違和感ありましたらすいません。作者の浅はかな考えなので、なんとか目をつぶってください……。
「さて、お集まりの皆さま、本日は貴重なお時間を頂戴いたしましてありがとうございます。ではこれより、私、デミア・デュオデクテットより、我が『魔究郭』の研究成果について、発表並びに情報共有をさせていただきます。どうぞよろしくお願いします」
そんな口上と共に始まったのは、今言った通り、デミアによる研究成果の発表会である。身内だけの学会みたいなもんかな。
『魔究郭』の中にある講堂を使っているので、中々本格的である。もちろん、見てくれだけじゃなく、中身もそうなる見込みだ。
こういう、自分の研究成果を発表できる場を持てるのが嬉しいのか、デミア、口調は丁寧だけどすごくいい笑顔になってるな。創造主としてこっちも嬉しくなってくるよ。
発表者は当然デミアとして、参加者ないし出席者は……私やカリン、クリムやゼルエル、テレサといった、『空中庭園』における主要メンバー……のうち、特に
さらに、ナザリックからも同じく、アインズさんやデミウルゴス、シャルティアやマーレといった面々が参加している。
ただ、アルベドやコキュートス、ヤマトやサンゴのように、魔法詠唱者枠じゃない者も混じっている。全く無関係ではないし、知っといて損はない話だからね。
そんな感じで開催されるこの勉強会だが、テーマはというと、
「では皆さん……まず今回のテーマである『
☆☆☆
『始原の魔法』とは、簡単に言えば、この世界にもともと存在し、かつて主流だったという魔法の種類である。私達が使う『位階魔法』とは似て非なる……いやあんまし似てもいないか。ともかく、同じ『魔法』でもはっきりと異なるものだ。
今言った通りもともとはこの世界でこの『始原の魔法』こそが『主流』だったわけだが、今から500年前、『八欲王』が何かやらかしたらしく……その時から世界に『位階魔法』が突如として出現して以降、『主流』の立場を奪われた上、詳細は不明だが何やら大きく力を制限されてしまったとか何とか。
このへん、『竜王』達からも上手く聞き出せなかったんだよね……。
そしてこの『始原の魔法』、大きな特徴が2つある。
1つは、使える者がごく限られており……『真なる竜王』と呼ばれる『
これは今に限った話ではなく、元々のことだ。『主流』などと言いながら、その実、『竜王』達の専売特許ないしは既得権益みたいなもんだったのである。
そしてもう1つは……『始原の魔法』を使う際に消費するのは、魔力ではなく『魂』であるということ。
この『魂』、ちょっと説明が難しいというかややこしいものなんだけど、要するに『生命力』みたいなものであり、なおかつ『HP』とは似て非なるものだとでもいえばいいかな。使うとHPが減るから。
けど、HPそのものではないので、HPを回復する魔法を使っても、『魂』を回復させることはできない。MPと同じで、自然回復を待つしかない上に、MPと違って譲渡によって回復することもできない。……一部例外を除いて、だけど。
しかしこの『魂』、魔法その他を使う際の燃料としては非常に優秀なのは間違いなく、ここ200~300年ほどの間にデミアが研究して生み出した、いくつもの応用技法……『特技』や『神業』などは、我が『空中庭園』の戦力を底上げさせることに、一役も二役も三役も買っている。
そして今後は、ナザリックの戦力も同じように強化していくことだろう。
……さて、ここまでがだいたい、今までに既に判明している『始原の魔法』の主な仕様なわけだが……デミア曰く、今日の講義はここからさらに突っ込んだ内容を説明するらしい。
検証が全て終わったわけではなく、あくまでまだ『仮説』の段階ではあるものの、一応筋道は通っているので、情報共有すべきだと思ったんだそうだ。
私もまだ詳しくは聞いていないので、何が出てくるのか楽しみだな。
「さて皆様……先ほどの説明の中で、『始原の魔法』は『竜王』らの専売特許であると申しましたが……この転移後の世界においては、ドラゴンと呼ばれる者達が、特にその中でも『竜王』が生態系の頂点に立っていることから、実質『世界の覇者のみに許された魔法』というような扱いになります。なおこれはもちろん、この世界の者達のみを基準に考えた場合であり、ユグドラシルからやってきた我々の存在については考慮しておりませんのでご了承ください」
竜王達を『世界の覇者』と称した時に、アルベドやシャルティアが『世界の覇者はアインズ様だろーが』的な感じにちょっと不機嫌になりかけたが、素早くデミアが注釈を入れてた。
同時にアインズさんも、下僕の一部がそういう反応をするだろうと予想できたからか、アルベド達に『じろり』と視線をやって諫めていた。ありがたい。
