オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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今、明かされる真実!(ほぼ嘘)

 

 

【異世界転移400年目 +日目】

 

 今現在、リ・エスティーゼ王国の王都では、ナザリックと空中庭園(うち)から派遣した悪魔やアンデッド達による『ゲゲル』が行われている。

『あらかじめ決めたルールに沿って殺人を行う』というゲームであるそれのせいで、老若男女、身分の貴賤を問わず、結構な数の死者が出ているせいで、割と誰もかれもが震えあがっているそうだ。

 

 特に、自分達はそういうケチな犯罪とは無縁だと思ってたらしい貴族たちが、男爵だろうが子爵だろうが伯爵だろうが関係なく殺されているせいで、めっちゃビビってるって。ざまぁwww

 

 アインズさんもこの現状を聞いて、『ゲームはするのが楽しいと思っていたが、なかなかどうして主催者側に回るのも楽しいものだな』と愉快そうにしていた。

 それを聞いて、メインで運営役を担っているデミウルゴスもご満悦だった。彼、いつでも冷静にしてて動じないように見えて、結構感情が表に出ることあるよね。褒められて嬉しい時とか、あの尻尾分かりやすくぶんぶん振ってたりするし。

 

 さてこの『ゲゲル』だけど、何も人間達をいたぶって怖がらせて楽しむためだけにやっているわけじゃない。ちゃんと目的があって、その手段としてやっているのである。

 

 そもそもの発端は、セバスがやらかして『八本指』ともめてしまい、厄介事を引き起こしてしまったことだったわけだが……それを片付けるだけなら至極簡単だ。

『八本指』なんて、ナザリックや空中庭園の戦力をもってすれば、一晩あれば壊滅させられる程度の規模でしかないわけで。何だったら守護者クラスが動くまでもないし。傭兵モンスターとかでもおつりがくるし。

 

 ただ単に叩き潰して、その財産も奪って、人は殺すか捕虜にして有効利用して……という感じでサクッと済ませるだけなら、それだけ済ませて終了、でもよかったし……あるいは、デミウルゴスが元々計画していた『ゲヘナ』とかでもよかった。

 けど、王国は今後有効利用するためになるべく形だけ(・・)は残したままにしておきたいので、あんまり大っぴらに大打撃を与えるようなことは避けたい。

 

 加えて、『ゲヘナ』は元々、王都の倉庫街とかから物資やら何やらを奪うという目的もセットで達成するためにデミウルゴスが考えた計画だった。ナザリックの運営に役立てるために。

 

 もし、ナザリックが主だった収入源もなく、ギルドホームの維持費に困っているような状況だったなら、そういう手に出る必要があっただろう。派手に暴れて沢山奪って、って感じで。

 

 けど、今現在ナザリックは、『空中庭園』から資金援助を受けており、維持費をはじめとして特段お金に困っていない。なので、必ずしも王国から物資を奪う必要もない。

 なので、それなら計画そのものを、今後の『王国乗っ取り』のために最大限活用できる形に組み直そう……という感じで、デミウルゴスとうちのデミアが協力して作ったのが、『ゲゲル』なのだ。

 

 ゲゲルでは、ただ単に騒ぎを起こすのではなく、条件を設定することで、任意の人物を殺す標的にすることができる。例えば、今後ナザリックが王国を支配するうえで不要な、邪魔ないし害悪にしかならないような愚鈍な貴族とか、犯罪者とかね。

 この機に乗じて、そういう連中を大量に前もって殺しておくのも、ゲゲルの主な目的の1つ。

 

 なお、カモフラージュとして、全然関係ない兵士とか犯罪者、市民も殺すけど……全く罪もない、殺される理由もない者達に関しては、実はきちんと『アフターケア』を用意してます。

 

 コラテラルダメージだとして切って捨てるのは簡単だけど、さすがにかわいそうだって声があちこちから出てね……特に、子供が大好きなニグレドやペストーニャから。

 加えて、私としても、子供は割と好きだし、子供じゃなくても、罪のない人まで巻き込んで虐殺とかは……あんまりしたくない。

 

 なので、ちょっとした小細工をね……詳しくは、また今度ね。

 

 さて、それはそれとして……だ。

 

