オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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裁くのは……私の精霊(スタンド)だ!

 

 

【異世界転移400年目 ●日目】

 

 クーデター作戦、つつがなく終了。

 エルフ王、デケム・ホウガンを頂点とした現政権は崩壊し、エルフ王国は新たな門出を迎えることになりました。めでたしめでたし!

 

 

 

 さて……じゃあとりあえず、エルフ王国に入ったところから順番に話して行こうか。

 

 私達は国に入った後、先に案内役のエルフにも言ってあったとおりに、逃げも隠れもせず、正面から堂々と歩いて王城を目指していった。

 

 ステータスの隠蔽はいつもどおりしてたけど、それ以外は何も隠してなかったから、そりゃもう目立ってたよ。アインズさんが仮面すらつけてなかったからね。

 何せ、妖怪やらアンデッドやら異種族がもろに混じってるからね。住民達は目を丸くして、口をあんぐり開けて驚いてたし、衛兵達は『止まれ! そこを動くな!』って言って私達を止めようと、ないし拘束しようと向かってきた。

 

 それを全部無視し、襲ってきたときはガツンと返り討ちにして、ひたすらまっすぐ王城を目指し続けた。

 衛兵達は何度も襲ってきたけど、そのたびに何度でも蹴散らした。

 

 道をふさぐように布陣してバリケードを築いていたこともあったけど、ミルコが蹴っ飛ばして粉砕したり、ゼルエルが衝撃波で消し飛ばした。

 

 建物の上で待ち伏せて投網を投げて来て捕縛しようとしてきた時には、私が『狐火』で一瞬で全部焼き尽くして灰にした。網だけね。

 

 横合いから奇襲するように襲撃かけてきた時には……アインズさんが狙われてたので、アルベドがバルディッシュで真っ二つにしちゃった。なるべく殺さないようにしてたのに……

 

 王城に近づくと、話に聞いていた『信奉者』達が現れて、そのまま襲ってくるかと思いきや、『下等な異種族や薄汚いアンデッド風情がこの王都に』云々暴言を吐いてきた。エルフ至上主義とでもいうのか……選民思想が痛い連中だな。これもまあ、話に聞いてた通りだ。

 

 その後襲ってきたんだけど、アインズさんが『絶望のオーラ・レベル2(恐慌)』を放ったら、泡噴いて失神したり、うずくまって嘔吐したり、腰を抜かして失禁したり、ぎゃあぎゃあと泣きわめいて逃げていったりと……一瞬で全滅した。

 

 ……すっぱい異臭やアンモニア臭が漂う中を突っ切っていくのが嫌だったので、その時だけは、ちょっとだけ回り道した。

 アインズさんが小さい声で『……ゴメン』って言ってた。いえいえ、気にしないで。あいつらが口の割にクソ雑魚だったのがいけないんですよ。

 

 そんな感じで進んでいったんだが……王城も目前に迫り、大通りを歩いていた時に……王城の方が騒がしくなったのが、私の狐耳には聞こえて来ていた。

 その理由はすぐに分かった。向こうの方から、なんか偉そうな1人の男エルフが近づいてきていたからだ。

 

 100年前に見たまんまの姿で変わってなかったから――いや、ちょっとだけ髪が長くなったかな?――すぐに分かった。

 エルフ王、デケム・ホウガン。今回の遠征のメインターゲットが、どうやら向こうから出向いてくれたようだと。

 

 周りの、部下と思しきエルフ達は、『危険です!』って必死に止めようとしてたみたいだったが……見事なまでに馬耳東風。全く聞く耳を持たずに、ずんずん歩いて私達の前までやってきた。

 大通りの真ん中で、エルフ王(と部下達)と、私達一行がむかいあう形に。

 

 その後、エルフ王が口を開いて言ったことは……まあ、これも予想通りだったよ。

 

 

『抵抗せず大人しくつかまれ。そうすればこの王の子供を産ませてやる(要約)』

 

 

 こっちのメンバーが、アインズさん以外全員女……しかも絶世の美女(自画自賛)だから、まあこうなるだろうとは思ってたよ。

 

 いや、別に美しいかどうかはあんまり重要視してなさそうだったけどね……あいつの目的は、100年前と同じで、強い子を産ませる母胎として活用する、ってことだけだろうし。それに使えそうだから攫うってだけで。

 

