【異世界転移400年目 !日目】
昨日、モモンガさんとの打ち上げで日付が変わるまで飲んだ後……お風呂場で遭遇したマーレをちょっとからかうつもりで、クリムによるNTR演出をやってみたんだが……後になって『やばい、さすがにやりすぎだったか?』と思って、ちょっと心配してた。
初恋(多分)の相手が目の前で他の男に連れていかれるとか……初心で未経験な男の
でも、朝食の席に出てきたマーレは、一応いつもどおりに見えた。よかった、変なトラウマとかにはなってないみたいで。
置き土産として残してきた私の脱ぎたてショーツが効いたんだろうか。
今朝、メイドにこっそり聞いたところによると……マーレ、きっちり脱衣場から持ち帰って、寝る前にばっちり『使って』から寝たらしいけど。
それでスッキリしてくれたなら何よりだよ。
そんなマーレ達……というかアインズさん達は、朝食を食べた後にナザリックに帰っていった。
帰り際、アインズさんに『マーレに私の『お相手』のことについての話ってもうしました?』って聞いたら……案の定と言うべきか、気まずそうに『……まだです』だってさ。早く言わなきゃとは思ってるけど、中々口に出す踏ん切りがつかないってさ。
『お相手』の任命だけならまだしも――自意識過剰じゃなければ、マーレ喜ぶだろうし――その先にある、私がマーレ『だけ』のものになることはない……っていう点の説明がさらにハードルを上げているそうで。
けど、いつかは話さなきゃいけないし、そのメインの目的を考えれば、早い方がいいだろうし……頑張ってね、アインズさん(他人事)。
☆☆☆
ラストは『大丈夫そうだな』と思っていたマーレであるが……実のところそんなことはなかったりする。
その、人生初のNTR体験から数日後。
マーレはアインズから、とうとうと言うべきかようやくと言うべきか、自分がラストの『お相手』に選ばれた旨を伝えられた。
「ぼ、ぼぼぼ僕が、ら、ら、ラストにゃんにゃん様の『お相手』……ってことは、そ、その……こ、子供……作る、っていう?」
「う、うむ……正直、自身もまだ子供であるマーレに任せるのは、私としても気が引けるところではあるのだがな……」
過去一、どんな命令を下した時よりも緊張して……というか、気まずく思っているアインズ。
何せ、『戦って来い』『奪って来い』『殺して来い』といったものではなく――それらはそれらで、物騒さゆえに緊張する命令ではあるが――『〇〇〇をして子供を作れ』などという、セクハラそのものという内容である。
アインズ自身、ユグドラシル時代には『非公式魔王』などと呼ばれたこともあり、悪のラスボスとしてのロールプレイはある意味慣れたものだが……部下に繁殖を命令する大魔王って何だろう、と頭痛を覚えた。
そんなの理解できるのはどこぞのエロゲーバードマンくらいではなかろうか。
しかもそれを、
この世界に来ているかもしれないギルドメンバーとの再会を熱望してやまないアインズだが、今だけはギルメンがいないことを嬉しく思った。こんな命令を出してる自分を見られたくない。
「もちろん、マーレ自身が気が進まないというのであれば強制はしない。これは別に忖度を求めているわけではなく、本当にお前の気持ちを聞いて……」
「や、やります! 僕にやらせてください!」
「決め……えっ? あ、そ、そう……」
言い終わらないうちから食い気味に『やります!』と言ってきたマーレに、ちょっとびっくりしつつもうなずいたアインズ。
気のせいでなければ、ほんのり顔は赤くなっていて、爛々と目が輝いていて……心なしか鼻息も荒いように思えた。いつもの気弱なマーレとちょっと違う。
命令されている内容が内容なので、普段のマーレであれば。赤くなるのはともかくとして……テンパって挙動不審になるんじゃないかと予想していたアインズ。
あるいは、子供故に『知識不足』で、『ええと、どうやればいいんですか?』などという質問が逆に返ってくるかもしれない、とも思っていたが……そのどちらも外れる結果に。
むしろこの反応は、『そういうこと』に興味津々な年頃の男の子らしい反応、である気がした。……事前にラストが言っていたように。
(ラストさん、マーレもそういうことに興味が出て来てて、『男の子(男の娘)』から『男』になりつつある……って言ってたしなあ。それ聞いた時は『まさか』と思ったけど……これ、ひょっとして本当に……。第二次性徴、ってやつ?)
