次章については、しばしお時間をいただいて色々ストーリーとか考えた上で、なるべく早く更新再開させていただくつもりでおりますので、よろしくお願いします。
【異世界転移400年目 “”日目】
今日は、アインズさんがマーレの子供を見に来た。
色々あってなかなか来られなかったけど、ようやく仕事その他諸々が片付いたからってさ。
乳児院ですやすや眠ってる、私とマーレの第一子を見て『おぉ……』って何か感慨深そうにしていた。
一緒に見てたマーレの頭をなでて上げて、『よく頑張ったな』ってほめてあげてた。マーレも嬉しそうにして、ふにゃりと緩んだ笑顔を見せていた。
……ちなみに、アインズさんがここに来るまでの数日間で、マーレ、またしても私のお腹に仕込むことに成功しまして……今ちょうど私妊娠してます。
今日これからまた『花園』に行って、今日中に産む予定です。
そう伝えたらアインズさん、何て言っていいかわからなかったんだろうな、フリーズして……ぎこちなく、もう一度マーレをなでてあげてた。
……多分、心の中では『が、頑張りすぎじゃない?』とか思ってたと見た。
数日以内に2回目の抽選結果が出るので、楽しみにしててね、って伝えたら『言い方ァ!』ってツッコミ入れられました。反省。
ところで今日、私が前みたいにすぐに産まずに、昼頃になるまでアインズさんを待っていたのには、理由がある。
花園に行けば、急速に赤ちゃんが成長して身動きとれなくなっちゃうので、その前にアインズさんと済ませておきたい話があったんだよね。
まあ、重要っちゃ重要だけど、そこまで真面目な話でもなくて……息抜きとか趣味の域を出ない話である。なので、変にシリアスな空気とかは全然ない。
ただ、私がアインズさんにゲーム貸してあげる約束してたってだけで。
どういう意味かって? そのまんまの意味だよ。
ゲーム。チェスとかトランプみたいな、ボードゲーム系のアレじゃなくて……電子画面を見ながらピコピコやる、テレビゲームとか携帯ゲームとか、アレ。
ほら、こないだアインズさんに『遊享郭』の案内した時、しれっと『ゲームセンターがある』だの、『インベ〇ダーとかパ〇クマンが遊べる』だの、普通に言ってたじゃん?
あんな感じで、
……何でかって言うとね……私もよくは知らなくて、『多分こうだったんじゃないか』的な予想になっちゃうんだけど……うちのギルメンの中にいた、1人のレトロゲーム狂のせいだと思う。
テレビゲームってさ、今から……あ、この言い方だとややこしいな。
ええと……『ユグドラシル』みたいなD-MMO的なゲームが出始めるより100年以上前、まだ地球環境がほぼほぼ正常に近かった頃から存在してたわけじゃん?
その頃のゲームには、『何bit』っていうとんでもない低容量のデータで稼働してた、けどそれがあったからこそ今日のゲーム文化につながったと言える、不朽の名作がいくつもあったわけよ。
そのギルメン、その手のゲームが大好きでさ。
その時代や、そのちょっと後の時代のゲームって、今の時代では、サブスク加入時の特典で、無料でいくらでもダウンロードし放題的な扱いになってたものがたくさんあるんだよ。
RPG、STG、FPS、SLG、SVH……上げていけばきりがない。
で、そのギルメンは、そういうの片っ端から集めて遊んでたらしいんだが、1つ1つのデータ容量が少ないのをいいことに、他の映画とかアニメの動画データと同じく、この『空中庭園』のデータベースにそれらを圧縮状態でいくつも保管してたんだよね。
しかし、著作権切れの映像データとかなら問題なくても、さすがにゲームのデータまで……ゲーム内でゲームをやるような真似が運営からどう判断されるかはわからないし、最悪垢BANだってありえたわけで……試すには至らず、データだけが『図書館島』の特大データバンクの中に眠っていたのである。ずっと。
それを思い出した私は――転移してから200年以上経ってから『そういえば』ってなった――データベースの奥の方にしまわれてたそれらを、デミアやアカネに手伝ってもらってサルベージ。
それとは別に、入れ物となる『筐体』や『ゲーム機本体』をそれっぽく作り、解凍したゲームのデータを組み込んで、コントローラー設定を繋げて、プレイできるようにしたのである。
画像や動画を視聴する際のクリスタルのシステムを応用したら奇跡的に上手くいった。
結果、ゲーム内ゲーム……ではなく、異世界でゲームができるようになりました、というわけ。
