オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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人事異動の内々示の予定にかかる雇用主間協議

 

 

【異世界転移400年目 ×日目】

 

 どうやら、マーレの初恋(と、性の目覚め)について気づいていた+懸念していたのは、私だけじゃなかったらしい。

 

『謎の光混浴』から一夜明けた今日、朝早くから、アインズさんと話をした。

伝言(メッセージ)』ではなく、直接会って顔を合わせて話した。私の方がナザリックに転移して、アインズさんの執務室で。

 

 どんな用事だったのかというと、『今度、マーレとシャルティアを『空中庭園』への使節の固定のメンバーとして任命したい』とのこと。

 今までは、デミウルゴスだったりアルベドだったり、その時その時で毎回違うメンバーが来てたけど、今後は、特に用事がある場合なんかを除き、基本的にマーレとシャルティアがいつも来ますよ、という人事の連絡だった。

 

 発案は、デミウルゴスとアルベドの2人。

 どちらもナザリックでも有数の知恵者だが、何を考えてこの人事をアインズさんに提案したのかと言うと……理由は、大きく3つ。

 

 1つ目。ナザリックと空中庭園の間で、アイテムや金貨のやり取り以外で主にやっているのは、『技術交流』だ。アイテムの作り方とか、素材として有用な動植物その他の栽培・育成法とか。

 

 ざっくり言ってしまえば『ものづくり』の分野なわけだが……この分野において理解ないし造詣が深く、使節として適任なのは、『煉獄の造物主』の名で知られるデミウルゴスである。しかし、彼は今で既に多くのタスクが振られているので、これ以上むやみに増やすのは好ましくない。

 命令されれば喜んでやるだろうけど、アインズさん自身そう思ってるそうなので。

 

 なので、次点としてマーレに白羽の矢が立ったわけだ。『森司祭(ドルイド)』の能力その他を収めているマーレは、調薬・調合に、素材となる薬草の採取・栽培もできるし、それらに関する知識も割と豊富に持っている。

 なので、より効率的に『技術交流』を行うため+現状の仕事の割り振り上の余裕を鑑みて、マーレが適任であると。

 

 ……ちなみに、アイテム関連ということを鑑みれば、マーレどころかデミウルゴス以上に適任な、パンドラズ・アクターという鬼札がいるのだが、これに関しては、時々アインズさん=モモンの影武者をさせているから体を開けておきたいというのに加えて、そのアインズさんが彼を外に出すことに非ッ常~に難色を示すので……没になったそうな。

 

 理由2つ目。今度はシャルティアの方。

 

 知っての通り、シャルティアはちょっと前に、何者かに洗脳されてアインズと敵対してしまうという大失態(注:守護者基準)をやらかしてしまっており……つい最近まで、バーで酒浸りになって落ち込む毎日を送っていたそうだ。

 なお、そのバーのマスター(ナザリックの副料理長)は迷惑そうだったらしい。

 

 てか、やけ酒したところで、アンデッドってアルコールで酔っぱらえないはずなんだけどな……気分だけでもってことなのかな。

 あるいは……『酒! 飲まずにはいられないッ!』っていう偉大な先達もいることだし、吸血鬼って何かあった時酒に逃げがちなのか……。

 

 今は割とマシになったとのことだけど、心の中ではまだ色々と抱えているようだ……というのを、同じアインズさんを愛する女として、よく彼女のことを見ているアルベドが言ってたそうだ。

 さらには、アルベドだけじゃなく、アウラとかもそう言ってたらしい。……なんだかんだでちゃんと仲間のことを見てあげてるんだな、この子ら。

 

 だったら何かしら仕事をしていた方が気もまぎれるだろうってことで、常設の仕事がちょうどあるからシャルティアに任せるか、ってことで推薦したそうだ。

 今後間違いなく、ナザリックにとって大いに役立てる、貢献度が高い仕事だろうから、失態を取り戻す意味でも励みになるんじゃないか、って。

 

 ただ単に『許す』って言われるだけより、きちんと罰を受けたり、失態を取り戻す道筋を示された方が――それがいばらの道であっても――気分的には楽になるもんだしね。

 

 そして最後、3つ目の理由なんだけど……これについては、アインズさん、めっちゃ言いづらそうにしていた。それでも、頑張って話してくれた。

 

