オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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少女の退屈、竜の覚悟、(あやかし)の野望、そして【自主規制】

 

 

 スレイン法国、某所。

 神々の秘宝が数多く収められている『宝物庫』の扉の前で、その番人をしている少女……アンティリーネ・ヘラン・フーシェは、手の中にある玩具をいじりながら、ため息をついていた。

 

「ねえ、またエルフ王国と戦争になったりとかしないの?」

 

「物騒な上に縁起でもないことを言わないでください……やっと今まで、かの国との戦争に費やしていた力を他のことに使えるようになったのですから」

 

 ため息交じりにそう返すのは、精鋭部隊『漆黒聖典』の隊長。

 この法国において、秘匿されている特殊部隊の面々の中でも最強の実力を誇る、人類の切り札のうちの1人。

 

 しかし、目の前にいるこの少女は、そんな彼をも軽く上回る実力を持っている上、かつて模擬戦で完膚なきまでに叩きのめされたことや、未だに稽古の場で一度も勝てていないこともあり、立場を抜きにしても頭が上がらない、といった間柄だった。

 

 そんな彼であるが、『聖典』以上に徹底的に秘匿されている存在である彼女……『絶死絶命』のことを知る数少ない存在であることから、こうして言葉を交わすことも多い。外の世界で起こったことなどについて、彼女に報告する役目を負っているのも大抵彼だ。

 

 その彼から見て、今日の……いや、ここ最近の彼女は退屈で不機嫌そうにしていることが明らかに増えていた。

 ちょうど……元エルフ王国、現『ヘイムダール王国』に行ってから、そしてあのエルフ王の処刑が終わってから、こうなったように思える。

 

「あの男が死んだのはよかったけれど……また退屈な日々に逆戻りだもの。何か面白いことでも起こってくれないかな、って思っても仕方ないでしょ? それで、何か話題はないの?」

 

「残念ながら、あなたの興味を引けそうなことは何も……」

 

 それを聞いて、はぁ、と今度はアンティリーネの方がため息をついた。

 

「つまらないわね……エルフ王国の時だって、結局私に出番は来なかったし……最初から最後まで平和だったから、妹と遊ぶこともできなかったわ」

 

「妹……? ……ああ、現国王のユリーシャ女王のことですか」

 

 目の前にいるアンティリーネと、『ヘイムダール王国』の現国王・ユリーシャは、ともに前エルフ王ことデケム・ホウガンの娘であるという共通点がある。

 生まれたのはアンティリーネの方が早いため、彼女が姉、ユリーシャが妹になるわけだ。

 

「彼女、たぶんあなたよりは強かっただろうし……戦ってみたかったんだけど、理由がないからダメだったのよね。まあ、戦えたとしても……女だから、仮に私に勝ったとしても孕ませることはできなかったわけだし……」

 

「……あなたが、負けていたかもしれないほどだと?」

 

「わからないわよ。だから、戦えなかったんだもの。まあそもそも、彼女魔法詠唱者(マジックキャスター)らしいから、一概に比べるのは難しいのかもしれないけどね……っと」

 

 不意に言葉か止まったかと思うと……彼女が手の中でいじっていた玩具……『ルビクキュー』と呼んでいるそれが、1面の色がそろったところだった。

 他の面は、まだまだ全くのバラバラだが。ここからどれをどうやれば色が揃うのか、到底予想もつかないほどだ。

 

「上手くいかないものね……何もかも」

 

 この世界の頂点の存在として君臨する『竜王』達にその存在を知られてはいけない彼女は、『よっぽどのこと』がない限り外に出ることはできない。

 次に神都の外に出ることができるのは、果たしていつになることか。考えてもわからない、夢のない未来を思い……アンティリーネはまたため息をついた。

 

「私が敗北を知ることができるのは……私より強い男の子供を(ここ)に宿せるのは……いつになるのかしらね……」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 一方その頃。

 こちらは……アーグランド評議国、某所。

 

(王国で起こったという『魔王』の騒ぎに……エルフの国で起こったクーデター、それに伴う法国との停戦……世界が、騒がしくなってきたな……)

 

