様々な任務に従事することになる『親衛隊』は、最低でもレベル90以上ないと入隊資格を満たせないため、正真正銘の最精鋭集団として、『子供達』の中ではあこがれの的になっている。
時々、このあたりの訓練所に顔を出して、レベルがまだ低い兄弟姉妹達の面倒を見てやっていることもあるのだが、先程も言った通り、今日はいないようだ。
「ふむ……耳や尻尾がついていない者もいるんですね」
「ええ。私の子供や孫でも、狐耳が受け継がれないこともあるし……混血にならずに純粋な人間として生まれることもあるし……そもそも、私の子じゃない子もいますからね」
「というと?」
「デミアとか、ミルコとか……うちのNPC達もたまに妊娠して産んでるので、その子供達もここにいます。さすがに私ほどポンポン産んじゃいないですけど、それでも『六道輪廻』は……カリン以外は皆、数十人くらいは子供いますよ、それぞれ」
「すげー……でも、カリン……あの、側近っぽいツインドリルの子ですよね? 彼女は違うんですか?」
堅物でそういうのはあまり好かない子なのかと思ってたずねたアインズだったが、
「いえ、あの子ガチ百合なので、諸々非生産的なんですよ」
斜め上の理由だった。
「それに、『六道輪廻』以外も……というか、うちのNPCってそっち系オープンな感じなのがほとんどなので、結構軽いノリで産んだり産ませたりしてるんですよねー。あ、ちょうど今戦ってる子、キリトの子ですよ」
「お、そうなんですか?」
そう言われてアインズが見てみると、ラストが指さした先の闘技場で、黒髪に黒目の人間のような見た目の軽戦士が、踊るような動きで戦っていた。
相手になっているのは確か、ユグドラシルで60レベル程度のモンスターだったはずだ。つまり、彼もそのくらいのレベルか、それより少し上のレベル帯だということだろう。
「確かに似てますね、キリトに。狐耳がないってことは、ラストさんじゃなくて別な誰かに産ませた子、ってことですか?」
アインズは『キリトもプレイボーイなんだな(汗)』などと思いながらそう尋ねたが、ラストはそれを聞いて何やら『ん?』と不思議そうにして、
「うん? いや、だからそう言っ……ああ、言ってなかったっけ。アインズさん、あの子は、キリトが『産んだ』子なんですよ」
「………………うん?」
違和感。
「……え、ラストさん? 言い間違いですかね? キリトの子供って……キリトが他の誰かに『産ませた子』ですよね? トガヒミコみたいに」
「いえ、間違いじゃないです。キリトが『産んだ』子です」
「……キリト、男ですけど?」
「いやほら、前に言ったじゃないですか。キリトって『ドッペルゲンガー』だから、性転換して『キリコ』になれるって。その状態で妊娠して産んだ子だって意味です」
「見た目が変わるだけじゃなくて機能的にも!? 妊娠・出産までできるんですか!? そしてしたんですかアイツ!?」
「はい。まあ、たまーにですけどね? 基本的にキリトはきちんと精神が男なので。ただたまーにそういう気分になるってだけで」
「『だけ』で済ませちゃいけないことが起こってるでしょうがぁ……」
心の準備なしでとんでもない話を……普段一緒に冒険者としてチームを組んでいる少年の性癖や出産歴なんてものを暴露されて、リアクションが取れないアインズだった。
☆☆☆
『明日からまともにキリトの顔見れるかな……』と不安になりながら歩くアインズ。
ラストの案内で次に向かった、本日最後となる視察先は……
「もうすでに何回も来てもらってますから、おなじみかもですけど……あらためて。ようこそアインズさん、『空中庭園』が誇る娯楽の殿堂、『遊享郭』へ!」
一言で言えば、ここは歓楽街。
ギルド所属者(NPC含む)や、現地で加入した協力者、その家族達が自由に利用することができる娯楽施設が揃っている場所だ。
