どこともわからない、暗い部屋。
王都リ・エスティーゼのどこかであることだけは確かだが、この場所……『八本指』の集会場所を知っている者は、組織の中でもごく限られた者のみである。
窓もない地下であることも相まって、外部からはほぼ完全に秘匿されていると言っていい場所だった。
そこには今……
「生き残った客の証言からすると、突然乗り込んできた何者かが、店の従業員……それも、男だけを片っ端から殺したらしい。女や客には目もくれずにな」
「城の方からある程度情報を引っ張れた。あの女の子飼の犬からの報告らしいが……どうやら下手人は人間ではないらしい」
「たまたま現れた化け物に運悪く襲われたということか? そんなバカなことが……」
緊急にそこに召集された者達の間で交わされる話は、王都にある『娼館』で起こった惨劇について。
そこに居た従業員……『八本指』の構成員にあたる者達が皆殺しにされた上に、奴隷部門の長であるコッコドールと、その護衛についていたサキュロントは、なぜかその時そこに来ていた、『黄金』ことラナーの子飼の兵士であるクライムに捕縛されてしまった。
サキュロントとコッコドールの釈放は、裏から手を回して貴族を動かせば簡単だ。なので、たいして問題にならない。
ゆえに普段であれば、会議の場は、下手を打った2人をあざ笑う声が響く、形式だけのものになっていたかもしれない。
しかし今回は……同時に明らかになったその内容及び状況が衝撃的過ぎた。
異形の怪人と思しき何者かが突然現れ、構成員達を殺戮したという。状況からして、普段目の敵にしている『蒼』や『朱』ではないのは明らかだった。
不安や恐怖をごまかすように、口々に情報や意見をぶつけ合う様は、活発な議論が交わされているように見えなくもないが……少し冷静に観察してみれば、ただ戸惑っているだけであり、何一つ話が前に進んでいないことはすぐに分かった。
そして、この場で数少ない、冷静なままでいる男が、苛立ちを募らせて、ダン、と机を叩いた。
「少し黙れお前達、見苦しい……勢いだけでくっちゃべっていても、何も解決などせん」
その禿頭の男……ゼロの、威圧感を滲ませた強い言葉に、すぐに全員が黙る。
それを待って、ゼロは話し始めた。
「確認するぞ。例の『娼館が何者かによって襲撃され、男の従業員は皆殺しにされ、客は殺されるか捕まった。女は保護されたようだが……まあこれは別にいいだろう。そして、コッコドールとサキュロントも捕まったが、これもどうとでもなるから置いておく」
1本1本、数えながら指を折る様子を見せつけつつ話していくゼロ。
周囲は黙って、時折こくりとうなずく程度の反応にとどめながら話を聞いていく。
「貴族共からの情報によれば、下手人は悪魔か、それに類する怪物・異形の類らしい。詳しいことはわかっていないが、何か目的をもって娼館を襲撃し、八本指の構成員に的を絞って殺して回ったとのことだ」
「現場には、そいつ以外にも何人かいたらしいが? あの『黄金』の飼い犬や、コッコドールの手下が脅していたらしい、屋敷の執事もいたとか。殴り込みにでも来たのか?」
「さあな。だが、それについては、忌々しいが今回は捨て置け。関係ないとわかっているのなら、この非常時にそんなところに労力を割くのは無意味だ。それより重要視すべきは、店の連中を殺して回った奴に関する情報だ。少しでも多く必要だ」
「それなら、あといくつか分かっていることがある」
聞いていた一人が小さく手を上げて話す。
「裏は取れていないが……飼い犬共の他にも、悪魔側に連れがいたらしい。だが、そいつは殺しには関わらず、ただ見ているだけだったそうだ。それと、これも主観が入るから不確かな情報なんだが……そいつは、悪魔が殺しているところを見て、殺している数を数えているようだったと」
「数を数えていた? 何のためにだ?」
「さあな、そこまではわからん。そもそも、数えている『ように見えた』というだけだしな。後は……何かを達成したとか言っていたようだが……どういう意味を持っているのかはわからなかったと。意味の分からない単語もいくつか使っていたらしい」
「達成……やはり、何か目的があったのだろうな」
「今わかっているのはこんなところだ。一応これ以降も何か情報が入り次第、追加で流すように手配はしてあるが」
「その情報はわかり次第共有しろ。他の連中もだ。今回の相手は、いつものけちな役人や、正義の味方気取りとはどうも違う……各自警戒しろ。何が目的なのかわからない以上……どこかで二度目が起こらないとも限らん」
ゼロの言葉に、再び緊張で会議室が静まり返った。
ごくり、と誰かが唾をのんだのが、やたらとはっきり聞こえた。
☆☆☆
【異世界転移400年目 &日目】
これは……『試練』だ!