 白く輝く巨体を横たえて、眠っているように目を閉じている竜がそこにいた。

 ここ評議国の永久評議員の1人にして、この世界で最強の存在である『竜王』の一柱……『白金の竜王(プラチナムドラゴンロード)』ツァインドルクス・ヴァイシオン。

 

 彼はここで、六大神や八欲王、そして十三英雄の時代の秘宝の数々を守っているため、ここを動くことができない。

 外の世界で何かしらの活動をするときは、自由に動ける立場の知人・友人に声をかけるか、『始原の魔法』で作った、分身となる『鎧』を作り出し、それを遠隔操作することで何かを調べたり、敵を倒したりするという手段を取っている。

 

 しばらく前、かつて共に旅をした――ただし、それも『鎧』を使って正体を隠してだが――友人の1人、リグリット・ベルスー・カウラウに、とある頼み事をしたところではあるが……その成果もまだ出ないうちに、彼からしても見過ごすには気になりすぎる出来事があちこちで起こり始めていた。

 

(王国に現れたという『魔王』……『ぷれいやー』か、あるいは『えぬぴーしー』なのか……痕跡が残っていないから調べようがない。英雄級とはいえ、現地人の冒険者が対応可能な程度の力なら……そこまでではないのかもしれないけれど)

 

 数百年の時を生きるツアーは、ユグドラシルプレイヤーの脅威というものを知っている。

 ゆえに、ちょうど『百年の揺り返し』の時期にある今、世界のあちこちで起こっている変化に対して敏感になっていた。

 

 友人や、竜王としての配下の者達を動かして情報を集め、いつ現れてもおかしくないその存在を探している。情報を集める中で気になったことがあれば、さらに多くの情報を集めて、それが『ユグドラシル』関係であるか、対処すべきものかどうかを考え、判断する。

 

(王国よりも気になるのは、エルフの国の新たな女王の方だ……あの国に元居た王は、『八欲王』の血を引く子孫……評判通りそれを一対一で倒したのなら、女王もまた、相応に強大な力を持っていることになる)

 

 もし、それが世界の均衡を崩すような……かつての『八欲王』と同じく、世界を穢すような動きをする存在であれば……対処する必要がある。

 それを見極めるために、幾人かの配下を動かしたが、情報の集まりは芳しくない。集まらないわけでは決してないのだが、無難な、特に何か気になるところがない情報しか集まらない。

 

 その情報の通り、何もなく平和なだけなのなら問題もないのだろうが……妙な胸騒ぎを覚えていたツアーは、近いうちに『鎧』を使って自分が出向いて調べ、可能であれば直接。女王ユリーシャを見極めるべきか、と考えていた。

 

(王国の方は……キーノに聞けば、いくらかわかることもあるかもしれない。それよりもやはりエルフの国だ。けれど他にも、世界のあちこちに『神人』じみた強さの冒険者や傭兵の噂がちらほら出てきている。もっともそのほとんどは、『揺り返し』の時期以前のことだから、現地人か、あるいはまさに『神人』なのかもしれないが……今のところ、ほとんどが善良な評判を主に聞くのが救いだな。1つ1つ、調べて見極めていくしかないか。今が平和でも、油断はできないな……)

 

『プレイヤー』は、強い者もいれば弱い者もいる。善良な者もいれば邪悪な者もいる。扱いやすい者もいれば、狡猾で油断できない者もいる。

 ゆえに、早めにその存在を察知し、見極め、場合によっては『対処』しなければならない。かつてプレイヤー達が好き勝手にやった結果として世界にもたらしたものの大きさを知っているツアーは、それを成すためにどんな手段が必要になろうとも、迷うつもりはなかった。

 

 

 

 退屈で停滞した世界を打ち破ってくれるような、自分の求める『敗北』を教えてくれるような出会いを待ち望んでいるアンティリーネ。

 

 世界の変革を、特にユグドラシルプレイヤーの力によってもたらされる混乱と破壊を許さない、それが世界を蝕む前に打ち砕くために目を光らせるツアー。

 

 2人にとって、そしてこの世界にとって、大きな転換点となる出来事が……実は、もうすぐそこまで近づいてきていることを……まだ、誰も知らない。

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 ニューコロロ空中庭園が中枢部『煌皇郭』。

 そのさらに中枢に位置している、最高支配者ラストにゃんにゃんの私室。

 

