オーバーロード 傾国狐の異世界日記   作:破戒僧

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時計仕掛けのバハルス帝国(時限爆弾がいっぱい)

 

 

【異世界転移400年目 ×日目】

 

 さて、無事にうちのエオンがアルシェちゃんとゴールイン……いやガチの結婚はまだだけど、それを前提にお付き合い+同棲+結構踏み込んだところまで色々と始めたわけですが。

 諸々片付いたってことで、顛末みたいなものをさっくりまとめておこうと思います。

 

 

『フォーサイト』の他の方々については、前回の日記に書いたので省略。

 奴隷エルフ3人についても省略。ただいま職業訓練中です。

 

 アルシェちゃんだが、今言った通りエオンとくっつくことになったわけです。

 同時に、彼女は元々、浪費家+身の程知らずな無能貴族かくありきって感じの両親と縁を切って、妹さん達2人を連れて家を出ることを考えてた。

 

 調べたところ、王国のクズ貴族共みたいに、民を虐げ私腹を肥やし、人の世の生き血をすすり不埒な悪行三昧な醜いこの世の悪……っていう感じではない。

 ただ、所謂貴き者の責務(ノブレスオブリージュ)ってもんを微塵も理解していない、単なる無能、って感じではある。毒にも薬にもならないとでもいえばいいか。

 

 貴族として最低限の能力や教養はあるっぽいものの、それを生かせるかどうかは本人の人格次第なんだな……っていうのがよくわかる例だ。力不足でとり潰しされたっていうのに、現実を見ずに『いつか何とかなる』『あの愚か者(皇帝)が死ねばすぐ復権する』とか言ってんだって。

 

 何でそれがありえないってことがわかんないのかね……。

 だって、あんたら抜きで今帝国全然問題なく回ってんじゃん。現在進行形で、貴族としてのフルト家は不要だった、って証明されてる真っ最中じゃん、誰の目にも明らかな形で。

 

 万が一、何かがあって帝国の皇帝が死んだとしても、誰があんたらを再度登用するんだよ。

 ……もし再度登用されたら、それもわかんない同類の無能が実権を握ったってことになるから、そっちの方が問題だわ。

 

 恐らく、アルシェちゃんもこの辺のことは何度も説明したんだろうな。

 でも聞く耳持たなかったんだろうな。

 

 結論、放っぽりだすしかない。

 

 で、アルシェちゃんは、荷物まとめて準備ができたら、すぐにでもヘイムダールに来てもらって構わないわけだが、問題は妹ちゃん2人ね。

 助けるのは確定だし、連れ出すだけなら簡単なんだけど、ちょっと後で面倒になる可能性があるんだわ。

 

 極端な想定かもしれないんだけど、今後、ヘイムダール王国とバハルス帝国が国交を結ぶかもしれないとして……その時、ヘイムダール王国に『バハルス帝国から不当に連れ出された娘がいる』っていうのが露見して、外交的に問題になるかもしれない。

 

 つっても、軍事面でどうこうって心配は全くしてないよ? 第6位階程度の魔法詠唱者が『帝国全軍と同格』とか言ってる連中に負ける方が難しいもん。

 なんならエオン1人で帝都簡単に更地にできるし。

 

 そもそも、これがナザリックだったら、『何か言ってきたらぶっ殺せばよくね?』って結論になりそうなくらい、私達からすれば、その気になれば問題にもならないことだ。

 ただ、色々考えてることもあってさ、トラブルは少ない方がいいんだよ。

 

 なので、ちょっと手間をかけて小細工を挟むことにしました。

 せっかくなので、無能両親に悪者になっていただきます。

 

 簡単に説明すると、以下のような手順を踏みます。

 

 今現在、借金で首が回らないフルト家。

 そこに、日用品とかの買い付けで家に出入りしているとある業者から、こんな話が舞い込む。

 

『ぜひとも名門たるフルト家を紹介してほしいという新興貴族家の方が、うちの顧客にいまして』

 

 業者の仲介で会ったその貴族家から、お近づきのしるしにってことで、貢物(主に金目の物)をプレゼント。これだけでフルト両親、いい気になって調子に乗る。

 

 しばしおだてて調子に乗らせた後、その貴族家からこんな話が舞い込む。

 

『下のお子さんお2人はもうそろそろ〇歳ですよね? では、ぜひとも『行儀見習い』の先には当家をご指名いただけませんでしょうか?』

『もしご縁があるようでしたら、それ相応の御礼金を包ませていただきます』

 

