オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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そんな親なら捨てちゃえば? いやマジで。

 

 

「お父様! 借金の証文を見せて! 今すぐに!」

 

「ど、どうしたんだアルシェ、藪から棒に……大声を出してはしたないぞ。淑女としてもっと……」

 

「いいから早く!」

 

 

 ―――『リボ払い』っていうのはね……買い物の分割払いや、借金の返済の時に使われる方法の1つなんだけど……毎月一定額の支払いでいいっていう謳い文句自体は嘘じゃないんだけど、実際はとんでもなく危険で怖いもんなんだよ。

 

 

 エオンから、『リボ払い』というものについて聞いたアルシェは……文字通り家に飛んで帰って父に詰め寄っていた。

 半ば押し切るようにして借用書(写し)を確認する。

 

 そこには、恐れていた内容の記載があった。

 

 

 ―――毎月一定額の返済でいいから、パッと見は負担が軽いと思うじゃん? でも、その時に発生している利息と……『手数料』。これが曲者で……月々の返済はまず、元金より先に利息や手数料に充てられるんだよ。

 

 

 それどころか、書かれている内容の一部が……具体的には借入額が、以前見た時と大きく変わっていた。

 

 どういうことなのかと問えば、『他の業者の借金をここでまとめた』とのこと。

 泣きっ面に蜂というしかない状況に、さらに顔を青くするアルシェ。

 

 書いてある元金と利率、月々の返済額、そして『手数料』から……恐る恐る、今の状況を計算していく。

 借用書の日付から計算して、今のフルト家が背負っている借金の額は。

 そして、これからそれを返すのに必要になる期間は。

 

 

 ―――例えば、借りてる元金が金貨100枚で、月々の返済が金貨10枚だとするでしょ? 年利が2割だとして、単純計算で、一年間かけて金貨120枚返せば完済する計算になるけど……実際はさらに毎月手数料がかかってくる。

 ―――月の手数料が金貨1枚だとして、この時点で月々の返済額は実質金貨9枚になる。ここでさらに、一ヶ月あたりに直した利息が金貨1枚ちょっと。最終的に、月々の元金の返済額は、金貨8枚ないくらいになっちゃう。

 ―――最終的に支払う額は……元々の借り入れ額より、だいぶ多くなる。

 

 

 結果は、

 

「うそ……でしょ……!?」

 

 絶望、という言葉ですら足りない現実が、そこに出来上がっていた。

 

 

 ―――もちろん、この仕組みをきちんと理解した上で上手く使えば、正真正銘、普通に便利な支払方法なんだけど……よくわからずに『月々の支払いが安い!』って点だけに気を取られて、結果地獄を見ることになる人が多いんだよね……。

 

 

 

 

 

 数時間後。

 アルシェは、契約相手である貸金業者の事務所に足を運び……現状を確認していた。

 

 家で自分が計算した結果が、間違っていてほしい、と願いながら。

 

 しかし、現実は非情である。

 

 現在の、利息込みの借金総額は……およそ、金貨600枚。

 以前から比べて、この短期間で借金が倍増している。さっき父が言っていた、『他の業者の借金をまとめた』ことによるものだろう。

 

 それだけでも絶望的だが、ここにさらに、設定している支払方法によって発生する『手数料』の負担が重くのしかかる。

 月々の返済額から、その手数料を引き、さらに、年利を元に月ごとに分割した利息を先に返す形で計算すると……元金はほとんど減らない計算になる。なった。

 

 腕利きのワーカーであるアルシェは、危険な仕事である分、高級取りである。月々の返済額も相応には確保していた。

 しかし、いかんせん借金の額が大きすぎ…それにともなって高くなる利息と手数料を支え切れていない。

 

 このままいくと……

 

「今のペースですと、完済までの期間は、およそ7~8年。お支払いいただく総額は、金貨2000枚ほどになりますね」

 

 強烈なめまいがアルシェを襲った。

 

 自分の耳がおかしくなったのか、どうかそうであってほしい。

 そんな彼女の儚い望みは、目の前に出された計算結果の説明資料を目にした瞬間に砕け散った。

 