 なお、こうなると思ってたので、アインズさんはここにアウラとマーレを連れてきませんでした。教育に悪いからね。

 しかも、2人ともダークエルフ……つまりはエルフの近縁種だから、よりターゲットにされやすいだろうし。されたからといって指一本触れさせるつもりはないけど。

 

 当然そんな話はお断りさせてもらうと同時に、私達がこの国に出向いた理由をこっちから話して聞かせた。

 暗愚な王の圧政暴虐に苦しむエルフ王国を解放するため、王であるあなたを引きずり下ろしに来たのだ、と。

 

 それと同時に、私達一行の中からユリーシャが歩み出て……一番前に立った。

 その姿を見て、野次馬的に集まってきていたエルフの民衆達や、止めようとして止められないでいた衛兵達、それに……エルフ王さえも一様に驚いていた。

 ユリーシャの目に、エルフの『王の相』が……左右で目の色が違うという特徴があったからだ。

 

 それを見たエルフ王は、ユリーシャに対して『私の娘か、あるいは孫か』と問いかけて……ユリーシャはそれを肯定。

 しかしその上で、あなたには従わない、あなたを倒して私がこの国の王になる、とはっきりと拒絶の意思を示した。

 

 何か言う暇を与えず、続けて、

 

『この国から出奔して逃げて来たエルフ達を、私が今いるところで大勢保護している』

『皆、この国は王の暴虐に苦しめられていて、民は皆、王をよく思っていないけど、勝てないことがわかっているから諦めてしまっている』

『ある者からは『女であれば誰であれ王城に召し上げられ、王のために子供を産む道具にされる。自分の妻が、妹が、娘が連れていかれるのを見送った時は、気が狂いそうだった』と聞いた』

『ある者は『戦いたくないのに戦場に送られ、そのまま死んだり、奴隷に落ちた者も数えきれないほどいるのに、王は『使えない奴らだ』の一言で切り捨てて、一顧だにしない、』と嘆いていた』

『ある者は『このままではあの国は滅ぶだろう。けど、その方がかえって救いかも知れない、とすら思う」とすら言っていた』

 

 そんな、この国出身のエルフ達の声をつらつらと語って聞かせた。

 なお、全部実際にこの国からの亡命者その他が言っていたことである。ノンフィクションです。

 

 100年前あたりに、この国と法国の戦争で捕虜になったエルフが奴隷市場に流れてるって知った時に……情報収集も兼ねてエルフ奴隷を買い込んで『空中庭園』で保護したんだよね。切られた耳も治して上げた上で。

 今までの生活(奴隷や、その前のエルフ王国での生活)に比べたら天国だ、って泣いて感謝されちゃったよ。

 

 その時に聞いた話が、上記の内容である。

 なお、こんなのは氷山の一角で、全部上げ連ねようとしたら10分や20分じゃ足りません。

 

 民達はそれを聞いて、自分達の暮らしぶりや普段のこの王のやり方を思い返して、涙を浮かべたり悔しそうにうつむいたりしていた。……これ、マジで国民ほぼ全員被害者だな。

 

 その当の本人であるエルフ王は、どこ吹く風で全部聞き流した挙句、『いうことを聞かないなら力ずくででも連れていく』と言い放ち……手で指図して部下達を下がらせた。邪魔だと。

 そして、話に聞いていた『大地の精霊・ベヒーモス』を召喚した。

 

 どんなのが出てくるかと思ったら……なんと出てきたのが、レベル80相当の『根源の地精霊(プライマル・アース・エレメンタル)』だったので、私もアインズさんも普通にびっくりした。

 ユグドラシルにもいた、マジで最高レベルの召喚精霊じゃん。そりゃこの世界で、こんなん召喚して使役できるってなったら、誰も勝てんわな……。

 

 こいつ、通常の方法じゃ召喚できない特殊な精霊なんだけどな……何かアイテムを使った様子はなかったけど、もしかしてこいつの何かしらの生まれながらの異能(タレント)かな?