 だいぶ『ゲゲル』によって王都全体に恐怖と緊張感が広まってきた頃合いだ。

 加えて、『蒼の薔薇』経由でゲゲルのルールや、悪魔達がそういうゲームをしているってことも広く知られるようになってきている。彼女達が国王やラナー王女に報告すれば、そこから貴族達へ噂は広まり、さらにそこから繋がっている各組織(犯罪組織含む)にも広まる。あとついでに、内通しているバカ貴族から帝国へも広まる。

 国や各組織の上層部は、現状を理解しているからこそ余計に恐ろしいだろう。

 

 それじゃあそろそろ、計画を次のフェーズに進めるとしようか。

 

 

 

【異世界転移400年目 >日目】

 

 今日、王都で大事件が起こった。

 そこに住む者達は……特に、上の身分の貴族達はより一層悪魔達と、その遊戯である『ゲゲル』に対して大きな恐れを抱くことになった。

 ……なお、『起こった』じゃなくて『起こした』んだろ、っていうツッコミはなしでよろしく。今更だからね。

 

 具体的に何が起こったのかというと、だ。

 

 いつも通りに(笑)ゲゲルが行われたわけなんだが、その殺人の条件が『3人以上の兄弟の一番上の長男もしくは長女を、弟や妹が見ている前で殺す』というものだったのだ。

 いつも以上に細かいというか複雑で、しかも残虐な条件。それだけでも聞いた者、見た者のショックは大きいだろうけど……それ以上に大問題だったのは、狙われたターゲットだ。

 

 これまでと同じように、貴族だろうが容赦なく狙われて、何人かの貴族の嫡男が殺された。つまり、貴族家の後継ぎが何人も殺されてしまったわけだ。そりゃ大事にもなる。

 貴族なんて、関係者が殺されただけでも大騒ぎするものなのに、いずれ家督を継ぐはずだった子供が、最右翼として教育していた長男が殺されるなんてことになればね。

 

 しかしそれ以上にヤバかったのは……この国の第一王子である、バルブロ王子までもが標的になったことだ。

 

 今日、とある貴族家で、タイミング悪く社交界的なパーティーが開催されていたんだが……そこには、バルブロ王子と、その弟であるザナック王子までもが出席していた。

 つまり、長男と、その下の兄弟姉妹が揃っていた……ゲゲルの条件が満たされていたのだ。

 

 そこに乗り込んできた悪魔が、同じような条件がそろっていた他の貴族の長男2人を殺し、最後にバルブロ王子を狙った。

 

 もちろん護衛はいたものの、目の前であっけなく惨殺されてしまい、バルブロ王子はわけのわからないことを喚きながら、震える手で剣を握っていた。

 逃げずに立ち向かおうとしたのは評価してもいいかも、と一瞬思ったものの、よくよく聞いたら、足が震えて動けなくて逃げられなかっただけっぽい。……感心して損した。

 

 その醜態をあざ笑いながら、悪魔はバルブロ王子を殺そうとしたものの、間一髪そこに、たまたま今日王都に来たところで、たまたま近くにいた冒険者モモンが颯爽と現れ、悪魔を撃退して王子を守った。悪魔は、『お前のような強い者が出て来てはさすがに厳しい、この場は退こう』と言って去っていった。

 

 こうして冒険者モモンの王都でのデビュー戦は、不意の遭遇戦ではあったが、王国の第一王子の危機を救うという華々しい始まり方で飾られたのだった。

 ……その後、虚勢を張って喚き散らして当たり散らすバルブロが見ていて不快だったため、後味が台無しになっちゃったけどね……全くもう。

 

 なお、その悪魔が撤退する際に、『ゲゲル』に関する新たな情報を言い残して去って行った。

 それを、その場にいたパーティー参加者達(ザナック王子含む)が聞いていたため、瞬く間に新情報は王国上層部他で知られることになった。

 

 

『ゲゲルとは単なる遊戯にあらず。我ら魔の眷属にとって、大きな意味を持つ『儀式』である』

 

『ゲゲルに成功した者は、自らの位階をより高いものに高めることができる。魔の眷属としてより大きな力が、より上の地位が手に入るのだ』

 