「そんな……元は金貨600枚なのに……」

 

「ですが、そういう契約ですので。利息は適正範囲内ですし、ただ単に……元金の返済ペースが遅いがゆえに返済に時間がかかる結果としてこのようになってしまうわけです。ですので極端な話、金貨600枚の今の時点で、繰り上げ返済などしていただいて短期間で完済すれば、ある程度、支払総額を抑えることは可能ですよ」

 

 それができれば苦労はない。

 アルシェはそう言いたかったが……言っても意味がないし、みじめになるだけだ。

 

 契約自体が合法である以上、悪いのは、よく考えずにこんな内容で契約を結んでしまった父。そして、最初に証文を見た時に、この仕組みの落とし穴に思い至ることができなかった自分。

 

 そしてさらに絶望的なのは……この計算は、さらなる借り入れの追加を一切考慮していないものである、という点だ。

 借金の元金が現状の600枚のまま、これ以上は利息以外の理由では増えない……追加で借り入れはしない、という前提のもとの計算なのである。

 

 ここに、今後も続いていくであろう両親の懲りない浪費を足せば……返済に『時間がかかる』『支払総額が大きくなる』どころではすまない。

『返済が可能である』という前提が崩れ……破綻してしまう。

 

 それでも、家の現状がこうであると説明すれば……両親も分かってくれるのではないか。

 これ以上は、自分がワーカーとして必死に働いてもカバーしきれないのだから、これ以上に金を借りてまで贅沢することをやめてくれるのではないか。……そうしなければ、本当に、家は終わってしまうのだから。

 どうかそれをわかってほしいと、アルシェは、重い足取りで家に帰りながら……頭の中で反芻するように思い、願い続けていた。

 

 …………望み薄であることは、わかっていた。

 

 

 ☆☆☆

 

 

『何度も言わせるなアルシェ! これは、我がフルト家にとって必要な投資なのだ!』

 

『借金などいちいち気にしてどうする。フルト家が貴族に返り咲けば、たかだか金貨数百枚程度の借金、すぐに返してしまえる。金貸しなどそれまで待たせておけ』

 

『そもそも、貴族である我らに対してそんな利率で金を貸し付け、口うるさく返済だの手数料だのと言ってくること自体が不敬なのだ。全く、所詮は金貸し、下賤の民の卑しい仕事であるな』

 

 

 家に戻り、両親をリビングに呼び、今のフルト家の現状について丁寧に説明し、必死に理解を求めたアルシェに対して……父が言い放った言葉が、これである。

 

 その瞬間、アルシェの心の中で……ぷつり、と何かが切れて、あるいは抜け落ちてしまったのを、彼女は感じた。

 

 ああ、ダメだ。

 もう、この両親には、何を言ってもダメだ。

 この家は……もう、ダメだ。

 

 意固地になって自分に説教をする父。

 その隣に座って、一応は静かに話を聞いてくれていた母だが……彼女も、アルシェの言うことに理解を示してはくれなかった。

 

 父と同じ、あるいは似通ったことを考えているのは明らかで……どちらかというとむしろ、自分に対して『心配性な子ね』とでも言いたげな、やれやれといった目を向けてきている。

 何にせよ、アルシェが考えすぎ、深刻にとらえすぎであり、この先も今まで通りで大丈夫、なるようになる、それで問題ない……そう、母が思っているのは明らかだった。

 

 自分に味方がいないことを理解したアルシェは、両親への、そしてこの家への未練が、ここに至ってすっかりなくなってしまったことを悟った。

 

 何をもって今の状況を『大丈夫だ』などと信じられるのか……本気で理解できない。

 しかし、むしろ理解してはいけないことは理解できた。これ以上、この家にいても……自分や、愛する妹達にとっても、いい結末は訪れないであろうことまで含めて。

 

 

 

 その翌日。

 アルシェは、『歌う林檎亭』に足を運び……仲間達にこのことを告げていた。

 

 フルト家が抱えている借金の現状や、それを知ってなお両親が生活態度を改める気配がないこと。

 そして、今度という今度は愛想が尽きた、ということも。

 

