オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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明けましておめでとうございます。
今年も拙作をどうぞよろしくお願いいたします。


蝶の羽ばたき(バタフライエフェクト)、Plus Ultra!!(※オーバーロードです)

 

 

「さて……忙しい所を呼びつけて悪かったな、アルベド、デミウルゴス」

 

 ナザリック地下大墳墓。

 その執務室にて。

 

「とんでもございません。アインズ様、我ら下僕一同、アインズ様のご用命とあらば、いついかなる時でも即座に駆け付けるのは当然のこと……どうぞ、なんなりとお申し付けください」

 

 略礼ということで、膝はつかずに頭を下げるのみにとどめてそう口にしたアルベド。その横で、デミウルゴスも『そのとおり』とでも言うように、頭を下げて控えていた。

 

 アインズは『うむ』と一言呟くように言うと、卓上に広げている地図に目を落とす。

 

 一般に使われている質の悪い地図ではない。ラストから提供された、この400年間で頻繁に更新・修正が繰り返されている、縮尺も含めてかなり信頼のおける地図だ。

 続くようにアルベドとデミウルゴスも地図に目を落としたところで、話し始めた。

 

「先日、わが友ラストと今後のことについて軽く話してな。それについては特に互いに確認するだけにとどまったゆえ、目立った変更などはないのだが……その際、誤解などから不要な衝突などが起こることのないように、彼女の影響下の勢力……特に、彼女の子供や孫達が、どこでどのように活動しているかを聞いて確認した」

 

 そこでアインズは、地図を指さしながらデミウルゴスの方に視線をやる。

 

「アルベドの仕事は主にナザリックの管理運営ゆえ、関わる機会はあまりないだろうが、デミウルゴスには外での活動の指揮を任せることも多い。ゆえに、これから説明する配置を頭に入れておくように。間違ってラストのところの勢力とぶつかってしまうようなことがあっては、互いに無駄な労力を使うことになるからな」

 

「はっ、かしこまりましたアインズ様。一言一句逃さず記憶いたします」

 

(いやそこまでしなくていいって、場所と中身だけ大まかにでいいって)

 

「う、うむ……。では、まずは……今回一仕事終えたばかりではあるが、リ・エスティーゼ王国についてだ」

 

 白骨の指が差し示す先には、つい先日までデミウルゴスも赴いて『ゲゲル』の指揮を執っていた、リ・エスティーゼ王国……その王都が描き記されている。

 

「知っての通り、王国においては表向きの顔として、私は『冒険者モモン』と、そのチーム『漆黒』として活動している。その階級は、最高位であるアダマンタイト級だが、王国には他にも3つ、計4つのアダマンタイト級チームが存在する」

 

「存じております。今回、恐れ多くもアインズ様と戦線を共にする栄誉を賜った『蒼の薔薇』と、今回の騒動には関わってこなかった『朱の雫』。そして……」

 

「残る1つは、同じく今回は関わってこなかった『白の猟団』。このチームが、ラストの子供達や孫達からなるチームだそうだ。今回の『ゲゲル』に関わってこなかったのは、我々の邪魔にならないようラストが指示したというのもあるが、同時に……彼らはもともと、貴族などの権威権力になびかない、無頼ないし風来坊的な集団として知られているためでもあるらしい」

 

「なるほど……貴族達の愚劣さも相まって、民衆には人気が出そうな要素ですね」

 

「彼らは拠点を定めておらず、依頼に応じて王国内を渡り歩いているそうだが……もしかしたら今後、冒険者として協力することもあるかもしれん。機を見て顔合わせくらいはしておいてもいいかもしれんな」

 

 そう言ってアインズは、次に、地図の……アゼルリシア山脈やトブの大森林を挟んで反対側、バハルス帝国に指を向かわせる。

 

「帝国にもアダマンタイト級冒険者は存在する。ただ、王国よりも冒険者組合の活動はやや規模が小さいようだがな」

 

「帝国は王国と違い、専業兵士の育成に力を入れていると聞きます。その兵士が、王国において冒険者が担っているような、モンスター退治などを行っているため、必然的に活躍の場が限られるのでしょう」

 

「ああ。だが、商隊の護衛や素材の採取など、冒険者に求められる仕事自体はあるからな。帝国には、『漣八連』と『銀糸鳥』という2チームに加えて、ラストの子供達からなるチーム『深夜廻』の3チームがいる。それと、冒険者ではないが、『請負人(ワーカー)』としても1チーム所属しているらしい」

 