 行儀見習いっていうのは、貴族の子女が他の貴族家に使用人として出向き、働きながら諸々の作法なんかを勉強し、同時に家と家との繋がりを作る手伝いとする……っていうやつだ。

 フルト家も元貴族家なので、その制度自体は知っているし、なじみもあるだろう。……両親の脳内では、『元』だとは思ってないわけだし。

 

 御礼金をちょっとお高めに設定して提示したら、自尊心を満足させてくれることと合わせて大喜びで、フルト両親は妹ちゃん2人を売った。

 言い方が不適切? 違うね、正真正銘売ったんだ。金で。2人を。

 

 ……好都合ではあるし、こうなるだろうと予想はできてたけど、親としてはできれば反対してほしかったと思ってるよ……そんな簡単に、自分のかわいい娘達を外に出せないって。

 業者経由で話を聞いただけで、相手の貴族家に対して下調べもろくにせず――されても大丈夫なように色々準備してたけど――金額だけを見て即決しやがったあいつら。

 

 ……まあいい。今言った通り、こっちとしては都合がいいのは間違いないし。

 

 そんな感じで、本人達の意思ガン無視で『行儀見習い』に出されることが決まった姉妹。

 ギャン泣きして嫌がる様子を見て心がちょっと痛んだものの、アルシェちゃんが『時々会いに来るから』『終わりになったら迎えに行くから』ってどうにかなだめた。

 

 そして双子ちゃんは、両親が御礼金を受け取っている図を背景に、もらわれていきました。

 ……これが、両親と双子ちゃんの今生の別れとなったのでした。

 

 もちろん、その貴族家は私の仕込みであり、実体のない架空の貴族家です。ペーパーカンパニーならぬペーパー貴族家です。

 よく調べないとわからないようになってるんだけど、全く調べもしなかったあの両親は何も知らずに『新参者だが先達への礼儀はわきまえているようだ』とか勝手に納得した様子である。

 双子ちゃんには、そこでほんの少しだけ過ごしてもらう。

 

 その間にアルシェちゃんが家を出る準備を完了し、両親に三下り半を叩きつけて出奔。

 エオンと一緒に『ヘイムダール王国』に引っ越すわけだが……その前に、双子ちゃんがいるペーパー貴族家へ行き、2人を回収。

 大好きなお姉ちゃんの迎えに大喜びで、『私達頑張ったよ! 褒めて!』って感じで抱き着いてきたのをキャッチし、そのままヘイムダールへ転移。

 

 なおその際、『これからは引っ越して私と、エオンお兄ちゃんと一緒に暮らすの。お父さまとお母さまとは離れちゃうけど、いい?』って聞いたら、2人そろってノータイムで『いい!』って。

 うん、両親とは二度と会えないけど、それが心の傷になることはなさそうで何より。

 

 こうして、『家族3人』でヘイムダールに引っ越し、うちのエオンに嫁いできたアルシェちゃんは……そのまま幸せに暮らすことになります。めでたしめでたし。

 

 ちなみに、その後のフルト家のお2人だけど……恐らくこういう末路を辿るだろうな、って予想をば1つ。

 

 荷物をまとめるために一度帝都に戻ったアルシェちゃん。その手には、金貨数百枚もの大金が握られていた。

『フォーサイト』としての最後の仕事で稼いだ(一応達成扱いになったので)報酬と……私からのお小遣いである。

 

 アルシェちゃんはそれらの金を、全てそのまま家に入れた。

 

 使用人達への未払いの給与を清算し、手向けという名の手切れ金を渡して全員に暇を出し、この家から解放した。『今までありがとう』ってねぎらいの言葉も忘れずに。

 彼女が今まで1人で頑張ってこの家を支えてきたことを知ってる人ばかりだから、皆号泣して感動の別れになったらしい。

 

 さらに、余った金で家の借金を全て返した。これが、彼女の最後の親孝行になる。

 

 借金はなくなったが……その代わりにフルト家は、収入源も全て失った。

 使用人達への給料と手向け、そして借金の返済。それら全てを終えた後に残ったお金が、正真正銘、彼らフルト家の最後の収入だ。ご両親がこれ以降、自分で働いたりしない限りは。

 

 果たしてこの先、フルト家のお2人は、きちんと自分達で働きつつ、身の程をわきまえてつつましく暮らしていけるだろうか……。

 

 ……まあ、無理だってわかってるけどね。

 