で、今デミアが言った通り、この世界における覇者である竜王……カンスト級の連中のみに許された『魔法』が、この『始原の魔法』だったわけだが……最近になって、連中がコレを習得している仕組みについて、わかってきたことがあるという。
デミア曰く、過去私達が仕留めた2体の『竜王』は、どちらも、私達の世界にはない特殊な……恐らくは竜王専用の種族や
その中でも特に気になっていたのが、『ワールドコネクター』という職業なんだそうだ。
「『ワールドコネクター』……確かに、ユグドラシルでは聞いたことがないな。直訳で、『世界を繋げる者』あるいは『世界と繋がる者』といったところか?」
「はい。今アインズ様が言っていただいた者のうち、恐らくは後者がよりこの職業の本質に近い、と見ております」
ユグドラシルに存在した『ワールドチャンピオン』や『ワールドディザスター』といった、通称『ワールド職』と呼ばれる超レア級職業の数々。それらに通じるものを感じる名前だが……デミアの説では、この『ワールドコネクター』こそが、連中が『始原の魔法』を使える鍵だという。
「つまり……その『ワールドコネクター』っていう職業を手にすると、『始原の魔法』を使えるようになる、ってこと?」
「少し違います。正確には、『始原の魔法』を使えるようになると、自動的に『ワールドコネクター』の職業が手に入る、という順番になるかと」
デミアの説では、『始原の魔法』とは、世界と繋がることによって行使することが可能になる力……という位置づけだと思われる、らしい。
その、『世界と繋がる』という状態になるには、かなり高レベルにまで成長する必要がある。それこそ、おそらくはカンスト近いところまで。
レベルキャップのあるこの世界において、時間をかけたところで、そこまで成長できるのは『竜王』くらいのものだ。だから結果的に、『始原の魔法』は世界と繋がることができる『竜王』の専売特許だった。
しかしそうなると、気になることが1つ。
「でもデミア、私の子供達も『始原の魔法』が使える子何人もいるし、なんなら私も使えるけど……そんな『職業』、持ってないよ?」
「それは恐らく、ラスト様や子供達は、文字通り『世界と繋がってはいない』からだと思われます」
そもそもその『世界と繋がる』っていうのが何を意味しているのかというと、だ。
デミアの説では、『始原の魔法』は、位階魔法と違って、自分の力だけで使えるような仕様ではないのだとか。
位階魔法であれば、その魔法を覚えてさえいれば、自分の魔力を消費することで、自分の中で魔法を作り上げ、発動させることができる。詠唱とかの手間や、魔法を練り上げる技術は当然必要になるけど。
基本的に、外部の何かしらの要素が必要になることはない。せいぜい、杖とかを持っていると威力が上がったり、魔力効率がよくなる、という程度だ。基本、最初から最後まで自己完結する。
対して『始原の魔法』は、使う時に、『使う!』って命令を出すのは自分だけど……行使するには世界との繋がりが不可欠。自分が覚えているだけでなく、世界と繋がっていないと発動できない。
「……もうちょっとわかりやすく」
「……ちょっと待ってね」
今一理解が足りない感じがしたので、デミアに注文してもうちょっとかみ砕いてもらう。
なお、視界の端っこで、アインズさんとシャルティアが、ちょっと肩を揺らしてほっとしたように見えた。ナカーマ。
しばし考えた後、こう説明してくれた。
みんな大好き『
エクスチェンジ・ボックスを使う際、以下のようなプロセスを踏む。
①両替するアイテムを用意する
②アイテムをボックスに入れる
③ボックスがアイテムを査定する
④査定結果に応じた金貨が出る
この四段階だが、仮にこれを位階魔法に当てはめるとだ。
①の『アイテム』は、魔法を発動するための材料。すなわち魔力だ。
②で、使う分の魔力を消費する。
③で、魔法発動の準備……すなわち、詠唱とか。
④で、魔法発動、という感じになる。
一方、『始原の魔法』に当てはめるとどうなるかというと、①の材料が『魂』になるだけ……ではない。全く違う。
デミア曰く、
①については、今言った通り、用意する材料は『魂』。
②も同じ。使う分の魂を消費する。
問題は③。位階魔法であれば、自分が覚えてる魔法なので、自分の頭の中で組み立てて詠唱して発動(④)!みたいな感じになるわけだが……『始原の魔法』の場合、これを『自分でやらない』。
そもそも、『始原の魔法』って……『詠唱』がほぼないじゃん?
攻撃も強化も、それこそあの『滅魂の吐息』みたいな大技も、ノータイムで発動するじゃん?