「『請負人(ワーカー)』……組合を通さず、直接依頼人から依頼などを受けて動く者達、でしたね。間に組合を仲介させないため、危険度の判断なども自力でやらなければならないものの、そのぶん実入りはよく……しかし時に非合法な仕事をも請け負うことがある、と」

 

「無法者として忌避されることも多い立場だと聞くが、その分自由度が高く、権威に縛られることもほとんどないという理由だそうだ。チーム名は『コラプサー』。また、帝国ではそれら以外にも、商会など他の形で所属している子供達も多いらしいが、それは追々、だな」

 

 王国よりも所属する、ないし拠点としている者達が多いのは、それだけ帝国の方を『住みやすい』『魅力的』という風に思っていることの表れだろうと、声には出さないものの、アインズ達3人は悟っていた。

 

 王国が今後、膿を出しきって立ち直り、魅力的になって行けるかどうかは……ザナック王子とラナー王女の頑張りにかかっているだろう。

 ラナー王女としては、少し前までは『もうこの国はどうしようもない』と切り捨てることも考えていたのだが、ここに来て立ち直れる目が出てきた。愛しい子犬(クライム)との幸せな未来のためにも、これから彼女の戦いは本格的に始まっていくのだろう。……もっとも彼女自身は、その『幸せ』自体は特段、まっとうなものでなくとも構わないと考えていそうだが。

 

 その次にアインズが指さしたのは、

 

「次だが……スレイン法国には、彼女の子供達はいないそうだ。国に広まっている教えがそもそも彼女達と相容れないのはもちろん、プレイヤーの影がちらつく国にはいたくないからだろう。一方で、聖王国だが……ここにも冒険者として2チーム、『天空の花嫁』と『星空の守り人』という名前で所属しているそうだ」

 

『花嫁』と聞いてアルベドが一瞬ぴくっと反応した気がしたが、すぐ隣のデミウルゴスは見なかったことにした。

 アルベドから熱い視線が送られてきている気がしたが、アインズは気づかないふりをした。

 

 すると、デミウルゴスが一拍置いて何かに気づいたように、

 

「アインズ様、その2チームのいずれか、あるいは両方について……ひょっとすると、私の部下が既に接触してしまっているかもしれません」

 

「む? それはどういうことだ、デミウルゴス」

 

「はい。実は私の方で一時期、その聖王国方面……『アベリオン丘陵』のあたりに『牧場』を作ることを計画していたのですが、その場所の選定と周辺調査の際、飛ばしていた眷属達の一部が倒されてしまったことがありました」

 

「……ああ、うむ。そういった報告が前にあったな……そうか、その時に遭遇したのがこのチームである可能性はあるな」

 

 転移してきて間もない頃の話だが、各地の偵察も兼ねてあちこちに手を伸ばしていたデミウルゴスは……予想以上にこの世界の者達のレベルが低いと思っていた中で、唯一、調査に行かせた眷属が返り討ちにされ、情報を持ち帰れなかったケースがあった。

 それが、『アベリオン丘陵』。今話題に上がった『ローブル聖王国』の方角にある丘陵地帯だ。

 

 自分達に害をなしうる未知の勢力がいるかもしれないということで、アインズに報告を上げた後、慎重に調べていたのだが……

 

「ああ……可能性は高いな。ラストによると、その2チームは、聖王国及び周辺地域のかなり広い範囲で活動しているそうなのだ。聖王国は数多くある亜人の集落による攻撃が頻繁に起こっているそうでな……冒険者はその対応に出ることも多いそうだ。アベリオン丘陵も活動範囲内だとすれば……ふむ、後で確認しておこう」

 

「お願いいたします。もしそれでラストにゃんにゃん様がお気を悪くされていたようであれば、私の方からお詫びを……」

 

「いや、それは大丈夫だろう。向こうに何かしら被害が出たわけでもないだろうしな。もし何かがあったとしても、その時は私が話をつける。心配はいらん」

 

 ちなみに、もしここでデミウルゴスの眷属達が、ラストの子供達によって撃退されていなかった場合、そこに、世にもおぞましい『牧場』が建設・運営されていた可能性が高かった。

 

 しかし、デミウルゴスが外部への施設等の展開に慎重になったことに加え、早い段階でラストと物資関係の協力協定を結ぶことができ、上質な『巻物(スクロール)』素材の入手にもめどが立ったことで、計画そのものが立ち消えとなっていた。

 アベリオン丘陵に住む罪もない民達(亜人含む)は、人知れず悪魔の手から救われていた。

 