過去に、そして現在に打ち勝てという『試練』だとあなたには理解してもらう!
人の成長は……無力な過去に打ち勝ち、無能な現在に決別し、本当に誇れる自分になることだとな……。
え? そう思うだろう? ツアレニーニャ・ベイロン……!
えー、いきなりどっかのボスっぽく始まってごめんね。
理由はない。ちょっと言ってみたかったの。
ひとまず、セバスとツアレが発端になって起こった面倒ごとについては、これで解決……と言っていいと思う。
今後どうするかも含めて、一応決めることは全部決めたし。
ツアレには『お説教』の時に、色々と厳しいことを言ってしまったし、それでちょっと泣きそうになってたのは心が痛んだけど……アインズさんにも言った通り、言っておくべきことだと思ったからね。母親として。
……いや、私ツアレの母親ではないけど、ほら、数千人の子供を持つプロの母親としてよ。
ツアレには、『ナザリックにはあなたは不釣り合い』だってことや、『もっと楽で安全な道もある』こと、『志望動機が不純である』ことなど、全部。
……特に最後のね……セバスと一緒にいたいからナザリックに就職したいですって、いい度胸してるよねあの子。異形種の巣窟とわかってて飛び込むかよ。
しかし、全部聞いたうえでなお、ツアレはナザリックで働きたいと望んだ。
そこまでの覚悟だって言うなら、さすがに私も止めはしない。アインズさんもそれ聞いて、『まあセバスもOKしてるし……』と、どっちかと言えば乗り気だった。
けどそれでも、私は『今のツアレ』をナザリックに迎えるのについては反対させてもらった。
理由は簡単。あらゆる意味で彼女のためにならないからだ。
アインズさんの鶴の一声で、反対意見を無視してナザリックに迎える……いわゆる『コネ入社』も一応、可能ではあるだろう。
けどそれだと、本当の意味でナザリックの一員になったとは言えないし、周囲のメイド達から盛大に反感を買うと思われる。アインズさんじゃなくて、ツアレ本人が。
それは、彼女が人間であり、ナザリックでは人間蔑視の価値観が当たり前だから……ではない。
それもあるだろうけど、それだけじゃなく……メイドとしての能力のない彼女への指導や配慮のために。セバスや、彼女の指導役となるであろうペストーニャの時間や手間が取られるからだ。
ナザリックのメイド達にとって、アインズさんの、至高の御方のために働けることこそ幸福であり、自分達の存在意義である。
そのため、アインズさんがナザリックのブラック企業化を避けるために『休日』を導入しようとした時は、絶望で悲鳴が上がったらしい。働きたいのに働けないなんて苦痛でしかないからと。
『自害せよ』と言えば即座に自害するような忠誠心を持つ彼女達が、アインズさんに逆らう形で『働きたいです!』と懇願するくらいには、受け付けられない事態だったそうだ。御方のために働けない、自分達の時間を使えないというのは、それだけのことなのだ。
そんなナザリックに、自分の力不足を知りながらやってきて、要領が悪く仕事も満足にこなせない。しかもそのせいで、自分達の上司にあたるセバスやペストーニャの手を煩わせる。あと多分その他の同僚人も迷惑をかける。
すなわち、彼ら彼女らが御方のために働けたはずの時間を浪費させ、奪う……うん、絶対嫌われるわそんな新入り。
アインズさんにも説明したら、『あー、それは確かに』『そういう人、職場にいてほしくないですね…』って納得してた。
セバスの意思を尊重してあげたいけど、その結果起きる『しわ寄せ』を、一般メイドを含めた各所にさせることを、社会人としてのアインズさんの価値観が拒む……みたいな感じか。
若干言いすぎなのを承知で言うけど、職場において無能な働き者は時に『敵』なんだよ……。
けど逆に考えれば、ツアレがきちんと一般メイド並みかそれ以上に仕事ができるようになった上でナザリックに来るのなら、外様でも受け入れられやすいだろうし、印象もよくなるだろう。