 スリーティアーズ(お茶会の時に茶菓子を乗せる3段のスタンド的なアレ)のお菓子をぱくつきながら、部屋の主であるラストは、腹心であるカリン、デミアの2人と話していた。

 

「先の『エルヘヴン共栄圏』の樹立や、クーデターからの『ヘイムダール王国』の発足……私達の活動も、割と表側に大きく出るものが増えて来たわね」

 

「転移当初から表側に影響力を強め続けてるナザリックとの関係もあるし……このままいけば、私達『空中庭園』の存在が……まあ、場所は別としても、知られることになる日もそう遠くないわね」

 

「そうなったらそうなったでやり方を考えるだけだから、全然かまわないよ。むしろそれを見据えて、各地への接触の仕方や今後の付き合い方を考えておこうか」

 

 言いながらラストは、手元にあったケーキを1つ食べ終わったので、スリーティアーズの一番下から新たにケーキを取る。

 それでその段は空になった……と思った直後、新たにいくつもの、さっきまでとは違うケーキがそこに現れた。

 このアイテムはかつて空中庭園にいたギルメンの1人が作ったもので、収納機能と自動補充機能がついているため、段が空になると自動的に在庫からわんこそばのごとく補充されるのだ。

 

 そんな面白アイテムで目を楽しませつつ、ケーキで舌も楽しませながら、ラストは続ける。

 

「ま、そんなこんなで……我が『空中庭園』も方針を変えて、今後はそこそこ表側に出ていくことになると思うから、後で色々打ち合わせしようね。まあ、そんなすぐにじゃなくて、今後数十年から数百年かけて徐々に、って感じになると思うけど」

 

「この世界に来て400年経った今、方針転換ってこと? 今までは面倒ごとを嫌って、専守防衛+ちょっと息抜き程度以外では極力外の世界には関わらない方針だったのに……いやもちろんあなたがそうしたいというなら止めないけど、どういう風の吹き回し?」

 

「別にそんな深い理由じゃないよ。いつまでもこのままじゃいられないのは最初からわかってたことだからね……いろんな理由で」

 

 1つ1つ、簡単に、ラストは語っていく。

 

 まず、今現在『空中庭園』の……民達が暮らす『城下町』について。

 400年前から移民を受け入れ続け、まだまだ余裕があるくらいに広大な居住可能区画なわけだが……それも無限ではない。

 

 現時点で7割と少しほどが埋まっている。このままいけば、後2~3世紀くらいでいっぱいになるだろう。

 定期的に区画整理などを行っているので、そのタイミングで高層住宅などを作って縦に伸ばせばまだもう少し伸ばせるかもしれないが……いつか限界は来る。

 自分達に従い、自分達に貢献してくれる民を住まわせる土地が外に要る。

 

 加えて、ラストがこの400年間で、直接産んだ子供だけで8,000人、そのさらに子孫たちを合わせると、存命である者達だけでもゆうに数万人になるわけだが……そのうちの割と少なくない数が外の世界で暮らしている。

 ラダトーム王国の王家であったり、竜王国で大暴れしている英雄だったり、リ・エスティーゼ王国の裏社会で幅を利かせていたり……それぞれに楽しく暮らしている。

 

 彼ら彼女らは今、この『空中庭園』との繋がりについては徹底的に秘匿しているわけだが……カバーストーリーやペーパーカンパニーを用意してごまかすにも限度があるし、そういった『設定』の中で生きるのが窮屈に思える者も中にはいるだろう。

 

 父祖ならぬ母祖であるラストの安全と安寧のためを思えばということで我慢している子達も多いようだが、できるなら大手を振って『自分は空中庭園の出身で、ラストにゃんにゃんの息子・娘だ』と名乗れるようにしてやりたい。

 

 ちょうどつい先日も、市井の女の子との間に、種族も立場も超えて愛をはぐくもうとしている子供が1人相談に来たことだし。

 帝国の方には、民間ならともかく貴族などの中枢部への伝手はあまりないのだが、貴族ではなく元・貴族らしいので問題はないだろう。その彼女さえ、色々と受け入れてくれれば、だが。

 

 ちなみに、子供達に『そんなことしたくない』『彼女の子供とか逆に知られたくない』的な言い方・態度で否定された場合、ラストは泣くかもしれない。

 