「それで……どうするんだ、アルシェ?」

 

「妹達を連れて、家を出る。今後一切、私は実家の借金の返済には関わらない。お金も入れない」

 

「そうしなさい。そんなろくでもない両親のために、あんたが犠牲になることなんてないわ」

 

「ご両親のことについて悪し様に言うようですが……こればかりはイミーナに同意ですね。このままでは、あなたや妹さん達の未来も食いつぶされてしまいます」

 

 予想、ないし期待通りと言えばそうなのだが、3人はアルシェのその決断を支持してくれた。

 この決断が……4人一組のチームである『フォーサイト』の欠員、ともすれば解散につながるものだということをわかっていてもなお、気にせず『やりたいようにやれ』と言ってくれた。

 

「本当はこんな形じゃなくて、もっとこう……祝福する感じで送り出してあげられると思ってたんだけどね」

 

「ですね……」

 

「? 何の話?」

 

「いや、何でもねえ、気にするな。それよかアルシェ……家を出た後はどうするつもりなんだ? ワーカーをやめるなら……他に働き口が要るだろ?」

 

 家を出た後も、生活していくために、金を稼ぐ必要はある。

 もちろん、今までのように、毎月大金が必要になるということはない。貴族気取りの両親の浪費から解放された以上、姉妹3人で平和に暮らしていけるだけの稼ぎがあればそれでいいとアルシェは思っていた。

 

 もちろん、できることなら妹達には、なるべくいい暮らしをさせてあげたいし、美味しいものも食べさせてあげたい。本人達が望むなら、学校にも通わせて教養を身に着け、友達を作る機会も……まあ、考えればきりがない。

 それでも、今までのように、危険を冒してワーカーをする必要まではないし……万が一があって妹達を残していってしまうようなことは、絶対に避けたい。

 

 自分が依頼に出た先から二度と戻らず、組織だった支援もない請負人(ワーカー)ゆえに、訃報すら届けられず……妹達は、『お姉さまが帰ってきたら一緒に遊ぶの!』『一緒にご飯も食べて、一緒に寝るの!』『ずっと一緒!』『3人で一緒!』などと言って笑い、戻らぬ姉をずっと待ち続ける…………そんな光景、想像しただけで怖気が走る。

 

 だから何か、安全でまともな職について、妹達を養っていこうと思っていた。

 幸い、貴族として色々と培ってきた教養や技能はあるし、魔法の腕は第3位階という、凡人には届かないところまで習得できている。

 極力荒事に関わることがなく、妹達のためにある程度時間をとれる、という条件でも、就ける職は何かしらあるはずだ。

 

「ところでアルシェ、そのこと……あいつには言うのか?」

 

「あいつ?」

 

「エオンさんですよ。家を出るということは、今のように気軽に会うことはできなくなるでしょうし……挨拶などしていかれるので?」

 

「……一応、一言挨拶と……色々ありがとう、って、お礼は言うつもり。これからの見通し次第だけど……もし、家だけじゃなく帝都も出ることになるなら……もう会えないかもしれないし」

 

「帝都も出るの? ……ああ、そっか。そうしたほうがいいかもしれないわけね……」

 

「ああ、確かにな。家から出てちょっと遠くに引っ越したくらいじゃ、その質の悪ィ両親や借金取りが追ってくるかもしれねえしな」

 

 聞く限り、『もう家を出る。金も入れない。私達にかかわるな』と言って、はいそうですかと納得してくれるような両親ではなさそうである。

 

 その両親が頼っているという、タチの悪い金貸しの業者もだ。縁を切ったから何だと、親の借金は子供の借金だと、家を出ても変わらずアルシェにまとわりついて返済を迫るくらいのことはしてもおかしくない。

 

 手っ取り早いのは、それらも手を出せないくらい遠くに行くか、手を出せないくらいの力を持つ者に守ってもらうかだが……今のアルシェには、どちらのあても……

 

「……あのさアルシェ。もしかすると、あんたはあまりこういうの好きじゃないかもしれないんだけど……一応、例えばの案としてね?」

 

「?」

 