スタッフとして低レベルのNPCや、召喚した傭兵モンスター達が配置されており、ほぼすべての施設が24時間365日、年中無休で稼働しているため、いつ誰が訪れても楽しい時間を過ごせる場所になっている。
『練武郭』と同等かそれ以上に、この空中庭園にで活気に満ち満ちている場所だ。
利用できる施設は様々で、小さな町サイズの領域内に、名前通りの歓楽『街』ができあがっている。
いくつもある飲食店はそれだけでもバリエーションが豊かで、和洋中それぞれのレストランに加え、静かで落ち着いた雰囲気のバーや、味が濃くてガッツリいけるジャンクフードの店、サラリーマンが日々の疲れを癒していそうな居酒屋に、瑞々しい果物やスイーツが並ぶパーラー、気軽にふらっと立ち寄ってさっと食べられる、たこ焼き屋や立ち食いそばまである。
そのうちの何カ所かはアインズも利用したことがあり(ラストに連れられて守護者達と一緒に)、ここで食べられる食事の味のすばらしさはよく知っていた。
『萌緑郭』で育てられたドラゴン肉などの高級食材に加えて、『ダグザの大釜』から取り出された食材の数々もまた、どれも一級品ばかり。それらを使って腕利きの料理人が作るメニューは、どれも一口一口が感動するほど美味なのだ。
もちろん、飲食以外にも様々な娯楽が待っている。
例えば、ゆっくりと湯に浸かって日々の疲れをいやすことができるスーパー銭湯。
大浴場はもちろん、様々な種類の風呂や、サウナや岩盤浴、マッサージなどが楽しめるスペースが揃っており、喉が渇けば無料のサービスで飲み物も出る。
(ここも一回利用したことあるけど、アンデッド用の『負の瘴気風呂』なんてものまであるのにはびっくりしたな……雰囲気はちょっとおどろおどろしかったけど、割と気持ちよかったな。入浴の後に飲むコーヒー牛乳、めっちゃ美味かったし)
なお、当然のように混浴の露天風呂なども用意されており、好きな風呂に入って好きなように楽しむことができる。……さすがに『その先』まではマナー違反故に許されていないが。
大人も子供も熱くなれる、様々な種類のゲームが揃っているゲームセンター。
エアホッケーやバスケットボールシュートなどのシンプルな遊びから、筐体を使って遊ぶドライブゲームやシューティングゲーム、大きく体を動かすダンスゲームやリズムゲームなどもある。
多人数で遊べるゲームもいくつもあって、友人達と楽しめるのも魅力だが……ものによっては、いわゆる『友情破壊系』『リアルファイト必死』と称されるものもあるのには注意だ。
そして、定期的に景品が変わるクレーンゲームやガチャガチャは、人を……特に『収集癖』や『全種類集めたい欲』がある者を沼に沈める恐ろしい魅力を持っている。
「………………」
恐ろしい魅力を持っている(2回目)。
また、ギルメンの中で妙なこだわりを持っている者がいて、かなりマニアックなコーナーとして、『ゲームテーブル』が置かれているコーナーがあったりする。イン〇ーダーやパッ〇マンが遊べる。
そのギルメン曰く、『昔の喫茶店とかにはこんな感じで置かれてたんだよ』とのことだが、さすがに世代が違いすぎて、ラスト含めて『はあ…』とピンと来ないものがほとんどだった。
大画面……を通り越して、正真正銘劇場サイズのスクリーンで様々な映像作品を視聴できる『映画館』も目玉施設の一つだ。
視聴可能な作品のランチャーには、古今東西の名作映画がジャンルを問わず片っ端から保管されており、気分に合わせて見る者を選べるようになっている。趣味が映画鑑賞で、こだわりがすごいギルメンがいたため、ラインナップの充実ぶりは目を見張るほどだ。
「あれ、こないだ来た時と上映してる作品が変わってる」
「そりゃ映画館ですもん。定期的に変わりますよ。まあ別にアインズさんなら、言ってくれれば好きな時に好きなものお見せしますよ? ぶっちゃけ何を流すかは自由なので」