てっきり……こう言っては何だが、エロゲーバードマンに比肩する妄想属性を持つラストが脳内で色々暴想(誤字にあらず)した結果ではないかと、まさかうちのマーレに限ってと思っていたが……子供というのはいつの間にか大人になるものである。
アインズ自身も……かつて『鈴木悟』だった頃に、そういうのに興味を持ち出した頃は、頭の中がそれでいっぱいだった時期もあるし……
そしてそんな時期に知り合ったのが、ラストにゃんにゃん……ナザリックのしもべ達と同等かそれ以上の美貌に加え、優しくて親しみやすく、仲良く色々と教えてくれてかまってくれる、年上のお姉さん……。
おまけに、彼女自身も『そういうこと』大好きで、色々と抜けているないし無防備なところもあって……となれば……。
(マジでそうなのかもな……いやあ、なんか複雑な気分……。とはいえ、マーレが本心からそう思ってやる気を出してるのなら、命令してる俺がアレコレ言うのも違う気がするし……そもそも言える気がしないし……。俺だってそんな経験ないんだもの……!)
世のお父さんお母さんが必ず直面する試練。定番の『赤ちゃんはどこから来るの?』以上に厄介な、子供の性への目覚め。
いかに下僕達を『子供のようなもの』だと思っているとはいえ、本当に子供がいた経験もないアインズには、『こういう時にどうすればいいのか』なんてわからない。
幸いなことに、マーレ自身はこの役目についてはやる気満々な上、『どうすればいい』のかも知識としてきちんと知っているようだった。すなわち、コウノトリだのキャベツ畑だのではなく、子供を作るにはどうすればいいのかも知っている。
その理由について、ビーストテイマーである姉・アウラの手伝いをすることが普段からあり、その中にはモンスターの繁殖なども含まれていたためと聞いて、アインズは『なるほど』と納得した。
であれば、後は本人達に任せられそうだな、と考えたアインズは、『特殊な仕事ゆえ、急がせるつもりはもとよりないので、互いの仕事やプライベートに支障がない範囲で進めるように』とだけ申し付けて、あとはマーレのやる気に任せることにしたのだった。
(指示だけ出して丸投げ……だけど、実際俺がこれ以上できることなんてないしな……。それに、こういう頼り方するのはアレかもしれないけど、言ってみればこの手のことに関して、ラストさんはプロ中のプロだ。マーレのこともかわいがってくれてるし、きっと上手いことやってくれる……はず!)
少し前の話し合いの時には、『なんなら必要な性教育とかそのへんも私やりますから!』と、頼もしいは頼もしいのだがそれはそれとしてちょっと引くようなことを言っていた戦友。
彼女なら……上手いことやってくれるだろう。やってくださいお願いします。
『ふんすっ!』とやる気になっているマーレの前で、今の自分に表情筋がないことを幸いに思いつつ……アインズは後のことを全て当人達に任せることに決めて、話を切り上げた。
無いはずの胃と、空っぽのはずの頭の中を襲う痛みが、そろそろ限界だった。
しかして、そのマーレが、何も不安なく、申し付けられた『お相手』のお役目に自信満々であるかというと……実はそうでもなかった。
嬉しいのは間違いない――御方からの命令であることに加えて、ラストにゃんにゃんとそういう仲になるということもあって、二重の意味でだ――が、それはそれとして緊張しないわけではない。
加えて……思い出すのは、ほんの数日前。男湯で起こったあの出来事。
目の前にいた、『大好きな年上のお姉さん』が……自分ではない男に連れられて、夜の闇の中に消えていき……自分は手を伸ばしてもそれに届かず、見送ることしかできなかった、あの『初めてのNTR』。
あの時の、足元の地面が崩れ落ちたかのような敗北感は……実は、毎晩のように夢に見て、思い出されていた。
さらに、先ほど命令と同時にアインズから『注意事項』として告げられたこと。
自分は、ラストと子供を作る関係にはなるものの……『ラストが
マーレと『する』し子供を作るが、それ以外とも『する』し、子供も作る。
ラスト曰く所の『NTR前提』の関係になる旨、承知しておくように、という……なんともモラルハザードで、初恋(多分)を果たそうとしている少年に対して残酷な宣告だった。
(あの時と、同じような思いを……この先も何度も……し、仕方ないことだってわかってる、けど……)
自分とそう変わらないように見える、自分と同じ『男の娘』であろう、金髪の天使の少年が、ラストを連れて行ってしまった時の敗北感と空虚感が――その後に何をしたのかと考えると、余計に――それがこの先も確実に起こるという事実が……マーレに手放しで喜ぶことを許さなかった。
(嬉しい、けど……ちょっと、つらい……)
目覚めて間もない、思春期の少年に経験させるには……惨いとすら言える……『これ下手したら性癖歪むだろ』とツッコミが飛んでくるような状況。
そんな状況の彼に、しかし、幸運にも……救いの手を差し伸べてきた者がいた。
ただし、それは同時に……文字通りの
それも、そんじょそこらの悪魔ではなく、100レベルの
