今から100年ちょっと前のことだ。
風の噂で……じゃなくて、最近『城下町』に保護して住まわせていたエルフ達からの情報で、頭も下半身もバカなせいで友好国だったはずの法国に喧嘩を売って戦争をおっぱじめたとんでもない王がいる、という話を聞いた。
聞いた当時は『バカじゃねーの』と思って呆れたもんだけど、そのエルフ王とやら、強さは本物らしい。国中の誰も勝てないどころか、エルフ王国の軍がまとめてかかっても多分一蹴されるというほどに強いんだそうだ。
しかも、どうやらそのエルフ王、父親がさらに強かったとか……彼しか入れない宝物庫の中には、とてつもなく貴重で強力な秘宝がいくつも収められているとか聞く。
それらの話を聞いて……正直、ちょっと興味がわいた。
丁度その頃、やることもなくて割と暇してたこともあって……久しぶりに遠出して『火遊び』でもするか、って思ったんだよね。
それから数日後。
エルフ王国とスレイン法国との戦いの中で……人間の傭兵の女戦士と女魔法詠唱者が、エルフの軍に捕虜として捕まった。
スレイン法国は、エルフ王国との戦争において、自国の軍隊だけではなく、義勇兵や傭兵なども活用して戦っている。捕虜になった2人組は、そうして戦争に参加していた傭兵だった。
1人は、ボブカットの黒髪と露出の多い意匠の軽鎧が特徴的な女戦士。
もう1人は、銀のロングヘアに、露出の少ない法衣のようなローブが特徴的な女魔法詠唱者。
森の中でゲリラ戦を仕掛けてくるエルフを相手に奮闘し、何人もの手練れのエルフを討ち取るという戦果を挙げたものの、その2人を危険視したエルフ達によって罠にはめられ、集中攻撃された結果、ついに捕まってしまった。
そのまま処刑されるかと思われた2人だが、そうはならなかった。
2人は拘束され、衣服を含む全ての装備を奪われた上で……エルフ王国の頂点に立つ王、デケム・ホウガンの元に連れていかれた。
彼女達を玉座の前に連行していくエルフ達からの視線は……同輩の仇だということをわかっているはずだというのに、どこか同情的で、哀れむようなそれで。
その理由は……目の前に裸で投げ出された彼女達を見て、エルフ王が発した言葉を聞いた時に、明らかになった。
「人間でありながら、戦場では無類の強さを見せつけ、わが国の兵士を何人も討ち取ったと聞いた。使えなかった愚か者のことなどどうでもいいが……それだけ強い女であれば、この王の血筋を受け取って育むことで、きっと強い子を産むことができよう」
それからおよそ数か月後。
2人の傭兵は、捕まってからずっと……エルフ王国の王城に幽閉されていた。
牢の中にいる彼女達は……まだそこまで大きくはないが、それでもはっきりとわかるほどに、その腹部が大きくなっていた。妊娠しているのは誰の目にも明らかだった。
誰の子供なのかは、最早考えるまでもない。
牢番のエルフ達から彼女達に日々向けられる視線は、あの日、エルフ王に突き出される前に、近衛のエルフ達が向けて来ていたものと同じだった。
しかし、2人がエルフ王の子を産み落とす前に……ある時2人は、忽然と牢から姿を消してしまう。
それだけでなく、何人かの牢番のエルフ達も一緒に姿を消していた。
身重の人間2人が、装備もなく、単独で逃げられるとは思えない。牢番のエルフ達が手引きをして脱走させたのだと推理され、捜索が行われたが……何日経っても、何週間経っても、女2人もエルフ達も、ついぞ見つからなかった。
期待できたかもしれない子供を見る機会を逃して苛立ったエルフ王だったが、すぐにその2人のことも忘れることにした。
また新たな捕虜を捕まえてこい。より強い子を産むことができるであろう、より強い女をな、と兵士達に命じて、何時も通りの生活に戻った。
『とまあそんな感じで、半年ほどエルフ王国で虜囚プレイやってましてね? その時に産んだ子供達が10人ほどいるんですけど、そのうち今回手伝ってもらおうと思って選んで連れてきたのが、この子ってわけなんですよ』