 そもそも今日、こうして『直接会って』私と話したことの主な理由が、この3つ目である。

 単に『これから使節団の固定メンバー、マーレとシャルティアになります』ってだけの連絡なら、別に顔合わせてじゃなくても『伝言(メッセージ)』でも十分だろうし、なんならそのマーレ達の口から、次に来た時にでも伝えればそれでもいい程度の話だし。

 

 それをこうして直接会って話したのは……きちんと自分の口から、私に対して相談、ないし頼むべきだとアインズさんが思ったからなんだって。

 当初はアインズさんの方がこっちに出向くつもりだったらしいんだけど、私の方が身軽に動けるからってことでこっちが出向いたんだよ。

 

 その、3つ目の理由だが……昨日まさに私が色々考えていた、マーレについてだったのだ。

 

 明らかに私に対して、仕事上の付き合い、『自分の支配者の友人』以上の感情を抱いているマーレについて、今後どうするか、どうしてもらうか、という話。

 しかもこの話、アルベドとデミウルゴスから連名で持ち込まれたらしい。ナザリックの頭脳2人が真面目に検討するレベルの議題だったそうな。

 

 2人がいつどうやって気づいたのかはわかんないけど、マーレが私に対して『興味津々』であることについては、アルベドもデミウルゴスも気づいていた。

 それを踏まえて……単刀直入な話、前々から課題になっていた、『私の相手役』を、マーレに決めてしまうのがいいんじゃないか、という提案だった。

 

 私とナザリックの守護者のいずれかの間に、必要な『職業(クラス)』とスキルを受け継いだ子供を作る。そしてその子供を、第9階層の『階層守護者』に任命することで、アインズさんがナザリックでも飲食や睡眠を楽しめるようにする……という話が、以前に(一応)まとまっていた。

 けど、その相手役……つまりは、私を妊娠させる父親役を誰にするのかは決まってなかった。

 

 そこに、マーレが私に対して特別な感情を抱いていることが明らかになった。

 それが単なる劣情か、あるいは恋心なのかはわからないけど……いずれにせよ、本人がヤる気があるなら、任せてしまうのが一番いいだろう、ってことになったらしい。

 

 それに、子供を作って職業(クラス)やスキルを受け継がせることを考えた場合、私と一番相性がいいのは実際マーレだ。

 

 例えば、これがセバスやコキュートスだった場合……彼らが持っているスキルは、戦士系ビルド用のスキルなので、私の魔法詠唱者(マジックキャスター)系ビルドとは相性が悪い。

 どのスキルが遺伝するか、どんな才能を持って生まれてくるかは私でも指定できないので、戦士系なのに魔力が高いとか、魔法使い系なのに攻撃力が高いとか、コレジャナイ感のあるちぐはぐな構成になってしまう可能性もある。

 最悪、スキルを持ってるのにそれを活用する攻撃手段がない、というような、いわゆる『死にスキル』ができてしまう可能性だってある。

 

 その点マーレは、私と同じく魔法詠唱者だし、相性のいいスキルもいくつも持ってる。

 どちらのどのスキルが子供に受け継がれても、生かせないということはほぼないはずだし、生まれたこと後の子供に対する、スキルや戦い方の指導もしやすくなるはずだ。

 

 まあ、別に私いつも子供作る時にそんなこと気にしないんだけど――戦士系ビルドのNPCともじゃんじゃん子供作って産んでるし――言われてみればそれもそうだな、と思った。

 

 そんな感じで、マーレと私をくっつけることについて、本人の感情のみならず、理屈の上でもメリットが多大にあるということで……マーレには、空中庭園に訪問する使節の任を固定で担いつつ、私を妊娠させて子供を産ませる役目を与えるべきだ、ということになったらしい。

 

 さっき言った通り、私の子供に遺伝するスキルは、ランダムだ。

 一応法則性みたいなのはいくつかあるにはあるが、父親が強いほど、強力かつレアなスキルが遺伝しやすくなる、というくらい。結局、数撃ちゃ当たる方式で狙っていく以外に方法はない。

 どんどん孕ませて、どんどん産ませて、早く『万魔の母(エキドナ)』を受け継いだ子供が誕生するのを待つしかない。

 

 だったらいくらでも取り掛かりは早い方がいいってことで、昨日の夜進言があったらしくて……それで朝っぱらからアインズさんが、『守護者達がすごいやる気で……』『マーレも本当にそう思ってるなら、きちんと考えてあげたいし……』と、すごく言いづらそうに相談してきた、というわけである。