『そして、私が今行っているのは、ゲゲルの中でも特別なゲゲル……『ゲリザギバス・ゲゲル』。特に強い力を持つ者だけが挑戦することを許されるゲゲルだ』

 

『『ゲリザギバス・ゲゲル』を達成した者は、その褒美として、今回のゲゲルの主催者である、魔王・ヤルダバオト様への挑戦権が与えられる』

 

『魔王様への挑戦……それすなわち、最も特別なゲゲル『ザギバス・ゲゲル』。これに勝てば、私が新たな魔王となれる。これはそのための道筋なのだよ……その一助となれることを光栄に思って、お前達人間は命を差し出せばよいのだ!』

 

 

 単なる悪魔達の遊びだと思っていた『ゲゲル』が、実は、悪魔達がより強くなるための儀式であり、さらに新たな魔王の座を手にするための『争奪戦』でもあったという衝撃の事実。

 

 それが本当であれば、『ゲゲル』はなおのこと放置できないものだ。そのまま悪魔達に殺人を続けさせ、『ゲゲル』を達成させてしまえば、それだけ多くの悪魔達が、より上の『位階』にたどり着いてしまう……すなわち、より強い力を得てしまう。

 それはつまり、人間の世界の平和と安全が、大きく脅かされることになるのと同義だ。

 

 ……まあ、全部嘘なんだけどね?

 それっぽく切迫感というか、『人類追い詰められてます』感を出すための真っ赤な嘘だけどね? 危機的状況になるほど、それをこれから解決する『漆黒の英雄』の名声がより大きくなるし。

 

 さて、そういうわけでここからは、恐怖をあおるフェーズではなく、派手に暴れてそれをモモンが撃退することで注目を集め、英雄譚を作り上げていくフェーズだ。

 王子であるバルブロが襲われたことで、『ゲゲル』を行う悪魔達の恐ろしさは十分伝わるし広まるだろうし、ここから先は『ゲリザギバス・ゲゲル』に挑戦するような、より強い悪魔が襲ってくるということもわかっただろう。

 そういうのを退治する『漆黒の英雄』モモン。大きな話題になって人気が高まるだろう。

 

 まあ、それら全部撃退してたらさすがに出来過ぎになっちゃうから、適度に『場所が悪くて駆けつけられなかった』『モモン以外では太刀打ちできずに大きな被害が出た』的な演出ないし展開も挟むけどね。そのくらいは、英雄譚に必要な悲劇的な展開、スパイスってものだ。

 

 それらに関しても、『アフターケア』はするから、ご心配なく。

 

 

 

【異世界転移400年目 <日目】

 

 王都では今日も……というかここ最近ずっと、『ゲゲル』を行う悪魔達と、それを防ごうとする人間達の戦いが続いてる。

 

 治安維持のための正規兵達が動いているのはもちろんだが、これに加えて冒険者達も積極的に悪魔退治に動いている。

 

 王都の冒険者組合は、『ゲゲル』を放置すればより強力な悪魔が生まれてしまうという性質上、これを放っておくべきではないと判断した。

 逐一ゲゲル発生の情報を公開し共有、冒険者であれば誰でもそれを調べて知ることができるようにし、もし悪魔を撃退したり討伐したり、悪魔から市民や貴族を守った場合には、組合から報奨金が出る仕組みにした。

 

 もっともそれでも、積極的に動こうとする冒険者は……以前よりは増えたものの、そこまで多くはないようだけどね……さっき『積極的に動いている』って書いておいてなんだけど。

 だってそりゃ……『ゲゲル』に関われば、相応以上に強い悪魔と確定でエンカウントすることになるわけだし。そうなれば割と高い確率で死ぬことになるわけだし。命が惜しいと思うなら、報酬が出るとしても関わらないことを選んでもおかしくないもんね。

 

 そんな中でも、『蒼の薔薇』をはじめとした一部の冒険者チームは積極的に動いて悪魔と戦い、何度かゲゲルを阻止することに成功している。

 さらには冒険者だけでなく、特例で出撃した王国戦士団なんかが悪魔を討ち取ったり、その魔の手から貴族を守ったりするケースもあった。

 防衛に成功した者達は、例外なく民達から称えられ、名声を手にすることになった。

 