『なんちゅうことをやってるんですか……リアルでそんな虜囚とか……。多分ですけどペロロンチーノさんでも引きますよそれ』
『
『というか、半年間で10人ってどういうことです? 1人目の子供が生まれる前に逃げたんじゃ……ああ、もしかして』
『ええ、妊娠したら即、転移で『空中庭園』に戻って、『フーリーの花園』でさっさと産んでました。そしてまた戻ってきて、また妊娠して……って感じですね』
虜囚として捕まっている間、エルフ王は私達を犯し続けた。
種族が違うと、妊娠しづらいからだろう。結構な頻度で何回も何回も、泣いても喚いても聞かずに、徹底的に犯して、注ぎ込んで、種を植え付けた。
それを数か月繰り返して、ようやく妊娠した……と、エルフ王やその部下達は思っていただろう。
実際には今言った通り、もう何度も妊娠してて、しかしすぐに産んでたから、いつまでも種がついていないと思われていただけである。
さっき言った通りだ。種が付いたのを察知したら、すぐに転移魔法で『空中庭園』に戻る。
そして、いつもと同じように『フーリーの花園』で5~6時間ほど過ごして胎児の成長を加速させ、そのまま出産する。
その間、私がいなくなったことをばれないように、牢屋には身代わりの偽物を残しておく。
陰陽術の『式神召喚』のスキルで、自分と同じ姿の分身を作り出してね。そのまま数日くらいならもつから。
後は、出産後はゆっくり休んで回復したら、また転移で元に戻って、式神を消して虜囚に戻れば……はい、まだ妊娠していない女虜囚のできあがりだ。
こんな感じで半年ほど続けて、10人ほど産んだ。言うまでもなく全員、エルフ王の子だ。
『ところで、『女傭兵』として捕まったのって2人なんですよね? ラストさんと……もう1人は誰だったんです?』
『デミアです。研究がちょうどひと段落したから息抜きでもしようかなって言って、一緒についてきて遊んでました。彼女も5人ほど産みましたよ』
『さいですか』
なお、最後逃げ出す直前に私達のお腹が大きくなってて、エルフ王達は『ようやく孕んだか』って思ってただろうが……あれは幻術でそう見せてただけである。
何でわざわざそんなことしたのかと言うと、エルフ王に寝所に呼ばれなくなるようにだ。
エルフ王の目的は、私達を辱めることでも自分が気持ちよくなることでもなく、妊娠させることだ。種がついたなら、もう抱く必要はなくなるからね。
で、私達が妊娠したと思い込んで、エルフ王が手を出してこなくなった間に……私達は、牢番をしている男エルフ達ともヤってました。最後の1~2ヶ月ほどね。
で、彼らとの子供も何人か産みました。
その後『もういいかな』ってことで空中庭園に帰ったわけだが……その時結局、仲良くなった牢番のエルフ達も連れて来た。一緒に転移して。
今ではすっかり『城下町』になじんで、平和で穏やかな生活を送ってるよ。
『そこに暮らすエルフ達には地獄だって思われてるエルフ王国も、ラストさんにかかれば18禁のテーマパークに早変わりですか……というか、エルフ王以外の子供も産んでたんです?』
『ええ。エルフ王の子も、牢番のエルフ達の子も……みんないい子に育ってくれました。やっぱり子供がどうなるかって、親が誰かとか関係なくて、教育が大事なんだなって思いましたね』
『はあ……それはよかったですね』
あ、ちなみに今更だけど……今、アインズさん達と一緒になって、件の『エルフ王国』に向かっている最中である。エイヴァーシャー大森林の中を進んでいます。
元々ここに住んでたダークエルフ達のうちの1人と、進入してきた隠密エルフの1人に道を聞いて進んでいるところだ。
なおエルフの方は、アインズさんが『
一応、私もエルフ王国には行ったことはあるけど……もう100年も前だし、さすがに道なんか覚えてないからね。
なお、ここに一緒に来ているのは以下のようなメンバーである。
ナザリックからは、アインズさんが直々にと、護衛としてアルベドが。