 

 その巨大な姿を見て、部下達や市民達はわかりやすく恐怖を顔に表していた。これがどれだけ強いか、エルフ王がこれを使った時に、その敵がどうなるかをよく知ってるんだろう。

『ああ、もうだめだ』って顔を覆っちゃってる者も少なくない。きっと、私達がアレに勝てると思えないからだろうな。

 ……大丈夫だって何回も言ってんのに、こっちの案内人エルフもそんな感じになってるし……

 

 

 しかし……よりにもよって『根源の地精霊』か……あるんだなあ、こんな偶然も。

 

 エルフ王が召喚したそれを見てもなお、ユリーシャは……驚きはしたものの、全く怯むことはなかった。そのまま、自分も数歩前に出て……次の瞬間、彼女の足元に魔法陣が出現する。

 大通りを埋め尽くすほどの直径の大きさを持つ魔法陣に、またもや市民達が驚いている前で……ユリーシャはそこから、なんと、エルフ王が召喚したそれと同じ、『根源の地精霊』を召喚した。

 

 

 しかも、3体も。

 

 

 その瞬間の民達の、衛兵達の、そしてエルフ王の表情は、必見の価値ありだった。

 咄嗟に映像記録用のアイテムを使って画像に残した私、えらい。

 

 

 

 その後の展開は、まー酷かったね。もちろんいい意味で。

 

 うちのユリーシャが召喚した『根源の地精霊』のうち、1体がエルフ王の『ベヒーモス』を後ろから羽交い絞めにして拘束。

 

 別な1体が、正面から『ベヒーモス』を『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!』してタコ殴りに。

 土くれの体がきしんでひび割れて崩れて……みるみるうちに悲惨なことになっていった。

 

 そして残る1体が……つま先とか指で小突いたり、デコピンしたりする感じで、逃げ回るエルフ王をどつき回していじめていた。

 

 『ひいいぃぃいいっ!!』と情けない声を上げながら逃げ回るエルフ王を、ユリーシャはにこにこ楽しそうに笑って眺めていた。

 

 市民達や衛兵達は、無敵だと思っていた『ベヒーモス』の、そして王のあまりにもみっともない姿を、ぽかんと口を開けて見ていた。何が起こってるかわかってないっぽい人がほとんどだったけど……状況を飲み込めた人の中には、思わず笑みが浮かんじゃってる人もいた。

 本人にその自覚が全くないだけで、この国の皆さんにエルフ王がどう思われているのか……すごくよくわかる光景だったな。

 

 そのうち、エルフ王ははっと気づいたようにして、まっすぐユリーシャ目掛けて駆け出した。

 3体もいる『ベヒーモス』を倒すことはとても無理だから、召喚者本人を狙って勝負を決めようと思ったんだろう。なるほど、狙いとしては悪くないと思う。

 

 まあ、それも無理なんだがね。

 レベル80かそこらのエルフ王が、レベル100(カンスト)かつ、『空中庭園』できちんと戦闘訓練も積んでいるユリーシャをどうこうできるはずもない。なかった。

 

 隠し持っていたらしい短剣を抜き放って襲い掛かったはいいものの、あっさり手の甲で刃を打ち払われた上に、首元にズドンと地獄突きをくらって『ごひゅえっ!?』って素っ頓狂な声を出して、そのまま崩れ落ちた。

 そこにさらに、ユリーシャが手に持っていた杖を……ゴルフのスイングみたいに下から上に振り抜いて、ぶっ飛ばした。ナイスショット。

 

 そしてそれを、さっきまでオラオララッシュを繰り出していた『根源の地精霊』(2体目)がキャッチ。そしてなぜか、その無駄に長くてすらっと伸びた足を、武器の柄か何かのように握って持ったのがちょっと気になった。

 この5秒後、『根源の地精霊』が、手に持った棍棒(エルフ王)を『ベヒーモス』に叩きつけて『攻撃』に使い始めたのを見て、『ああ、マジで武器だった』と理解した。

 

 そんな感じでたっぷり5分ほどかけて、エルフ棍棒がボロボロになるまでやった後、ぽいっと投げ捨てて地面にべしゃっと落とした。

 とっくの昔に意識はなくなっていたけど、なんとか息はあるみたいだった。

 

 死んでたとしても蘇生したけどね。この後使うから。

 

 そして、残された『ベヒーモス』は、エルフ王が戦闘不能になっても消えなかったので、地精霊3体でタコ殴りにして普通にぶっ壊して倒しましたとさ。

 

 こうして、とても分かりやすく『エルフ王より全てにおいて上』だということを示したうえで、民達を苦しめていたエルフ王を倒したユリーシャは、そのまま城に入り……エルフ達が見ている前で玉座に座ってみせた。