 おそらく連中は懲りずに借金をして贅沢を続けるだろう。いなくなった使用人達の代わりに、新たに使用人を雇って働かせて。

 幸いにも(不幸にも?)今はまだ金は手元にあるから。

 

 しかし、数か月後か数年後か、もうこれ以上貸せない、返済も待てないとなった時が、フルト家の最期だ。

 

 使用人達は去っていくだろう。給料が出なければ、働く意味なんてない。

 普通の貴族家ですらない、身の程知らずの愚か者の家なんかで。

 ……今までは、昔からフルト家に仕えてくれていた使用人達が、半ば温情で残ってくれてたようなもんらしいからね……それがいなくなって、単なる雇わればかりになれば……ねえ。

 

 その後は……どうもタチの悪い業者みたいだからな、返済の督促や取り立ては苛烈を極めるだろう。逆切れしようが、ありもしない権威を振りかざそうが意味なんてない。

 いよいよとなったら、帝国の法に基づいて、屋敷や家財の差し押さえが始まる。

 

 法律違反なんかはしてないので、訴え出ても帝国の役人も味方になってはくれないだろうし、エア権力を振りかざしても鼻で笑われる始末。

 

 焦ったフルト両親は、アルシェを探すけど見つからず。あるいは見つかったとしても手が出せず――その頃にはエルフの国の大公夫人だもんね――金を入れてもらえない。

 

 ならばと、双子ちゃんを『行儀見習い』に出した貴族家に援助させようと連絡を取るも、一向に連絡が取れず。

 金貸しや役人に、『そいつらが金を出す!』って必死に訴えても、少し調べた後、無情にもこう告げられるのだ。

 

『でたらめを言うな。そんな家名の貴族家は帝国には存在しない。聞いたこともない』と。

 

 恐らくその過程で、あちこちの関係者に聞き取り調査が行われ、証言が集まるだろう。

 

 フルト夫妻が常日頃どんな様子だったかとか、娘さんをワーカーとして働かせて自分達は何もせずに贅沢していたという実態に始まり、

 

 怪しげな『自称貴族家』と付き合いがあったこと。

 

 行儀見習いと称してその『自称貴族家』に双子の娘達を売り渡したこと。

 行儀見習いに際して御礼金が発生するなんて聞いたこともない。多分こう解釈されるはずだ。

 

 愛想をつかして長女が出ていったこと。

 この長女が唯一の収入源であったことは周知だし、時期からして、妹達を売り渡した両親に激怒して縁を切った、って受け取られるかもね。

 

 全ての証拠がフルト家を悪者にし、最終的にそこに残るのは、長女には愛想をつかされ、次女と三女を怪しげな取引で売り飛ばして金に換え、自分達では何もできない身の程知らずの元・貴族、現・社会のゴミである2人だけ。

 

 泣きわめく以外にこれ以上できることが何もなくなって、人生ゲームセットだ。

 

 その先は……知らん。

 けっこうやばい業者みたいだし、どっかに売られていくんじゃないかな。

 

 ちなみに、フルト両親にリボ払いで金を貸してた業者は……私の家族とは何の関係もない、ただの帝国のブラック金貸しです。裏でつながってるとか、影響力があるとかも一切マジでない。

 なので、借金関係は1から10までマジであいつらの自業自得だ。

 

 ……まあ、帝国で『リボ払い』っていう情弱ホイホイなやり方を始めて広めたのは、うちの子の会社なんだけどね……もう何十年も前に。

 

 こうして、ほぼ確で破滅にむけて転がり落ちていくであろうフルト家と縁を切り、妹ちゃん達とヘイムダールに来たアルシェちゃんの第二の人生が今始まります!

 

 フォーサイト編、完!

 

 

 

【追記】

 

 ……これは、あんまり考えたくないもしもの未来の話なんだけど。

 

 実は今、アインズさんから相談を受けてて……どうも近々、ナザリック地下大墳墓に不法侵入者が現れそうな気配があるんだってさ。

 

 帝国の上層部に、『王国領内にある未発見の墳墓ないし遺跡がある』ってことで、ナザリックの存在がとうとう露見したらしい。

 露見と言っても、ごく一部に情報が出回ってるだけだけど。

 

 最近、『エルヘヴン共栄圏』や『ヘイムダール王国』関係で色々大きく動いてたから、その調査のために帝国が動いて……その過程で偶然、未発見の遺跡が見つかった、って感じだろうな。

 

 毎年恒例の王国VS帝国の戦争やってる『カッツェ平野』にも近いし――今年の戦争はもう終わったけど――帝国政府がナザリックに調査のためにワーカー達を送り込んで来ようとしてるそうだ。