あと、さっき言ったように、案内役のエルフとダークエルフが1人ずつ。
なお、誰が同行するかについては、シャルティアが最後までついていきたがっていたそうなんだが……アインズさんの護衛としての能力や、前衛後衛のバランスを考えた結果、アルベドになったそうだ。
それに加えて、最近アルベドは主に内政担当ってことで全然ナザリックから外に出てないから、たまには気分転換でも、的な理由もあるんだって。やさしいねアインズさん。
一方、空中庭園からは、私とデミア、それにミルコ。さらに、親衛隊からテレサと……もう1人。
テレサの前を歩いている、セミロングの金髪と、白を基調とした和服のような装束、そして、背中から生えている純白の翼が特徴的な……『天使』の少女。
名前はゼルエル。私の子供の1人で、今言った通り『親衛隊』に所属する1人である。
付け加えて言うなら、私とクリムとの間にできた子供であり……何を隠そう、この世界に来て私が最初に産んだ子供である。ほら、クリムとヤった後に、『なんか妊娠した!?』ってパニックになってデミアに相談してそのまま産んだあの子。あれがこのゼルエルだ。
必然的に、私の子供達全体での長子であり、最年長。レベルは当然カンスト級で、戦闘能力もトップクラスである。
今回は、回復役を担う信仰系魔法詠唱者としてついてきてもらった。普通の回復魔法に加えて、『
以上の5人に加えて……さらにもう1人。
私の後ろにぴったり、付き従う形でついてきてる。
絹のようにサラサラな、プラチナブロンドの髪を背中のあたりまで伸ばし、清楚さと豪奢さが両立したデザインのドレスローブに身を包んだ、エルフの女性。
特徴的なのは、その目。左右で瞳の色が違う、いわゆる『オッドアイ』ってやつ。右目が金色で左目が銀色である。
この子の名はユリーシャ。100年前の『火遊び』の際、私とエルフ王との間に生まれた子供である。さっきアインズさんとの『
今回の遠征に際して、ちょっとやってもらうことがあるので、連れて来た。
合計10人。結構な大所帯になっちゃった気がするけど……まあ。念には念をってことでね。
100年前の一件の際によく見ておいたから、エルフ王……『デケム・ホウガン』の強さは既に知ってる。
レベルは80くらいで、身体能力はレベル相応の高さではあるけど……どうやら魔法詠唱者らしいので、近接戦闘は得意ではなさそうだった。
今回アインズさんが捕虜にしたエルフ達や、100年前に私が誑し込んでお持ち帰りしたエルフ達からの情報を合わせて推測すると、どうやら召喚系の能力を持っているらしい。
戦闘になると、エルフ王は、『ベヒーモス』とかいう巨大な大地の精霊を召喚して、そいつに戦わせるんだそうだ。それ以外にも色々と手札は持ってるらしいが、そのベヒーモスとやら強すぎて、大抵の戦いはそいつが1発殴るだけで終わるんだとか。
正直、レベル80程度なら、こんな人数揃えて行かなくても、ぶっちゃけ私とアインズさんだけでも十分すぎるくらいだ。なんなら片方だけでも勝てると思う。
ただ、召喚系の
加えて、エルフ王はほとんどの国民には嫌われているそうだけど、一定数、狂信的な信奉者がいるらしいので、そいつらが王を守ろうとして襲ってくることもあるだろう。
なので、念には念をってことで、こちらも護衛を揃えて来た。
近距離戦最強クラスのミルコに、盾役としては最堅のアルベド、後衛の魔力系魔法詠唱者としてテレサとデミア、信仰系魔法詠唱者としてゼルエル……という感じ。
なお、全員当然のようにレベルは100である(ユリーシャ含む)。
……いや、やっぱ過剰戦力だったかもな。この面子+私とアインズさんが暴れたら、エルフ王国が更地になっちゃう気がする。
そんなことにならないように祈るとしよう。この王国をどんなふうに利用するかは、割ともうビジョンが固まってるんだから。
「そ、そろそろエルフ王国の支配領域に入りますが……本当にこのまま進んでよろしいのですか?」