 ただ、『牧場』自体は別な場所で、やや規模を縮小した上、犯罪者やナザリックへの敵対者のみを収容して稼働しているのだが。

 

 さて、と仕切り直すようにアインズは、今度はまた別な場所を指さした。

 

「次だが……外敵による襲撃という意味では、ここは聖王国以上に過酷な場所だな。お前達も知っているだろうが……」

 

「竜王国、ですね」

 

 地図の右下にあるその国については、アルベドもデミウルゴスも知識として知っていた。今なお国境を越えてくる襲撃者たち……『ビーストマン』の脅威にさらされている国であると。

 

「ここには既存の冒険者としては『クリスタル・ティア』というアダマンタイト級チームがいるらしい。ビーストマンと戦う国家防衛にも参加しているとのことだ。そして、ラストの子供達については……周辺国でも最多となる3チームが所属しているらしいが、このうちの1チーム……というより、この『竜王国』における所属については、他とは少し勝手が違うそうだ」

 

「勝手が違う……というのは?」

 

「竜王国の国家元首である女王『ドラウディロン・オーリウクルス』は、見た目は幼い子供だが、その実年齢は外見よりもずっと上だそうでな……それゆえに、今よりずっと前から王座について、国内の変遷を見守ってきたらしい」

 

 付け加えて言えば、その『幼い子供』の姿は、士気高揚にはこの方がウケがいいからという理由でわざとその姿になっているにすぎず、本来の姿は妙齢の美女であるらしい。

 それに合わせて、前線の指揮官たちに送る激励の書状などは、幼い少女が懸命に応援しているような内容になっているのだが……そういう恥ずかしい内容の手紙を書くことも含めて、女王自身にとっては不本意であるらしい。恥ずかしいから。

 

 それでもそのような姿を取って、色々と涙ぐましい芝居までして戦意高揚の手助けをしているのは、ひとえに女王として国を守ることへの強い責任感の現れであるのだが。

 

 なお、どこぞの皇帝からは『若作り婆』などと揶揄されているらしい。不憫。

 

「ラストの子供達のチームの1つ『モンスターズ』は……全員が長命種の亜人、あるいは異形種によって構成されているチームでな。文字通りドラウディロン女王との付き合いが『長い』ゆえに、色々と腹を割って話す間柄なのだそうだ。もっとも、母親であるラストや『空中庭園』のことなどまではさすがに話していないそうだが……それでも、他と比べて相当に大きなパイプになっているようだ。ラスト曰く、今後どう転ぶか……場合によっては、『身内』判定して助けに介入することも検討しているらしいが……色々と懸念事項があって、保留にしているそうだ」

 

「懸念……かの国の建国の竜のことですね」

 

「たしか、『七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)』……現女王は、その竜王の血を引いているという話だったかと。そして、かつてこの世界の覇者だった『竜王』の多くは、八欲王との戦いが主な原因で、プレイヤーを嫌悪している」

 

「うむ。噂に聞いた限りでは、その竜王は……居場所はわからんが、今も存命らしい。今後、ラストや我々に対して、どのような態度で接して来るか次第だが……場合によっては、女王にはつらい決断をしてもらわねばならんかもしれんな」

 

 そう語るアインズに加えて、ラストも同様に、子供達と旧知の仲である女王とはできれば仲違いしたくはない、協力していけたらいいと思っている。

 その先祖である竜王がどう出るかによっては、それも難しくなってしまうのだが……。

 

 もちろん、アルベドやデミウルゴスは……心優しい御方が、その心を痛めていることは察しつつも……万が一にもアインズに敵意が向けられたり危害が及ぶようなことになれば、全力をもって敵となった竜王を排除することに迷いはない。それは、他の守護者達も同様だろう。

 せいぜい、そうならないでほしい、ぜひとも竜王には『賢く』あってほしい、と願うばかりだった。

 

 最善としては、ラストが『身内』判定した上で、その力でもって竜王国を救済し、『七彩の竜王』とも敵対することなく、和解して共に歩んでいければ文句はないのだろうが……果たして。

 

「さて、竜王国の3チームのうち、残りの2チームだが……そのうちの1つである『ロトの紋章』は、活動こそ竜王国ではあるものの、結成及び普段の拠点は『アレフガルド都市国家連合』であるらしい。そして、もう1つだが……」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 場所は、『竜王国』。国境付近。

 

 その、国境警備にあたっている者達が、今まさに……ビーストマン達の襲撃から、決死の思いで国を、後ろにいる民達を守っていた。

 

 ビーストマンは、生まれながらに人間の10倍の力を持つと言われる。

 腕の立つ者ならまだしも、非力な人類では、とても1対1では戦える相手ではない。そんな奴らが大挙して襲ってくるのだから、脅威度は推して知るべし。

 

 そんな恐ろしい襲撃から、それでも国を守るため、兵士達は命を懸けて戦っていた。

 

 しかし、このところ連日のように続いている襲撃に、徐々に兵士達の体力も、戦うための物資や備蓄も限界に近づいてきていた。

 

(このままでは突破される……! どうすれば……!)