「それはありがたいですね。まあ今日は時間ないから、また今度お願いしますね」
(てか、今上映してるアニメ映画、たしかぶくぶく茶釜さんがメインヒロインの声優やってるやつだった気が……今度アウラとマーレに教えてやろ)
なお、売店もあるため、上映中に食べるポップコーンや飲み物も買える。レストラン街の料理人達がレシピを監修しているため、味も絶品である。
また、ここを作ったギルメンのこだわりなのか、映像データを選択するデバイスが、一昔以上前の『フィルム式の映写機』の形のオブジェクトになっていて、雰囲気がある。
もちろんそれが実際に映写機として動くわけではないが、そこはあくまで雰囲気なのだろう。
色々なものが、とにかく本当に色々なものが揃っているショッピングモール。
大きな施設の中が、服飾店、雑貨店、ホームセンター、食料品店、薬局など、さらに細かく様々なテナントに分かれており、好きな店で好きなものを好きなように買うことができる。日用品から武器防具まで、よほど特殊なものでない限りは何でもそろう。
何せ、薬局ではユグドラシル産のポーション(赤)を売っているし、食料品店では、種族ごとの好みないしニーズに合わせるため、結構特殊ないし特別な食材も売っている。
人によっては、というか
『だからって食料品コーナーに鉱石とか置くのどうなの?』とか、たまにラストから見てもちょっとツッコんだ方がいい陳列内容があったりもする。一部の亜人はマジで食べるのである。
また、変わり種として、外の世界の国々……リ・エスティーゼ王国やバハルス帝国などの名物を揃えた『アンテナショップ』があったりする。店員は別にそこの国民とかではなく、ただそこで仕入れたものを売ってるだけだが。
「王国のアンテナショップで、特産品の1つとして『黒粉』とか置こうとしてたのはさすがに止めましたけどねー」
「それ麻薬でしょ……いや、確かにあの国では、裏では呆れるくらい流行してて問題になってますけど。ブラックジョークにもほどがあるでしょ……」
その他にも、バッティングセンター、釣り堀、カジノなど、様々な楽しい施設が揃っており、全部回ろうと思ったら数か月は確実にかかるほどだ。
そしてそんな中でも、特に力が入っている『娯楽』が……
「あ、ダメですよアインズさん。『ここ』だけは、アインズさんはまだ出禁なので」
「わかってますよ。……にしても、いつ見てもすごい場所ですね……入り口だけですけど、こう……圧倒されるというか。何ですかこの無駄に荘厳な門は?」
「ふっふっふ……すごいでしょ。名付けて『ゲートオブサキュバス』です!」
ふふん、と豊満な胸を張って立つラストの背後にあるのは……凱旋門もかくやという大きさや装飾の細かさ、荘厳さで作られた巨大な『門』である。
その門の向こうに広がっているのは……大通りの左右にびっしりと『大人のエロいお店』が立ち並ぶ、いわゆる『花街』。
誰あろう、ラストにゃんにゃん本人によって直々にプロデュースされ、大通り丸ごと1つをエロいお店で埋め尽くしたこのエリアは、『サキュバス街』と名付けられていた。
用途など考えるまでもなければ言うまでもない。あらゆる種族のエロいお店が集うこの場所は、あらゆる種族があらゆる種族を相手にエロいことをするためだけの場所である。
人間、エルフ、獣人、スライム、ラミア、天使、悪魔、アンデッド……その他様々な種族が所属する風俗店が軒を連ねている。
同族を相手に劣情をぶつけるもよし、異種族を相手に羽目を外すもよし。思う存分、生まれたままの姿で欲望を発散させる場所なのだ。
オーソドックスに人間の美女を抱いて欲望をぶつけるもよし。
200歳を超えてなお若々しいエルフのお姉さまを堪能するもよし。
キュートな獣耳と野生ゆえのタフさを兼ね備えた獣人に食べられるもよし。
スライム娘に文字通り包まれて、未知なる快楽に沈むもよし。
悪魔っ子を相手に堕落させられちゃうもよし。