少なくとも、確定で『使えない新入り』である今行くよりは。
だからツアレには、ナザリックにそのまま行くのではなく……まずは、冒頭でも言ったように『試練』……ないし、『修行パート』を乗り越えてもらうことにした。
まず第一段階として、カルネ村に住んでもらう。そしてそこで、最低限、自分1人で生活できるだけの生活力や自己管理力を養ってもらう。
幼い頃にクソ貴族にさらわれてしまったせいで、今の彼女には『1人で生きていく力』が足りてない。ぶっちゃけ彼女、モンスターに襲われるとか、悪い奴にさらわれるとか、そういう非常事態が何も起こらなくても……1人で生きて行けず、いつのまにか勝手に死んでそうなくらい弱い。
そもそも人間としてすら、自立力という点で半人前以下なのだ。
なので、しばらくカルネ村で暮らして、そのへんを身に着けてもらう。
あの村なら、エンリちゃんを筆頭に優しい人ばかりだし、外からの移住者にも寛容だ。助けられながら少しずつかもしれないけど、ゆっくり無理なく力を取り戻していけるだろう。
加えて、エ・ランテルに拠点を持っている彼女の実妹・ニニャちゃんこと、セリーシア・ベイロンもよく訪れるから、彼女のことを助けてくれる。確実に。
……むしろそのまま、拠点の方をカルネ村に移しちゃうんじゃないか、とすら思う。ずっと会いたかった、ずっと探してたお姉ちゃんだし。
カルネ村で問題なく暮らせるようになったら、第二段階。場所を移す。
今度は、メイドとしての仕事を本格的に学んでもらうために。
次の舞台は、貴族の屋敷だ。もちろん普通の貴族じゃなく、この私の息がかかった貴族家。
昔ちょっとやらかs……色々あって、私の血を引く子孫が当主になって支配している家なので、私の命令があればだいたい何でもしてくれます。
王国によくいるクソ貴族みたいに無体無法を働くことはないし、無茶ぶりも無理強いもされないので、安心していい。本当にただのメイドとして、知識をつけ、技術を磨く場として活用できる。
ここで、高貴な家に仕えるメイドとして合格ラインと言えるようになるまで、メイドとしてのイロハを叩き込みます。
なお、家には男性使用人もいるし、仕えるべき貴族家にも当然男性はいるから……そのへんの恐怖症はきちんと克服しなきゃいけません。がんばりなさい。
それもパスしたら、最終第三段階。『
さらにメイドとしての腕を磨きつつ、『ナザリックのメイド』として働くための予行演習を行う。
言うまでもないことだけど、ナザリックって、そこらの王族や貴族が住むお城と比べて、別次元と言うしかない空間だからね。大国の国宝級の調度品がそこら中にあるし、希少で強力なマジックアイテムもそこら中で使われていて……働くならそれらの扱いの習得も必須だ。
とんでもなく広いし、部屋の数も多いし、部屋自体が特殊なつくりになっていることも多い。
ここで合格点が出たら、晴れて彼女を『ナザリックで働ける人材である』と判断し、私の方からアインズさんに口利きしてあげる。そしてそれでアインズさんが認めれば、彼女はそこでようやくナザリックのメイドとなり、セバスと一緒に働けるわけだ。
果たしてそこまで行くまでに、彼女はどれくらいかかるか……
彼女が死ぬ気で努力して仕事を覚えて、私達やセバスも驚くような早さでカリキュラムをこなせれば、もしかしたら、1年とかからずにそこに至るかもしれない。
逆に、どこまでも要領が悪いままであれば、何十年とかかったり……彼女の寿命が来るまでに終わらないかもしれない。
厳しい処置かもしれないけど、ツアレが本当の意味で『セバスと一緒にいる』ためには、必要なことです。
今のままナザリックに行ったところで、結果セバスに迷惑をかけることになって……その時きっと、誰よりもそれを許せないのは、きっとあなた自身さ。
乗り越えて、セバスの後ろじゃなくて隣にたてる女になって……そうしてから、胸を張って行くがいい。ナザリックへ、な……!