 

 一応、間になんとかって貴族家を1つ挟んで、皇帝主導でやったとはわからないようにするらしいが……既にバレてるっていうね。デミウルゴスが手配した調査網がマジ優秀な件。

 

 で、その依頼するワーカーの候補に、『フォーサイト』も入ってたんだって……。

 

 今回アルシェちゃん達は、それより前にこうして解散することになっちゃったわけで、その依頼に参加するかどうかも自然消滅した形になるけど……もしも、アルシェちゃん達が、それに参加して、お金目当てなんて理由でナザリックに侵入してた日にゃ……処刑待ったなしである。

 

 いや、すぐ死ねればむしろ有情な部類に入るだろう。

 

 ナザリックにおいては、死はそれ以上の苦痛を与えられないという意味で慈悲である。

 ……アインズさんがこないだ『こんな決め台詞どうでしょう』って言って聞かせてくれたセリフである。かっちょええ、ってその時はテンション上がって笑いながら聞いてたけど……。

 

 ……本当によかった。そうならなくて。

 

 

 

【異世界転移400年目 △日目】

 

 こないだ書いた、ナザリックへの侵入者の件。

 ワーカーチームが複数進入してきましたが、予想通り全滅しました。

 

 せっかく来てくれるんだからって、手ぐすね引いて待ち構えてたアインズさん達が、侵入者対策の各種トラップのテストとかに利用した上、最近練習してるアインズさんの接近戦の成果を試すための練習台にもなってもらって、1人残らず有効活用してた。

 

 そしてその様子を、私も一緒に見せてもらいました。

『せっかくだから見に来ませんか?』ってアインズさんに招待してもらってね、ナザリックの応接室で、『水晶の画面(クリスタルモニター)』で見物させてもらったんだよ。愚かな盗人たちの末路って奴を。

 

 彼らワーカー達は、捨て駒として帝国に利用されたわけなので、哀れに思わなくもないけど……金のために墳墓に進入して堂々と盗みを働くって決めたのは彼ら自身だ。

 アインズさんの、ナザリックに対する思いの強さ、深さを知っている私としては――それ以前に私にとってもナザリックは思い入れのある場所だし――ワーカー達に同情はしても、情けをかける気にはなれないね。

 自分がやったことの責任が自分に返ってくる。起こることはそれだけです。

 

 なお、さっき言った、アインズさんが剣で戦う訓練について。

 会場は、第6階層の『円形闘技場』だったんだが、その時はモニター越しじゃなくて、その観客席で生で見せてもらいました。アインズさん、

 

 結構練習したんだろう。結構堂に入った動きになってたと思う。

 

 なお、犠牲になったのは『ヘビーマッシャー』とかいうチームだったんだけど……片手剣と丸盾装備のアインズさんに、手も足も出ていなかった。

 いかにも重量級っぽい名前で、実際、リーダーだっていう重戦士は、パワーが自慢らしいけど……そっかあ、魔法詠唱者(マジックキャスター)であるアインズさんに接近戦で何もできずに負けちゃったんだねえ。悲しいねえ。

 

 こうして、ナザリックに進入した『薄汚い盗人』達は全員死にました。

 

 なお、前にも言ったように、これを依頼したのは、フェメールとかいう伯爵なわけだが、黒幕は帝国の皇帝である。

 なのでこの後、『よくも失礼な連中を送り込んできたな』って感じで、帝国に殴りこんで報復する案もあったんだが……報復(それ)については、一旦保留になりました。

 

 なぜかというと……今ちょっとシナリオを考えている、けっこう大きめの『イベント』にそれを利用できそうだからです。

 デミアとカリン、さらにナザリックからデミウルゴスとパンドラズ・アクター、そしてアインズさんにも協力してもらって、一緒に企画立案してる最中でね……。

 

 それが成功すれば……この周辺の勢力図が一気に書き換わるような特大イベントになるんだけど、果たしてどうなるやら……?

 今後の展開をお楽しみに。

 

 ……ま、その前に色々下準備も必要になってくるんだけどね。

 

 差し当たって……竜王国と聖王国、どうにかしないとな。

 

 聖王国は、例によってデミウルゴスが何か色々企画してるっぽいんだけど……竜王国は私の子供達が色々遊んでる場所なので、私達『空中庭園』の管轄である。

 ぼちぼち作戦を実行に移さないとだ。カリンとデミアと、詰めの協議を進めよう。

 

 

 

 

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