と、先導しているエルフ(捕虜)が恐る恐るって感じで聞いてくる。
もう着くのか。意外と早かったな。
ああ、またしても今更なんだけど、今私達は徒歩で移動してるわけではなくて……召喚した魔獣型モンスター等の背に乗って、森の中を結構な速さで進んでいます。
さすがにドラゴンその他で飛んでいくのはやりすぎかなって思ったので、地上からだ。
まあ、これからやることを考えれば、目立つのは悪いことじゃないんだけど……エルフ王国以外にも目立って警戒されるのはちょっと面倒だからね。
そのエルフ王国と戦争してる法国とかが、国境付近に展開して監視してるかもしれないし。
「ああ、問題ない。説明した通りだ、エルフの王国にはこのまままっすぐ正面から入って、王とやらの住処までまっすぐ進む。逃げ隠れするとかは考えなくていいので、このまま案内を続けろ」
「か、かしこまりました……」
不安そうな捕虜エルフ。
エルフ王国側から見れば、自分は完全に裏切者で、これから堂々と王を害そうとしている連中を案内してるわけだから……その国の軍人とかに見つかるのが嫌なんだろうな。
確実に責められるし、下手したらその場で矢でも射かけられて殺されるかもしれないし。
まあ、そういうことにならないように、君も込みできちんと私らで守ってあげるから安心しなさい……って何度も言ったんだけどなあ。
なまじ、エルフ王の強さを知ってるだけに、やっぱり『あの王に勝てる奴なんて本当にいるのか……?』って思っちゃうんだろうな。
この人もエルフである以上、年齢は見た目より全然上なわけで……それだけの長い時間をかけて刷り込まれた恐怖や、どうにもならなかった諦めは、油汚れのごとく頑固なんだろう。
……だからこそ、それを粉砕して見せた時のインパクトは強くなるってもので、そして私達はまさにそれを狙ってるというか、期待しているわけだが。
☆☆☆
最初にその報告が挙げられた時、エルフ王ことデケム・ホウガンは、ひどく不機嫌になった。
法国との戦いにいつまで経っても進展がないというだけで、最近は苛立つことが多かった彼であるが、そんな中飛び込んできたのは、都に異種族の侵入者が現れたというものだった。
先に『ダークエルフの国』に差し向けた者達からの報告もまだ来ていないというのに、この王の膝元に薄汚い侵入者が踏み入ることを許すとは。前々からわかっていたことではあるが、どこまで使えない者達なのだろうか。
自分と同じエルフだとは……この世界で最も優れている種族なのだとは思えない。そう思い、苛立ちを隠そうともせずにため息をついた。
しかしその直後、侵入者達がどんな連中なのかを聞いて、少しだけその不機嫌さを和らげると同時に……興味を持った。
聞けば、侵入者は逃げ隠れしているのではなく、堂々と正面から入ってきたという。そのまままっすぐに、この王城へ向かって歩いて来る最中だとのことだった。
当然、兵士達が排除しようと向かっていったが、恐ろしく強いため、兵士達は全く相手にならずに一蹴されていた。誰も、僅かもその歩みを止めることができずにいる。
そして、侵入者は全部で10人以上いるが、そのほとんどが人間種やエルフなどで、しかも女性だという。
仕事一つ満足にこなせない兵士達の弱さ、無能さに重ねて呆れつつも、それだけ強く、しかも女性であるのなら……自分の優秀な子を産ませる母胎として使えるかもしれない。
それが自分からここに来てくれたというのなら――そもそも何の目的でここに来たのかはまだわかっていないが――好都合ではある。
とはいえ、どうやら兵士達に『捕らえろ』と命じても無理そうなので、自分が出向く必要があると判断したエルフ王は、ゆっくりと玉座から立ち上がった。
そして、止めようとする側近達を無視して、その侵入者が今いる場所を聞き出し、そこに向かって歩いていくのだった。
今まさに自分が、一歩一歩自らの足で、死刑台に向かっているに等しいとも知らないで。