あ、ちなみにこのカリキュラム、途中でやめるのも全然アリだ。
厳しい修行に耐え切れずに挫折して……とかになる可能性ももちろんあるし、その場合はまあ……残念だけど、仕方のないことだろう。
その場合は、当初アインズさん達が考えていたように、適当な町とかでひっそりと今後の人生を……っていうことになるね。
ただ、そうじゃなく……修行のためにカルネ村とか『空中庭園』とかで過ごす中で、セバスと一緒にいる未来以外の幸せを見つける可能性もある。その結果、ナザリックではなく、そこで生きていきたい、という風に望みが変わる可能性も。
さっきも言った通り、カルネ村にいる間は、妹にも頻繁に会えるだろうし、それを抜きにしてもあそこはのどかで、他の住人達も優しくて、居心地がいい場所だろうから……平穏で何物にも侵されない生活を望むツアレにはあっている場所だと思うし。
あるいは、ニニャと一緒にエ・ランテルで暮らしたいと思うようになるかもしれない。
今はニニャは確か宿暮らしだったはずだけど、借家でも借りて、冒険者をやってる妹が帰ってきた時に『おかえり』って言ってあげる生活……みたいな幸せもあると思うし。
あるいは、修業先の貴族家でメイドとしてやりがいを見出して、そこで生きていきたい、なんて思うようになるかも。
あるいは、『空中庭園』で暮らすうちに、そこの住人や、私の子供達の誰かと恋仲にでもなって、そこで暮らしていきたい、なんて思うようになるかも。そうなったらもちろん歓迎するよ。
完全にセバスにホの字なのにそんなことになるわけない、って思ったそこのあなた、甘い。
確かに今はツアレは、セバス以外見えてない状態で彼のことが大好きだ。
その思いが何か月、何年、何十年経っても色あせないのなら……今私が『あるいは』連発して言ったようなことなんて、そりゃ起こるまい。
しかし私は一応、これらの可能性は、真面目にあるかもしれないと思ってます。
でもそれは、ツアレのことを尻の軽い、気の移ろいやすい女だと言ってバカにしてるわけでもなければ、セバスに魅力がないと言ってるわけでもない。
彼女が『一旦冷静になった後』に、どう考えるかわかんないって言ってんの。
私がアインズさんに、『ツアレは酔ってる』って言ったのを覚えてるだろうか?
あれはつまり、彼女が、今の自分の置かれてる状況……その、あまりにも急激な変化のせいで、周りが見えなくなってる気配がする、と思っていったことだ。
今のツアレの状況って、整理すると……悪い貴族に攫われて、家族から引き離されて……
それから何年も地獄のような場所でひどい目に遭い続けて、助けを求めても誰も助けてくれなくて……
もうダメだこのまま死んじゃうんだ……って絶望してたところに、救いの手が差し伸べられた。
セバスはさながら、白馬に乗って現れた騎士様、あるいは王子様だろう。
そしてツアレは、そんなヒーローに救われたお姫様的立ち位置。地獄の底から救い出してもらい、優しくしてもらって、もう何も心配はいらないよ、って言ってくれたセバスに、今ツアレは好き好き大好き状態。
この、異世界転生系の小説の冒頭によくありそうな、あまりにもインスタントにロマンチックな状況のせいで……彼女、多少なり『酔ってる』と思われる。
セバスとの出会いやその後の日々が幸せすぎて、運命的に感じすぎて……今、彼女にはセバスしか見えてない。セバスと過ごす未来以外考えられない。
彼女、セバスと引き離されるくらいなら死を選ぶんじゃないかな? そのくらい、ある種やけくそじみた覚悟の決まり方をしてる。初対面で、
もちろん、その通りに生きたとしても彼女には幸せな人生になるんだろうから、それはそれで悪いことではないとは思うけど……このままいくと下手したら彼女の人生って、『自分』『セバス』『それ以外全部』って感じになる。セバスが彼女にとっての世界の中心で、セバス以外の全てに背を向けて、それでいいと思って、そのまま死んでいく気がする。
それは……悪いことではない。けど、健全とも言えない。
何より心配なのは、その『全て』に肉親すら含まれかねないことだ。
さすがに、
何年かぶりに再会するお姉ちゃんが、祖父と孫ほども年の離れている老年男性にフォーリンラブで全然周りが見えなくなってましたとか……『こんな時どうしたらいいのかわからないの』ってなるだろそんなん。
笑えばいいんじゃないかって? 笑えないよとても。いろんな意味で。気の毒すぎるわ。
そんなわけで……色々台無しにしないためにも、少し頭、冷やそうか。
頭冷やして、色々きちんと見えるように視界を確保して。