 割と逆マザコン(ちょうどいい言葉が見つかりません)が酷い母がそんな風に考えているわけだが……ラストが『プレイヤー』であり、現在はどこにも知られていない多くの技術や、本気で世界を相手に戦えるレベルの戦力を潜在的に保有していることなどから、現時点ではそれ――世界に自分や自分の縁者の存在を認めさせること――は難しい。

 

 いろいろなしがらみももちろんそうだが……最大の障害は……

 

竜王(ドラゴンロード)、ね」

 

「そう……この世界の支配者、ないし調停者気取りのトカゲ共。ふふっ、我ながら乱暴な言い方だとは思うけど……最近マジでこの表現が的確だと思えて来ててさあ」

 

「私も賛成よ? 私達がいわゆる『外来種』で、余所者に好き勝手されるのを嫌っているっていう点を差っ引いても、あいつらちょっとうざったいもの」

 

 デミアが紅茶を飲みほすと、すかさず空になったカップに、メイドのメイドリーが新しい紅茶を継ぎ足した。

 その淹れたての香りを楽しみながら、デミアはにやりと笑って続ける。

 

「そもそも……私達がこの世界に来た原因自体、竜王(あいつら)にありそうなのにね」

 

「『竜帝の汚物』だったかしら……また随分な呼び方をしてくれるものよね。まあ、連中からすれば、八欲王がやったことは到底看過できないことで、それと同郷である私達を警戒するのもやむを得ないことではある……けれど、だからといって自分達が全てを決める権利を持っていると勘違いしているのはいただけないわ」

 

「そういうこと。こないだデミアが講義で話してくれたことだけど……あいつらが元々持っていた『始原の魔法(ワイルドマジック)』っていう既得権益も相まって、この世界の支配者ないし代表みたいな立ち位置を自認してるからね。ま、力が本当にものを言うこの世の中で、本当に向かう所敵なしな一強状態だったなら、それも間違っちゃいなかったんだろうけど……」

 

「私達ユグドラシルの者達がいる以上、そうとは言い切れない。自分達にとって都合がよく居心地もいい『今』を脅かす存在だから、私達を『汚物』なんて呼んで悪者扱い、自分達こそが大義ある断罪者だと叫んで襲ってくる。……本質は、弱肉強食が通用しなそうな相手を難癖付けて排除しようとしてるだけなのに……ふふっ、理解しちゃえばみじめなものね」

 

「果たして彼ら自身、その自覚があるかどうかわかんないけどね……『朽棺の竜王(エルダーコフィンドラゴンロード)』とか、ただの傲慢の塊だったし。案外本気で、自分達こそがこの世界を守る最後の砦なんだ! って使命感とかに燃えてる奴もいるかもしれないじゃん」

 

「だとしても私達がやるべきことは変わらないわ。そうでしょ、ラスト?」

 

 カリンの問いかけに、ラストはこくりとうなずいて、手元の紅茶を一気に呷った。

 そして、

 

 

 

「建前でもなんでもなく、私達はこの世界に別に迷惑をかけるつもりはない。なんなら、色々な形で助けてあげたり、貢献する用意すらある。そのための力も、技術もある」

 

「私達とナザリックの力で、この世界に生きる者達の暮らしは、今よりも便利で、安全で、豊かになる。もちろん、世界全てが等しくとはいかないだろうけど、それでも今のように、圧政や貧困に泣く人は少なくなる。してみせる」

 

「もちろん、私達は別に、この世界をよくしたいとか、人々の役に立ちたいとか思ってるわけじゃない。ただ、私達や子供達をこの世界で受け入れてほしいから、半ばその対価として繁栄を、未来をもたらす用意がある、というだけ。……それとは別に、皆に笑ってもらえるのは嬉しい、っていうのもあるけどね」

 

「けれどそれを、一握りの自称・世界の調停者達が、自分達の既得権益のためだけに妨げ、力ない民達がいつまでも『自分達以下』である停滞を望んで、民達が泣いて苦しんで絶望し続ける今を……その機会があるにもかかわらず、改善の機会を踏みつぶし、あまつさえ、その自覚すらなく君臨し続けるというのなら……」