まあ、多少タメ作る時もあるけど。そうすると威力上がるっぽいけど。
それでも、超位魔法クラスかそれ以上の一撃を、ほぼノータイムで撃ってるわけだが……それってなぜなのか。『そういうもんだから』で片づけることなく、デミアは考えた。
結果導き出した1つの仮説。あいつら、自分の頭の中でそれらを処理してない。
呪文の詠唱……あるいは、発動させるための『演算』とでも言えばいいのかな? それを、私達と違って自分ではやらずに……繋がっている『世界』に任せている。
この世界にはもともと、物理法則とかそういうのと同じように、『始原の魔法』を使うための演算装置みたいなのが、世界そのものに備わっている、と思われる。
竜王は、ある程度以上に成長して『始原の魔法』を使えるようになると、同時にその世界そのものに備わった演算装置へのアクセス権を取得する。それが『ワールドコネクター』だ。
この
そういう仕組みに、そういうことができるようになってるんだ、この世界は。
そしてもう1つ。その研究を進める過程で、デミアが行きついた仮説がある。
それは……『八欲王』以前の『始原の魔法』は、そもそも、燃料であるはずの『魂』の消費がない、あるいはごく少量の消耗で済むような仕様だったんじゃないか、とのこと。
それを聞いた私やアインズさんの口からは、思わず『は?』という声が出てしまっていた。
いやだって、そりゃそうなるよ……え、何その理屈だと……もともと『始原の魔法』って、詠唱どころかMPとかのリソース消費もなしに使えた(可能性がある)の?
「彼らが使っていた『始原の魔法』をある程度解析して思ったんですが、どうにも、元から『魂の消費で発動する』仕様だったようには思えないんです。どちらかというと、スキルや超位魔法のように、消費なしで発動できる……彼らにとっては、世界と繋がった者だけに許された、世界の覇者としての『権能』みたいなもの、だった可能性があるかと」
「もしもその通りだとすれば……ラストにゃんにゃん様がかつて戦ったその2体が、ひどく傲慢な態度で話も通じなかったことにも、プレイヤーをひどく憎んでいたことにも納得がいきますね」
アルベドがそう、忌々しそうに言ったけど……確かにその通りだ。
仮にデミアの仮説が正しくて、それほどの魔法を昔、竜王達は何のリソース消費もなしでバンバン放てていたんだとしたら――そんな機会があるかどうかはともかく――自分達がこの世界の頂点であるからこそ振り回せる力を誇り、しかし行き過ぎて驕り、酔ってしまい、それが使えない他の全ての者を見下してしまうようになったとしてもおかしくない。あのアンデッド野郎みたいに。
なお、『じゃあ魂すらいらなかったの?』という疑問も出たが、おそらくは『魂』はあくまで、『始原の魔法』を使う段階で必要になる資格として、あるいは『世界』に発動指令を出すための触媒、ないし送信機みたいな役割だったんじゃないか、と。
しかし、『八欲王』が何かやらかしたせいで、突然その特権が奪われた。
突如として『位階魔法』がこの世界に出現したと同時に、『始原の魔法』の仕組みが変わって大きな制限がかかり、使いづらくなってしまった。
デミア……に限らず私達の予想では、この時『八欲王』は、何かしらの
で、ここからがデミアの予想なんだが……世界そのもののルールを書き換えた際、『始原の魔法』の仕様が、位階魔法に引っ張られて変わったんじゃないかと。
位階魔法は、魔力を消費して発動する、というのが基本的な仕組みである。
それに引っ張られて、『始原の魔法』も、強制的に『何かを消費して発動する』形になってしまったんじゃないか……とのこと。
それまでは『触媒』としての役割しかなかった『魂』を……自分の生命力そのものを、保有するだけじゃなく、消費しないと発動できなくなってしまった。
これが正しかったとすれば……
((そら怒るわ……))
……ちょっと俗な感じに例えるなら……今まで基本プレイ無料で遊べていたオンラインゲームやソシャゲが、突然月額使用料必須になったくらいの暴挙である。
仮にユグドラシル(一応基本プレイ無料)がそんなことになってた日にゃ、私もアインズさんも『ザッケンナコラー!』ってブチ切れるよ多分。
そういう意味では、彼ら『竜王』が私達を異常なまでに敵視する理由は理解できるけど……だからといって納得できるかって言われたら別だ。
『八欲王』が彼らの既得権益を害したからって、はいそうですかと連帯責任を受け入れる義理なんてありはしないんだ。
……てかそもそも、私達ユグドラシルプレイヤーをこの世界に呼び出してるのって、多分お前らドラゴンだよね?