こないだ言ったように、ゲーセンで筐体やゲームテーブルで遊ぶことができるものもあれば、携帯ゲーム機で手に持ってプレイできるものもある。
テレビ……はないので、
そしてどれも面白い。
もちろん好き嫌いはあるだろうし、グラフィックとかは今(ユグドラシル現役時代時点)に比べればまあ……しょぼいんだけど、それでもストーリーとかはしっかり作りこまれてるのも多くて、普通に楽しく遊べる。
むしろボリュームが少ないからこそ、短時間ないし短期間で、暇な時間にさくっと遊べていい。
……たまに鬼みたいな難易度のゲーム混じってて、クリアできなくて泣きそうになるけどね……ロンダルキア……ザラキ……メガンテ……うっ、頭が。
あと、面白すぎてはまってしまって、夢中になりすぎて引きこもる可能性があるのがまた……注意が必要な点ではある。
……実は私の子供達にも、何人かゲーム中毒になって引きこもっちゃったのがいてさ……幸い、私がきちんと説得したり、最悪、お兄ちゃんお姉ちゃん達が肉体言語で叩き直したから、致命的に手遅れになった子はいないんだけど……。
子育てって難しいな……私自身廃ゲーマーだったから、あんまり強く注意とかできなくて……。
……そして私自身、暇な時はゲームとかやるしね……だって楽しいもん。
でも私の場合、ゲームへののめり込み具合は、
今思えば私って、あのひどすぎる
いやもちろん、ユグドラシル自体大好きだったし楽しんでたけどね?
でもそれはそれとして……今のこの世界は、ゲームじゃなくても色々楽しめるもの、のめりこめるものがあって、会社よりよっぽど大変だけど。すごくやりがいがある仕事もあって……って感じなので、そこまでゲームに重きを置いてません。
今言った通り、時間がある時の暇つぶし程度です。
……アインズさん、ナザリックの運営その他、結構大変でストレスたまってそうではあるけど……ほ、ほどほどに……ね?
……しっかしそう考えると、NPCですらなく、この世界に来てから生まれた子供達なのに、引きこもり寸前になるほどゲームにはまったあの子達は、よっぽど好きだったんだな……。
まあ、さっきも言った通り私もゲームは好きだから、それを悪く言うつもりはない……というかむしろ、共通の趣味を持ててお母さんとしては嬉しいくらいだよ。
でも、だからって修行や勉強をおざなりにしたり、仕事をすっぽかしたりするのはNGです。
なのでそういう子達は、心を鬼にして、時々強制参加の訓練とか勉強会に放り込んでます。
やるなとは言わん。節度を持って遊べ。全くもう……。
特に、ガヴリールとダムストー。2人とも、ちゃんとやればできる子なんだからさあ……。
ガヴは最初はめっちゃ純粋で真面目でいい子だったのに、
なお、MMOといってもオンラインでつながってる範囲は『空中庭園』の中だけなんだけどね。ほぼローカル通信みたいなもんである。
で、ダムストーの方は、ゲーム自体にはまりすぎて……ってわけじゃないんだけど、本人が自分に自信がなくて引きこもりがちで、結果としてインドアで遊べるゲームにのめり込んでる感じ。
こっちは一応外に出る意思がなくはない(怖いけど)が救いなわけだけど……もうちょっと自信持ってくれてもいいと思うんだけどなあ。実際、弱くはない……どころか、本気出せば全然強いし将来性もぴか一なんだからあんた。
一応今は2人とも、(ガヴは嫌々だけど)最低限修行や勉強はするようにはなった。私が本気出して向き合って説得したおかげで。
ダムストーは割と聞き分けいいので苦労はしなかったけど(むしろ本人の性格が問題なので)、ガヴは割と性格自体が不良路線だったから苦労したかも。
そんな彼女をどうやって説き伏せたかっていうと、彼女達が得意なゲームで完膚なきまでに叩きのめして『負けたんだから言うこと聞け』って言ってあげただけである。
勉強とか修行とかの分野でお説教されるとか折檻されるならまだしも、自分が好きで自信がある分野で、母親に負けるとは思ってなかったのか、ショック受けて……それ以降、比較的素直に言うこと聞いてくれるようになったよ。
ゲーマーとしての年季が違うんだよ、年季が。
ま、一番手っ取り早くて確実なのは……サルベージした新たなゲームのデータを餌にして『コレで遊びたければまじめにやれ、
……これも、母親としての一つのテンプレートか……。
☆☆☆
……などとラストが日記を書いていた頃。
『練武郭』の奥にある、高レベル用の戦闘訓練区画にて。