「なるほどね……そういうことならもちろん協力させてもらうよ、マーレ。同じ守護者としてね」
「ほ、本当ですか!? ありがとうございます、デミウルゴスさん!」
心強い味方の協力が得られた! と、安堵の笑みを浮かべるマーレに対し、身長差から見下ろす形で……確実に何かしら企んでいそうな笑みを浮かべるデミウルゴス。
もっともその笑みも、今のマーレには頼もしい、信頼できる味方のそれにしか見えていない。
「ラストにゃんにゃん様が恋多きお方だというのは、私も前々から聞いて知っている。アインズ様が言っていた通り、彼女を独占することはできないのだろうが……そうだな、少々言い方は稚拙なものになるが、彼女にとっての『お気に入り』になるのは不可能ではないと思うよ」
「お気に入り……ですか?」
「ああ。そうすれば……『お相手』としての役目に関係なく仲良く遊んでくれたり、安直に言って、他のどの男性の『お相手』よりも、マーレ、君のことを見て、君のことを大切に思ってくれるようになる……なんてことも、決して不可能ではないはずだ」
それを聞いて嬉しそうにするマーレに、デミウルゴスはさらに続ける。
「それにマーレ、君は……創造主であるぶくぶく茶釜様とラストにゃんにゃん様のご関係もあり、今既に憎からず思われているはずだからね。ここからさらに好感度を上げることは、さして難しくはないはずだ」
「それは……でも、どうすればいいんでしょう?」
デミウルゴスとしては、同じ守護者として、本心からマーレの……言ってみれば『初恋』の成就を祝福し、応援したい気持ちももちろんある。
それと同時に、彼がアインズから任された『お相手』という役目を……ゆくゆくはアインズが、このナザリックで飲食や睡眠という『娯楽』を楽しめるようになるための大任を、全力で後押ししなければ、という思いもまたあった。
「ラストにゃんにゃん様の『お相手』を務めるにあたり、マーレが果たすべき役割は、彼女を妊娠させることだ。しかも、件の
「…………!(ごくり)」
ゆえに、これから行うマーレへのアドバイスが……子供に行うには少々生々しく、過激なものになるとしても……それを承知しつつも、ためらう理由はないのだった。
デミウルゴス自身、それが最善だと理解していて、本心から彼を応援するために助言を行うのだから。
「幸いにして、それ自体にはご同意いただいているし、さっきも言った通り、マーレと彼女の心の距離は申し分なく近い。であればマーレ、君が持って備えているべきは……男として、雄として……あえて生々しく言うならば、『種馬』としての機能を高めることだろう」
「た、種馬としての……機能?」
「具体的には、少しでも妊娠の確率を上げるため、何回でも数をこなせる『持久力』。加えて、よりラストにゃんにゃん様に喜んでいただき、『お気に入り』になることで、種付けの機会自体を増やすための『技術』……といったところかな。その他にも色々と思いつくが、焦らず1つ1つ手に入れて、身に着けていくとしよう」
「で、できるでしょうか……僕に……?」
「安心したまえ。アインズ様の幸福のため……私も全力でバックアップさせてもらうとも。幸い、私が今やっているいくつかの事業で得たデータや、協力関係にあるデミア女史から提供いただいたデータの中に、使えそうなものがいくつもある。万事、任せておきたまえ。次に君が、使節として『空中庭園』に行く時までに……全て仕上げられるように取り計らおう」
「よ、よろしくお願いしますっ!」
それから数週間の間、デミウルゴス監修の下に、『お相手』としての……言ってみれば『男』を鍛えるためのトレーニングその他を行うことになるマーレ。
用意される様々な『メニュー』に戸惑いながらも、立派にその役目を果たせるようになるために、1つ1つ取り組んでいく。
「医食同源、という言葉がある。健全で丈夫な体を作るには、それに適した食事が必要になる……食堂に話は通してあるから、1日1食、昼食だけでいい。そこで出されるメニューを、残さず食べるんだ。味はもちろんいいから心配はいらないよ」
「体づくりのためには適度な運動も必要だね。元々運動能力の高い君には、トレーニングという意味では不要だろうけど、体内の栄養素をより効率的に変換するためにもね。よし、シャルティアに手伝ってもらうとしようか。君と同じで、空中庭園への使節の一員だしね」
「ようこそ、マーレ様。デミウルゴス様から話は聞いております」
「アインズ様のお役に立つための、マーレ様のお手伝いができるなんて、光栄ですわ」
「必要なこと全て、私達
「守護者マーレよ、よく来たな。守護者デミウルゴスより話は聞いている。『お役目』に必要な知識を勉強できるであろう書物は選定済みだ……受付で受け取るといい」
「毎晩寝る前にこれを10錠飲むんだ。ああ、安心していい、変な薬じゃないからね。ただ、君が『お役目』を果たすのに必要な栄養素を効率よく摂取するためのサプリメントだよ。デミア女史の監修で作られたものだから、効果のほどは確かだ」
その結果がどういう形で結実し、ラストとの『本番』で発揮されることになるのか……今はまだ、誰も知らない。誰にも、わからない。