覚えてるぞ。『常闇』と『朽棺』、両方の竜王が言ってた『竜帝の汚物』ってセリフ。
これってつまり、その『竜帝』とかいう奴が何かやらかしたせいで私達がこの世界に来るようになったってことだよね? もちろんだけど、私達に何の断りもなく。
私達が喜んでるかどうかは別として……勝手にこの世界に呼び出し、というか攫っておいて、『汚物』なんて呼ばれて殺される運命を受け入れろって? アホ抜かせって話だ。
その『竜帝』がどんな意図で『百年の揺り返し』の仕組みを作ったのか知らないが、龍王達にとって都合のいいようにだけ動いてやる義理なんかあるもんか。やれること全部やって抵抗してやるし、何だったら返り討ちにして好き勝手やるに決まってるだろ。……ああ、『八欲王』はそれやったのか。
結論として、私達がこの世界で色々やることに関して、なんら竜王達に申し訳なく思って遠慮する必要はないものとします。
さて、そんな感じで……ちょっと脱線しちゃったけど、かつての『始原の魔法』の仕様と、今の仕様、その変化の理由がわかったわけだが……ここで一度、今私達が使っている『始原の魔法』について見てみようと思う。
オルガ達がまず使い始め、さらにその後私達も使えるようになった、私達が使っている方の『始原の魔法』。
竜王達が使う方のそれと同じく、『魂』を消費して使ってるわけだが……それ以外にも、仕様上違う部分がある。
さっき触れた、『世界と接続して使う』という点……そして、その結果として『ワールドコネクター』なる職業を保有することになるという点だ。
これは、以前に私がちょっとだけ触れた気もするんだけど、私達が覚えて使っている『始原の魔法』は、厳密には、私達に使いやすいように最適化されたものであり、元々の『始原の魔法』とは似て非なるものだからだ。
『魂』を消費して発動する点こそ共通しているものの……『ワールドコネクター』を持っていない私達は、世界と繋がっているわけではないし、演算も世界に任せることはできない。
まあ、位階魔法に比べて発動は早いので、もしかしたらちょっとくらいは繋がってるのかも……あるいは、発動の瞬間にちょっとだけ繋がったりしてるのかもしれないが……それでも基本的には『魂を消費して発動する魔法』の枠を出ない。
しかしその威力や汎用性は健在だし、錬度が高くなれば、『世界の護り』と竜王達が呼ぶ、世界級アイテムと同列の『干渉を防ぐ』系の防御性能も発揮できる。
そして、『最適化』された魔法であるが故の強み。ノウハウがある以上は、この先いくらでも自分達に合った形の魔法や戦闘技能を開発できる。
それこそ、私達が普段使っている『位階魔法』と同じ感覚で使えそうなレパートリーを増やしたり、あるいは各々が得意な戦術を強化するようなものとかもね。
例えば、『
持続時間はだいぶ短いけど、発動中は尻尾薙ぎ払いの一撃で、レベル80台のタンクモンスターをワンパンするほどに攻撃力を強化していた。
アレが例えば、セバスとかミルコが使えたらと思うと、そりゃすごいことになるよ。2人とも、威力だけじゃなくてスピードも持ってるし、連続攻撃なんか叩き込もうもんなら、それこそタンク役の前衛のHPをあっという間に削って……なんてこともできるかもだ。
まあ、攻撃の重量が違うから、単純に同じ威力として比較はできないだろうけどね。
まあ現時点でも、既に【武装硬化】という強力な攻防力強化手段があるけどね。『神技』だから、習得難易度はかなり高いけども。
それでも……今もうすでに、習得方法や応用方法も含めてノウハウが確立されている以上、これらがアインズさん達の手札に加わる日もそう遠くはない。
その時が今から楽しみだ。
アインズさん達も、『実に有意義な時間だった』って喜んでくれたし、私としても今後が楽しみになる発表会だった。
ありがとうデミア。予算いくらでも出すから、その調子でこれからもよろしくね。
……いい雰囲気のところに水を差すというか、余計なこと言うかもしれないけどさ。
こういう感じでの戦力強化ないし軍拡は、絶対進めなきゃいけないことだから、ね。
そう遠くない未来……アインズさんも含めて、私達の存在はいつか『竜王』共にバレる。
今までは上手いこと私達『空中庭園』は隠れ通してきたけど、それがいつまでも続けられるとも思えないし……それでいて、あいつら自分達以外の強者が世界に現れることに敏感かつ排他的だからな。中でも、ユグドラシル関連の力に対しては特に。
これでもし、私達が取るに足らない力しか持っていないならまだしも――まあ竜王によっては、それでも関係なく『ユグドラシル出身』ってだけで殺しに来そうだけど――レベル100のNPC他戦力が多数在籍し、ギルドホームも一緒で、おまけに世界級アイテムもいくつも保有している勢力となれば、絶対に放っておいてはくれないからな……。
将来的に、対『竜王』を想定して備えておく必要は絶対に、ある。
今、デミアの研究が佳境に入っている、例の秘密兵器……ないし、決戦兵器も含めて、ね。