「エオンに……助けてもらうってことはできない? や、もちろんお金とか借金の話じゃなくて……家を出た後のことでさ」

 

 イミーナ曰く、おそらくエオンや、その勤め先である老舗の魔道具商会であれば、その両親や、金貸しの粘着からアルシェや妹達を守るのは簡単だろうとのこと。

 件の商会は、帝国の現在の貴族達……すなわち、鮮血帝の粛清に遭わなかった、それなり以上にまともで有能な、依然力を持つことを許されている貴族達と、少なからず繋がりがある。そのレベルの顧客に取引される高級な魔道具をいくつも取り扱っている。

 

 加えて、同じく魔道具関連の取引が縁で、帝国の上位の冒険者チームのいくつかとも付き合いがあり……その影響力はかなり大きい。

 

 さらに、エオン自身がそうであるように、非常に強力で、今言った上位の冒険者チームですら下手に敵に回せないほどのセキュリティをいくつも保有している。

 

 その商会の力なら、アルシェ達を守ることもできるのではないか、と。

 

 アルシェ自身、第3位階の使い手であり、魔法そのものに関する造詣も人並み以上に深い。

 人材としてはかなり優秀な部類と言っていいだろうし、単なる庇護対象としてではなく、商会に勤める従業員という立場になれれば、守ってもらうことに負い目を感じることもないのでは……というのが、イミーナの提案だった。

 エオン自身、いつも付き合いがあるからこそ、アルシェの有能さは知っているだろうし。

 

「エオンには……今でもすごく助けられてるのに、これ以上……」

 

「そういう負い目をなくすために、きちんと『守られても不思議じゃない立場』になっちゃえば、って話よ。とりあえず、挨拶する時に相談だけでもしてみたら?」

 

「ダメならダメで、まあ……その時はその時ということで。これはあくまで私の勘というか印象なのですが……彼は彼で、あなたに遠慮されて秘密にされる、相談してもらえない方が残念がると思いますが……」

 

「ああ、確かに。なんかわかる気するわ」

 

 軽い口調で話してはいるものの、内容そのものは一考の価値あり。

 確かに、エオンなら……彼や彼の勤め先の力や伝手なら、自分達を守るくらいは恐らく造作もないだろう。

 

 ただ、エオンに関しては……前にイミーナが言っていた情報がある。

 もし、あの『もしも』の話通り、エオンがエルフの国の王族に連なる者だったなら……こちらから関わること自体が、大事になって無礼者扱いされるのでは……などと考えてしまう。

 

(でも、普段はあんな風に接してもらってるわけだし、大丈夫……だと思いたい……)

 

「……少し、考えて決めたい」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 

 同時刻。

 ニューコロロ空中庭園『煌皇郭』の一室にて。

 

「とまあ……あのアルシェっていう女の子に関してはこんな感じね。満足してもらえたかしら?」

 

「上出来。ありがとうカリン。エイダにも後で伝えておいて。にしても……なるほど、中々にろくでもない環境で一生懸命に頑張ってるのね。不憫系美少女か……あの子(エオン)、こういうのが好みだったのかな?」

 

「それは知らない。で……どうするの? 今ちょうど、結構ピンチなところみたいだけど……エオンの『いい人』候補のこのアルシェっていう子、助けるの?」

 

「いや、助けないよ。ひとまず保留かな」

 

 あっさりとそう決定するラスト。悩む素振りもなく、即決で言った。

 

「将来の家族候補ではあるけど、今はまだ他人だしね。もし身内になるなら、何のためらいもなく助けるし、『元』を絶って再発もしないようにしてやるけど。今の時点では……どうするのかお手並み拝見、ってところかな。ツアレちゃんの時と同じで」

 

 思い出すのは、数か月前……王都で『ゲゲル』事件の時。1人の女の子を、助ける助けない、で色々もめて、考えて、最終的に『まず諸々鍛えて出直してこい』という決断を下した時のこと。

 今の状況は、ところどころ違うものの、あの時によく似ている、とラストは思っていた。

 

 こっちの関係者が保護している、ないし気に入っている女の子。

 助けてあげたいけど、今のところまだ他人であり、特段助けることでこちらにメリットもない。

 