 まあもちろん、ダントツの成績を誇っているのはモモンだけどね。ゲゲルの半分以上をチーム『漆黒』で阻止してるから、知名度も人気もうなぎ上りだ。

 

 なお、それと反比例するような勢いで、貴族達の評判はどんどん下がってきている。

 レエブン侯のような一部のマシな貴族は例外としても、大体の貴族は自分達の保身ばかり考えて兵士を抱き込んで自分達だけを守らせ、王国の民達には見向きもしない。治安を守ろうという気持ちも欠片もない。

 

 まあ、そのくらいならいつものことだが……その評判をさらに地の底に落とす出来事があった。

 一部の貴族が、ゲゲルを防ぐとか、民を守るとか、そういう真っ当な対応とは真逆なやり方で保身を図ったのだ。

 

 具体的に言えば……『ゲゲル』が起こった際、その時に狙われる『条件』が何なのかを調べて、その条件に合う平民や浮浪者を、私兵を使って強引にさらってきて、悪魔に差し出した。それを悪魔が殺せば、最小限の犠牲と時間で『ゲゲル』は終わり、自分達に危害が及ぶこともなくなる……という理由で。

 

 当然、差し出される民はたまったものじゃないし、あまりにも人の道を外れた行いに、クライムやガゼフ、ラキュースといったまっとうな価値観・倫理観を持つ者達は、平気で民の命を差し出す悪徳どころではない貴族達に対し、最大級の嫌悪感を覚えた。

 

 アインズさんも『えぇ……そこまでする? 人間って醜い……』とドン引きしていた。私もぶっちゃけ引いた。

 名前負けもいいところだ。こいつらのどこに『貴い』要素があるんだか……やっぱこの国、徹底的に掃除しないと、裏から支配するのすら苦労するというか心労を覚えそうだわぁ……

 

 まあその分、余計に英雄的な働きをした面々……『漆黒』や『蒼の薔薇』、それに王国戦士長の評判がさらに上がるから、結果的にはナイスアシスト……なのかな?

 

 ともあれ、計画は一応は順調に進んでるし、良しとしよう。

 デミウルゴスと打ち合わせは随時やってるけど、特に方向修正とかは必要なさそうだ、ってことで意見一致してるしね。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 王都において『ゲゲル』の存在が、そしてその真実が明らかにされ、英雄達と悪魔達の戦いが激しさを増す中のこと。

 

 漆黒の英雄・モモンをはじめとした英傑達の奮戦により、全ての『ゲリザギバス・ゲゲル』を……最終的に阻止することに成功。

 さすがに犠牲者ゼロというわけにはいかず、多数の死者が出てしまってはいたものの……『魔王への挑戦者』を1人も、ないしは1体も出さずにそれら全てを収束させることに成功していた。

 

 そして、最後の悪魔がモモンの剣によって倒され、『ゲリザギバス・ゲゲル』が失敗に終わった……その時だった。

 

 場違いなまでに軽く聞こえる拍手の音と共に、それ(・・)は、姿を現した。

 

 

 

「お見事です……まさか、全ての『ゲリザギバス・ゲゲル』を阻止してしまうとは。人間の中に、これほどの力を持つ者が隠れていたとは……私もさすがに予想もできませんでしたよ」

 

 

 

 ここ数週間、ないし数か月の間……王都のみならず、王国各地で行われ、おびただしい数の犠牲者を生み出した悪魔のゲーム『ゲゲル』。

 その主催者である魔王・ヤルダバオトが……人々の前に、ついにその姿を見せた。

 

 

 

 なお、その外見は、仮面をつけて顔を隠したデミウルゴスそのもの……ではなく、

 

 スーツを着ていること以外にデミウルゴスとの共通点が見いだせなくなるくらいに、ラスト達の助言をもとにして徹底的に異なるイメージになるように姿を変えての登場だった。

『将来、ナザリックが表舞台に出てきたときに『魔王ヤルダバオト』と同じ見た目じゃ色々と不都合出るでしょ』という、至極当たり前な理由で。

 

 

 

 




都合により明日投稿お休みさせていただきます。

次は明後日になります。よろしくです。
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