 

 死ぬことはもちろん怖い。

 ビーストマンは、人間を食料としてしか見ていない。この国についても、食料が勝手に増える餌場程度にしか見ていない。

 捕まってしまえば、頭から足まで全て、貪り食われて腹に収まる未来が待っている。

 

 だがそれ以上に、敬愛する女王が治めるこの国が、何の罪もない民達が、獣共の牙にかかってしまうことが我慢ならなかった。

 

 まだ幼い身でありながら、自分達や民達のために心を痛め、つたない文ではあるが懸命に描いたのであろう手紙で自分達を慰撫してくれる女王陛下に、これ以上涙を流させてはならない。彼女もまた、自分達が守りたいと思っているか弱い子供達の1人なのだから……!(なお実年齢)

 

 しかし、現実は無情である。

 今まさに目の前で、防衛線のバリケードが破壊され、獣達が砦になだれ込んできたのを、その目で見てしまった。

 

(これまでか……っ!)

 

 ならばせめて一匹でも多く、この国に入り込まんとする獣達を討ち取って減らしてみせる、と、兵士が悲壮な覚悟を決めた…………その時。

 

 

 

 突風が駆け抜け……眼前にまで迫っていた獣達を、まとめて吹き飛ばした。

 

 

 

 下手な鎧よりも強靭な肉体を持ち、個体によっては剣や槍すら通さず阻んでしまう、ビーストマンの肉体が……たった一発の攻撃で粉々に粉砕され、爆風に乗って飛んでいった。まだ遠くにいた者達まで、まとめて吹き飛ばされ、踏みとどまることすらできなかった。

 

 そしてその『一撃』は……恐ろしいことに、魔法などによってもたらされたものではない。

 今の暴風は、ひとかけらの魔力すら乗っていない。

 

 呆気にとられる兵達の前に降り立ったのは……身長2mを優に超える、筋骨隆々……などという言葉では語りつくせないような、山のような筋肉に覆われた、1人の巨漢。

 

 今繰り出したのは、1発の拳。

 たったそれだけで、何十体というビーストマンが文字通り吹き飛ばされていった。

 

 ぴったりと体に密着する装束だからこそ余計にわかる、その背中の力強さ。

 後ろ姿を見ていた兵士達に向けて、ゆっくりとその男は振り向いて……きらりと白い歯の光る笑顔を見せて、はっきりと力強く、言い放った。

 

 

 

「もう大丈夫! なぜって……? 私が来た!!

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

「冒険者チーム『ワンフォーオール』。……実態としては、そのリーダーである1人のワンマンステージ状態になることがほとんどで、なんとも癖の強い者達だそうだが……そのリーダーの男が100レベルに到達しており、毎回凄まじい強さでビーストマンを蹴散らして兵士達を救うことから、竜王国では英雄視されているそうだ。かの国の者達にとっては、彼こそが救国の『英雄(ヒーロー)』として知られているのだろう。ただ、そのリーダーの存在感が強すぎて、油断するとチームメイト達の影が薄くなって、チームで動いているという事実もろとも忘れられそうらしいがな」

 

「なるほど……しかし、随分と詳しくお聞きになったのですね」

 

「…………うむ」

 

(特に何を狙ってたわけでもないのに、ツッコミどころ満載の育ち方したー、ってめっちゃ面白そうに、楽しそうに語ってたからなあ、ラストさん。……そうでなくても、100レベルに達した者に関する話だし、そりゃ印象強くて覚えてるさ。……それ以外の部分の印象も十分強いけど)

 

 竜王国が現在、ビーストマン達の侵攻を止めて民達を守っていられるのは、率直に言って、国軍だけの力ではない。

 軍とともに戦い、時には占領されて敵地になってしまった町や村まで乗り込んで討滅に動いてくれる、冒険者達の働きが非常に大きい。

 

 特に、『ワンフォーオール』と『モンスターズ』、続く形で『クリスタル・ティア』の働きが大きい。

『ワンフォーオール』はともかくとして……残りの2チームは、それぞれちょっとした思惑があって戦いに参加しているという事情があったりするが。

 