平和で穏やかな『普通の生活』の良さを思い出して、色々なことを学んで。
生き別れだった妹と楽しく過ごして、その他にも色々な優しい人達と交流して……失ってしまった
それでもなお、セバスと一緒の人生を歩むことを望むなら……その時はもう、止めないよ。
でもなー……できれば彼女、うちの子供達の誰かとくっついて『
かわいいし健気だしいい度胸だし、割と気に入っちゃったんだよなー。
さっきも言った通り、私の家族になる気があるなら歓迎するんだけどなあ……なんならニニャちゃんも一緒に来てくれて全然いいし。
セバスからNTRしちゃうみたいで悪いけど、私ってほら、一応悪魔系(妖怪)だし? 『悪女』だし? 欲望には忠実なのよね。
ツアレちゃんによく似た顔の、狐耳狐尻尾の子供見たーい。抱っこしたーい。
……子供達のうち、ああいう感じの素朴な女の子がタイプな連中に、後で発破かけとこうかな。
無理やりは厳禁だけど、いい感じの子が近いうちに来るかもよ、って。ふふふ……♪
【異世界転移400年目 *日目】
セバスの件の続き、というか後始末の話だけど……あの娼館襲撃+従業員皆殺し事件は、正体不明の異形の類の仕業、ということになってる。
ゆえに、セバスがこの件に関わってることは『八本指』には知られておらず、彼らの報復とかがセバスやツアレに降りかかることもない。
……そもそもツアレはもうカルネ村に避難させたしね。
一応、あの娼館にいた連中とセバス達が揉めてたっていうことくらいは知られてるようだが、どう考えてもそれどころじゃないので、ちゃちな脅迫のネタの1つなんか放っておかれてます。
もしかしたら後々蒸し返そうとするかもしれないけど……はたしてその頃、『八本指』自体が息をしてるかどうか。
さて、さっきも言った通り、今後の予定というか……今回の王都での騒ぎをこの後どうするかについて話しておこう。
現時点ですでに、セバス達が『八本指』からちょっかいを出されることはなくなってる。『謎の異形種』による犯行ってことにして、『八本指』や王国の権力者達そのものの目をそっちに向けて意識をそらしたからね。
近々撤退することだし、このまま終わりにしても問題ないと言えばないんだけど……せっかくなので、もうちょっと派手に『後始末』をしてみることにしたんだよね。
ちょうど今、デミウルゴスがこの王都で画策していたとある計画があったので、それとミックスさせて……さらにそこに、私も手勢を盛り込ませて演出に一役買って。
音もなく消えて後を追わせないのではなく……ど派手に暴れることで、後を追ってくる余力を残させない、という感じにする。
……ついでに、今回の件でセバス達に面倒を取らせてくれた上に、間接的にだけど私らに喧嘩を売ってきている王国の黒い権力者共に……ちょっとした嫌がらせ、ないし八つ当たりを考えてる。
あの国さあ……害悪でしかないゴミ貴族とか、それにくっついて甘い汁をすすってる連中が多すぎると思うんだ。
前々からそうだったけど、最近特にひどい。
多分だけど、このまま放っておけば……私達が何もしなくても、遠からず亡国への道を突き進むんじゃないかってくらいだ。
そして、それに関する危機感ってものを、あの国できちんと持ててる人がほとんどいない。
別に王国が滅ぶのは全然かまわないんだけど、どうやらデミウルゴス達は、ナザリックが世界征服を成し遂げる上で、王国そのものは滅ぼさずに有効利用する方がいいんじゃないか……と考えてるようなので、滅ばない程度にちょっと掃除してあげようかと思ってます。
いても何の役にも立たない、害悪でしかない連中なんだから……10人や20人や30人や40人や50人くらいいなくなってくれても問題ないよね。
そういうわけで……このたび、王都にて、ナザリック地下大墳墓&ニューコロロ空中庭園の共同企画イベントを開催いたします。
デミウルゴスが計画していた『ゲヘナ』を色々ちょっといじくって、全体の被害規模は少なめ、しかし有害なバカ共に限っては大幅アップの見込み。かつ収益も同等かそれ以上。
さらにそれと同時に、モモン達『漆黒』の名を上げることも目的とし、さらにその他にもいくつものメリットを盛り込んで実行可能な……一石二鳥と言わず、三鳥も四鳥も落とすための計画。
その元ネタは、ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』全盛期の頃、たっち・みーさんに聞かせてもらった、昔のとあるヒーローもののテレビドラマから。
名付けて『ゲゲル』作戦。王都住民全員強制参加でお送りします。震えて眠れ。