天使を相手に背徳感MAXなプレイに溺れるもよし。
客の数だけ、嬢の数だけ、出会いの数だけプレイがある。
もっともここは、ユグドラシル時代から、ラストが担当して作り上げていた場所だったのだが……当初はここまで規模の大きな施設ないしエリアではなかった。『ゲートオブサキュバス』もといエロ凱旋門も、ここまで大きくはなかった。
ただ単に、ロールプレイ的な設定遊びとして、NPCや傭兵モンスターを設置して『ここはこういう場所』ということにして、脳内で補完して遊んでいただけの場所だった。
たまに遊びに来ていたペロロンチーノは『マジでここが異種族相手にハッスルできる大人のお店だったらよかったのになー!』とはしゃいでいた。
そんな『サキュバス街』だが、ラストが『空中庭園』ともどもこの異世界に来て以降、人口増加をいいことに――人の営みには、良くも悪くもエロは切っても切れないものであるため――自分の趣味を最大限反映させて大幅に増築+人員増を続けた結果、『空中庭園』に暮らす者達の下半身事情を支える一大歓楽街が出来上がってしまったのである。
そんな、世の男性の多くにとっては夢のような場所であろう『サキュバス街』だが……今回、アインズを案内する場所の中には入っていない。先ほど言っていた通り、アインズはここは『出禁』なのである。
理由は、『風俗に行くより先に、きちんと返事をするべき相手がいるから』。
アルベドとシャルティア。ほぼギャグのようなやり取りばかりではありつつも、2人とも本気でアインズを慕い、『妃』になりたがってアピールを続けているのだから、きちんとその2人に答えを出してあげなさい。それまでここは使わせません。
以上が、ラストからアインズに毎度伝えられている、『男女の営み』の先達としてのありがたいお説教ないし指導である。
返事の内容次第では、そもそも『
(まあ、もっとも『そういうこと』をするにはどっちみち、
☆☆☆
こうして今日1日、ラストはアインズに『空中庭園』を案内して楽しんでもらった。
これだけあちこち案内すれば、必然的にそろそろいい時間に……まもなく日が暮れるという頃になっていた。
このまま泊まっていく?と尋ねたが、それはやめておく、とアインズは返した。予定にない外泊は下僕達が心配する――そしてそのままこっちに押しかけて来かねない――ので帰るとのこと。
(ちゃんと子供達のこと考えてあげるいい支配者だなー)
「いやあ……今日は思う存分羽を伸ばせて楽しかったです。ありがとうございましたラストさん。今度はラストさんがぜひナザリックに遊びに来てください。ここほどじゃないですけど、ナザリックのロイヤルスイートも、ギルメンがノリと勢いで作った色々な遊び場がありますし、うちの料理長達が作る食事も絶品ですから、きっと楽しんでもらえると思いますよ」
「いいんですか? それは楽しみだなあ……じゃあ今度お邪魔させてもらいますね? あ、テレサも一緒に連れて行っていいですか? これから何度もお邪魔すると思うので」
「ああ、『領域守護者(非常勤)』としてですよね。いや、それでお世話になるのむしろ完全にこっち……っていうか俺なんですけどね。もちろんいいですよ。歓迎します」
そんな会話を交わして、今日は解散となった。
後日、日程を調整して、ラストとテレサがナザリックに遊びに行くことになり、その時が今から楽しみに思える2人だった。
……その前に、また1つ大きなトラブルが巻き起こってしまい、その訪問がしばらく延期になってしまうことになるとは、まだ2人とも知る由もなかった。
今回で第2章は終了になります。
次回から第3章となりますが、その前に少しだけお時間いただきまして、内容を整理させていただいた後の投稿開始になるかなと思います。
なるべく早く再開いたしますので、ほんの少しだけお待ちください。
今後ともよろしくです。