 あの時と同じ風にするなら、ツアレ同様、こちらに何らかの利益をもたらせる人材になるまで育ててから受け入れる、という形にすれば、助けてやる選択肢もある。

 そうでなければ、あくまで『他人』である今は、いかに借金その他で苦しんでいるかわいそうかわいい不憫系ヒロインであっても、助ける義理はない。

 

 もっとも、彼女がかわいい子供(エオン)にとっての『いい人』であり、自分の義理の娘になる子であり、将来かわいい孫の顔を見せてくれる子であるというのなら、それら一切の損得勘定をぶっちぎって助けることに何のためらいもない。多額の借金? アレな両親? そんなものでこのラストにゃんにゃん様の覇道(笑)を阻めるとでも思うのか馬鹿め。という感じである。

 自分の血を引いた新しい、かわいい家族を抱く。それは、ラストにとって何よりも優先すべき、己の偽らざる欲望の1つであり……ラストの願いイコール、空中庭園の者達にとっての願いであるがゆえに。

 

「ちなみにそのお手並みってどっちの? エオン? アルシェって子?」

 

「両方。エオンがアルシェちゃんを口説き落とせればそれでよし、アルシェちゃんがエオンに思いを伝えてゴールインすればそれでもよし……どっちがどう動いた結果でもいいから、素直になって幸せになれば、お母さんがもっと幸せにしてあげます、っていう単純な話よ。あー楽しみ♪」

 

 

 ☆☆☆

 

 

 場所を戻して、『歌う林檎亭』。

 

「それでだアルシェ。今後どうするかは、まあ後で考えるものとして……すぐに『フォーサイト』を抜けるってわけでもないんだろ?」

 

「うん。……情けない話、妹達と家を出るにも……お金が要る。今後の生活のためのある程度のたくわえと……今まで、貴族でなくなったあとでさえ私達に仕えてくれた使用人達に、手向けとして渡して暇を出してあげないと。……これ以上、あの2人の犠牲にならなくていいように」

 

「この娘の優しさの1割でも、その両親が持ってられたらよかったのに……」

 

「というか、その両親のもとでアルシェがこれだけいい子に育ったことが幸運というか……むしろ不思議ですね。よほどいい教育係がいたのか、それとも学院でのお友達か……。ああ、ご両親を悪し様に言ってしまって申し訳ありませんが」

 

「いい。もう私も……あの2人には、何も期待しない」

 

「そうしとけ。いくら血のつながった肉親だからって、救いようもねえバカの道連れでお前まで不幸になることはねえよ。……で、だ。話の続きなんだが……」

 

 言いながらヘッケランは、手に持っていた紙をテーブルに広げる。

 それは、この帝国とその周辺の地理を描いた地図だった。縮尺など、あまり正確なものではないが……一般的に流通しているものとなるとこんなものだ。

 

「今、それにちょうどいい依頼が2つ来ててな。どちらもかなり高額な報酬が出てるってんで……はっきり言って、今の俺達にちょうどいいタイミングなんだ」

 

「その2つのうち、どちらかを受けるってこと?」

 

「いや、時期がずれてるんで、可能ならどっちも受けるのもアリだと思ってる」

 

 そう言って、ヘッケランは2枚の紙……それぞれの依頼内容が書かれたものを取り出して、順に説明していく。

 

「1つ目。依頼人はフェメール伯爵。内容は、リ・エスティーゼ王国領内にある、とある遺跡の多角的な調査。調査期間は最大3日。調査する内容は、一番は出現するモンスターとかで、その他についても多角的に……ってことだ。まあ、一般的な遺跡調査だな。ただ、これについては実施予定日も、やるやらないの返事の〆切もまだ先なんで、一旦置いとく」

 

 そこまで話してから、もう1枚の依頼書に手をかける。

 同時に、開いている地図の北の方……トブの大森林の奥地を指示して、

 

「もう1つだが、これは割とすぐ動かなきゃいけない奴だな。内容は……」

 

 

 

「……このあたりについ最近できたっていう……ダークエルフの国に潜入しての調査だ」

 

 

 

 

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