 

 ただアインズさん曰く、一応、最終決定はまだで、この後、ナザリックに戻ってきたマーレに直々に話を聞いて決めるつもりだとか。

 場合によっては、本当に私に『マーレをよろしくお願い』することになるかもしれないので、あらかじめ話をしておこうと思って……とのことだ。

 

 今言った通り、アインズさん、頼む内容が内容なので、ものすごく言いづらそうで、申し訳なさそうだったんだけど……これも前から言ってる通り、私は全然OKである。

 なので、アインズさんのしゅんとした雰囲気を吹き飛ばすつもりで、全然何でもないことだとわかるように『任せなさい!』って胸を叩いて言い切っておいた。

 

 なんだったら、必要な知識や技術その他諸々の性教育まで全部任せてもらっていいですよ、と(本気)。

 

 それを見てアインズさん、いくらかほっとしたようだったけど……同時になんか呆れてもいたようだった。

 小さい声で『大丈夫かな……』とか言ってるのが聞こえた。何でだ。

 

 

 

 そんなわけで、見通しとして近々、マーレを任されることになったわけだが……実はこの後、もう1人、マーレについて私に相談してきた者がいた。

 

 シャルティアである。

 

 朝食後、『話したいことがあるので時間を取ってほしい』って言われたので、私の部屋にシャルティアを呼んだ。

 そこで、いつになく真剣な表情で彼女が切り出した話が、マーレのことだったのだ。

 

 曰く、

 

「ご存知かと思いますが、マーレはラストにゃんにゃん様に心奪われている様子」

 

「しかし、おちび……アウラと同じかそれ以上にまだガキんちょゆえ、自らの心の動きとうまく向き合えないでいるのでありんしょう」

 

「それでも、いずれは自分の胸のうちにあるその思いの正体に気づくはず。もしその時、ラストにゃんにゃん様がそれをご不快に思わないのであれば……あの子の思いのひとかけらでも、受け入れてあげてほしいでありんす」

 

 普段のヒドインっぷりが鳴りを潜めた、恋愛強者かつ年上のお姉さんっぽい余裕とか落ち着き、威厳すら感じられる態度のシャルティアがそこにいた。

 

 そういや、前にマーレから聞いたことあるな。

 シャルティアとアウラは、それぞれの創造主であるペロロンさんと茶釜さんから『そうあれ』と作られているせいで、仲が悪い。しょっちゅう悪口を言い合って、喧嘩している。

 けど、別にお互いを嫌い合ってるわけではないし、なんだったら他のNPC達よりもお互いに関する理解度は高い。

 

 要するに、素直になれない友達とか姉妹みたいな感じで……心の底ではお互いを大切に思っているのだ。

 ……当たり前と言えば当たり前だ。ペロロンさんと茶釜さんの子供達だぞ? 本気で嫌い合ってて仲が悪いはずないじゃんね。

 その創造主同士が、凸凹な感じではあれど……なんだかんだ仲よかったんだから。

 

 そして、アウラと同じように……マーレのことも大事に思ってるんだろう。

 心の中の一部分だけではあるけど、子供から大人になろうとしているマーレを、『しかたないなあ』って感じでちょっとだけ後押ししてあげようと思った、ってところかな。今のシャルティアは。

 

 薄く笑みを浮かべているけれど、目は真剣そのもの。

 そんなシャルティアに、もちろん私も真面目に答えてあげたよ。アインズさんにもそうしたように……マーレが本当に求めてくるんであれば、ちゃんと受け止める、って。

 

 それと一緒に、『マーレのためにこんな風に改まって話してくれるなんて、優しいね』ってシャルティアを誉めてあげたら、ちょっと照れくさそうに眼をそらして、

 

「べ、別に……ただ、この手のことではマーレもその姉も、てんで要領がいいとは言えんせんので……ちょっと世話を焼いてやろうと思っただけでありんす。全く、姉弟揃ってお子ちゃまなもので……毎度振り回される方としては敵いんせん」

 

 このシャルティア、ペロロンチーノさんに見せたかったなあ……ツンデレ風味の反応が超かわいい。多分あの人なら、転げまわって喜んでたと思う。

 

 だがしかし、残念ながら……『きれいなシャルティア』が見れたのはここまでだった。

 

 マーレについての相談がひと段落着いたかと思うと、シャルティアは今まで我慢していたかのように、急にずいっと前に出て来て、

 