 

「こちらとてそれを排し、私達が支配者の……あるいは『神』の座に就くことに、何のためらいもありはしない」

 

 

 

「私達はやりたいようにやるだけ。それを受けて、連中がどう出るか次第……でいいのね?」

 

「さすがカリン、話が早い。何も問題なく物事が進むならそれでよし……けれど、あいつらが『期待通り』に動いてくれるなら……その時は残念だけど……本っ当に残念だけど……」

 

 一拍、

 

「カリン。あなたにちょっくら『覇道』を歩んでもらうことになるかもね」

 

 それを受けて、ラストの目の前に座る、金髪ツインドリルが特徴な小柄な忠臣は……

 

「もっとも。あなたにとってはその方が好みだし、得意なはずだけどね……」

 

 見る者を理由なく圧倒する、凄み迸る笑みを浮かべていた。

『ようやく出番が来た』とでも言いたげな、こみあげるものを抑えきれない、とでもいうような……そんな笑みだ。

 

(やっぱ、覇道(そっち)の方が好みだったか……400年も我慢させちゃってごめんねカリン。多分だけど……ここから先、ガンガンあなたの出番が来ることになるから、よろしくね)

 

 先程は『もしも』などと前置きして話していたが、ラストは……さらに言うならカリンもデミアも、竜王達がこの先、自分達のやることを座して見ているはずなどないと半ば確信していた。

 遠からず、今の時代に残る『竜王』達と、ナザリックと空中庭園の連合軍が戦い、鎬を削るような……そんな時がくると。

 

 だからこそその時になれば、設定上『乱世の奸雄』たる素質を持っているであろうカリンを解禁し、思う存分暴れさせるつもりだった。

 

 そして同時に、今デミアが研究している……その頃には完成しているであろう、対竜王用『決戦兵器』の投入も。

 

「で……デミアの方は? 『世界樹』の開発、上手くいきそう?」

 

「まっかせなさい。もうそろそろバグ取りも終わって、完成版がロールアウトしそうよ。もっとも最初は実証実験からになるけど……どこでやるか考えておいてね?」

 

「オーケー……ひとまずはもうちょっとの間、拠点フェイズで準備を進めるとしますか……戦いが近いってのに、柄にもなく楽しみに思っちゃうもんだなあ……ふふふっ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、それとカリン、もう1つ頼みたいことがあったんだった」

 

「? 何かしら?」

 

「煌皇郭のゲストルーム区画に、半分私室扱いで固定で使用できる部屋を二部屋用意してほしいの。できるだけ私の部屋の近くに」

 

「……それは、何で?」

 

「前に話したでしょ? ナザリックとの『人材交流』の件。アレの関係で、近々出向して来る子がいるから、そこに住んでもらおうかと思ってね。『仕事場』とは近い方がいいでしょ?」

 

 それを聞いて、さっきまでの表情から一転して三白眼になり、呆れの混じったため息をつくカリンと、『わぉ♪』と声を上げて面白そうな表情をするデミア。

 

「ようやく、アインズさんから通知も済んで、諸々の準備も終わったらしいんだよね……。こないだのデミアの講義に彼も来てたでしょ? その後に私のところに寄って話してくれてさ……」

 

 

 

『だ、ダークエルフの子供は今あんまり『空中庭園』にいないって聞きました! 『エルヘヴン』にいっぱい出ていっちゃったから、ラストにゃんにゃん様がちょっと寂しそうにしてるって……。ぼ、僕でよければ……またダークエルフがここに増えるように、いっぱい頑張りますから!』

 

 

 

「……だってさ♪ あ~、もう、恥ずかしそうにしながら、その実やる気満々な初々しい子って、どうしてあんなにかわいくておいしそうに見えるんだろ……待ち遠しいなあ~っ! そんなわけでカリン、部屋よろしく! 私と、多分シャルティアも別に気にしないけど、マーレが恥ずかしいかもしれないから、防音はしっかりした感じで!」

 

「あなたも気にしなさい。はいはい、わかったわよ。やれやれ、また助産院と託児所と『花園』が忙しくなるのか。『竜王』の時と同じかそれ以上の繁忙期だって伝えておくわね」

 

「あざす!」

 

 

 

 

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