「だぁあ―――っ!? なんでそこでそっち動くんだよこのデクの坊! スキル1発無駄打ちしちゃったじゃんかぁ!」
「敵相手に喚いても仕方ないでしょガヴリール! もう1回よく狙ってちゃんと撃って! アレ相手に一番相性いいの今のところ君とダムス……あっやばいそっち行った! 逃げてダムストー!」
「ひいいいい! すいませんすいません! ダメージ出しすぎてタゲ管理ミスしちゃいました! 作戦狂わせちゃってすいませぇぇえぇんっ!」
「いや謝るのはいいから逃げてって……いや器用だな。なんで空中で土下座しながら攻撃全部回避できてるんだあの悪魔っ子」
「ぼさっとしてないでエオン、あんた早くデコイスキル使ってタゲ戻して! このメンバーだとタンク役あんたしかいないんだから!」
「僕本来は
空を飛んで攻撃を回避しつつ、手に持った弓矢で雷の矢を放って敵モンスターを攻撃している、ふわっとした金髪を持つ天使の少女。
やや口が悪いが、戦場全体を見渡してチームに司令塔として指示を出しているらしい。
そのやや後方で、こちらも空を飛び回る――若干逃げ腰というか、ビビっているに見える――うねった角と蝙蝠のような羽、先のとがった尻尾が特徴的な、悪魔の少女。
天使の少女と同じく弓矢を使い、こちらは燃える炎の矢を放っている。
地上では、両手で大きな盾?をもって敵の攻撃を防いでいる1人のエルフが、ぼやきながら防御系と挑発系のスキルを使って、敵である大きなドラゴンの攻撃を自分に引き付けていた。
その隙を狙って、悪魔と天使の少女達がスキルや魔法で攻撃していく。
その2人……エルフの少年エオン、天使の少女ガヴリール、悪魔の少女ダムストーは、やりとりこそ若干凸凹調子でありつつも、よく見ていると個々の技能はかなり高く、戦闘も割と危なげなく進めることができているのがわかる。
教官役(兼、さぼらないように見ている監視役)として立ち会っているゼルエルは、その様子を見て、ふぅ、と小さくため息をついていた。
「全く、いつものことながら毎度毎度……。エオンはもちろんだが、ガヴリールもダムストーも、真面目にやれば十分戦えるのだから、普通にやればいいものを……」
☆☆☆
それから数週間が過ぎた、ある日のこと。
次の作戦に備えて、諸々の準備に力を注いでいたナザリックの方に……動きがあった。
というよりも、ナザリックが動いたというよりは、外部からの干渉を受けたために動くことになった……というのが正しい。
ナザリックに、複数の『ワーカー』チームが侵入してきたのである。
発端は……帝国政府が、領地近くにある、これまでの記録にない謎の墳墓のような遺跡――もちろんナザリックのことである――を発見したことだった。
外観など、発見した者達が持ち帰った情報をもとに調べた結果、やはりそこにそんな遺跡が存在した記録は、帝国の歴史上どこにも見つけられなかった。
そのため、その遺跡が何なのかを調べるために……帝国の皇帝は、『
依頼を出す際、間にスケープゴート役の貴族を1人噛ませて、いざという時にはそいつを切り捨ててことを収められるようにした上で。
その動きが全て、当のナザリック側に筒抜けであり……アインズ達が、哀れで愚かな生贄達を、手ぐすね引いて待ち構えているとも知らないで。
そして、調査当日、そのナザリックに進入するワーカーチームは、全部で4つ。
『ヘビーマッシャー』『竜狩り』『ペネレイト』『雷霆』……いずれも、帝国でもかなり名の知れた、実力者達として知られているチームである。
もう1つ、『コラプサー』というチームにも声がかかったが、理由はわからないが、彼女達はこの依頼を受けることはなかった。
無理強いもできないため、この4つのチームが受けることとなった。
名誉、実績、コネクション、そして金……この依頼で得られる(と思っている)ものを頭に思い浮かべて、捕らぬ狸の皮算用でそろばんをはじきながら、彼らは自ら死地へと歩みを進めていくのだった。
その背後で糸を引いている、皇帝共々……自分がどれだけ危険なことをしているか、おそらくは最
さて、この『大墳墓の侵入者』達であるが……とある別な世界線においては、これとは違う4つのチームが挑み、そして散っていったという歴史をたどっていた。
しかし、そこにおいてこの墳墓に挑んだうち、2つのチームは、ここにはいない。
なぜか。
この時既に、その2つのチームは『消滅』してしまっており、依頼が持ち込まれることがなかったからだ。
―――話は、そのだいぶ前に遡る。