 この瞬間、この国に新たな王……エルフの女王・ユリーシャが誕生した。

 

 

 

 で、その後の顛末だけど……予想通りと言えばそうなんだけど、王が倒されたことについて、民達からは驚きと、それ以上に喜びの声がわっと上がって……国中あちこちに、うれし泣きで崩れ落ちまでする者が続出した。

 どんだけあの王様が嫌われてたのかってのがわかる光景だったな……老若男女問わず、ほぼ全国民が喜んでるんだもの。仮にも自国の王様が倒されたのにだよ。

 

 ただ、わずかにいる『信奉者』達は、『王位簒奪など認めぬ!』って向かって来たんだけど、まあかなうはずもなく。

 全員まとめて叩きのめしたうえで、拘束して牢屋に放り込んでおいた。

 

 『信奉者』以外のエルフ王の部下達は、ユリーシャに忠誠を誓うと宣言して跪いた。

 その理由は、何と言ってもユリーシャが強いから。『元・王』であるデケム・ホウガンよりも強かったから。これに尽きるそうだ。

 元・エルフ王は、普段から『強い者は弱い者に何をしてもいい』っていうスタンスだったらしいので、その通りにするならもちろん、元・王より強いユリーシャ女王に仕えるのは当然。

 

 ……というのは建前で、もちろん彼らも、あの暴君がいなくなったことを喜んで、それを成し遂げてくれたユリーシャに感謝の意を示すとともに、今度こそ役人としてこの国を本当によりよくしていくために、ユリーシャと共に歩んでいきたい、とのことだ。

 

 ……普通に善人な人(エルフ)達ばっかりでよかった。

 本当にこの国は、1から10まであのバカ王が原因で追い詰められてたんだな……。

 

 そして、最早用済みとなった元・エルフ王については、さっさと処分してもよかったんだけど……せっかくなので公開処刑とかやってみることにした。

 民衆の鬱憤を晴らすいい見世物にもなりそうだし……それに、ちょっと他にも考えてることがあってね。この国の今後のことで……。

 

 国内に関しては、予想以上に上手く早くまとまりそうだとは思うんだけど……他が、ね。色々とあるから……そっちの対処もしないとだからね。

 

 

 

 ちなみに、うちのユリーシャについて豆知識を1つ。

 あの子が『根源の地精霊(プライマル・アース・エレメンタル)』を3体も同時に召喚できた、その理由について。

 

 さっきちらっと述べた通り、あの精霊は通常の召喚方法では呼び出すことができない特別なモンスターで、それをするには、特別な手順を踏む必要がある。

 それ専用に作った特別なアイテムを使うとかね。確か……アインズさんが持ってるはずのギルド武器『スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン』にもそういう機能があったはずだ。

 

 けれどあの子は、『あらゆる召喚可能なモンスターを適正や条件を無視して召喚・使役できる』というぶっ壊れ級の生まれながらの異能(タレント)を持って生まれた。

 あのメカクレ男子……ンフィーレア君の異能(タレント)の、召喚版だと思えばいい。

 

 そのため、召喚に特別な儀式やアイテム、触媒、生贄が必要な存在だろうと、そういうのガン無視で召喚できるのだ。

 ただし、召喚と使役に必要な魔力だけは普通どおり消費する。そこまでは0にならない。

 

 けどユリーシャは、装備品やアイテムの持つ特殊効果のほぼ全てを、召喚関係の補助効果で統一しているため、魔力の消耗を極限まで抑えつつ、長時間召喚モンスターを使役することができる。今回のように、『根源』クラスの精霊を複数同時に召喚して戦わせるなんてことすらできる。

 

 なお、ユリーシャの召喚士としての本当の切り札はまだ別にいて、マジでヤバいのを隠してる。

 今回それを使わなかったのは、完全にオーバーキル……を通りこして、召喚するだけで国ごとヤバいことになりそうな奴だからだ。

 

 何せ、召喚契約モンスターとしてキープしてはいたものの、アカネですら割と持て余す問題児だからな……正直、アレの出番ってこの先来るのかどうかもわからないくらいである。ガチャ排出限定、しかも期間限定のレア度は伊達じゃない。

 できれば、ずっと来ない方がいい気がするし……でも、出番がないのもそれはそれで可哀そうな気も……ううむ。

 

 まあ、もしそのうち出番が来たら、その時はその時ってことで。

 

 

 

 

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