「それでラストにゃんにゃん様、もう1つお願いが!」

 

「え、何? アインズさんへのアピールその他ならダメだよ? 自力で頑張りなさい」

 

「それは重々承知していんす! そうでなくて……もしマーレのことを受け入れるとするならば、ラストにゃんにゃん様がマーレを、ベッドの上で『男』にしてやることになりんすよね!?」

 

「それは……まあ、うん、そうだと思うけど」

 

「ならぜひ、その場面に私も立ち会わせてくんなまし! いえ、立ち合いじゃなくても陰から隠れて見させていただければ! お風呂で拝見した、ラストにゃんにゃん様の珠玉の肉体! それをもってあのマーレが、文字通り一皮むけて男になる瞬間なんて……是が非でもこの目に焼き付けたいでありんす! どうか! 何卒!」

 

 ……まあ、これはこれで彼女らしいと思って安心したけども。

 

 え、それで結局許可したのかって? ……まあ、それは……ひとまず秘密ということで。

 

 その時が来たら、ね。

 

 

 

 午後になって、予定通りマーレ達はナザリックに帰って行った。

 

 この後、アインズさんがマーレと面談を行った上で、彼とシャルティアを、今後『空中庭園』への使節団を固定で任せる旨の人事異動を行うことになるだろう。

 そして、面談の結果次第で……私の『相手役』もね。

 

 結果が出たら、アインズさんから『伝言(メッセージ)』で知らせてもらえることになっている。まあ、ほぼほぼ内定出てるようなもんだとは思うけど。

 こちらもデミア達に話とおしておかないといけないな。

 

 

 

【追記】

 

 やっべ。マーレを『受け入れる』にあたって、大事なことを1つ忘れてた。

 

 いや、受け入れることや、子供を産むことに関しては、アインズさんにも話した通り、全然何も問題ないんだけど……こっちから向こうに、特にマーレに伝えなきゃいけないことを忘れてた。

 あらかじめ了承、ないし『覚悟』してもらわなきゃいけないことを。

 

 何も単純なこっちゃない。ただ1つだけ。

 

 

 

 私は、マーレだけ(・・)のものにはならない。

 

 

 

 今までもそうだったように、これからも私は、色んな相手とセックスして、色んな相手の子供を産んでいく。それが好きだから。楽しいから。

 マーレの子ももちろん産むけど、他の子も、この先もずっと産んでいく。

 

 これまでに7000人以上作った子供達と同じように。

 楽しくて、気持ちいいことをして、家族を増やしていく。

 

 だから、マーレだけのものにはなれない。ならない。

 それを、マーレにもきちんと理解して、覚悟してもらわなきゃいけない。

 

 すなわち、『エッチはするし子供も産むけど、後日NTR前提ね』ってことだ(言い方ァ!)

 

 もしマーレが、あくまで私の『相手』を、守護者としての仕事として請け負うのなら、あるいは、そこまで独占的な欲求は持っていないのなら……これはただ単に私の取り越し苦労、ないしは、自意識過剰ってだけだろう。ちょっと恥ずかしいなそれ。

 

 けどもし、マーレが私のことをきちんと好きで……『自分だけのものにしたい』『他の誰にも渡したくない』とか思ってくれてるようなら……嬉しいとは思うけど、それには応えられない。

 

 そのことを、アインズさんにはきちんとマーレに話しておいてもらって……その上で、私の『相手役』になるかどうか、決めてもらわなきゃね。

 

 

 

【追記2】

 

 アインズさんに上記のことを相談したら……『伝言(メッセージ)』の向こうで頭を抱えてるんであろう気配が、見てなくても伝わってきた。

 

 ああ、うん、そうだわ……マーレも大変だけど、コレ伝えてもらうアインズさんはもっと大変だわ。

 

『なんてことを伝えなきゃいけないんだ……マーレみたいな子供に、そんな、アブノーマルな……!』って、絞り出すような声で呟いてた。

 多分無意識。私に聞こえてるってわかってたかどうか。

 

 ……憔悴した声で、『もうちょっと心の準備が整ってから話していいですか……?』って聞いてきたので、急がなくていいからゆっくりどうぞ、って言っておいた。

 私は何も困らんしね。大変なのはアインズさんだから、うん、それでいいから……がんばってくれ、ナザリック最高支配者。

 

 

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