『ロトの紋章』については、4人いるメンバーはどれも精強な戦士や魔法詠唱者であるものの、そこまで頻繁に戦場には出られないため、他のチームに戦功では一歩譲っていた。

 

 もしも彼らのような冒険者達がいなければ……単独で国防を担える軍事力を持たない竜王国は、何らかの手段で周辺国家の……隣接する法国か帝国、あるいは都市国家連合の手を借りて侵略から身を守ることになっていただろう。

 こことは違う、別な歴史ないし時間軸では、そうしていたように。

 

 そしてアインズは、地図の右上……『都市国家連合』と書かれた場所を指さした。

 

「竜王国についてはこのあたりでよかろう。最後に……ここ、『アレフガルド都市国家連合』についてだが……デミウルゴス、お前の調査は、ここにはまだ及んでいないのだったな?」

 

「はい。ナザリックからは距離がある上、間に大小の国家を複数挟んでおりますので。『連合』ゆえに調査対象が多いこともあり、調査するとすれば、手近なトラブルを全て片付けてから腰を据えて行うが上策かと思っておりました」

 

「そうか。ならデミウルゴスよ、この国家群については、調査は最低限でよい。ここは過去に色々とあって、12ある都市国家の過半数にラストの息がかかっており、実質的に我々の味方と言っていい状態だそうだからな。特に、そのうち4つの国家……『ラダトーム』『ローレシア』『サマルトリア』『ムーンブルク』は、彼女の子孫によって統治されているそうだ」

 

「なんと、そのような状況だったのですか……! 400年の時間があったとはいえ、さすがはラストにゃんにゃん様ですね」

 

「うむ。『アレフガルド都市国家連合』については、警戒はほぼほぼ必要ないと言っていい。そして今後、我らナザリックが『世界征服』のために大陸各地に手を伸ばす際は、協力してくれるそうだ。ああもちろんその際は、恩を仇で返すような扱いをすることはまかりならんぞ?」

 

「存じております。お2人方の友情に泥を塗るような真似は決していたしません」

 

 深く頭を下げたアルベドとデミウルゴスに、『うむ』と満足したようにアインズは言うと……地図について一通り話し終えたのだろう、執務机の椅子に座り直した。

 

「彼女の子孫らの展開具合については、こんなところだな……以後、これを念頭に置いて各地への展開を進めよ。してデミウルゴス、次にどう動く予定であるなどの展望はあるか?」

 

「はい、アインズ様。王国の件がひと段落着きましたので、ひとまずかの国では、予定通り内政に力を入れさせつつ、残っている貴族達の活用法について模索していこうかと。ですので、次はそれ以外の国で、内情を確認の後、我らナザリックの威を見せる方策を探っております。まだ先になりそうではありますが……差し当たって候補としては、次は、帝国か、聖王国あたりかと」

 

「ふむ、そうか……」

 

 それを聞いて、地図に目を落とすアインズ。

 

 王国とは敵対関係にあり、トブの大森林とアゼルリシア山脈を挟んで位置している帝国。

 毎年収穫の時期になると戦争を仕掛けてくるせいで、そのたびに働き手が減り、国力が失われていく原因だったが……果たして今年はどう出るか。もしその動向が、王国を支配するというナザリックの意向を妨げるものなら……何かしら『対処』する必要が出てくるかもしれない。

 

 大陸の西端に位置し、海に面している聖王国。

 人類種に敵対的な亜人の多く住む土地と国境を接しており、防衛のために戦っている。そのせいで、法国と同様に人間以外の種族に対して排他的な風潮がある。それを鑑みれば、ナザリックはもちろん、空中庭園とも友好的に付き合うのは難しそうな国だと言えた。現時点では、だが。

 

 そして、その2国以外の場所にも目を向ける。

 

(エルフ王国、ダークエルフ国、ダークドワーフ国……まだ色々あるな。それに、蜥蜴人(リザードマン)の集落のように、この地図にないけど面白い奴らが住んでいる場所だって色々ありそうだし……そもそもトブの大森林だってまだまだ探索する場所残ってるんだよな。方策が決まるまで時間があるなら、そのへん探って、文字通りの『冒険』をしてみてもいいかもしれない)

 

 それなりに忙しかった王都の動乱。それが終わったということで、アインズとしても半ば休暇のような心持になっていたため……これから何をするか、少し楽しみにして考えていることに、彼自身、まだ気づいていなかった。

 

 

 

 

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